フレーバーカフェ南北アメリカ

種類 ショート
担当 想夢公司
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 1.2万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 01/31〜02/04

●本文

 その日、エリアス少年は不安げにマネージャーを見上げていました。
「結局、年が明けてから結構経っちゃったね‥‥大丈夫、なのかな?」
「心配してもどうしようもないだろう? それに、やっぱり特番とか色々とあって、予定が色々狂っちゃったんだろうね」
 マネージャーの青年は手帳から目を上げてそう言うと、笑いながらくしゃっとエリアスの頭を撫でます。
「それに、エリアスだって年末年始は結構仕事が合って忙しかったじゃないか」
「う、うん‥‥そうだけど‥‥」

 先程からマネージャーの青年と話しながらどこか不安げな表情を浮かべている少年、エリアス・フォールドは最近チューイングガムやココアなどのCMで人気が出始めた、金髪碧眼で8歳の少年です。
 エリアスはフレーバーカフェという番組で主役に抜擢され、初回はそこそこ好評だったり『ハートフルコメディじゃないじゃないか』などという反応を引き起こした番組で、監督は最近では何でも屋と化したと噂のジェイク・オーエン監督。
 初回以降特番やいろんな理由で公開されていなかったというある意味不遇の作品らしく、ようやくスケジュールをあわせたエリアスの元に新しい脚本が届いたところだったりします。

「今回の話は‥‥『学校嫌だな』‥‥そっか、前回の内容でだと、この僕も転校して来てあまり経ってないことになるんだね」
 そう言って脚本を読み始めたエリアスは、ふと首を傾げます。
「学校の近くにある博物館へ見学に行くことになったけど、まだクラスのみんなと馴染めてなくて、レポートを作る班に入れてもらえてない‥‥ううう‥‥なんで監督僕の状況知ってるの‥‥?」
「あー‥‥偶然だと思うよ、うん‥‥たぶん‥‥」
 ぐすぐすと半べそ状態のエリアスは、どうやら今のお仕事の為に拠点として使えるところに引っ越してきたらしく、脚本と同じような状態に陥ってるよう。
「なるほど‥‥今回は学校に行きたくないって言っているエリアスに、学校の楽しさを話したり、相談にのったりって言う内容みたいだね」
 そう言いながらマネージャーは、ぐすぐすしているエリアスにハンカチを渡すのでした。

●今回の参加者

 fa0848 柏崎 柚(21歳・♀・狸)
 fa1737 Chizuru(50歳・♀・亀)
 fa1814 アイリーン(18歳・♀・ハムスター)
 fa2446 カイン・フォルネウス(25歳・♂・蝙蝠)
 fa2529 常盤 躑躅(37歳・♂・パンダ)
 fa2573 結城ハニー(16歳・♀・虎)
 fa2668 大宗院・慧莉(24歳・♀・狐)
 fa2726 悠奈(18歳・♀・竜)

●リプレイ本文

●オープニング
 緩やかなBGM、重厚な構えの博物館前を歌を口ずさみ歩くChizuru(fa1737)の下に『アンジェラ』と表示され、後ろに見える窓に寄れば、柏崎 柚(fa0848)が机で文献に目を通し、『ユズ・カシワザキ』と表示されます。
 そこへ大宗院・慧莉(fa2668)が入ってくると『エリー』と書かれ、ゆずは顔を上げエリーに笑いながら本を閉じ立ち上がります。
 画面窓から引けば怪しげなパンダの覆面男・常盤 躑躅(fa2529)がのそのそ歩いて公園で遊んでいた子供たちに指差されている下には『パンダのおじさん』と浮かび、その横を駆け抜ける少女たちに画面はついていき。
 『パティ』『ユーナ』と並んで表示され、飛び切り楽しそうな笑顔の結城ハニー(fa2573)に引っ張られてわたわたと走る悠奈(fa2726)。
 そして辿り着く喫茶店『Sweet Rest』、ハニーがばんと戸を開け入っていけば、窓の外から見える喫茶店の中、カウンターで笑うアイリーン(fa1814)の『アイリーン』に、席で寛ぐカイン・フォルネウス(fa2446)と、下に表示される『カイン』という役名。
 そして切り替わる画面、とぼとぼ歩いてきて中へ入るエリアスに気がついたカインがにやり笑うとエリアスにじゃれつつ後から抱きつき、吃驚したようなエリアスの下に『エリアス』、画面は引いて喫茶店の全体を映し、タイトル。
 コーヒーカップとティーカップの挟まれた『flavor cafe』、そしてパステルで書き込まれる『学校嫌だな』のサブタイトルが入り、暗転。

●落ち込むエリアス
「エリーはん、はよ暖まろ」
 からんからんと軽やかなベルで入ってくるゆずに、エリーも小さなダンボール抱え入りカウンターから程近いボックスに座りアイリーンが来るのを待っています。
 店内隅っこの席でエリアスがしょんぼりして宿題をやっているのが見え、アイリーンが来て注文を取るのを見送ったゆず、首を傾げます。
「なんやなんや、随分へこんどる子やなぁ?」
「マスターの息子さんですよ。転校して来たばかりだから、まだ慣れてないみたいで‥‥」
 そう言いながらカウンターへ戻るアイリーンを見送り、顔を見合わせるエリーとゆず。
「わかったわかった、遠慮するなや。おねーさんが今日はおごったるでぇ」
「え?」
「ん? おばちゃんとかゆうたらあかんでぇ、おねーさんや、おねーさん」
 ゆずに気圧されつつも引きずり込まれ席に座るエリアス。
「こんにちは〜♪ アイリ〜ンさん、いつものお茶をいただけるか〜しら〜〜♪♪」
 そこへ戸が開いて上機嫌で入ってくる千鶴さん。
 視線が集中してはっと辺りを見渡し慌ててカウンターに歩み寄ると腰を下ろして待つと、エリーたちのところにお盆を手に歩み寄り、珈琲とパフェを置くと、カウンターに戻って千鶴さんに紅茶を出すアイリーン。
 ぷるるる‥‥電話が鳴るのにエリアスが出ると、吃驚したような顔でお待ちくださいと告げてアイリーンへ。
「はい、お電話代わ‥‥あら、ユーナの先輩? 学校新聞の取材‥‥え? 今から!? って、今どこなの?」
「ちょうど着いたとこ♪」
 からんからんと店内に響く中、携帯電話で話しながら入ってくるハニーにもう一方の手で引っ張られて入ってくるユーナ。
「おっ邪魔しまーす!! 取材をお願いしましたパティです。学校新聞の『パフェの美味しいご近所のお店特集』で来ました」
「パティ、エリアス君吃驚してるよ?」
 ユーナがカウンターの奥に入り、エプロンを手にしながら言うも、エリアスの向かいに座りカウンターのアイリーンへと口を開くハニー。
「では早速、噂のパフェをお願いします」
 ICレコーダーを出し言うとハニーはエリアスに笑いかけ、直ぐに出てくるアイリーン、テーブルに置かれる人の頭一つありそうなサラダボウルに何層にも重ねられたフレークにアイス、クリームが割り込みます。
「お待たせ、パティ。当店自慢の名物パフェ<SweetSpecial>よ♪」
 思わずエリアス、ハニーは顔を上へと移動していき、それにつれ色とりどりのフルーツに、パステルカラーのクリームに飾り付けられ、チーズケーキやショートケーキがそのクリームに刺さる、なかなかに芸術的なパフェに目を瞬かせるハニー。
「コレって‥‥オイシイじゃなくオオキイじゃ?」
 冷や汗笑顔のハニーはアイリーンを見、ユーナへと目を移し聞きますが、ちゃっとデジカメを取り出して映すと、頭に可愛らしいベルのついたスプーンを手に取り一口掬い‥‥。
「おいしぃぃ!」
 嬉しそうに笑うハニーはエリアスに話しかけます。
「少年、何で落ち込んでいるかは知らないけど、知らない事を調べるって素敵だと思わない?」
 ハニーの言葉に目を上げるエリアスはおずおずと頷き、ハニーは上機嫌でパフェを食べるのでした。

●ホンの少しの勇気
「よー、いつものやつ頼むぜ〜」
 トレーナーにジャージというパンダの覆面が入ってくると、一瞬全員の視線が集中。
 間。
 何事もなかったかのように空いた席にどっかり座りパフェが出てくるのを待つ常盤に、運ぶユーナ。
「エリアス君にもこのパフェ奢ってあげ‥‥きゃっ!?」
「うおぉっ!?」
 盛大に前に転んでお盆ごとパフェを投げ出すユーナに、常盤は頭からパフェを食らってのたうちます。
「ユーナ‥‥お願いだから、私の仕事を増やさないでぇ」
 バスタオルを抱えばたばた駆け寄るアイリーンに慌てた様子で箒とちりとりを持ってくるエリアス。
「パフェは被っちまったがそれはそれ‥‥ここの店ぁ良い、パフェは逸品だし美人揃いで目の保養になる」
 覆面の上からタオルを被りバスタオルを肩にかけ言う常盤は、目の前の巨大パフェから視線を店内の女性陣へ。
「最近よくここに来るエリーって奴の胸はイイ! 逸品だ!」
 小声で力強く言う常盤、エリアスと目が合い、はっとしたようにスプーンを握り。
「違うぞ! 今のはパフェが美味しすぎるんで出ちまったヨダレだ!」
 覆面のままサラダボウル一杯のパフェを掻き込む姿に少し遠い目気味のエリアスに、ぽんと肩に手を置くのはカイン。
「やあ、元気かなエリアス君?」
 どうやら奥にいたカインはエリアスをからかいながらじゃれ付き、わたわたとするエリアスに笑いながらも小さく溜息をつきます。
「俺にも弟がいてね。君ぐらいに純な子なら苦労はしないんだが‥‥ところで、何か悩み事かな? お兄さんに話してごらん、相談に乗ってあげるよ」
「え‥‥」
 カインの言葉に戸惑いがちにみれば、視線が集中するのに目と落とすエリアス。
「‥‥学校で博物館見学があって‥‥レポートの班分けに入れてもらえなくて‥‥」
「入れて欲しいってエリアス君言った?」
 エリーに言われ言葉に詰まるエリアス。
「話しかけても素通りされちゃうし‥‥言えなくて‥‥」
「自分の考えなんて言葉にしないと誰にも伝わらないんだから、いいたい事はいわないと。相手は化け物じゃないんだから、怖がってもしょうがないんじゃないかなぁ」
 言うエリーに頷くユーナ。
「私も最初はこっちに来て大変だったよ? 色んな事が全然違うんだもん。でもお友達が出来たら平気になったの」
「僕の弟も今の君みたいな状況になった事があってね‥‥」
 カインもそう言うと、弟の登校拒否や母親に説得されていくようになったことを話し。
「きっと、皆も興味と不安で一杯なのよ‥‥だから話しかけられない」
 エリアスの直ぐ前に屈み込んで目線を合わせるというアイリーン。
「私も仲間に入れて、って言えるだけの勇気が出せてたらなって。ちょっと後悔してるの」
 寂しげに微笑むアイリーンに目を上げるエリアスへ、カウンター席で微笑んで口を開く千鶴さん。
「人とうまくいかないのはよくある事よ。若い子ってすぐ焦っちゃうけど‥‥焦らなくていいの。肩の力を抜いて、少しずつ話しかけてみたらどうかしら?」
「少しずつ‥‥」
「俯かないで。暗い顔をしていると近寄りづらいでしょう? やせ我慢でもいいから、笑った顔を見せて」
 千鶴さんの言葉に困ったような表情を浮かべ、やがてくすりと小さく笑うエリアスにばんっと背中をカインは叩いて言うのでした。
「俺の弟にも出来たんだ。君にもあるさ、ほんの少しの勇気ってやつは」

●博物館 〜エンドクレジット
「行ってらっしゃい♪」
 飛び切りの笑顔でアイリーンに送られると笑い返して出かけるエリアス、博物館へ切り替わり、おずおず近づくエリアスがやがて他の子たちとはしゃいで駆け回り怒られるのを、離れた所で見守る千鶴さんと乱入して子供達を吃驚させるエリーから外へ画面は転じ。
 その様子を満足そうにみたカインが歩き去り、空にはジェット機が飛び去るのを流すと、そのまま暗転。
 常盤がエリアスをぶんぶん揺さぶって監督がカット! と叫ぶのが映れば、カインとエリーにからかわれて真っ赤になるエリアス。
 アイリーン・ユーナ・ハニーの3人がパティシエによってサラダボウルに盛り付けられていくパフェを見て騒ぎ、ゆずは衣装のスーツを合わせ、赤い眼鏡をずり上げます。
 千鶴さんがエリアスに笑いかけて手を差し出すと、にこっと笑い頷いて手を握り出かけていくエリアスを映した後、画面にはパステルで『SweetRest』が描かれ、隅っこに『See You Next』と書かれ、画面は暗転するのでした。