クレージークレーマー南北アメリカ
種類 |
ショート
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担当 |
想夢公司
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
4万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
02/12〜02/18
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●本文
その日、ジャイル・マイル監督が幼なじみで同業者のジェイク・オーエン監督の私室へ入り浸りにやってくると、興奮気味に電話で話しているジェイクを見て、珍しいなぁ、などと思っていました。
「はい、ではそれで‥‥ええそれで、ええ、是非買い取らせていただきます!」
なにやら盛り上がっている様子のジェイクが電話を切ると、早速ソファーでごろごろしながらジャイルは口を開きました。
「買い取るって、今度は何を買ったの?」
「失礼な、そんなあれこれ買ってないぞ、俺」
「えー‥‥廃車寸前の車50台セットで、とか贋作掴まされて首くくる寸前だった骨董商から東洋の壷200個纏めて、とかなんとかそう言う規模では良く買い物するじゃん」
「あれは使い道を考えてあるわけで‥‥まだしっかり形になってないから使ってないけど‥‥」
なぜか遠い目をするジェイク。
堅実な生活をしている上に仕事も知名度も悪くないジェイクが微妙にリッチなイメージがないのはこういうところなのかも知れません。
「で、今度はナニ買ったの」
「潰れた直後のショッピングセンター」
「‥‥‥‥は?」
「しかもかなり大きい」
元々アメリカのショッピングセンターといえば‥‥ということなので、あえてかなり大きいと言ったのなら相当に大きいのでしょう。
「‥‥かなり掛からなかった?」
「いや、思ったよりも。まだ一角はそのまんま商品並べた状態らしいし、それで言うと、破格というより叩き売りだな、あれ」
言いながら送られてきていたFAXを眺めて言うジェイク。
「在庫は処分するのに返って金のかかる型落ち品やら見本品がごっそりとあるわけで、一刻も早く金にしたいからって持ちかけられたもので、調査もばっちり裏付け済み。後ろ暗いところはないし、紹介者もしっかり仲介料とってこれだからなぁ‥‥」
満足げなジェイクの手元を覗きこみ、そこの書かれた金額を見てくらっとするジャイル。
「‥‥時々ジェイクの金銭感覚についていけなくなるよ‥‥」
そういって額を押さえていたジャイルですが、ふと首を傾げます。
「で、そのショッピングセンター、何に使うの?」
その言葉に待っていましたとばかりに企画書をジャイルに渡すジェイク。
『クレイジークレーマー 〜そこは戦場だ!〜』
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
なぜかにこやかに顔を見合わせる二人。
「‥‥これ、本気だったんだ‥‥?」
どこか慈愛というよりむしろ可哀相な人を相手にするかのように優しい笑顔で聞くジャイルに、ジェイクはこれまた清々しい笑顔で頷きます。
「一度、馬鹿馬鹿しいと思って書き始めたら、またこれがなんだか無性に撮りたくなってな」
企画書の頭にはまずこう書かれています。
『その日、客は復讐の鬼となった。
いくら言っても売りつけられるのは不良品、買ったのは自己責任だと突っぱねるサポート係、そして、売りつけた癖にせせら笑って『ちゃんとしたのを買い直せばいいでしょう』と告げる店員。
別の店に行けばいいが、客の家の近くにはその店のみ‥‥積もり積もった怒りが今、爆発する!』
「で、具体的にどういう話なの?」
「単純に言うと、まず客相手に店員がとことん失礼な対応をすると。店側の過失はなかったことに、店員の詰め間違えは欲しいものを買いなおせとの対処、これ以上苦情を出せば出入り禁止にするとサービス係の言葉にそれまで我慢していた客がぶっちり切れると」
「まぁ、そりゃ切れるだろうね。店一つ吹き飛ばしたくなるぐらいには」
「うむ、なのでその客はショッピングセンターを占拠して、失礼な店員を相手に戦争を起こすと」
「あー‥‥それで今回渡りに船とばかりに買っちゃったのか‥‥。で、キャストは?」
「とりあえず切れて占拠する客がまず一人、あとは店の者と‥‥悩みどころはここで、占拠事件をまともに取り上げない警察は現場にひとり様子見に行かせる、という方向で考えたんだけど、これぐらい、か?」
「巻き込まれる客がいてもいいよね。で、どこまでやっちゃっていいの?」
「あ、ショッピングセンター大爆破とかする場合、ミニチュアを使ってやるので、売場2つぐらいまでなら、後で改装すれば使えるからやっちゃっていいぞと」
「で、結末は‥‥?」
「配役と流れ次第だな」
当たり前のようにきっぱりと、ジェイクはそう言ってPCへと向き直るのでした。
●リプレイ本文
●無礼なお店
薄暗い部屋、ブランドが動き僅かに入り込む日の光に映し出されるのは銃・銃・銃・手榴弾・銃‥‥。
部屋を見渡せばそこには光の反射で顔が見えない迷彩・カーキの色彩が広がる男達の写真、そして無造作に置かれたバッグの中からこれまた無造作に突き出された銃のグリップ、歪に歪むその鞄から、酷く乱れたベッドへ。
乱雑に椅子に置かれた緑の軍服に手が伸び、鏡の前、映し出される手元がネクタイを締めると、歪な鞄を手が取り上げドアを抜け。
ショッピングセンター前、軍靴がかつかつ床を踏みしめ表示される『リチャード・エンゼルマン/ジャン・ブラック(fa2576)』。
その向こう側にはブティック・銃砲店・そして徐々に上がる画面には、向こう側でミニスカートからシャンプーの商品名が鮮やかに表示されたトレーナーの女性に『ナオミ/シャミー(fa0858)』と映し出され、緑の後ろ姿を追う画面は途中の鉄の扉を開き。
そこで爪の手入れをしている女性警備員『イセリナ/仙道 愛歌(fa2772)』と、その後ろにモニターと並び点けっぱなしのテレビには『リポーター/フェリシア・蕗紗(fa0413)』。
ジャンの軍靴を追いながら表示の『チャン巡査/結城丈治(fa2605)』、そして画面は引き、硝子張りの立派なオフィス内にあるふかふかのソファーできゃいきゃい電話をしている『店長シヅル/シヅル・ナタス(fa2459)』、その側で無線に気が付き取り上げ何かを言うと足早に部屋を出て行くきっちり制服姿の男性。
男性が売り場へと出ると、オールバックに眼鏡を軽く押し上げる『店員ディック・ウォルター/賈・仁鋒(fa2836)』と、彼に手にした袋とレシートをおっとりした様子で見せる『サクラ・ブラウン/星野 宇海(fa0379)』。
そして近づいてくる軍服姿の男・ジャンの顔が初めて映し出され、タイトル。
『クレイジークレーマー 〜そこは戦場だ!〜』
そして入ってくる音声。
「ですから、いつもいつも! 一体どういう事ですの? 中身が違うじゃありませんか!?」
「失礼ではございますが、開封されてから戻すときに間違われたのでは?」
星海の声が喧噪の中に響き、神経質そうに眼鏡を押し上げて言うレンに、その側をジャンが通りすぎ、硝子製のルームランプを手に取りひっくり返しいろいろと確認していますが、やがて買うことにしたのかレンへと近づきます。
「お客様、お会計が先ですので‥‥」
どこか有無を言わせない様子で星海を追い払いつつ言うレンに、星海は全く、とばかりに首を振り、通路にあるベンチへと足を向けるのでした。
●キレてる奴ら
突如辺りへと響く銃声、そして、どこかぷっつんしたような笑い声と共に響く短い破裂音の連続に見れば、それは短機関銃の乱射。
「な‥‥何が起こったの??」
最初の破裂音でほとんどの人間が地に伏せているのは流石お国柄、とでも言えるような中で、他の人と同じように床に伏せたシャミーは、あわあわとしながら身体を起こすと警備員室へと慌てて駆け込んできます。
「た、大変です、お客さんがじゅ、銃を乱射しています〜」
「うるさいよ! ‥‥あ、いや何でもない」
携帯で話しつつ、入ってきたシャミーを一喝する愛歌、どうやら恋人との甘い会話のようで、それきりシャミーに見向きもせず、爪を眺めつつ電話を続けて。
再び響く銃声に慌てて、身体を低くしたまま戻るシャミーがひょっこりと覗けば、見えるのは銃を手に興奮気味に話しているジャンと、カウンター内に隠れて受話器を握るレンの姿。
「『お客様困りますー』あ、実はショッピングセンターで銃発砲がおきまして‥‥はい、お願いします」
警察への連絡を済ませたレンが見ると、ジャンが鞄から出したハンドガンをズボンへねじ込み弾を取り出しているところです。
「‥‥店長、どうしましょうか? 警察には連絡いたしましたが‥‥」
再び受話器を手に取るレンから画面は店長室へ。
「警察に連絡したなら任せれば良いじゃないですの。わたくし忙しいの、何とかなさい」
そう言ってさっさと連絡を切ると、ショッピングセンターを模った模型を上から覗き込むシヅル。
「お父様、わたくし紳士用品売り場は面白みが無くていらないと思いますの、ここの半分をぬいぐるみで一杯にして、もう半分は化粧品コーナーにしたいですわ」
そして早速受話器を取り上げておねだりの口調で言うシヅルを映し画面は駐車場へ。
「こちらチャン、現場へ着きました。‥‥で、撃っちゃって良いですか?」
ショッピングセンターへと着くとパトカーから顔を出しながら無線を使い言うジョージ。
ジョージは無線からの反応に少し不満そうに手元の銃を撫でては続けます。
「いや、ここはやはり撃つべきでしょう、撃っちゃいましょうよ、撃つしかないですし」
無線から怒鳴り声が聞こえてくるのをさっさと切ると、愛銃を愛おしそうに撫でつつ鼻歌交じりに現場を見上げれば、現場は駐車場に面している奥の方の場所で、ジョージはうきうきと足を進めます。
「事件が俺を呼んでいる♪」
楽しそうに言うと、ジョージは現在地からジャンの位置を把握するためにショッピングセンターの周りをぐるりと見回すのでした。
「はい、皆さん、私は今、ちょうど事件が起きたショッピングセンター前に到着いたしました。ただいまより命がけの取材を敢行したいと思います」
そして、続いてやってくる車は小さなテレビ局の物で、凄い勢いで乗り込んでくると、そこからカメラマンを引き連れて出てくるのはフェリシア。
「立てこもり犯はリチャード・エンジェルマン、中東から帰ってきた元兵士で近頃は神経質になっていたようです」
営業スマイルを崩さずに調べてきた現在の状況を述べるフェリシアは、手元の資料から顔を上げるとにっこり。
「きっと奥さんに逃げられたのですね」
そう言いながら、クルーが用意する防弾チョッキにヘルメットを身につけると、ショッピングセンターへとこれまた弾んだ足取りで入っていくのでした。
●BOMB! BOMB!
銃声が上がるたび、シャミーはあっちでもないこっちでもないと走り回ります。
「エンジェルさんも落ち着いて下さいませ、ここは戦場ではありませんわ!」
銃声に負けじと声を上げて言う星海ですが、ジャンは素知らぬふりをして店内を銃で撃ちまくり、ふと気が付く銃砲店へ。
「あの方だって好きでこんな事をしている訳では有りませんわ。お店の方が誠意のある対応をして下されば、きっと‥‥」
「それは大変申し訳ございません。が、当店といたしましても当店の基準がございますので」
ぷちんと切れた様子の星海、手元へとあるショッピングカートをわしと掴んで投げつけるも、涼しい顔で避けるレン。
「い・い・か・げ・ん・に〜して下さいませ〜!」
きーっと怒った様子の星海ですが背後で爆発が起こり振り返れば、銃砲店から大型銃器を手にのしのしと出てきたジャンが硝子張りのドアへとそれを向けるのを見て立ちつくし。
「ちょ‥‥」
止める間もなく発射されたそれは立派で巨大なガラス戸を突き破り、すぐ手前にあった車へと直撃、そして爆発炎上です。
「あっ‥‥」
青ざめて声を漏らす星海。
そして数十分後、ショッピングセンターは警官隊に囲まれることになるのでした。
「それにしても、彼の犯行の動機は何だったのでしょうね?」
「普段は温厚な方ですのよ。‥‥たぶん温厚な方だったと思いますわ」
「朝食のメニューで奥様とケンカしたのでしょう‥‥。最近多いですからね」
奥様はいないと言いかける星海ですが、溜息混じりに新しいおもちゃを手に入れた様子のジャンに深く溜息をつくのでした。
「どっちもどっちなのかしら?」
●犯人逮捕? 〜監督はアノ人で〜
上機嫌で大型銃器をいじり回してたジャンが逮捕されたのはすぐ、警察の特殊部隊の突入ででした。
逮捕されていく様があちこちの家庭で映し出される中、フェリシアにマイクを向けられたシヅルの『私の店に文句があるのなら、自分達で満足の行く店を作ったらいいのですわ』と言う言葉に殺気だってバットやゴルフクラブを手に席を立った人が何人もいたとか。
画面の向こう、連行される犯人の姿から、カメラは再び現場へ。
パトカーへと連行されるジャンへ、請求書の束を持って歩み寄るレン。
レンとジャンの目があった、と思った瞬間、レンのアップと破裂音、そしてレンにかかる赤い液体。
「‥‥」
一瞬目が点になるレンに、嬉々とした表情で発砲した銃を手に同僚にハイタッチを求めてこづかれるジョージ。
「‥‥」
何事もなかったかのようにくるりと振り返り店へと戻るレンの後ろ姿が引き、テレビのこちら側。
「あ、あのウザイの死んでら」
そう画面のこちら側でベッドの上、男性にしなだれかかり嘲笑をする、さっくりと出てきていた様子の愛歌を映し、画面は暗転。
スタッフロールが流れ、キャスト紹介。
各人の役名と名前、そして最後に表示されるのは監督の名。
そこにはアメリカのテレビ・映画界ではお馴染みの、自分の作品として出したくない場合に使われる偽名、アラン・スミシーの名が掲げられ、幕を閉じるのでした。