死と闇の狭間でアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
想夢公司
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
難しい
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報酬 |
5.1万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
02/20〜02/26
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●本文
エリオット・マクシアの事務所、そこでは3人の人間が顔を合わせて打ち合わせをしていました。
「ベトナム‥‥ベトナムロケはちょっと辛いな、南米ならばまだ‥‥」
「ですが、ベトナムで撮ればセットの方はだいぶ楽になりますよ?」
そういう20代の東南アジア系男性にうなるように眉を寄せて地図を見るエリオット。
「で、ベトナムで撮るとして、許可はどれぐらいだ?」
「グエンさんのこちらの予定では今回の最大滞在は7日ですね」
エリオットが聞けば、資料を捲りながら言うのは秘書のクラレッタ嬢で、クラレッタ嬢も既にあるものを利用するかセットを組むかで考え、現地で撮ったほうが良いと考えたよう。
「しかし、現地の場合はスタッフ同士でやってもらうしかないな、このスケジュールでは」
眉を寄せるエリオットが心配するのは、撮影にも立ち会えないことと、スタッフを現地へと飛ばした場合の安全の面に関して。
「そのあたりは大丈夫です、それに、戦地跡とはいえ、既に安全の確認された場所をロケ地として設定していますので、地雷で吹き飛ぶとか、罠がとかそういう心配はありませんよ」
言われた言葉に企画書へと改めて目を落とすエルに、クラレッタ嬢も合わせてページを捲ります。
「では、それでいこう。ただ、問題はきちんと配役を分け、話を理解してくれるスタッフが集まるかどうかだが‥‥」
「そればかりは集まってみないことには、ですね」
苦笑混じりに言うグエンに、エルは深いため息をつき、ノートPCへと向き直り、募集要項をまとめるのでした。
『死と闇の狭間で』スタッフ募集
撮影地:ベトナム
概要:ベトナム紛争後期、ベトナム。そこには死の蔓延する地上と、その行き着く先にある地の底の狭間に住む、ハンドガンのみを身につけた狙撃手達がいた。
トンネル兵、彼らは塹壕に身を潜め、その入り口は密林の中に隠され、正確に場所を知る者のみが辿り着く、敵からも味方からも隠れた者たちである。
ベトナム戦争が泥沼化し始めたその頃、脱出できずに密林を迷う兵士たちと、兵士たちに襲い掛かるベトコン。
兵士達の脱出と、それを支援するためにベトナムに残り続けるトンネル兵を描く。
●リプレイ本文
●闇への道程
鬱蒼と茂る森、怪鳥音が耳を責める中を踏み分ける加賀谷 勇(fa2669)。
泥塗れの勇に重なり『エドワード・ヤン』と表示され、後ろに姿を現す守久龍樹(fa1730)と稲川ジュンコ(fa2989)、そして3名のエキストラ兵。
タッキー『ヒデオ・ディストル』は幼さといっぱしな兵士が同居する微妙な表情と笑う口元、良く使い込まれた装備の数々。
対するジュンは泣きそうな顔をし口の中で泣き言を繰り返しているよう。
「‥‥」
何かに気が付いた勇がタッキーへ手で軽く合図をすればタッキーも返し気が付かないジュンを引っ張り急ぎ足で進みます。
やがて一行の前に草木で隠れた浅い横穴が現れるとジュンを入れ、タッキーが警戒に当たります。
「大丈夫か?」
小さく声をかけられ目に涙を浮かべ頭を抱えるジュン。
「もう‥‥嫌こんな所、ピューリッツアー賞なんていらない‥‥」
震え涙声のジュンに呆れた視線を向けるタッキーと溜息をつく勇。
「神様お願いです、もうジョン・ウェインの映画なんて観ませんキャパにも憧れませんから私だけでもここから逃がしてください」
「おいおい戦場と映画は違うが、それで映画を否定するものでもないだろう」
映画スターに憬れて来た者も正義を信じてきた者もいるが、と苦笑してジュンと離れた所に腰を下ろしロケットを取り出し握り締める勇。
そこで画面暗く、浮かび上がる文字。
『死と闇の狭間で』
文字がゆっくりと消え、立ち上がった勇に一人が青ざめた顔で着いた時はいた兵が一人いないと伝えます。
「ここまで来て‥‥」
タッキーを伴い周辺を探しに出れば草に紛れて見える、兵の足。
「早くここを離れるぞ」
既に敵に見つかったことを示す兵の足から勇へと画面戻り、タッキーはぐずぐず泣くジュンを引き立て再び歩き出す一行。
何かに怯えるように進む一行から引く画面、一瞬画面を横切る人影が映り暗転。
●再会
「合流地点まで3日の距離‥‥」
「じゃあ、さっさとこんなとこ通り抜けていかないとな」
言って表情を曇らせる勇ににかっと笑うタッキー。
「きゃーっ!?」
「っ、馬鹿‥‥」
突如上がる声に弾かれた様に顔を上げる2人、その声の主を見ればそこにいたはずのジュンと兵の姿はなく、画面切り替わり。
「お、お願い、武器は持ってないわ、非戦闘員よ、だから私だけでも‥‥」
震える声で言うジュンの足元にはエキストラの兵が転がっています。
「っ‥‥」
直ぐ側を掠める槍にジュンは怯え息を呑み立ち竦み、金城匠(fa0538)が泥で汚れた独特の服に笠を被り、嬲って愉しんでいる様子。
『ベトコン:シン』と表示され、手に持つ槍をジュンの頭へと向けたその時。
『‥‥手間のかかる‥‥』
微かに聞こえる声にタクミは顔を上げ、ジュンを睨み竦みあがらせてから、ゆっくりと小さく聞こえる足音の直ぐ近くの森へと足を向け、入っていく数メートルの距離に二人の姿が見えた、その時。
短い破裂音が2つ、タクミがぐらりと森の影から倒れ出てくるのと飛び出した米兵がぐいとジュンと勇を引っ張るのはほぼ同時でした。
兵の口元は布で覆われヘルメットはいくつか凹み塗装の剥げた部分が潜り抜けてきた道の激しさを表しています。
「早くっ!」
声に弾かれるように先を行く兵の姿を追えば、何の変哲もない密林の中、ぽっかりと開けられた穴に入るように手振りで示します。
ハンドガンを手にしたその兵は3人が入るまで待ち、後から戻る同じ姿の兵を援護し、最後に滑り込むように彼が中へ飛び込み戸を閉じれば、そこには何の痕跡も残されないのでした。
灯りが灯され、前後を顔を隠した兵たちに固められて暫く歩けば、やがてぽっかりと広がる空間が。
「先輩無事だったんですね、良かった」
後ろを守っていた兵が明るい声を上げて口元を覆っていた布を外せば、七瀬・聖夜(fa1610)が笑みを浮かべ表示される『チャールズ』と言う役名。
「チャールズ!? お前こそ、無事で良かった」
笑い硬く手を握る2人に、忌々しそうに舌打ちをするのはグリード(fa0757)。
「この、ピ―――――」
口汚く罵っているようですが、即座に台詞に被せて高い音が掻き消し、画面も切られさっぱりと画面から消されるぶじおか。
放映時間帯か制作者の意図に反したか、画面は転じ勇とタッキーはせいやに状況を聞き、地図を手に現在地と合流地点の打ち合わせを済ませ息をつくせいや。
「この辺りには長いのか?」
「撤退命令が出されて直ぐですよ。この地下一帯は占拠し、奴らの入れそうな口はすべて潰しましたが、この地点が問題で‥‥」
指し示す一帯に怪訝そうな顔でせいやを見るタッキー。
「その辺りになんかいるってのか?」
「あぁ、この辺りのベトコンのリーダーが‥‥彼らは村で普通に暮らしているような女子供ですら背中を見せたところで‥‥」
くいと首を切る仕草をして見せるせいやに促す勇。
「その中の『サイゴンの亡霊』と呼ばれる奴の拠点がこの辺りに。正確な場所は分からないですが‥‥」
せいやが言うのに暫く考える様子を見せる勇は頷いて口を開きます。
「そうか‥‥十分気をつけて進むしかないな」
「合流地点まで俺が援護します。それが俺の任務ですから」
そう言うせいやに勇は頷くのでした。
「なんでそこまでするの? 命令だから?」
「あの人には大きな恩が有る、だから俺の命に代えても此処から助け出さなければ」
せいやに任せて勇とタッキーが奥で休んでいる様、画面ゆっくり横へとスライドすれば、カメラの手入れをしながらジュンがせいやに聞き、銃をバラし手入れをしながらなんでもないことのように言うせいや。
「だって撃たれたら痛いし、死んじゃったらおしまいよ?」
「それは分かっているが、そう言う次元とは違う話なんだ」
慣れた手つきで銃を元に戻しながら言うせいや。
「ふぅん‥‥」
言いつつジュンはカメラを構え、かしゃっと短い音、銃を手に目を上げる白黒の写真。
「ふふ、ここに来て、初めて写真を撮ったわ」
色を取り戻し再びカメラへと目を落とすジュンから画面引き、画面、休んでいる筈の勇とタッキーへと戻れば、じっと目を開けて聞いていた勇は、緩やかに息を吐いて目を瞑るのでした。
●死地からの脱出
「避けろっ!」
ぶじおかの言葉と短い銃声にバタバタと倒れるベトコン。
地下を進み問題の地点へと差し掛かった頃、あちこちから現れるベトコンたちに的確に無駄無く弾を撃ち込んでいくせいやとぶじおか。
敵の持つ武器も銃器から槍など、それをかわし進みますが、猛攻に分断され慎重に進むことを余儀なくされます。
「うわぁっ!?」
エキストラ兵が倒れると足を抑え、足を見れば木で出来た針なのを見て即座に銃を突きつけ引き金に指をかけるぶじおか。
「やめろっ!」
勇が取った腕、トンネルの中に新たな銃痕を残し、睨みつける勇に毒でどうせ死ぬ、足手纏いだと吐き捨てるぶじおかは勇とタッキーが手を貸し進むのに忌々しそうに先へと進むのを見送り後へと着きますが、ぴたりと足を止め。
とさり、前を行く者が気づかほど小さな音と共に崩れ落ちるぶじおか。
そこには結城ハニー(fa2573)演じる『リン』こと『サイゴンの亡霊』が吹き矢を口に当てたまま立ち、音もなく歩を進めます。
そしてぞろぞろと現れるエキストラベトコンに気がついたタッキー。
「っ!」
せいやが前方かかり切りなのをちらりと見ると、既に顔色変わっているエキストラ兵と共に引っ張り勇から離すタッキー。
「何を‥‥」
「俺たちがここを抑える! 先に行けっ!」
手榴弾を握らせ自身の銃を構え直し先に行くよう促すと、戻ろうとする勇に銃を突きつけるタッキー。
「‥‥死ぬな‥‥」
「当前。さっさと終わらせて帰って、不味い飯を食おうぜ?」
にっと笑うタッキーに背を向ける勇と目に涙を溜めシャッターを切り、後を追うジュン。
激戦区を抜け地上への梯子に辿り着いた一行の耳に、遠くで爆発音が響いてくるのでした。
●帰還する者と残る者
「おい、お前はどうするんだ」
合流地点、ヘリ着陸予定の草原手前で勇はせいやに尋ねると肩を竦めて仲間とここに残り援護すると言うせいや。
「お前を置いて逃げてきただなんて俺は国でいい笑い者だ!」
「それが俺の任務です。先輩は帰還命令が出ている、帰るのが任務です」
胸倉を掴む勇に微笑を浮かべ首を振るせいや。
言葉を詰まる勇は息を吐くとせいやを放し、ポケットから草臥れた煙草の箱を取り出し、最後の二本、うちの一本をせいやへと差し出します。
「生き延びろ! ‥‥絶対に」
「必ず」
「また会おう。俺達の国で、あの町で」
笑って力強く頷き煙草を受け取るせいや、シャッター音と共に白黒に染まる世界。
ヘリの音・遠くなっていく地上に手の中の煙草を見る勇と愛おしそうにカメラを撫でるジュン。
飛び去る音と共に微か日の光差し込むトンネルから画面徐々に暗くなり、スタッフロール。
スタッフと言い争うぶじおか、に間に入り宥めるのは森屋和仁(fa2315)。
小道具抱えるタクミと衣装を抱え声をかけるハニーに顔を上げて打ち合わせ始めるカズが映し出されると、後ではせいやと談笑する勇の姿。
槍を手に顔を厳つく見せるタクミ、一転笑い出すと、つられて笑うジュンに出てくるタイミングを間違えた様子のタッキーが頭を掻き笑い、画面は暗転し終わるのでした。