ヒャクジュウオー!アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 外村賊
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 1万円
参加人数 8人
サポート 1人
期間 05/01〜05/05

●本文

 聖獣界の戦士、巨大ロボット百獣王から地球を守る使命を託された、武野(ぶの)小学校五年一組のメンバー達。
 町で暴れる破壊魔獣を、とまどいながらも力をあわせて倒し、武野町には平和が戻った。

 数日後。

 金曜日の五時間目は、学級会の時間だ。今回の議題は『聖獣防衛組について』。
「うーん、あの時は気絶しててぜんぜん知らなかったんだが、あのロボット、本当にお前らが動かしてたのか?」
 ニュースの映像などでロボットの戦闘は見た先生だが、自分の生徒がその操縦者だというのは、まだ半信半疑だ。
 そんな先生をよそに、生徒達の間ではさまざまな意見が飛び交う。
 防衛組として、今後どうするべきか? そもそも自分達がこんな危ないことをやっていいのかどうか。
 激論が交わされる中、とつぜん教室の扉が勢いよく開かれる。
 ビックリしたみんなの視線を浴びながら、つかつかと入ってきたのは。
「おばさん達、誰?」
「PTA会長です!」
 真ん中のつりあがった眼鏡を掛けたおばさんが名乗った。
「こんな子供に、あんな化け物と戦わせるだなんてどうかしてます! ああいうことは大人に任せて、あのロボット達を預けなさい!」
 会長の両隣で副会長の二人が、何度も深くうなずく。
「ええっ?」
「えーじゃありません! 教育委員会の許可は得てあります! さあ、早く出しなさい!」
 学校中に響き渡りそうな勢いで、会長が怒鳴る。
 その隣で、副会長の二人はやっぱりうんうんうなずくのだった。



 魔獣界の悲願。
 それは、封印されし邪悪なる神、アーク・ゴーンを復活させ、全宇宙を完全に支配することだ。
 その為には、『コワ・エネルギー』が大量に必要だ。

 コワ・エネルギーは、魔獣界の物質の力を、大きく増幅させる。アーク・ゴーン復活のほかに、『破壊獣』というモンスターを作り出すことも出来る。恐怖をかき立てる物事を成分として作らる破壊獣は、その特殊能力で人々を恐怖に陥れて、さらに大量のコワ・エネルギーを作り出す。コワ・エネルギーを吸ってさらに成長した破壊獣は、魔獣界の戦士達が操る『魔獣』と『破壊合体』することによって、それを強大な人型兵器に変形させることも出来るようになる。
 こうしてコワ・エネルギーを最大限に利用して、魔獣界はさまざまな惑星を侵略してきたのだ。

 今、地球にその恐るべき牙が剥かれたのである。

 地球は宇宙でも辺境の星。破壊魔獣があればすぐにでも侵略できるはずであったが、地球上に敵である聖獣たちが予想を上回る数で出現したことで、魔獣界の予定は大幅な乱れが生じていた。

 これまでも散々侵略を邪魔してきた聖獣界の戦士。彼らに破壊獣なしで戦いを挑むことは、百戦錬磨の魔獣界人でも無謀だ。
 そのために、魔獣界人は予定よりも早く、恐怖探査機『コワ・ミツケラー』を散布することにした。これで恐怖の元を探査・分析し、破壊獣を作り出す原料とするのだ。
 このコワ・ミツケラーを載せた散布機を発動させるには、設置してから数時間を要する。その間に聖獣に見つけられてしまっては、元も子もない。

 この事態を防ぐ任務を与えられた戦士がいた。
 戦士には、前回の戦闘データから得られたコワ・ミツケラーが与えられた。現在唯一、地球の恐怖データが詰まったミツケラーだ。

 真っ暗な空間の中に、巨大な水盤が浮いている。そこに湛えられた黒い液体こそ、コワ・エネルギー。全宇宙からここへ、恐怖の力が流れ込んでくるのだ。

「偉大なるコワ・エネルギーよ。地球の恐怖を取り込み、新たなる破壊獣となれ!」

 戦士は持っていたコワ・ミツケラーを水盤の中に落とす――

 ゴゴゴゴゴゴ!

 途端に水盤が震えだし、コワ・エネルギーが波立つ。一番大きな飛沫が柱となり、その中から数十センチのモンスターが現れる。
 ボロボロに切り崩されたビル――今にも崩壊してしまいそうなそれに、手足と顔が付いている。
「破壊獣ホーラクーよ。共に地球に赴き、コワ・ミツケラーを無事発射させるのだ!」
『ガララーッ!』

☆★☆★☆★
『無敵聖獣 ヒャクジュウオー』第二話・概要

ヒャクジュウオーとは‥‥地球征服をたくらむ魔獣界と、聖獣界の戦士から地球の防衛を託された武野小学校五年一組の戦いを描く、小学生をターゲットにしたロボットアニメーション。戦いを通して正しき心を成長させる子供達にスポットを当てる。

 参加希望者は詳細をよく読み、希望届けに記入の上、締め切りまでに届けを出すこと。

☆演技指針☆
聖獣防衛組:聖獣防衛組としてクラス全員が、魔獣界と戦うことを誓うことが今回の根幹。これによって教室が司令室に変形するきっかけになる。
魔獣界:『コワ・ミツケラー』の発射を、防衛組に気付かずに発射させることを目的として行動。

☆専門用語☆
・聖獣:聖獣ブレスに封じられた聖獣界の戦士。正義の心によって具現化し、動物をかたどったロボットになる。心の力が弱ければ弱体化、悪ければ召喚さえ出来ない。子供達はブレスで指示を出し、遠隔操作する。
・魔獣:聖獣と同じ獣型。この状態ではブレスによる遠隔操作。
・破壊獣:コワ・エネルギーから作られたモンスター。人々を怖がらせてコワ・エネルギーを吸収、徐々に巨大化していく。
・破壊魔獣:魔獣が破壊獣を取り込むことによって人型に変形した姿。聖獣よりも一回り大きく、強力になり、魔獣の必殺に加え、破壊獣の特殊能力が使える。エネルギー制御が必要なため、魔獣界人が実際に搭乗して動かす。

☆希望届け☆
1、希望役(いずれか)
・武野小・五年一組の生徒(前回出演者は同じ役柄が望ましい)
・魔獣界の戦士(同上)
・PTA会長(今回のみ)
・先生(主人公格ではあるが、防衛組・魔獣界人よりもスポットは当たらない)

2、やりたい役柄
・名前
・性別
・外見(簡潔に)
・長所(一言で)
・短所(一言で)
・聖(魔)獣
・必殺技(一つ)

3、破壊獣
・名前:破壊獣ホーラクー
・外見:ボロボロのビルに手足が付いている
・特殊能力:(企画会議で決定)

●今回の参加者

 fa0352 相麻 了(17歳・♂・猫)
 fa0363 風見・雅人(28歳・♂・パンダ)
 fa0868 槇島色(17歳・♀・猫)
 fa0921 笹木 詠子(29歳・♀・パンダ)
 fa0924 谷津・薫(9歳・♂・猫)
 fa3345 各務 英流(20歳・♀・小鳥)
 fa3354 藤拓人(11歳・♂・兎)
 fa3594 黒影 美湖(21歳・♀・猫)

●リプレイ本文

―声の出演―
大高屋 亮(ガリ勉 ユニコーン聖獣モノケロス)‥‥藤拓人(fa3354)
獅堂 吼(熱血 獅子聖獣ブラスト・リオン)‥‥谷津・薫(fa0924)
昴・A・栞(委員長 猫聖獣ワイルドキャット)‥‥槇島色(fa0868)
飯田 公恵(物静か 大熊猫聖獣アイニー)‥‥笹木 詠子(fa0921)
三雲 姫香(噂好き 蝙蝠聖獣ルナティック・バット)‥‥ASAGI

ゴーリキー(怪力単細胞 熊魔獣ギガント)‥‥相麻 了(fa0352)

大隈 六郎(熱血教師)‥‥風見・雅人(fa0363)
大高屋 貴子(PTA会長)‥‥各務 英流(fa3345)



「小学生が、訳の分からないメカで怪獣と戦うなんて、馬鹿げてるザマス! そういう事は、警察や防衛隊に任せればいいザマス!」
 キラーン、とつりあがった眼鏡を光らせて、会長は言い放った。突然の会長の来襲に一番慌てたのは、大隈先生だ。
「こ、これは大高屋PTA会長。まあ、落ち着いて‥‥」
「大高屋ぁ?」
 聞いたことある苗字だ。みんなは一斉に思い当たる人物‥‥クラスメイトの亮に視線を向けた。亮はびっくりしたように、会長のほうを見つめている。
「ママ‥‥!」
「やっぱり‥‥!」
「亮チャマ。あなたは来年、一流私立中学を受験するのザマスよ。こんな野蛮な事をしている暇なんてないはずザマス!」
 ぴしゃりと言われて、亮は俯いた。確かに、それは亮自身も思っていた事だ。
「でも会長さん。このブレスはどうしても取れないんです。私や、他の子も試しましたが、だめでした」
 栞は冷静に、自分のブレスを示してみせる。少し引っ張るが、やはり外れる気配はない。
「どうせ、接着剤か何かでくっつけてるんザマショ。ハサミで切ってしまえばすぐ取れるザマス」
「な‥‥」
 小馬鹿にしたような会長のその一言が、栞の何かをプチっと引きちぎった。
「ンだとこのザマスメガネェ!? この昴・A・栞を愚弄するかァっ!!」
「んまーっ、んまーっ! なんと言う口のきき方! 大隈先生、どんな教育をされてるんザマス!?」
「え、ええと、あの、二人とも、落ち着いて、落ち着いてぇ〜〜!」
 ‥‥うるさいな。
 そんな騒ぎをよそに、公恵は一人窓の外を眺めていた。
 外の景色や物事に思いを馳せるのは、公恵にとって大事な日課だ。
 羽ばたく鳥を追いかけていたその視線が、遠くのビルが傾いだ、その瞬間を見つけた。
 ビルはそのまま、ここまで届くほどの音を立てて崩れ去ってしまった。
 騒がしかった教室が、一気に静まり返る。
「もしかして、破壊獣‥‥!」
「い‥‥行かせないザマスよ!」
 恐ろしい光景に肝を冷やしつつも、会長は頑として譲らない。母親の視線を感じて、亮も細い声で言った。
「そうだよ‥‥僕らはやっぱり、危ない事をしちゃ駄目なんだ‥‥」
「嫌だ!」
 真っ向から否定したのは、吼だ。
「百獣王と約束したんだ、地球を守るって! 大人じゃなくて、オレ達と、百獣王は約束したんだ!」
 叫びながら、吼は入り口に立ち塞がる会長をすり抜けて廊下へと飛び出していった。
 栞達も追いかけようとするが、今度は副会長達もバリケードとなって、すり抜ける隙間が塞がれてしまった。
「吼一人じゃ危険なんです!」
「駄目ザマス。あの子だってきっと途中で警察が保護してくれるザマス。これ以上危険な所に子供を行かせて、迷惑を掛ける訳には行かないザマス」
「‥‥警察や、防衛隊は、この間もやられてたわ。聖獣でないと、町は守れないの」
 静かに席から立ち上がり。公恵は表情の少ない顔ながらも、きっぱりと言い切った。
「ブレスは、使う人を選ぶんです。私達でなければ、聖獣は呼べません!」
 栞や公恵だけではない。五年一組、クラスのみんなが、同じ決意を持って大人を見ていた。ただならぬ強さを感じて、会長は一歩あとずさる。
 ただ一人亮は、そんなみんなの中で一人、俯いて黙り込んでしまっていた。
「‥‥お前らの気持は分かった。亮は、どうだ?」
 生徒達をかばうように、会長の目の前に大隈先生が立ち塞がった。
「亮。自分の気持は自分で決めるんだ。自分に正直に決めるなら、先生は何も言う事はない」
「せ、先生! どういうつもりザマス!?」
 慌てて会長は詰め寄ろうとするが、真っ直ぐ先生に見返されて、たじろいでしまった。亮はやがて、ゆっくり顔を上げた。
「ママ‥‥ごめん。僕。行かなきゃ」
「それが、お前の答えだな?」
「そ、そんな。うちの亮チャマが‥‥」
 先生が確認すると、亮は大きく頷いた。それを見て、会長はへなへなと座りこんでしまった。副会長と先生が、青くなった会長を助け起こす。
「お母さんの事は俺に任せろ。早く行って、吼を助けてやれ!」
 ふらつく会長を、先生達は教室から連れ出していった。残るのは、生徒達だけだ。
「亮、いいのか?」
 栞が訊ねると、じっと会長が出て行った方を見つめていた亮は、こくりと頷く。
「受験勉強は一人でも出来るけど。吼を助けるのは、みんなでじゃないと、出来ないから」
 その時、教室にさっと緑の光が走った。振り向くと、教壇の真ん中が緑色に光っている。
「何‥‥?」
 栞たちが近づくと、光っていた一部分がスライドして、中からレバーが姿を現した。どこかブレスと似たようなデザインで構成されている。
「引けって、事?」
 恐る恐る、栞が、レバーに手を掛ける。
 ガチリ――
 手前に引き倒すと、ぱっと緑の光が目の前に弾けた。教室の真ん中当たりの天井が、レバーと同じようにスライドして、人の頭ほどの八面体の宝石がふわりと降りてきた。
 宝石が光を放つ。光を浴びた教室は、その姿を変えていく。
 黒板や窓は大きなモニターに。机は浮き上がって、中央に集結。天板がひっくり返ると、大型スクリーンへと変わる。
「すごい‥‥司令室ってやつ?」
「これ、吼君?」
 みんなが呆気に取られる中、公恵が教室の後ろのランドセルロッカーを指差す。
 吼のロッカーに見覚えのないシャッターが掛かっていて、そこに聖獣ブラスト・リオンの名と、データが映し出されている。エネルギーのメーターが底をつきかけ、機体のダメージ度も赤い警告が点滅している。
「急がなきゃ!」
「今から行って間に合うのかな‥‥」
 すると、また緑の光が灯る。今度は中央スクリーンに併設されたコンソールのボタンが光っている。亮はコンソールに近づいた。こういう不思議な事は苦手なはずなのに、そうしなければいけないと思った。
 こんな非常識な事、大人じゃ絶対やらないだろうな。
 そう思ったとき、亮の中で、不思議と今まで起こった事に納得がいった。
「‥‥そうか‥‥だから子供なんだ‥‥」
 亮は一つずつ、ボタンを押していく。それとともに、スクリーンが映像を映し出していく。
 まず、武野町の地図が映り、そこに吼のブレスの位置が赤い点で示される。そこが徐々に拡大され、町の住所が表示される。
――次元転送設定完了――
 コンソールのモニターに、そんな文字が表示される。
――コマンド・ワード:獣王転移――
「獣王転移?」
 呟いた瞬間、頭上の宝石がいっそう強く輝いた。
 ふっと、足元の感覚がなくなった。
 視界が緑で埋め尽くされる。
「うわっ、うわわ!?」
 次に耳に入ってきたのは、遠いはずの吼の驚く声だった。
 気がつくと、そこは外で、尻餅をついた吼の姿がそこにあるのだった。
「な、何なんだよお前らっ!」
「ワープしたんだ‥‥」
「わ‥‥ワープぅ?」
「えい、今は説明している暇はない! 皆、聖獣召喚だ!」
 組長・栞の一喝にみんなは一斉にブレスを構えた。
『聖獣、召喚!!』



「ふはははははっ、行けい、へなちょこライオンを食い尽くしてしまえー♪」
 周囲は倒壊して更地のようになってしまっている。その中で、ギター片手に、みかん箱に片足を乗せたマッチョが、マイクを片手に高らかに歌っていた。魔獣界の戦士・ゴーリキー‥‥物凄く、音痴だ。
 しかもその歌は、彼の背後に鎮座している、熊型魔獣のギガントの肩のスピーカーから莫大な音量で響いている。
 目の前には巨大な獅子型ロボ――吼のブラスト・リオンと、破壊獣ホーラクー。体格で劣っているホーラクーが、ブラスト・リオンの装甲を物凄い勢いで食べていた。露になった内部を、ゴーリキーの殺人音波が攻撃し、ブラストリオンはすでに動けなくなっていた。
「聖獣なんてっ♪ イーチーコーろうげほッ、ゲホッ!?」
 心地よく歌うゴーリキーを、突然真っ白な煙が包んだ。
「ゲホッ、折角オレ様が気持ちよく歌ってるのに、ゴホッ、誰だぁッ!?」
 吹き抜ける風が、ゆっくりと煙を吹き飛ばした後には。
 重傷のブラスト・リオンの周囲に、四体の新しい聖獣。
 ルナティック・バットの音波攻撃によって、ホーラクーはゴーリキーの前に叩きつけられた。
『全く、前は一人で突っ走るなっていったくせに。自分はどーなのよぉ』
『しっ、仕方ねーだろ!』
 ミクロ(姫香)になじられ、吼は反抗的に言い返す。
『ごめん‥‥』
 亮が呟くように言った。最後まで迷っていた事が後ろめたかった。
『いいんだよ、こうやって助けに来てくれたじゃん』
 吼は疲れきっていたが、いつものように元気に笑う。亮も少し気が楽になった。
『うん‥‥僕も、頑張るよ』
『よし。目の前の破壊獣を倒す! いくぞ!』
 組長の掛け声に、聖獣たちは破壊獣と相対する。
 始めに動いたのは、公恵の大熊猫型聖獣、アイニー。
 その特殊能力『慰撫の光輝』の暖かそうな光が倒れたビルを包み、巻き戻し映像を見ているかのように元に戻っていく。
『き、公恵ちゃん。オレは‥‥?』
『聖獣は時間が掛かるの。まずは、町を元通りにしなくちゃ』
『‥‥っ!』
 いつもの事ながら、公恵は吼にそっけない。言葉なくショックを受ける吼を横目に、ミクロは畳み掛けるように言った。
「ばーか」
『よし、では我々はあの小さいのだ!』
『うん』
 何とか起き上がろうとしているホーラクーを、モノケロスとワイルドキャットがロック・オンする。
『あ! 気をつけろ、そいつ、鉄筋とか金属とか、食っちまうんだ!』
 ミクロにつつかれ気を取り直した吼が、後ろから特殊能力を教える。
『なら、こうだ‥‥EVOCATION!』
 モノケロスは額に生えたドリルを高速回転させ、ホーラクーへ向かって突撃する。
 ホーラクーは金属が自分からこちらへ向かってくることに気付いて、うれしそうに口を大きく広げる。その喉奥深くへ、ドリルが突き刺さった。
『今だ、栞!』
『おお、任せとき! ‥‥往生せいや、痴れ者がッ!』
 ワイルドキャットが前かがみに構えると、装備された全ての砲門がホーラクーへと向けられる。
『必殺! 鉛時雨!!』
 その時初めて、ゴーリキーは今まさにピンチであると悟った。
「う、うわ、大変だ! 助けてキャロ‥‥」
 助けを呼ぼうとしても時すでに遅し。見計らって離れたモノケロスと入れ違いに、ワイルドキャットの全弾が惜しみなく発射され、ホーラクーへと降り注いだ。
 ホーラクーが爆発する。爆風にゴーリキーとギガントも吹き飛ばされる。
「やーなかーんじー‥‥!」
 あっけない捨て台詞とともに、魔獣界の戦士はお星様となった。



 ワープ装置を使っての戻り方が分からないので、上履きをぺたぺた言わせながら、みんなは学校へと帰ってきた。校門を潜ると、物凄い勢いで会長が駆け寄って、ぎゅっと亮を抱きしめた。
「亮チャマ! 大丈夫、怪我はない!?」
「ごめん、ママ‥‥」
 母親に心配をかけてしまったことは、正直に申し訳ないと思った。でも、心は晴れやかな気分だった。
「ママ。聖獣が強い大人じゃなくて、僕らを選んだのは、きっと、夢とかそういうの、信じる力があるからだと思うんだ。だから僕、聖獣防衛組を、頑張りたい」
「大高屋さん。これが亮の希望なんです。見守ってやろうじゃありませんか‥‥」
 先生が静かに語りかける。しかし、その声が会長を我に返らせたようだ。
「いいえ!」
 きらーん、と釣りあがった眼鏡を光らせ、会長は立ち上がった。
「こんな事を認めては、保護者の代表として失格ザマス! 先生の態度も含めて、この事は、次のPTA会議の議題にかけるザマス! 覚悟しておくザマスよ!」
 人差し指を先生の鼻先に突きつけて、それだけ言い放つと、会長は副会長の二人を引き連れて、さっさと行ってしまった。
 亮に塾までにちゃんと帰ってくるように言い残して。
 吼は、まだ会長の迫力に目を白黒させている先生を見て、大仰にため息をついた。
「あーあ、これで先生、辞めさせられちゃうかもなぁ」
「そーだなぁ。退職処分になったら明日からどうすりゃいいんだ‥‥って、こら、大人をからかうんじゃない!」
 怒り出した先生から吼はさっと逃げ出す。始まった二人の追いかけっこを、防衛組は笑いながら見ていた。
 夢があれば‥‥信じればきっと、地球を守りながらだって、中学受験できる。僕は、やってみせる。
 亮も笑いながら、そう強く思いを固めるのだった。



 その遥か向こう――
 富士の火山口で、黒い光が天を貫いた。
 その光の一つ一つは、黒い光沢を持った三角錐。
 魔獣界の恐怖探索機『コワ・ミツケラー』。
 三角錐の先端から、ぬっと触覚が生える。
 地球人の恐怖を求めて。
 触覚の先端についた目玉が、ぎょろり。

 こちらを、
 向いた。