宵闇の叫び南北アメリカ
種類 |
ショート
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担当 |
想夢公司
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
3.6万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
12/20〜12/24
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●本文
その日、多数の資料の束に囲まれ目の下へクマを作り疲れているというよりは仕事に憑かれている様子のジェイク・オーエン監督に、幼馴染で腐れ縁の同業者、ジャイル・マイル監督はにこやかに口を開きました。
「ね、ね、ジェイク! 僕どうしても良いなって思うアイデアがあって、それでね、ジェイクにどうかなって思って♪」
「‥‥待て、お前の摩訶不思議俗悪空間に引きずり込んでくれるな。俺にしては珍しくまともで真面目な仕事してるんだから」
そう言うジェイクに、ジャイルはにこにこ『大丈夫!』と根拠のない自信を披露しています。
「あのね、あのねっ」
「言うな、大体読める。お前また、ファンから貰ったジャパニメーションとかそう言うのに嵌って作りたくなったんだろう」
「ううん、知り合いに回して貰った自主制作のジャパンゲームに嵌ってさ♪」
「どっちでも変わらん‥‥ん? ジャパンの自主制作ソフトって‥‥」
「良いよね〜おかげで、閉鎖空間での殺人事件映画が見たくて見たくて‥‥」
「この野郎‥‥人が勧めた時は効果音が怖いだなんだとやらなかった癖に‥‥だが、元ねたがあったらいろいろと制約もあるし面倒だぞ?」
「元ネタ?? 僕はあれのおかげで古城に閉じ込められた人間が織り成すサスペンスでスリリングな映画が見たいと思っただけで」
ジャイルの言葉に怪訝そうに首を傾げるジェイク。
「まぁ、そこからインスピレーションを得てアイデアの種になるのは普通のこととして‥‥さっきから気になっているんだが‥‥見たいって?」
「だから、僕は総指揮、監督はジェイク」
きっぱりと当たり前のことのように言うジャイルに頭を抱えるジェイクは、青い顔でこめかみを指で押さえながら口を開きます。
「‥‥一つ聞いていいか? それは俺が連続ドラマを撮っている立場と分かっていて、言う台詞か?」
「だって、僕はモンスターどーっのエイリアンどーって言う感じの映画は撮りたいけど、こういうのは見るのが一番♪」
「世の中舐めてるのかお前は‥‥」
溜息混じりに言うジェイクに、むーっとむくれて口を開くジャイル。
「じゃ、じゃあ、スタッフ丸ごと募集して、監督決まらなかったらじジェイクがメガホン!」
「ちっとも譲歩してないって言うか‥‥お前もしかして、監督の友達とか、少ないだろ‥‥」
「‥‥‥‥」
痛いところを突れたのか、ジャイルは何も答えずにジェイクの珈琲を勝手に啜っているのでした。
●リプレイ本文
●オープニング、そして洋館へ
降りしきる雨、暗い夜の闇、車のヘッドライトが照らす草木の生い茂った道を行けば、突如開かれる古い豪奢な城とそびえ立つ門。
車から降り立つ4人の男女、彼等の声は雨の音にかき消され、男の1人が鉄格子の門へ歩み寄って押し開くと車で中へと溶け込むように消えてゆき。
画面は引いて鉄格子の鍵が内側へと向いて鋭い切っ先を向けているのが映し出され。
鋭い金属音と殿に閉じる門、浮かび上がる赤い文字。
『宵闇の叫び』
重厚な玄関が押し開かれ、薄明かりの下に煌びやかな装飾品が鈍い光を放つロビーを入ってくると、雨の雫を滴らせた足から徐々に上へ、雨具のフードを取ると微苦笑を浮かべる女性・ロザリー役のフェリシア・蕗紗(fa0413)。
「勝手に入って良いのかしら?」
「なぁに、いくらなんでもこんな遅くに、雨に降られた憐れな旅人を叩き出しはしないでしょう」
スティグマ(fa1742)の演じるレイトがそう言い外套掛けに雨具をかけると、髪をかき上げながらシンディ役のライラ・フォード(fa2162)も口を開きます。
「仕方ないわ、呼び鈴ならしても出て来なかったんだもの、ねぇ?」
「‥‥」
巨躯の男へと微笑を浮かべて言うライラに、ザビエール神父(fa2268)は眉を軽く上げるのみで答え、注意深く辺りを見回しています、と。
「来客とは‥‥あなた方は何故この城へとやって来たのですか?」
ホールの2階、中央の手すりへ現れた、古いのデザインの豪奢なドレスを身に纏った霧島 愛理(fa0269)扮する女主人がそう言うのに、森へと調査のために入ってきて迷い込んだこと、此方で少し休ませて欲しい旨を伝えます。
「‥‥長居は無用‥‥夜食を食べたら部屋に引き取り、明日には出て行かれるよう‥‥」
言って食堂へと一行を誘うアイリの目には暗い光が映っていました。
「それにしても‥‥このお城はまるでワーウルフの伝説のよう‥‥泊めていただくお礼に少し伝説についてお話ししましょうかしら?」
眉を上げるアイリに反応を楽しむように満月の夜にやら城に住む幾つかのワーウルフ伝説をした後、ライラはくすくす笑います。
「気を悪くしてしまったらごめんなさい? でも、私たちの研究課題に出てきそうなお城があるんだもの、つい、ね‥‥」
「実は私も思ってたのですが、このお城は伝説に多数出てくるお城に、とても似てますね」
使い込まれた食器に年代を感じさせる――鬼王丸・征國(fa0750)が何度も煤と油を交互に塗り重ね浮き出た木目が美しい家具の数々に言うスティ。
「でも、ワーウルフなんているわけないわ。中世ヨーロッパの狼男伝説は、パンから麦角菌を摂取してしまった人間が、人格が豹変したり凶暴になったり、それで狼男扱いされてしまっただけなのよ」
「‥‥今宵はもう遅い、私は引き取らせていただきます」
話しを切るかのようなアイリに目を向ける一同。
「皆様くれぐれも‥‥」
立ち上がり口を開くアイリにフェリシアへとカメラは向き、徐々に近付いてゆきながらアイリ声が重なって流れ。
『くれぐれ部屋の外へと出ないよう‥‥そうでなくては保証は出来ませんよ』
フェリシアが聞き返そうとアイリに声をかけますが。振り返りもせずに部屋を出て行くアイリ。
画面が切り替わり、ライラの部屋。
「冗談をあそこまで本気にするなんて怪しいわね‥‥この城に何が隠されているのかしら?」
そう言ってフェリシアが鞄から取り出したのはペンライト。悪戯っぽい笑みを浮かべて部屋の戸を開けるとゆっくりとペンライトの光で廊下を進むライラ。
ライラの手前に黒い影が過ぎると、突如崩れ落ちるライラ。
「うそ‥‥ただの伝説よ。いるわけないわよ、こんな化け物‥‥!」
声が途切れペンライトの光がライラの足下を照らし、そこに飛び散る夥しい血と、声にならない悲鳴、そして暗転。
●惨劇
「銀色の毛、首筋の噛み傷、それに‥‥見てください、この爪の跡‥‥」
顔を強張らせたままそういうスティは、狂気にも似た表情でライラの無惨な死体を調べていました。
「こんな‥‥こんな惨い殺し方‥‥あの女主人が人狼だったに決まってます‥‥化けの皮、剥いでやる」
ぎろりとホール正面の2階から見下ろすアイリへと勢い込んで近付くスティ。
「貴方しか居ないじゃないか。他に誰が居ると? 貴方が人狼でシンディを殺したんだ!」
食って掛かるスティに冷たい表情で言いがかりを、と言うアイリ。
「落ち着いてレイト、気持ちは分かるけど証拠はないのよ?」
止めに入るフェリシアですが、それを振り払いアイリへと掴み掛かるスティに、画面脇に黒い影が素早く過ぎり、ザビー神父がフェリシアの手をぐいと引いて下がらせます。
「何を‥‥っ、レイトっ!」
フェリシアの言葉と共に映し出されるのは、宙に軽々と釣り上げられたスティの姿が。
スティの胸から突き出ている手は白銀に輝き血に塗れてなお美しい光を放っています。
一瞬映る白銀の人狼を演じるジーン(fa1137)の姿を見下ろし、血を口元から垂らしつつ見下ろすスティ。
「は‥‥はは‥‥ワーウルフ伝説は‥‥本、当‥‥」
言いかけ血を吐くスティに悲鳴を押し殺し、ザビー神父に手を引かれるままに必死で逃げ出すフェリシア。
「何だった、の‥‥?」
「スティが掴み掛かった瞬間、あの白銀の影が飛び込んできた」
ザビー神父の言葉に弱気な表情を浮かべかけ、すぐに首を振るときっと強い眼差しで顔を上げるフェリシア。
「これからどうすれば‥‥?」
「我が輩はあれを仕留めねばならん‥‥先程調べてみたが、どの戸も開かなくなっておる。恐らく奴を倒さねば‥‥」
「逃げられないって訳‥‥やるしかないわね」
フェリシアの言葉に頷くと、ザビー神父は立ち上がります。
「きっとこの城の中にあれを倒す手段がある」
「分かったわ、怖いなんて言ってられないもの、手分けして探しましょう」
頷くと二人は別れるのでした。
●想い出
「もう‥‥もうやめて‥‥」
アイリの口元、擦れて良く聞き取れないほど小さな声。
アイリの背後からロビーを見下ろせば、そこには既に傷つき血まみれになりつつも戦うジーンと巨躯の牧師の服の姿が。
軽々投げ飛ばされる巨漢は、爪で既にあちこち切り裂かれそれでもなおジーンへと向かっていきます。
「何とか‥‥人狼を人間へと戻さないと倒せない‥‥」
遠くの方でジーンの咆吼が上がると、フェリシアは不吉にまとわりつく情景を振り払うかのように頭を振り、なおアイリの部屋の中を漁っていました。
「これは‥‥」
何やら綴られた手紙の束とアイリの日記にびっしりと描き込まれた悔恨に一瞬割り込むセピアの映像。
まだ若い男と口論をするフェリシア、そして、棺と喪服でそれを見つめる姿。
「‥‥そこで何をしているの」
入口の方から聞こえてくる声にはっと顔を上げるとそこに立つアイリに悲しげな目を向けるフェリシアは、暗い目をしたアイリの言葉に首を振ります。
「間に合わないなんて‥‥そんなことはない! まだ生きてるじゃない‥‥気持ちを伝えて、それで‥‥」
「日記を読んだのね‥‥もう遅いわ‥‥殺人の衝動は人狼の本能‥‥私にも止められないのです」
「ならば‥‥」
手に当たる銀の豪奢な装飾のペーパーナイフを握るフェリシアを見ると、アイリは俯きます。
「‥‥もう、それしかないのですね‥‥」
そう呟くように言うと、アイリは目を伏せるのでした。
●生還、そしてエンドクレジット
「‥‥牧師様も、殺したのね‥‥」
既に赤く血に染まった白銀の狼は、傷付き足を引きずりながら、それでもなおフェリシアへと唸る声を上げて近付いてきます。
「ぐぉおぉぉおおおっ!!」
「やめてっ!」
跳躍しフェリシアへと鋭い牙を剥きだし飛びかかるジーンは、アイリの叫びにその牙をフェリシアへと届かせることなくぴたりと動きが止まり‥‥。
「‥‥さようなら‥‥」
見る見る人間へと姿を戻していくジーンに、フェリシアが涙を零しながらもペーパーナイフを繰り出し、そして絶叫。
駆け寄るアイリを唸りフェリシアの方へと追いやるジーンはをみて、手を引きながら逃げるフェリシアですが、廊下の途中で手を振り払うアイリ。
「‥‥ありがとう」
微笑を浮かべるとジーンの元へと駆け戻り、傷付いた身体を抱き起こすアイリ。
「もう、休みましょう‥‥」
そういうとぎゅっと抱きしめて微笑。
「ずっと‥‥ずっと一緒‥‥」
その声と共に力なく横たわるジーンとアイリの上に瓦礫が崩れ落ち‥‥。
微かに日が差す森の中、目元をぐいと擦ると立ち上がって瓦礫に背を向けて歩き出すフェリシアを映し出し、暗転。
配役が次々と流れる中撮影・編集にはロバート・キャリコ(fa2460)の名が。
ジェイクと脚本を見ながら打ち合わせをしているロブに、その横では何やら日本のゲームソフトをジャイルに渡して何やら唆している鬼征の姿。
衣装合わせでジーンズの着合わせを確認しているフェリシアの横ではアイリがドレスを身に付けターン。
監督:ジェイク・オーエン
その文字と共にジーンと格闘の打ち合わせをするザビー神父。
台本を読み合わせるライラとスティがカメラに気が付きロブへと笑いかけて、画面は暗転。
最後に、総指揮:ジャイル・マイルの名が記され、幕を閉じるのでした。