ヒャクジュウオー!アジア・オセアニア
種類 |
ショート
|
担当 |
外村賊
|
芸能 |
1Lv以上
|
獣人 |
1Lv以上
|
難度 |
普通
|
報酬 |
1万円
|
参加人数 |
8人
|
サポート |
1人
|
期間 |
11/08〜11/12
|
●本文
水盤の間の空間がゆがみ、漆黒の鎧が硬質な床を踏みしめた。ハザードだ。腕には一人の少女が抱えられている。
ぽたり、ぽたり。
邪神の封じられた水盤に、恐怖が滴り落ちている。
その黒い液体の滴る音に混じって、うめき声が聞こえる。
数多の魔獣界の戦士が倒れ、水盤の間を埋め尽くしているのだ。
「これで邪魔者はいねぇ‥‥」
ハザードは残忍な笑みを浮かべた。
地球侵略の戦士達が全員出撃する機会を、ハザードはずっと狙っていたのだ。それが訪れた時、すかさずハザードはその魔獣界最強と恐れられた武力をもって、アーク城を制圧した。全ての侵略地へ繋がる、唯一の転送装置があるこの城は、魔獣界の中枢と言ってもいい。彼は制圧と同時にこの転送装置の接続を全て切断した。そして続く計画の為に一時的に起動させて自ら地球へ赴き、たった今、帰還を果たしたのだ。再び装置の接続は切られ、侵略地へ行き来する扉は閉ざされた。
各地に戦士が侵攻している今、魔獣界にはハザードを抑止できる存在はない。地球のような、魔獣界から遠く離れた星であればなおさら、魔獣単機で出撃している戦士達が転送装置なしで帰還するのは不可能に近い。
「地球以外の侵略地に緊急コールをかけろ」
命じると、近くにいた兵士は悲鳴に近い返事をし、水盤の間の通信装置を操作する。低い駆動音を聞いて、ハザードは話し始める。宇宙全ての魔獣界の戦士へ――
「侵略地の戦士ども‥‥よく聞け! アーク城はハザード様が占拠した! 今からは俺の命に従い、アーク・ゴーン復活の為に全力を挙げて恐怖を搾り取れ! 背いた奴、出来なかった奴はこの俺自ら制裁を加える。この城の機能は知ってるだろう、隠そうとしても無駄だぜ‥‥」
各地からの受信機能は切断されているので、返事はない。だが受け入れるしか方法はないのだ。ハザードの力と、容赦のない性格を、魔獣界で知らぬ者はない。
「クックック、恐れて動け‥‥そう‥‥貴様らもアーク・ゴーンの糧の一つになるんだ‥‥」
通信を終えると、ハザードは声を上げて笑った。倒れた戦士の苦痛の声と混ざり合い、水盤の間に響きわたる。気がすむまで続けた後、たった今潜り抜けてきた転送装置を振り返る。
「さて、奴らだけは、特別コースだ‥‥」
唯一通信を行わなかった、地球。
あの星には何かある――ハザードにはそう思えた。地球を任された部隊は、わざと地球を侵略しないでいるようだ。部隊の一人は実際、ハザードの前でそれをほのめかした。加えてアーク城のドック内で秘密裏に、六機の戦闘機を修理していた。以前の大戦で使われた、魔獣の力を極限まで高めるというものだ。
「何を隠してやがるかしらねぇが‥‥奴らに最大の屈辱を与え、俺の目の前に跪かせ、向こうから白状させてやる‥‥。貴様はその為のお人形だ」
抱いた少女に視線を落とす。血の気がうせ、ぐったりと気を失っている。
「神聖なる恐怖の力、貴様にもくれてやる‥‥地球行きの宇宙船と、従順な大隊もつけてやろう。クク、本能のままに、存分に暴れるがいい‥‥」
★
その頃、地球ではヒャクジュウオー敗北のニュースが世界を駆け巡っていた。魔獣界の更なる侵攻があるのか、人々は恐怖している。
防衛組もまた敗北の衝撃と共に、あの日以来仲間の一人が姿を消した事実に、強い不安を抱いていた。勉強も手が付かない、そんな日々の後、それはやってきた。
魔獣界の巨大な宇宙戦艦だ。
☆★☆★☆★
『獣王武神(じゅうおうむじん) ヒャクジュウオー』第十一話・概要
ヒャクジュウオーとは‥‥地球征服をたくらむ魔獣界と、聖獣界の戦士から地球の防衛を託された武野小学校五年一組の戦いを描く、小学生をターゲットにしたロボットアニメーション。戦いを通して正しき心を成長させる子供達にスポットを当てる。
参加希望者は詳細をよく読み、希望届けに記入の上、締め切りまでに届けを出すこと。
☆演技指針☆
聖獣防衛組:ハザードの送り込む魔獣界軍と戦う
魔獣界:防衛組/ハザードと戦う・それぞれの目的を果たす
★新設定
新武器:窮地を乗り越えようとしたとき、司令室のプロテクトが解除され、聖獣たちに新しい武器が装着される。
☆専門用語☆
・聖獣:聖獣ブレスに封じられた聖獣界の戦士。正義の心によって具現化し、動物をかたどったロボットになる。心の力が弱ければ弱体化、悪ければ召喚さえ出来ない。子供達はブレスで指示を出し、遠隔操作する。
・司令室:教室が変形。瞬間移動装置など、さまざまな機能があるが、全貌は明らかになっていない。
・聖獣合神:司令室にある宝石を核として、それぞれの聖獣を合体させる。各部分の制御が必要なため、生徒達がコクピットに乗り込む。
それぞれの聖獣が合体後どの身体の部位になるかは、操縦者の意思による。
頭部になった聖獣の操縦者がメインパイロット。その聖獣の能力に準じた強力な必殺技を、一度だけ使える。
・魔獣:聖獣と同じ獣型。この状態ではブレスによる遠隔操作。
・破壊獣:コワ・エネルギーから作られたモンスター。人々を怖がらせてコワ・エネルギーを吸収、徐々に巨大化していく。
・破壊魔獣:魔獣が破壊獣を取り込むことによって人型に変形した姿。聖獣よりも一回り大きく、強力になり、魔獣の必殺に加え、破壊獣の特殊能力が使える。エネルギー制御が必要なため、魔獣界人が実際に搭乗して動かす。
☆希望届け☆
1、希望役(いずれか)
・武野小・五年一組の生徒(前回出演者は同じ役柄が望ましい)
・魔獣界の戦士(同上)
・その他、前回担当脇役など
2、やりたい役柄
・名前
・性別
・外見(簡潔に)
・長所(一言で)
・短所(一言で)
・聖(魔)獣(獣人種族をモデルにしているので、その範囲で決定する事)
・必殺技(一つ)
3、破壊獣
今回登場なし
●リプレイ本文
春野 ウララ(天然ボケ 犬聖獣サイレント・ドッグ)‥‥☆島☆キララ(fa4137)
羽田 涼子(活発 鷹聖獣バーニング・ホーク)‥‥RASEN(fa0932)
昴・A・栞(組長)(委員長 猫聖獣ワイルドキャット)‥‥槇島色(fa0868)
大高屋 亮(ガリ勉 ユニコーン聖獣モノケロス)‥‥藤拓人(fa3354)
姫野木 静夜(姫)(泣き虫 ハムスター聖獣シャンガリア)‥‥カナン 澪野
カレンスキー・薔薇騎士(ナルシスト 狼魔獣ケルベロス)‥‥ディノ・ストラーダ(fa0588)
ペギリーフ(自称天才策略家 小鳥魔獣オキノタユウ)‥‥各務 英流(fa3345)
リオウネ(沈着冷静 蛇魔獣ブラックバイパー)‥‥RURI(fa3654)
飯田 公恵・アイーダ(物静か 大熊猫聖獣アイニー)‥‥笹木 詠子(fa0921)
★
まるで何事もなかったかのように――その日、行方不明だった公恵が帰ってきた。
普段どおりの落ち着いた物腰。数日空っぽだった座席が埋まり、みんなも公恵の復帰を喜んだ。
そろそろ帰りのホームルーム。みんなが席に着き始めたとき、一人涼子だけが窓辺に駆け寄った。
「UFOよ!」
「涼子、席に戻‥‥」
いさめようとした栞だが、思わずその光景に目を奪われる。
武野町の上空。黒い船が六隻、不可思議な駆動音を立てて浮かんでいた。一つ一つが、小学校のグラウンドぐらいはありそうな大きさだ。亮が眼鏡を持ち上げて憶測を立てる。
「まさか、魔獣界‥‥?」
「よし、出動するぞ! 公恵とウララ、姫は今すぐ聖獣を呼び住民の避難を! 他の者は正確な魔獣反応を調べ、獣王転移で現場へ急行する!」
栞の的確な指示で、防衛組は一気に動き出す。ウララと姫は頷きあい、教室から出ようとする。しかし公恵はじっとその場にたたずんだままだ。
「どうしたの?」
ウララが公恵の手を取ろうと駆け寄る。と、公恵は不快そうに眉をよせ、次の瞬間、ウララを思い切り突き飛ばした。思ってもいなかった事にウララは背中から床に勢いよく倒れる。
「公恵‥‥ちゃん?」
ウララを見下ろす公恵の視線は、痛いほどに冷たい。
「その名はもう捨てた。‥‥今の私の名は」
公恵は右手を掲げる。ウララが掴もうとしていたその手首に、見慣れない黒いブレス。それは黒い光――魔獣界の力を放った。
邪悪な気配が爆発的に広がる。はっと息を飲む間に、公恵の姿は徐々に大きく、ふくよかな成人女性の体つきに変わっていく。
「私の名は、アイーダ‥‥」
公恵の立っていた場所には、黒い和装に身を包んだ女性が一人。人形のような顔立ちに、公恵の面影が残っている。
『地球の人間ども!』
戦艦のほうから声が轟く。アイーダは戦艦に向かって跪く。先頭に浮かぶ戦艦から降る一筋の光の中に、立体映像が浮かんでいる。漆黒の鎧に巨大な剣を背負う、男。目にした途端、栞は全身が凍りつくような恐怖にとらわれた。
『俺は魔獣界総司令官、ハザード! これより魔獣界は本格的な地球制圧に掛かる。もう遊びは終わりだ‥‥地上の何人も逃れられぬと思え! ‥‥アイーダ!』
名を呼ばれ、アイーダは窓から外へ飛び出した。その身体は光に拾われ、戦艦へと引き上げられ、中空のハザードのホログラフィーに抱かれる。
『貴様の任務は地球の全ての人間を恐怖に陥れることだ。アーク・ゴーンに捧げるに値する、死よりもつらい恐怖を‥‥』
ハザードは残忍な笑みを浮かべ、地上を指し示した。
『さあ行け! 魔獣の力をもってこの星に恐怖を!』
言われるままに、アイーダは魔獣ブレスから大熊猫型の魔獣を呼ぶ。隙のない挙動で上に乗り、地上へと降下し始めた。その後ろに猿と牛の魔獣が付き従う。近づいてくる三体の魔獣を見つけ、人々は悲鳴を上げて逃げ惑う。
「あれよ、きっと! あのハザードとか言うのが公恵ちゃんを洗脳しちゃったんだわ! 早く公恵ちゃんを捕まえて元に戻さなきゃ!」
涼子が持ち前のオカルト知識を発揮して、自信たっぷりに言った。
「でも、どうやって‥‥?」
「どーもこーもないわよ! 首に縄つけてでも引っ張って来るのよ! ね、組ちょ‥‥」
実質的司令官の栞を振り向いた涼子だったが、そのまま絶句する。そこにはしゃがみ込んで震える、今まで見た事もない栞の姿があった。腕で覆った顔は、真っ青になっている。
「ちょ、組長!?」
「‥‥嫌だ、あの男‥‥ハザード‥‥怖い‥‥ッ!」
「みんな、どうしたの?」
栞の悲鳴を聞きつけたのか、不意に教室の扉が開いて保健の大和先生が入って来た。栞を見つけると、慌てて近づき、肩を抱きよせる。
「大変‥‥早く保健室に。でも私、生徒や町の人の避難の手伝いをしないといけないの‥‥」
「あたしが! 実はバーニング・ホーク、まだ本調子じゃないしさぁ!」
率先して涼子は栞に肩を貸す。以前敗北したときのダメージを修理しきれていないのだ。先生に付き添われ、栞を連れて廊下へ出る。扉を閉める前に、涼子は明るい笑顔を見せた。
「修理でき次第行くから、それまで公恵ちゃん、頼むよ!」
「うん、行ってくる!」
頼もしい返事を背に受け、涼子は保健室に向かった。そして大和先生は引き続き避難誘導をするはずだったが――しかし足を運んだのは、誰も居ない階段裏だった。
誰の気配もないことを確認して、手のひらを広げる。握られていたのはヘビがデザインされたペンダント。ウララが肌身離さずつけているものだった。突き飛ばされた拍子に外れ、気付かずにそのまま床に落ちていたのを拾ったのだ。
「あの子の両親の形見‥‥いいえ、これは確かに私のもの‥‥この、魔獣界の戦士、リオウネの‥‥」
その途端、ペンダントのヘビの瞳が、かっと光った。光はリオウネの瞳を照らし、思考を覆っていた霧を晴らしていく。
光が完全に消えたとき、リオウネに強い、決意の表情が現れていた。
★
町は見る間に破壊されていく。
『公恵ちゃん!』
聖獣たちが追いつくと、ビルに爪をつきたてようとしていたアイーダの魔獣が、ゆっくりと振り返った。モノケロスが一歩、近づく。
『公恵さん、帰ろう? みんな待ってるんだよ』
『悪い思いに負けちゃ駄目だよ‥‥思い出して‥‥』
姫もその後ろから語りかける。アイーダはしばらく無言で聖獣を見つめる。
『公恵さん!』
さらに呼びかける亮だったが、次の瞬間、魔獣は目に残忍な光を宿して突撃してきた。不意打ちに、先頭のモノケロスがまともに攻撃を受け、弾き飛ばされる。
『私はハザード様の人形‥‥他の誰の命も受けない‥‥』
背後に猿と牛、二体の魔獣がやってくる。ハザードが与えたアイーダの部下だ。アイーダがわずかに言葉をかけると、二体の魔獣は咆哮をあげて聖獣に襲い掛かってきた。アイーダもまた、魔獣を駆って再度突っ込んでくる。
『公恵ちゃん!』
今度は呼びかけにさえ反応しない。相手が防衛組の仲間、反撃なんて出来ない――その動揺に付け込んで、魔獣たちは容赦のない攻撃を立て続けて繰り出す。一撃一撃が、聖獣たちの装甲を深く傷つける。
(「各個撃破って、言うのかな‥‥」)
聖獣へのダメージは召喚者の負担にもなる。聖獣たちから距離を取ったビルの影で、亮はじくじくとこみ上げる痛みの中で、うつろにそう考えた。こんな時に、将来のために通う塾で習ったことを思い出すなんて、皮肉だな、とぼんやり思う。
その上から暗い影が射した。
はっとして見上げると、牛型魔獣がじっと見下ろしてきている。
「しま――」
牛魔獣は角で貫かんと突進してくる。逃げる事すら頭に浮かばず、みんなはその場に凍りついた。
激しい爆発の音――しかし、何の痛みも感じないことに、恐る恐る亮は顔を上げる。
「ま、魔獣!?」
目の前に、蛇の形をした魔獣。攻撃を受け、あちこちから煙が噴出している。魔獣はみんなのほうへ頭を向ける。姫は蛇と視線が合ったような気がして、身体に緊張を覚える。
『皇子‥‥早く、お逃げ‥‥』
「‥‥え」
『みんなー!』
上空からの威嚇射撃に、牛型魔獣がひるむ。空を滑空する鷹の聖獣、バーニング・ホークだ。
『涼子ちゃん!』
『ごっめんねー! ちょっとトイレが長くて遅くなっちゃった〜』
とか妙な言い訳をしながらも、バーニング・ホークは確実に聖獣とみんなの安全を確保していく。蛇魔獣はさらに牛魔中に巻き付きながら、ビル向こうで魔獣の攻撃に耐え続ける聖獣たちを見つめている。
『犬の聖獣は、誰の物‥‥?』
「え、えっと‥‥はい」
不意に訊ねられ、恐る恐るウララが手を挙げた。
『春野さん‥‥そう、あなた‥‥』
「どうして、私の名前をしってるの‥‥?」
『このブラックバイパーは、持ちそうにないわ。あなたの聖獣のサイズなら、この子の追加パーツを装備できるはず‥‥皇子を、お守りして‥‥』
『あの、ちょっと‥‥!?』
それだけ言うと、ブラックバイパーは姿を消した。召喚者の意志が途切れて、ブレスに戻ったのだ。それと同時に、ウララの聖獣サイレント・ドッグに魔獣界の黒い光が走る。子犬の背には、二連の電磁砲が装着されていた。
「大丈夫なのかな‥‥あれ‥‥」
亮が、不安げに二連砲を眺める。ウララも、少し不安であるのは同じだった。呪縛から解かれた牛魔獣が、再び突撃の体勢に入っている。
「でも‥‥やってみなくちゃ」
ウララはブレスを構えた。ブレスの表示では、どこにも違和はない。ごくりとつばを飲み、ウララは叫んだ。
「いくよ、サイレント・ドッグ! 電磁砲、発射ぁ!」
砲身に圧縮された電磁波が、唸りを上げて撃ち出される。左右交互に連射された弾は牛魔獣を焼き焦がさんと、全身を叩いていく。
その時、上空からも爆音が響いた。アイーダが見上げると、戦艦の一つから煙が上がっている。
「どうした、第三艦‥‥」
ブレスから通信を計ると、艦長の姿が映し出された。表情には焦りが見える。
『何者かがハッチから強制突入したようです。待機兵が追撃を行っていますが――』
再び爆音。今度はブレスのスピーカーからだ。映像には煙が渦巻き、艦長の顔を覆い隠す。
『な、何だ、貴様は!』
声だけが、何者かの侵入を伝える。相手はくつくつと笑い、こう答えた。
『私は薔薇騎士。遥かなる宇宙から現われし宇宙海賊『赤い薔薇』が、この船頂戴する!』
『ぎゃっ‥‥!』
艦長の悲鳴が響き、画像が乱れる。通信が途切れる直前、煙の中にたたずむ、仮面の男の姿が見えた。この瞬間、戦艦の一つが強奪されたのだ。
『帰還しろ』
次いでハザードからの通信が入った。
「第三艦はいかがしますか」
『ふん、一つくらいくれてやれ。どうせいらん船だ』
「了解‥‥」
通信が終わると、アイーダは部下に撤退の指示を出す。魔獣に飛び乗ったアイーダに慌てたのは防衛組のみんなだ。
『待って、公恵ちゃん! 話を聞いて‥‥!』
『次は更なる恐怖を――貴様らに与える‥‥』
みんなの言葉を聞くそぶりもなくきびすを返すと、アイーダはそのまま戦艦に引き返してしまった。
破壊された町の上、魔獣界の艦隊は遠く、宇宙へと上昇していく。みんなはそれをただ見ている事しか出来なかった。
「なんで、こうなっちゃったんだろ‥‥」
不安げに空を見上げるウララとはうって変わり、涼子は俄然元気一杯に拳を固めてみせる。
「一回ぐらいじゃ諦めないわよ! 今度こそ、公恵ちゃんを取り戻して見せるんだから!」
一方、魔獣界艦隊。
「ふうっ、危ないである。もう少しでまた置いてきぼりを食らう所だったである!」
ペギリーフは魔獣オキノダユウに乗って、戦艦滑走路に滑り込んだ。急に本国への帰還手段を立たれたと思った所へ、ハザードの戦艦が到着したのだ。早速救援信号を送ったのだが全く応答がなく、仕方なく自ら戦艦へ向かったのだ。魔獣から降り立つと、近くにいた戦士が迎えに走る。
「ハザードめ、救援に来たというのに救援者を忘れて帰るとはとんだトンチンカンである。帰ったら我輩自らズドーンと説教を垂れてやるので‥‥んん?」
視界の端に妙な黒い筒が映るので、ペギリーフはそちらに目を向けた。迎えに来たと思っていた戦士が、銃口をペギリーフに向けているのだ。
「なっ‥‥ななな!?」
「地球侵略部隊の一人か‥‥ハザード様の手土産には丁度いいですな」
戦士が降り仰ぎ見た向こう側。無表情のアイーダが、じっとペギリーフを見つめていた。