六金羅威武!―大阪―アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
外村賊
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
0.3万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
02/12〜02/18
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●本文
割れんばかりの歓声――――――
スポットライトが降り注ぐ!
DIVE!
SHOUT!
HEAD BANG!
HARD MELODY AND COOL SAUNDS! and so on!!
暗いホールに差し込むのは、色取り取りのスポットライト。激しく交錯する光の乱舞の中、搾り出し、奏で出す一音に全てを賭けるバンドメンバーの影。
光と音に狂ったように、ステージの上で踊り続ける。
観客たちは心ここにあらず、弾き出される激音に身を任せ、叫び、ひたすら空へジャンプし続ける。
脳髄を突き抜ける『音』と言うモノの下に、全てが一つになる。
全国津々浦々の有名ライブハウスをどさ回り、将来溢れるまだまだ無名なROCKER達の、血気盛んなライブに殴りこみ!
今宵、聴衆を虜にした一つの音だけに、栄冠は輝く。
真なるRock’n EGGの証、六金を手に入れるのは誰か‥‥
司会を務める加藤コースケは、真っ直ぐあなたに指を突きつける。
「全国のRock’n EGG達よ! 夜更かししてテレビなんか観てないで、ライブハウスへ行けぇ!!!」
未来のロックスターは、君だ!
★☆★☆
深夜番組『六金羅威武!』参加者募集
一般人の観衆の前でライブを行い、最終アンケートにおいてもっとも人気のあったグループ、または個人に副賞を差し上げます。
参加資格:前途有望なロッカーの卵。グループ、個人問わず。
副賞:六金(六円)
演奏時間:二時間÷参加グループ数
●会場:HOLLY
ステージの広さ:7m×7m
音響:普通
照明:普通
客席:オールスタンディング 100名収容
主な客層:10代〜20代男女
特徴:近くに高校・大学があり、学生たちで賑わうライブハウス。技巧よりも雰囲気やパフォーマンスを求めて来ている者が多い。
●リプレイ本文
ロックとは、世の中の常識をぶち破るための爆弾である。こんなテレビ的なルールに沿ってどうすると言うのか。
ルールに決められるな! てめぇらのルールを見せつけろ!
We are Rock’n LIVE!!!
司会の加藤コースケがマイクを握り締め、いつものセリフで観客を盛り上げる。彼の腰ほどまでの台に、『?』と書かれた箱が置かれている。
「さあ、今日もゴキゲンなRock’n EGG達が集まったぜ。今回は某参加者の提案により、クジ引きで出演順を決定する! 裏方さんは大変だと思うが、何か面白いので採用だ! 裏方さん、そこはロッキンな反骨精神で一つ頑張ってくれ! ‥‥と言うことでトップバッターはこのEGG‥‥!」
コースケは勢い良く箱の中に手を突っ込み、出演者の名の書かれた紙を取り出す。
そこに記されたのは――
激しいサウンドがホールを包み込んだ。
入り乱れるスポットライトの中に立つのは、黒基調に赤のアクセントを加えた出で立ちの、クールな雰囲気の女性だ。芯の強さを垣間見せる、不良のような印象だ。
彼女の雰囲気に合って、歌詞もまた力強い。激しいナンバーを三曲続けて終えた時、わっと歓声が上がった。
彼女はそれに手を上げて応え、ステージの前のライトに片足を乗せて、身を乗り出す。
黒いレザージャケットがライトの白い光を反射する。
「緋桜 美影(fa1362)だ。よく来たな」
軽く息の上がった声。長い前髪の下から、切れ長の青い瞳が客席を見下ろす。そうすると、暗がりの中の観客の顔も、ある程度見分ける事ができる。
「俺が参加したのは名誉の為でも、六金のためでもでもねぇ。このステージが俺を存分に遊ばせてくれそうだったからさ‥‥あんたらだって、そうさ。楽しみに来たんだろ?」
じろりと、一人一人の視線と合わせる様に見渡す。客席は静かだ。挑発的な美影のセリフに、緊張感さえはらんでいる。
それはジェットコースターを滑り降りる前の雰囲気に似ている。
刺激を待っているのだ。
「ここに俺がいる以上、俺のステージだ。俺流に楽しませてもらうぜ!」
ドラムがスローロックのテンポを刻む。落ち着いたバラードに使われるテンポだ。美影の声を聴かせる為の選曲だ。五曲目へと繋いで、観客達との距離を近づける。
「これでラストだ。六金用に作ってきた『アイノコトバ』‥‥激しいぜ、しっかりついて来なよ!」
激しいテンポの曲が始まる。
お淑やかに控えめなんて旧世紀 時代は女中心にして回ってる
きついカウンター食らう前に 少しはやる気みせなよ
ヤローども!
テンポに身を任せ、観客は飛び跳ねる。美影はステージの際を歩き回り、伸ばされる手にタッチを返し、受ける視線を見返す。
「愛してる?」
そんな事イチイチ言わなくたって気持が通じてる
なんてありきたりな台詞 吐いてる暇があるなら
一言言えよ 「愛してる!」
●
続いてステージに上がったのは、四人組。てんでバラバラな衣装に身を包んだグループだ。
その名も『MIXED BAG』、意味はごちゃまぜ。六金名物の、参加者によるセッションである。
彼らが最初にたたき出した音は、美影に劣らぬ激しい曲調。マイクを握るのは線の細い青年。
白鳥沢 優雅(fa0361)が前に出ると、整った優雅の容姿に、一部の女性が黄色い声を上げる。優雅はそちらに爽やかな笑顔を投げかけ、第一声を放つべく息を吸い。
立て 叫べ 魂のボルテージ上げて!
テメェのシャウト聞かせろや 苦しみ全部吐き出せ!!
観客はどよめいた。優雅の外見と歌詞とのギャップに驚いたようだ。TVでよく流れるメジャーバンド達の恋愛の歌に慣れている学生達は、面食らってしまったらしい。しかし美影で十分に暖まっていたのもあって、シャウトする優雅の音に乗る。
そして 世界の栄揚栄華全部手にいれちまえ
さぁ泣いてるヒマなんて無ぇぜ Let’s Party Time!
「Thank you!!」
右手の人差し指を高らかに掲げて、キメる優雅。間髪をいれずに次の曲に入る。流れる曲は短調の和風めいたメロディーだ。言うならば、演歌をロックに仕立て直したような。
優雅に代わって前へと現われたのはギターを兼任するアマラ・クラフト(fa2492)。褐色の肌に緊張をはらませ、顔が強張っている。
少女独り 見つめているのは
煌びやかな 美しき花魁
少女は見惚れて 足を踏み入る
そこは遊郭 遊女(おんな)の戦場(いくさば)‥‥
インド出身の彼女の喉から、日本特有の語調が紡ぎだされるのは不思議な感覚だ。それも演歌に通ずる拳の回った歌い方だ。アマラはただ一つの思いを胸に、もてる精一杯をもって歌った。
「‥‥私は‥‥故あって演歌の道に足を踏み入れてしまったけれど‥‥。本当はギターを弾きたい! ロックを歌いたい!! もし駄目ならギタリストとしての私は引退‥‥歌って構わないなら‥‥ずっと‥‥ロックを歌いたい!!」
曲の終わりに、アマラはその思いを観客へとぶちまけた。彼女に向かい合う人々は、しんと静まった。
会場を見渡すが、反応が返ってくることは無い。
「やっぱり‥‥駄目なのか‥‥」
アマラは答えを悟り、肩を落とした。
やはり私の歌は皆に受け入れられないのだ――
その時、静まった会場にバスドラムが響いた。ドラムセットに腰をすえるのは、旺天(fa0336)である。
「こらー。駄目じゃないッスかお客さんの前でしょげちゃー」
振り返ったアマラを、スティックで旺天が指す。
「俺っちらは自分が最高に楽しい、最高にいい音をお客さんに聴いてもらわなきゃいけないんスよ?」
「そうだぜアマラ! 自分に自信がもてなきゃ、輝くROCK ROADなんざ見えてきやしねぇぜ!」
スタート前の爽やかさはどこへやら、自曲の雰囲気に引きずられたままの優雅がズビシ、とアマラを指差す。
「自分が楽しい‥‥自信‥‥」
二人の言葉に、何かを感じ取って、アマラはその言葉を繰り返す。キーボードの空野 澄音(fa0789)はにっこり笑いかけた。
「ね、皆で、楽しく行きましょ?」
会場のほうからもちらほら、がんばれー、などと声が掛かる。
サポートベースとしてステージに上がっていたコースケがわざとらしく咳払いをする。
「えー、ロックの先輩である俺から一つ意見を言わせてもらうならばー」
言葉をいったん切り、問いかけるように会場を見渡す。
「悩めるギタリスト・アマラの将来を決定するのは、お前等のアンケートの書き方次第とゆー事だ! 気合入れて選ばねぇと、帰りにアマラにピックで背後から狙われるぞ!」
「そ、そんな事‥‥」
「ってーか、アマラへのアドバイスじゃないんスか!?」
真面目に受け取って焦るアマラと、思わず突っこむ旺天である。真面目な空気になりつつあった会場が、一気に和んだ。
そこからMIXED BAGはメンバー紹介へと入り、後半の曲へ流れていく。
「次は私の歌、聴いてくださいね♪」
澄音が前に出る。明るい調子の『風花』。冬の街に吹く風をコーラスで表現したという、遊び心の混じった曲だ。
続く旺天のバラードロック。さすがに歌いながらでは普段通りに演奏できないが、日陰に回りがちなドラムを十分に目立たせた。
そして最後は再び澄音の、ポップな曲調のバレンタインデーの歌。半獣化している澄音の歌は、若手とは思えない技量をもって響く。
ミルク?ビター?
それともスウィート?
あの人の好みは何かしら
「‥‥いけない焦げちゃう!」
「頑張れーっ」
歌詞の中のセリフに、彼氏役に見立てられた優雅が合いの手を入れる。やはり曲調に性格が流されるのか、仕草はすっかりバレンタインデーに翻弄される彼氏である。
そして当日、そうその日
夕暮れにチャンス見つけたの
胸に抱えて駆けてゆく――
●
040 While you dozed...
取りを飾るのは『Larimar』。全員が黒い衣装でまとめた男性グループだ。英詩が紡がれるのは、ハードな曲調ではあるが、どこかで聞いたクラシック音楽――『G線上のアリア』というタイトルまでは思い浮かばないまでも。全員が聞き知っている曲とあって、観客もすぐに乗ってくる。続く『memento』もテンポの早い激しい曲。失恋の情動をそのまま歌の叫びに代えて、観客を煽っていく。
「さよなら」の言の葉で
すべてを
思い出に変えて
ヴォーカルのジャンプと共に、すっぱりと曲を締めると、共に歓声が上がった。
「今晩は。大阪と言う事で、ライブ前に有名なたこ焼きのお店で並んで食べてきたCarno(fa0681)です。オススメのたこ焼き屋をアンケートに書いてもらったら、後でメンバーで行こうと思います♪」
ご当地ならではの話題に、観客は好意的などよめきを返す。Larimarは親しみやすさを重視して演出を考えてきているのだ。
「メンバーは、ヴォーカルCarnoと愉快な仲間達」
と言った途端にギターとドラムが抗議を申し立てるように鳴り響く。会場に笑いが起こった。Caenoは悪びれた風も無く少し肩をすくめる。ドラムはハイハットシンバルを鳴らしブーイングを表現し続けている。
「えー、何だか後ろの人に不評なので、改めて‥‥ドラム海鳶(fa1249)!」
待ちわびたかのように、海鳶は一通りかき回すようにドラムを鳴らし、自己アピールをする。
「ギターKanade(fa2084)!」
「よろしく〜!」
寡黙な雰囲気の海鳶とは打って変わり、軽くソロを引いた後Kanadeは客席にウインクを投げ、手を振る。――その先にはほぼ確実に女性の姿がある。
「それでは『D/P』『berry』そしてラストの『Monopoly』まで、三曲続けてお聞きください」
三曲の流れもまた、考え尽くされたものだ。MC前の曲と同じ速いテンポの歌を続け、berryの最後でスローダウンして最後のスローペースのMonopolyに繋げる。
もちろん、観客へのサービスも忘れない、率先して近付き、差し伸べられる手に触れ、また動きに派手なパフォーマンスを加える。
曲をイメージした、ステージの上に白い花びらが降る。
Kanadeの丁寧なギターソロから入り、ベース、ドラムと音を加えていく。
薄明かりの中で零したキミの涙を舌でぬぐう
温まりゆくぬくもりは心地よくて
震える吐息は甘く衝動を誘われる
曲が終わり、Kanadeが胸にしていたコサージュにキスをして、観客の方へ投げ入れる。
一層大きな歓声が、三人を包み込んだ。
●
そしてアンケート記入時間しばし――
ステージ上に集合した参加者の前に、コースケが立つ。
「今回は結構接戦だった。その中を勝ち抜いたのは――‥‥」
難波のたこ焼き屋『元祖☆タコ大』!!
ライブ中の中で最も静まり返った瞬間。関西人はボケに厳しいのである。
「あー、嘘。いや、アンケートで一番多い記入だったのは確かだが。Larimar諸君、ちゃんと行くように」
「あ、はい‥‥それはモチロン」
突然振られて、Carnoはしどろもどろに答える。
「では改めて‥‥トップは、『MIXIED BAG』だっ!」
「ええーっ!?」
予想していなかったのか、本人達が一番驚きの声を上げる。
「今回は個性的なメンツが揃って、なかなかハデだったからな。『インパクトが』とか『面白かった』とゆー意見が多かった。他の組もバンドカラーがきっちり出てて、良かったんだがなー」
そしてメンバーのそれぞれに、軽ーい中身のご祝儀袋が手渡されていく。勝利の証の六金だ。
最後に受け取った旺天は、そのまま番組の締めに移ろうとするコースケの腕をがっしっと取った。
「コースケさん、前出場した時、六金取ったら、何でこのしょぼい賞金が続けられてきたか教えてくれるって言ったッスね。今こそ教えてもらうッスよ!」
その時、旺天にはコースケの目に予断ならぬ何かが走った‥‥ような気がした。
「この番組特製六金‥‥手に入れた者はその後人気が出ると、もっぱらの『噂』なのだ!」
「まじっスか!?」
「今は人気のアイツもコイツも、この六金から伝説が始まった‥‥って、『噂』だ!! だからTVの前のロッキンエッグ達も、是非参加希望に応募してくれ! 募集要項は番組の最後に! ホームページからも受け付けてるぜ!」
『噂』と言う単語を強調して言う辺り、何だかきな臭く思うのは旺天だけだろうか。コースケは事務的なセリフを終えると、さっと手を掲げ、締めに入る。
「それでは! またどこかのライブハウスで会おう!」
盛大な拍手と共に、今回の六金羅威武も幕を閉じる。