ヒャクジュウオー!アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
外村賊
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
1万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
01/15〜01/19
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●本文
強敵ビーストカイザーを、G(グレート)ヒャクジュウオーとなる事で倒した防衛組。しかし安心するのもつかの間。戦闘後の隙を突かれ、邪神アーク・ゴーンを復活させるためのアイテム『核』を魔獣界に奪われてしまったのだ。邪神の洗脳が解けた魔獣界人たちは、険しい表情で危機を示唆する。
「全宇宙から集めた大量のコワ・エネルギーと核、そして邪神の巫女が揃った今、あとは儀式を執り行うのみ。邪神が復活するのは時間の問題‥‥!」
「復活すると、どうなるの?」
「恐怖だけが力として君臨する。アーク・ゴーンを前にすれば、人々からは夢も希望も失われるだろう」
「そんな‥‥」
防衛組の何人かはさっきまでの自分を思い返していた。戦いの中落ち込んだ、辛く、苦しい思い。それが永遠に終わる事がないのだ。みんなの中に、アーク・ゴーンへの強い反発が渦巻いた。
「そんな事‥‥させない‥‥!」
『ふ、奴と同じ事を言う‥‥』
ビーストカイザーから操縦者の声が降った。魔獣界の皇子である彼の、どこか悲しげに響く声は、遠くへ思いを馳せているようにも聞こえる。
戦いの中で彼は『白い聖獣の戦士』が邪神を復活させたのだと語った。奴とはきっと、その戦士のことだろう。裏切りによって封じ損ねたアーク・ゴーンに、故郷を支配され続けている皇子の馳せる思い。過去の戦いを知らない防衛組には計り知れないものだった。
ただ、これだけははっきり言える。
「昔、聖獣界がどうだったのかは知らない。でも私達は負けない! 地球も、宇宙も、邪神から助けてみせる!」
『頼もしい事だ』
軽く笑う皇子の頭上にはいつの間にか、巨大な宇宙戦艦が滞空していた。
『もしそれに偽りがないのなら、私も新しい聖獣の戦士を信じよう』
「‥‥感謝します」
言ったのは聖獣界の王女だ。ビーストカイザーに向かい、静かに頭を下げる。
『勘違いするな。許したわけではない。‥‥協力はするが、馴れ合いはしない』
戦艦から一条の光がゆっくりと伸び、ビーストカイザーを包む。
『アーク城で会おう、ヒャクジュウオー』
ハッチを開き、ビーストカイザーを完全に格納すると、そのまま戦艦は空気に溶けて消え去っていった。あとには青い空が広がっているばかりだ。
その時、はたと誰かが気が付いた。
「そうだ、どうやって宇宙にある本拠地まで行くの? 僕ら、戦艦も何も持ってないよ!?」
「心配はいりません。ヒャクジュウオーに応える勇気があれば」
慌てるみんなに、王女はにっこり微笑んでみせた。
「急ぎましょう、魔獣界へ」
☆★☆★☆★
『獣王武神(じゅうおうむじん) ヒャクジュウオー』第十三話・概要
ヒャクジュウオーとは‥‥地球征服をたくらむ魔獣界と、聖獣界の戦士から地球の防衛を託された武野小学校五年一組の戦いを描く、小学生をターゲットにしたロボットアニメーション。戦いを通して正しき心を成長させる子供達にスポットを当てる。
参加希望者は詳細をよく読み、希望届けに記入の上、締め切りまでに届けを出すこと。
☆演技指針☆
聖獣防衛組:魔獣界へ行く
魔獣界:それぞれの目的を果たす
★新設定
魔獣界への道:聖獣界の力によって地球から魔獣界へと進む手段が得られる。
☆専門用語☆
・聖獣:聖獣ブレスに封じられた聖獣界の戦士。正義の心によって具現化し、動物をかたどったロボットになる。心の力が弱ければ弱体化、悪ければ召喚さえ出来ない。子供達はブレスで指示を出し、遠隔操作する。大ダメージを受けた時は、数日の修復期間を要する。
・司令室:教室が変形。瞬間移動装置など、さまざまな機能がある。
・聖獣合神:司令室にある宝石を核として、それぞれの聖獣を合体させる。各部分の制御が必要なため、生徒達がコクピットに乗り込む。
それぞれの聖獣が合体後どの身体の部位になるかは、操縦者の意思による。
頭部になった聖獣の操縦者がメインパイロット。その聖獣の能力に準じた強力な必殺技を、一度だけ使える。
・魔獣:聖獣と同じ獣型。この状態ではブレスによる遠隔操作。
・破壊獣:コワ・エネルギーから作られたモンスター。人々を怖がらせてコワ・エネルギーを吸収、徐々に巨大化していく。
・破壊魔獣:魔獣が破壊獣を取り込むことによって人型に変形した姿。聖獣よりも一回り大きく、強力になり、魔獣の必殺に加え、破壊獣の特殊能力が使える。エネルギー制御が必要なため、魔獣界人が実際に搭乗して動かす。
☆希望届け☆
1、希望役(いずれか)
・武野小・五年一組の生徒(前回出演者は同じ役柄が望ましい)
・魔獣界の戦士(同上)
・その他、前回担当脇役など
2、やりたい役柄
・名前
・性別
・外見(簡潔に)
・長所(一言で)
・短所(一言で)
・聖(魔)獣(獣人種族をモデルにしているので、その範囲で決定する事)
・必殺技(一つ)
3、破壊獣
・名前・外見・特殊能力・弱点
今回は全て自由に決定可。
●リプレイ本文
春野 ウララ(天然ボケ 犬聖獣サイレント・ドッグ) ☆島☆キララ(fa4137)
羽田 涼子(活発 鷹聖獣バーニング・ホーク) RASEN(fa0932)
昴・A・栞(委員長 猫聖獣ワイルドキャット) 槇島色(fa0868)
大高屋 亮(ガリ勉 ユニコーン聖獣モノケロス) 藤拓人(fa3354)
カレンスキー(ナルシスト 狼魔獣ケルベロス) ディノ・ストラーダ(fa0588)
ペギリーフ(自称天才策略家 小鳥魔獣オキノタユウ) 各務 英流(fa3345)
セシューム(妖艶 竜魔獣ドラグーン) 星野 宇海(fa0379)
アイーダ(物静か 大熊猫聖獣アイニー) 笹木 詠子(fa0921)
★
闇の中に、女性が一人佇んでいる。何かを待っているかのように、じっと暗闇に目を凝らす。やがてその方向から一人小太りの女性が歩いてきた。待っていた相手を見つけると、気軽に片手を上げる。
「おぉ、姉ちゃん!」
「姉ちゃん! じゃないわよ!」
セシュームは、妹ペギリーフを頭ごなしに叱りつけた。
「あなた、ハザードに協力するなんて本気?」
「あやつが我輩の天才的な頭脳をやっと理解したのである!」
「要するに脅しが怖かったのね」
セシュームは呆れてため息をつく。図星を指されペギリーフは顔を赤くした。
「そ、そーいう姉ちゃんこそ、全開バリバリで協力しているではないか!」
負けじと言い返すと、セシュームも一瞬言葉につまり、何か悩むように目を伏せた。
「あれは‥‥本当の私ではないわ」
「なーにを訳の分からん事をっ! どー見ても姉ちゃんだったぞ!」
「ケンカしてる時間はないの」
ぴしゃりとセシュームは話を切った。その下からゆっくりと黒い霧のようなものが競り上がってくる。セシュームの表情に焦りが刻まれる。
「とにかくあなた、ハザードのいいように使われたくはないでしょう? なら、立場を利用してぎゃふんと一泡吹かせてやりなさい!」
言う間にも黒霧はセシュームを飲み込んでいく。いいわね、絶対よ! と念を押す声だけが暗闇の中に響き――
突然のお尻に衝撃が、ペギリーフを闇の中から引きずり出した。痛みに悲鳴を上げたその場所は、よく知った専用の研究室。彼女は座っていた椅子ごと床に転がっていた。
「ゆ、夢‥‥?」
嫌にリアルに残る情景に状況把握が追いつかないでいたが、視界に冷たい目で見下ろすアイーダが入ると、一気に目が冴えた。
「ハザード様の御身を預かっておきながら‥‥」
「こ、これは過酷な頭脳労働の代償である! ほれ、これを見るである!」
反射的にそう言い返すと、起き上がってデスクに置いていた紙をアイーダに突き出した。ちょっとよだれが付いているものの、それは人型ロボットの設計図だ。
「ハザード専用のロボ『マジュウオー』! 天才的な我輩の頭脳が、これを作れと叫んでいるのである。神を取り込み、この機体に乗れば、この世に怖い物など何もなくなるである! 栄えあるハザード様の未来の為に我輩は‥‥って、あれ?」
いつの間にかアイーダは部屋の奥への透明な円柱のカプセルへと歩み寄っていた。その中は黒い液体――コワ・エネルギーに満たされ、ハザードが身を横たえて眠っていた。カプセルには何本ものパイプやコードでカプセルと繋がって、様々な機械に接続されている。慌ててペギリーフはアイーダに駆け寄る。
「アーク・ゴーン様と同調するには、純度の高いコワ・エネルギーを保有せねばならないと分かった。これは人工的に高純度コワ・エネルギー体にするための装置。現在の進度は五割弱で――」
「アイーダ様。冥王星付近に聖獣が現れました」
アイーダの魔獣ブレスから、不意に抑揚のない声で通信が入る。似た調子でアイーダもまた返事を返し、作戦司令室へと向かう。退室ざま、アイーダは一度ペギリーフを振り返った。
「私はハザード様より総司令を預かっている。不用意な真似をすれば、命令どおり、斬る‥‥」
ドアは自動で閉まり、研究室には静寂が訪れる。昼寝にはもってこいの静けさだったが、ペギリーフはそんな気分にはなれなかった。手元の設計図に目をやる。
「姉ちゃんの夢枕‥‥ぎゃふん、か‥‥」
★
邪神復活が迫る中司令室から一歩も動けないでいた。聖獣界王女であるウララが『司令室から宇宙へいける』と教えてくれたのはいいものの、肝心の方法を知らなかったからだ。
ここ数日、放課後を利用してずっと司令室に篭りきりだが、メインコンピュータはだんまりを決め込んだままだ。
そんな苛立たしい日々を破ったのは、栞の堪忍袋の緒が切れた音だった。
「いい加減に、しろ!!」
栞がメインコンピュータを思い切り殴った途端、凄まじい早さで何かの処理を始めたのだ。気付いたら揺れと轟音が周囲を支配し、学校から切り離された教室と時計台は宇宙空間に飛び出していた。
今まで青空だった窓の向こうは、空気の帳を引き払った、瞬きのない本当の星の輝きが無数に散らばっている。
亮はゆっくりと教室を見渡す。塾で習っていた事が、実際に目にできた事に一種の感動を覚えていた。と、芋づる式にもう一つの知識を思い出して、亮は慌てた。
「窓、密閉しないと真空が入ってくる!」
一人右往左往する亮を、ウララがやんわりと否定する。
「それは、宝石の力でバリアを張ってるから大丈夫。でも‥‥」
ウララは非常用に持ってきたリュックを開け、中身を取り出し始めた。ぬいぐるみや漫画に混じり、お菓子がいくつか出てくる。
「食べ物‥‥足りるかな?」
量にして、遠足のおやつ程度。みんなは顔を見合わせ、その視線を一斉に栞に向けた。 ほとんどの皆は家に帰らずに作業をしていた。当然、宇宙行きの用意なんてしていない。
「わ、私だって‥‥急にこんな事になるとは思っていなくて! その‥‥ごめん」
偶然とはいえ、急な起動を引き起こしたのは自分だ。栞は素直に頭を下げる。根に持つ性格ではない涼子はすぐさま笑顔に戻った。
「まー、事故みたいなもんだしね。お腹が空かない内にハザードとっちめて帰ればいいだけよ! 魔獣界までのワープなんて簡単でしょ?」
「うん、でも‥‥」
「また『でも』? 何かあるっての?」
涼子の言葉を遮るように、激しい警報が司令室に響き渡った。聞き馴染んだ、魔獣界の反応だ。はっとするみんなの目の前、星を飲み込む黒い光が唐突に現れる。
『地球の聖獣ごときが、魔獣界の領域に近づくとは‥‥』
光の後には、三体の魔獣――牛型と猿型、そして大熊猫。大熊猫の魔獣を駆るのは、魔獣界に洗脳を受けた防衛組、アイーダだ。
『ハザード様が神の御力を手に入れるまでは、ここより先には行かせぬ』
知っている公恵の物静かな印象はそのまま、しかし大人として成熟したアイーダの声音が、魔獣から響く。
涼子と栞はブレスを構えた。ウララは二人の動きを見るなり青くなる。
「た、戦うの‥‥? 相手は公恵ちゃんだよ?」
「戦うんじゃない」
「連れ戻しに行くの、首に縄つけてでもね!」
ほぼ同時に二人から答えが返ってきた。地球で相対した時は、公恵を取り戻す事が出来なかった。二度目は許されない、二人はそう思っているのだ。
「多分‥‥公恵さんも、待ってると思うんだ。でも、辛いなら‥‥無理はしないで」
亮は優しく声を掛け、自分もブレスを構える。三人は同時に、聖獣召喚を叫んだ。
(「あれ‥‥?」)
亮の脳裏に再び塾の授業風景がよぎる。宇宙は無重力空間である。降り立つ大地もない。そんな場所で果たして聖獣はまともに動くのだろうか?
『行くぞ!』
栞が掛け声を上げると、ワイルドキャットは一直線に駆け出した。バーニング・ホークと、少し遅れて召喚されたサイレント・ドッグも続く。
教室と同じく――心配する必要はなかったらしい。
『来たな‥‥』
佇んでいた大熊猫魔獣シャオニーが腕を振るう、配下の魔獣が動く。牛魔獣は聖獣に向かって一直線に、猿魔獣は上方向へと駆け出した。遅れて、シャオニーも動き出す。
移動できない心配はなかったが、地面の制約のない分、どんな方向にも移動できるようだ。
『気をつけて! 地上の戦いとは同じようにいかないよ!』
『上からの攻撃はこっちの専門よ!』
バーニング・ホークの背を狙ってきた猿魔獣を、わずかの差で旋回して避ける。
宇宙での魔獣たちの動きは、経験の差もあってかみんなよりも機敏だ。アイーダが命じるたび、一糸乱れぬ動きで聖獣たちを翻弄する。まるで操り人形かロボットのような動きだ。みんなはじりじりと司令室の方へと後退させられていく。
何より不利なのは、相手の指揮官を攻撃できないことだ。しかしシャオニー両手の爪は、最も鋭利に防衛組を襲う。
『公恵!』
『そんなトコにいないで、帰ってきなさいよ!』
『お前達の知る、飯田公恵はもう‥‥死んだ』
栞や涼子の呼びかけにも、聞く耳さえ持たない。のしかかるように振り下ろされる一撃をワイルドキャットは避け、大きく距離をとる。
『どうした、攻撃しないのか?』
『お前は、仲間だ』
シャオニーの向こう、ブレスを覗いているであろう、アイーダに向かって静かに栞は言った。
魔獣界の司令室で、アイーダは一瞬立ち尽くした。見透かされた気がする。
『忘れたと言うのか? 転校してきてから、今まで一緒にやってきた事‥‥勉強も、遠足も、戦いも‥‥あの時、PTA会長に誓った言葉も‥‥』
『あんたが‥‥皆がそろってなきゃ、防衛組始まんないのよ! 何より、あたしが嫌!!』
『戻ってきて‥‥公恵さん!』
『公恵ちゃん!』
その心の中に、一つの風景が浮かんだ。武野小学校。崩れる下駄箱。みんなや聖獣と共に戦った。その記憶はおぼろげだが、懐かしい。
(「なんだ――不思議に、安らぐ‥‥」)
不思議な感覚をアイーダは辿って行く。しかしその途中、心の中で『誰か』が甲高い声で笑った。
『ココカラ サキ ハ ロウ ノ ナカ! クククク!』
(「な――!?」)
『閉門! ヘイモーン!』
からかうような口調と共に、大きな門が閉ざされる音が響く。同時に思い浮かんでいたその記憶は、アイーダの心の中から遠のき、闇色に塗りつぶされていく。
残るのは、暗闇になった風景。そして、『誰か』の笑う声。
自分を取り囲むように、しかし直接聞こえないように隠された、嫌な笑い。
『嫌ね、飯田さんたら‥‥』
『名前出さないでよ、聞こえちゃう!』
クスクス――
それは心の中に永遠に封じてしまいたい、苦い記憶。
『嫌、やめてーッ!!』
瞬間、シャオニーは全身から黒い衝撃波を放った。それは敵も味方も関係なく、全てを吹き飛ばした。
『公恵‥‥!?』
『仲間‥‥防衛組‥‥それが何‥‥』
たじろぐみんなに、恐ろしいほど抑揚のない声で、アイーダは呟く。
『私は‥‥そうして信じるたびに、裏切られ、傷つけられてきた。もう、何も信じない‥‥。何も!』
魔獣は再び衝撃波を放った。様々な装甲が真空に散らばる。
『消えてしまえ、『仲間』など‥‥』
その時、司令室内に再び魔獣界勢力接近の警報が響き渡った。アイーダ達の時のように黒い光の中から巨大な宇宙戦艦が目の前に現れる。船首にドクロを頂いているその戦艦に、防衛組は見覚えがあった。
『あれ、魔獣界の皇子の戦艦‥‥』
『違うな。この艦は宇宙海賊赤い薔薇が旗艦ローゼンメイデン。そして私は船長の薔薇騎士』
と、やはり聞き知った声が戦艦から答えてきた。
『放浪せしる聖獣よ、かつての仲間と今刃を交えるのは得策ではない。なぜなら彼女の真実は、恐るべき破壊獣によって封印されているからだ』
「皇子、そのような事を聖獣界に‥‥宜しいのですか?」
ローゼンメイデン内、カレンスキーに配下の一人が訴えた。カレンスキーの表情は厳しく、スクリーンに映る司令室を眺めている。
その情報はハザードがアーク城を占拠したとき、何とかその場を脱してきた配下たちが実際に目撃したものだ。
雲か綿で城を象ったようなその破壊獣は、魔獣界人を捕らえ、その頭から靄のようなものを引きずり出しては門に似た口から食べていく。食べられた魔獣界人は人形のように意思を失い、さらにハザードによって洗脳を施された。
いま魔獣界にいる人間のほとんどはこの為にハザードに従っており、カレンスキー派ともいうべき兵士達は現在、この戦艦を動かす十数名以外にいない。
カレンスキーは手元のボタンに手を沿え、兵士に背を向けたまま言う。
「もしも再び裏切るなら‥‥その時、最大の力を持って征するのみ」
そして、ゆっくりとボタンを押し込んだ。
同時に三度アラームが鳴り響く。
「今度は――獣王転移とよく似たエネルギー反応だ‥‥ローゼンメイデンから広がってきている」
「それって、どういうこと?」
「周囲を巻き込んで、どこかにワープしようとしているみたい‥‥」
やがて窓からも肉眼で白い光が迫ってくるのが見えはじめる。
混乱する防衛組に、カレンスキー――薔薇騎士の声が届いた。
『少女を助けたくば冥王星へ行くことだ。そこに破壊獣がいる』
言葉が終わらないうちに司令室は光の中に飲み込まれていった。
★
セシュームは一人、暗闇の中にいた。アーク城の水盤の中、コワ・エネルギーに満たされ、巫女としての核を成長させているのだ。核にエネルギーが流れ込んでくるのと共に、アーク・ゴーンの意思が徐々に身体を縛っていくのを感じる。セシュームは最後の力を振り絞り、ペギリーフの夢枕に立ったのだ。
(「私の思考も、もうあまり持たないわね‥‥ペギちゃんが、この復活をなんとか阻止してくれれば――」)
セシュームの思いを打ち消すように、アーク・ゴーン叫びが、エネルギーに満ちた空間を振るわせた。