ヒャクジュウオーＳＰ１アジア・オセアニア
| 種類 | ショート |
|---|---|
| 担当 | 外村賊 |
| 芸能 | 1Lv以上 |
| 獣人 | 1Lv以上 |
| 難度 | 普通 |
| 報酬 | 1万円 |
| 参加人数 | 8人 |
| サポート | 0人 |
| 期間 | 10/10〜10/14 |
●本文
聖獣たちの基地は武野小学校――魔獣界の戦士達は、動き出した。
邪悪なる神、アーク・ゴーンの復活の為に。
武野町の人々は手に手に武器になるような物を携え、鬼気迫る空気を宿し小学校へ詰め掛けた。
「巨大なロボットで街を破壊するヒャクジュウオーは人類の敵ザマス！！」
先導するのは、大高屋PTA会長。荒々しい動きでずれてしまった、釣りあがった眼鏡を直しつつ、大声を張り上げる。
「お前らがいるから破壊獣がこの町に攻めてくるんだ！」
「聖獣はどこだ！ 叩き壊せ！」
「防衛組の子供を捕まえろ！ これ以上奴らを暴れさせるな！」
その様子を教室で見ていた防衛組は気が気でない。
「何で突然そんな‥‥」
「誤解だよ！」
戦うのは平和を守るためだ。町を壊してしまった事も何度かあったけど、それが町のみんなをこんなに怒らせているなんて、知らなかった。
「俺達みんなのために頑張ってきたのに‥‥」
その時、魔獣界の力を探知し、教室に警報が鳴り響いた。
全く悪いタイミングだ。
「二手に分かれよう。ここで町のみんなを止める人と、破壊獣を倒す人‥‥！」
みんなは頷きあうと、教室を司令室へと変形させる。中央モニターに戦士が操る魔獣の反応が、高速で武野町に近づいてきているのが分かる。
教室のまんなか、みんなの頭の上で、緑色の宝石が輝いている。コマンド・ワードを唱えれば、指定した場所までみんなを一瞬で運んでくれる。
この状況で聖獣を出せば、町のみんなもどういう行動に出るか分からない。早く倒して、ここに戻ってくるのだ。
目指すはもちろん、魔獣のいる場所だ。
「獣王転移！」
叫べば、宝石の光が、いっそう強くなる。
足元の感覚がなくなり、視界が緑で埋め尽くされる。
そしてみんなは、戦いの場へと向かった。
☆★☆★☆★
『獣王武神（じゅうおうむじん） ヒャクジュウオー』第十の一話・概要
ヒャクジュウオーとは‥‥地球征服をたくらむ魔獣界と、聖獣界の戦士から地球の防衛を託された武野小学校五年一組の戦いを描く、小学生をターゲットにしたロボットアニメーション。戦いを通して正しき心を成長させる子供達にスポットを当てる。
参加希望者は詳細をよく読み、希望届けに記入の上、締め切りまでに届けを出すこと。
☆演技指針☆
聖獣防衛組：魔獣と戦う
魔獣界：防衛組と戦う
★新設定
新武器：窮地を乗り越えようとしたとき、司令室のプロテクトが解除され、聖獣たちに新しい武器が装着される。
☆専門用語☆
・聖獣：聖獣ブレスに封じられた聖獣界の戦士。正義の心によって具現化し、動物をかたどったロボットになる。心の力が弱ければ弱体化、悪ければ召喚さえ出来ない。子供達はブレスで指示を出し、遠隔操作する。
・司令室：教室が変形。瞬間移動装置など、さまざまな機能があるが、全貌は明らかになっていない。
・聖獣合神：司令室にある宝石を核として、それぞれの聖獣を合体させる。各部分の制御が必要なため、生徒達がコクピットに乗り込む。
それぞれの聖獣が合体後どの身体の部位になるかは、操縦者の意思による。
頭部になった聖獣の操縦者がメインパイロット。その聖獣の能力に準じた強力な必殺技を、一度だけ使える。
・魔獣：聖獣と同じ獣型。この状態ではブレスによる遠隔操作。
・破壊獣：コワ・エネルギーから作られたモンスター。人々を怖がらせてコワ・エネルギーを吸収、徐々に巨大化していく。
・破壊魔獣：魔獣が破壊獣を取り込むことによって人型に変形した姿。聖獣よりも一回り大きく、強力になり、魔獣の必殺に加え、破壊獣の特殊能力が使える。エネルギー制御が必要なため、魔獣界人が実際に搭乗して動かす。
☆希望届け☆
１、希望役（いずれか）
・武野小・五年一組の生徒（前回出演者は同じ役柄が望ましい）
・魔獣界の戦士（同上）
・その他、前回担当脇役など
２、やりたい役柄
・名前
・性別
・外見（簡潔に）
・長所（一言で）
・短所（一言で）
・聖（魔）獣（獣人種族をモデルにしているので、その範囲で決定する事）
・必殺技（一つ）
３、破壊獣
今回登場なし
●リプレイ本文
獅堂 吼（熱血 獅子聖獣ブラスト・リオン）‥‥谷津・薫（fa0924）姫野木 静夜（姫）（泣き虫 ハムスター聖獣シャンガリア）‥‥カナン 澪野（fa3319）
羽田 涼子（活発 鷹聖獣バーニング・ホーク）‥‥ＲＡＳＥＮ（fa0932）
若宮 篤志（お坊ちゃま 子豚聖獣ブラックポーキー）‥‥三条院・棟篤（fa2333）
藤原・太（大食漢 竜聖獣グリードドラゴン）‥‥森村・葵（fa0280）
獅堂・ひかり（吼の母）‥‥蘇我・町子（fa1785）
カレンスキー（ナルシスト 狼魔獣ケルベロス）‥‥ディノ・ストラーダ（fa0588）
フクカーン（カレンスキー親派 狼聖獣カミーラ）‥‥相麻 了（fa0352）
★
『武野町では子供たちに戦闘をさせる聖獣の存在を糾弾する一団が暴動を――今入った情報によりますと、一団は防衛組の存在する市立武野小学校に――』
淡々としたアナウンサーの声は、電源を落とされ唐突に途切れた。
静けさがリビングを包む。テレビの前に座っていたエプロン姿の主婦、獅堂ひかりは暗い表情でため息をつく。不安げな指先は、首にさげたロケットへと、無意識に伸びた。
「あなた‥‥どうか、あの子を守ってあげて‥‥」
ここにはいないロケットの贈り主へと、呼びかける。すると何の前触れもなく、握り締めたロケットから光が溢れた。人を安らがせる緑の光。恐る恐る、ひかりはロケットへと視線を落とす――
★
司令室から瞬間移動してきた防衛組が目にしたのは、銀狼の魔獣だった。転移の光を認めて、ゆっくりとみんなの方へ視線を投げる。傍らにはすらりとした青年が立っていた。魔獣界の戦士、カレンスキーだ。
「待っていたぞ、聖獣の戦士‥‥」
「‥‥大人達をあんなにしたのはお前か！」
吼は今にも飛びかからん勢いで叫んだ。魔獣が現れた事で人々はみんな逃げ出し、辺りは恐ろしいほどの静寂だ。カレンスキーの澄んだ笑い声も、大きく聞こえるようだった。
「知りたければ掛かってくるがいい。私と、我が戦友（とも）ケルベロスに！」
カレンスキーは動かない。聖獣の攻撃を待っているのだ。余裕すら窺えるその態度に、吼はカチンと来た。感情のままに、ブレスを構える。
「言われなくたって行ってやる！ 聖獣召喚！」
呼びかけに答え、学校から一条の光が飛んでくる。同時に、カレンスキーも魔獣ブレスを構えた。
「来いカイザーウイング！」
カレンスキーが叫ぶと、空間をゆがめ銀色の戦闘機が一機、彼の頭上に現れた。カレンスキーはカイザーウイングに飛び乗る。操縦席に辿り着くと、再びブレスを構える。
「獣装合体！」
今度はケルベロスの双眸が光を放つ。その機体が五つに分断され、空中へと浮き上がる。カイザーウイングに吸いつけられる様に接近していく。
緑の光は次第に白い獅子、吼の聖獣ブラスト・リオンへと姿を変え、魔獣と戦闘機は黒い光に包み込まれる。ブラスト・リオンはブースターの出力を上げ、そのまま黒い光へと突進する。
「何が来たって負けるもんか！ 喰らえ、ブラストスラッシュ！」
加速の勢いを上乗せした爪で相手を切り裂く必殺技だ。白く輝くブラスト・リオンの爪が黒い光へ迫る。後わずかでその表面に触れる、その時――
すさまじい烈風が黒い光の中から巻き起こった。ブラスト・リオンは煽られ、黒い光のすぐそばに横転する。聖獣の受けた衝撃が、吼の身体に痛みを走らせる。
『白い獅子よ、そんな攻撃では傷一つ付けられないぞ‥‥この獣装騎士ビーストカイザーにはな』
黒い光が収束していく。姿を現したのは、人型の魔獣。巨大な剣を手にして、振り下ろしきったように屈んでいる。ゆっくりと立ち上がるにつれて、ケルベロスの面影を残すパーツがあらわになる。その機体は、身震いするほどの威圧感に包まれていた。しかし、ビーストカイザーから発せられたカレンスキーの声は、憂いに沈んでいた。
『皮肉なものだ。聖獣界との友愛の証であるカイザーで今、こうしてお前達を倒そうとしている‥‥』
「‥‥友愛？」
『そうだ。かつて聖獣界と魔獣界は、共に繁栄を喜び、共に邪悪を排してきた。だが、お前達は裏切った。魔獣界は邪神の手に落ちた。悪しき神を崇める、悪辣な世界へ変貌してしまった』
「う‥‥嘘だ！」
思わず叫んだものの、夏休みに司令室で発見した、過去の戦いの記録が頭をよぎる。カレンスキーの魔獣と、ブラスト・リオンに似た聖獣が、共に戦っている映像。
『ふん。知らぬなら新たに刻み付けるまで‥‥魔獣界の背負った悲しみと苦痛を‥‥この獣斬剣で』
ゆっくりとした動作で、ビーストカイザーは剣を構える。
『聖獣よ、合体するが良い。全力のお前達を倒さなければ、魔獣界の深い恨みは晴らされない‥‥』
「合体しよう！ かなり強そうだよ、アイツ‥‥！」
ポニーテールを揺らして涼子がみんなへと振り返る。
「そうだよ、早くやっつけないと、今日の給食がっ！」
おおらかな太が、いつになくあせった表情で急きたてる。彼だけ論点が外れているような気もするが、みんな異論はないようだ。
（「お兄ちゃん‥‥」）
ただ一人、不安げにビーストカイザーを見上げる姫、静夜を除いて。
過去の記憶がない静夜だが、カレンスキーが兄かもしれないと言う、確信に近い予感があった。ビーストカイザーを見上げていると、胸が苦しくなる。
「姫、合体だぞ！」
「あ、うん。ごめん‥‥」
呼ばれて我に返り、円陣を組むみんなに混ざる。ブレスのはまった手を一つに重ね合わせ、合言葉を叫ぶ。
「聖獣合神！！」
瞬時に司令室にある宝石が呼び出され、それを中心に聖獣たちが合体する、はずだった。
「宝石が‥‥来ない‥‥？」
「も、もう一度！」
しっかりと手を重ねてやり直したが、やはり宝石は現れない。三度やり直したが、結果は同じだ。
「なんで‥‥」
『どうした、合体しないのか？ それとも――』
「お前なんか、合体なしでも倒せる！」
とっさに吼は叫んでいた。
「吼！」
「合体できないなら、このままやるしかないだろ！」
「おれが行って来る。力は聖獣随一だ！」
太がその場で四股を踏むと、聖獣グリードドラゴンも一緒に四股を踏む。そして、大きな身体を揺らしてビーストカイザーに突進した。足が地へ付くたびに地震が起こり、めしり、とアスファルトにめり込む。
『どすこーいっ！』
張り手の要領で両手を交互に前へ繰り出す。もう少しで届く、という所で、ビーストカイザーは跳躍した。身体の重みで突進の勢いを殺しきれず、グリードドラゴンはたたらを踏む。
『遅い』
その隙にビーストカイザーは背後へ降り立ち、斬り付ける。バランスを欠いたグリードドラゴンは周囲のものを巻き込みながら派手に倒れた。
『せっかくの力も、使いどころを間違えれば木偶も同然』
「‥‥っ、ならスピードで勝負よ！」
涼子がブレスを構えると、上空のバーニング・ホークが高く鳴いた。バルカン砲で威嚇しつつ、スポーツでならした動体視力でチャンスをうかがう。撃ちつづけていたバルカン砲が偶然、ビーストカイザーの目に命中した。素早く涼子はバーニング・ホークを急降下させる。鷹聖獣は全身に炎をまとう。エネルギー波で敵を切り裂くのだ。
『バーニング・カッター！』
向かい来るバーニング・ホーク。ビーストカイザーは寸分狂いなく剣を振るう。
「きゃあああっ！」
悲鳴を上げて涼子は左腕を押さえた。バーニング・ホークは左翼をもがれ、本物の炎をまとって墜落していく。
『戦いで視覚ばかりに頼るのは愚かだ』
堕ちゆくバーニング・ホークに言葉を投げるビーストカイザーの右手に、ワイヤーの付いた鍵爪が巻き付いた。見る間に獣斬剣を握る手はがんじがらめになる。グリードドラゴンが放ったアンカークローだ。
「今だ！ こいつの動きを止めてる間に、早く！」
「ふっ、いよいよ僕の力を見せるときのようだね」
給食の為に必死な太の隣で、篤志が髪をかきあげる。端麗な見目で育ちもいい篤志のそれは、とても様になっている。この場でそんな余裕でいられるのも、育ちの良さゆえだろうか。優雅にブレスを構え、篤志は聖獣に命じる。
「さあブラックポーキー、ミラージュダンスだ！」
ブラックメタルの豚型聖獣は身動きの取れないビーストカイザーの周りをぐるぐると回り始める。次第に速さを増して残像ができ、まるでブラックポーキーが何体もいるように見える。その速さのまま、ブラックポーキーは何度もビーストカイザーに攻撃を仕掛ける。ビーストカイザーはなすがままに打たれている。
『降参するかい！？』
当たった事に気をよくして、篤志はさらに攻撃を続ける。ビーストカイザーは動ける範囲で縛られた右手を動かした。と、ビーストカイザーとグリードドラゴンを繋ぐワイヤーに、ブラックポーキーの足が引っかかった。神速で動いていたブラックポーキーは、そのコロコロと愛らしい体型も手伝って、道路を転がり、信号にぶつかって止まった。
「なんやねんな！」
突然走った痛みにパニックを起こした篤志は、思わず出身の喋り方に戻る。
「何で僕がやられなアカンの！？」
『その理由が分からないようでは、例え合体したとしても私は倒せないな』
腕をひねってワイヤーを断ち切り、ビーストカイザーは飛びかかろうと構えるブラスト・リオンに向き直った。
あっという間の出来事だった。吼は構えたまま奥歯をかみ締める。最初に攻撃を弾かれた事が頭にちらついた。
『もう終わりか。こんなものが聖獣の力か！』
『まだだ‥‥まだ！』
吼は意を決した。ブラストリオンのブーストを最大限に上げ、突撃をかける。全身全霊のブラストスラッシュだ。防衛組は地球を守らなければならないのだ。ここで諦めたら、一体誰に代わりが出来るだろう。ビーストカイザーも獣斬剣構える。全力には全力をもって返す、カレンスキーはそのつもりでいた。
静夜は二人の戦いを前に、恐怖で震えが止まらなかった。
「いや‥‥だ‥‥やめて」
記憶の奥から、何かが沸きあがってくるのを感じる。凄まじい勢いで命が消えていく戦場。恐怖、悲しみ、そして――くろい、くろい、やみ。
カレンスキーはコクピットに響いた警告音に気付いた。闇のエネルギー反応が爆発的に増えている。
「アーク・ゴーンのエネルギー‥‥？ 一体どこから‥‥！？」
一瞬そちらに注意が向かった瞬間、聖獣と魔獣の戦いは、別方向から遮られた。どこかから飛んできたミサイルが、狙い済ましたかのように獣斬剣を弾き飛ばした。
「――！」
それでも迫り来るブラスト・リオンをすさってかわす。獣斬剣は静夜のシャンガリアのすぐそばに突き刺さった。シャンガリアに守られるようにして、静夜が震えている。
『やめて、もう‥‥これじゃ、あの時と同じだよ‥‥』
すすり泣く声で、静夜が言う。カレンスキーは愕然とその姿を見守った。彼もまた静夜を弟ではないかと考えている。コクピットのレーダーは、その弟が、闇のエネルギーが発していると知らせていた。
『カレンスキー様！』
その時、もう一体の狼の魔獣が後ろから駆け寄って来た。
『あの魔獣は‥‥フクカーンのカミーラか。‥‥何があった！』
『今すぐお戻りを‥‥城が、アーク宮殿が‥‥！』
フクカーンの焦る様子は尋常ではない。察したカレンスキーは、獣斬剣を引き抜いた。背後に跳躍して、カミーラのそばへと降り立つ。
『聖獣よ、今は勝負は預けておく。魔獣界の恨み、忘れるな』
そのまま、二体の魔獣はその場を離脱していった。残されたのは傷を負った聖獣と、呆然と敵の去り際を見ている事しか出来ない、防衛組の皆だけ。動き回る力はもうなかった。
「負けた‥‥」
「聖獣が‥‥防衛組が‥‥」
静寂を取り戻した町は、みんなの落胆した心を表しているかのようだった。
★
そんな彼らを見守る目が、ビルの陰に一つ。
「今のところは、退いてくれたわね‥‥」
豹柄のバイクにまたがった、一人の女性。ライダースーツにヘルメットをした彼女の表情は見えないが、呟いた一言は安堵を漂わせていた。バイクのリア部には、まるでミサイルでも撃ったかのような、発射煙が白く立ち上っている。
「吼は‥‥あの子達は、まだまだ戦っていかないと駄目なのね‥‥あなた‥‥」
ここにはいない伴侶へ、彼女は呼びかける。夕暮れの光を受けて、バイクが寂しげな光を反射していた。
