マーマレード・デイズ南北アメリカ

種類 ショート
担当 想夢公司
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 易しい
報酬 11万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 02/26〜03/04

●本文

「主役を蹴ったぁ!? いや、テレビの短時間ドラマだからって、それは‥‥」
「だって、どう考えてもこの役よりやりたい役があったんだもん」
 マネージャーに叱られしょんぼりとした様子で言うのは豊かな黒髪を束ねた少女・絵理亜・フォーロードです。
 父親が著名なアクション俳優の父と2番目の妻である日本人の母との間に生まれたハーフの17歳で、最近は国内で出た映画の評判も上々の期待される新人女優です。
「で、やりたい役って?」
「主人公の親友」
「ふーん、この親友の女の子‥‥って、ちょっと待て、それ、病死する役じゃないか!? イメージとかいろんなものがあるんだぞ!?」
「それでもっ! こっちの役がやりたかったのよ。主人公は確かに可愛らしい外見、手作りのお菓子が得意で学校の人気者‥‥イメージ作りとしては最適だって言うのはわかっているの」
 必死な様子のエリアに少し気圧されて黙るマネージャーは、溜息混じりに脚本を読み直します。
「‥‥で、その代わりにヒロインやらなにやら、手配がこっちの事務所に回って来ちゃった訳か。仕方ないなぁ‥‥」
「だって、この子、ママと同じ病気で死んじゃったんだもの‥‥」
「‥‥ん、そっか‥‥」
 小さく頷くマネージャーは、立ち上がって携帯を取りだして、なにやら電話を始めるのでした。

『マーマレード・デイズ〜あなたのいた季節〜』出演者募集
募集:ヒロイン、それとヒロインと親友を取り巻く人々
あらすじ:
 ヒロインはクラス中に好かれる女の子でお菓子作りが得意。
 昔数週間だけ一緒に遊んだことのある思い出の少女が転校してきて少しずつ昔を思い出し仲良くなっていく2人。
 初めてマーマレードを手作りすると、普段はほとんど物を食べられない様子の親友がとても喜んで、それをきっかけにヒロインはせっせと親友にマーマレードを作り、それを使って彼女の喜ぶようにお菓子を作ったりして過ごすのですが‥‥。

●今回の参加者

 fa0379 星野 宇海(26歳・♀・竜)
 fa0588 ディノ・ストラーダ(21歳・♂・狼)
 fa0634 姫乃 舞(15歳・♀・小鳥)
 fa0898 シヴェル・マクスウェル(22歳・♀・熊)
 fa1527 ファウスト=ソリュード(18歳・♂・鷹)
 fa1814 アイリーン(18歳・♀・ハムスター)
 fa2378 佳奈歌・ソーヴィニオン(17歳・♀・猫)
 fa2612 相川 聖子(30歳・♀・鷹)

●リプレイ本文

●再会
 笑い声と穏やかな音楽、星野 宇海(fa0379)に付き添われ入るエリア。
 受付に話をする星海の下に『マリア』と表示、後ろを楽しそうに通り過ぎるアイリーン(fa1814)と佳奈歌・ソーヴィニオン(fa2378)の下に『アイリーン』『フィリア』と表示され、直ぐ後を姫乃 舞(fa0634)がぱたぱたと急ぎ足で追う姿に『マイ』。
 ふと顔を上げたエリアが3人の後姿へと目を向ける横顔、正面へと画面移り嬉しそう笑って見送るエリア。
 不思議そうに見る星海に首を振って微笑むと、画面はゆっくりと上へ、青空へと切り替わり、タイトル。
『マーマレード・デイズ』
 ざわつく教室、入ってくるシヴェル・マクスウェル(fa0898)が伊達メガネを押し上げて教室内を見、集まる生徒達に口を開きます。
「学校に菓子を持ってくるんじゃない。それは没収します」
「いけないっ」
 慌てて振り返る生徒達、中心にいたアイリーンはそう言って顔を上げると、驚いたように一点を見つめ。
「‥‥さて、皆喜べ? 今日から仲間が増えるんだ。‥‥エリア」
 促され豊かな黒髪を揺らしてぺこりと頭を下げるエリア。
「嘘‥‥エリアっ!?」
「お久しぶり、アイリーン」
「知り合いか? だが、旧交を温めるのはホームルームの後に」
 言われて赤くなりながら席に着くアイリーン。
 マックスが出て行くと集まるクラスメイト、エリアの手を取り目を輝かせるアイリーンに、カナカは軽く首を傾げます。
「アイリーンちゃんのお友達?」
「幼馴染なの、エレメンタリースクールに上がるとき越しちゃって‥‥」
「ママと一緒に戻ってきたの。何もかもが懐かしくて‥‥。一番のお友達だったから、ずっと会いたかった」
 エリアの言言葉に画面は切り替わり、日差しの暖かい中庭で座る少女達、先生方に没収されたお菓子とは別の包みを広げてのおしゃべりで、アイリーンは首を傾げています。
「ドーナツ、好きじゃなかったっけ?」
「大好きよ。でも‥‥あまりお腹がすいてなくて」
 色彩が薄くなる画面、教室、どこかそわそわした様子で集まる少女達に、入ってきたエリアが不思議そうに見ると、にこと笑って可愛らしい瓶を取り出すアイリーン。
「これ、エリアの好物だったよね? 実は‥‥私の手作りなんだけど」
「マーマレード? うん、私とっても好きだった‥‥」
「ね、一口だけ‥‥どう、かな?」
 いうアイリーンにカナカがラスクを一枚エリアに差し出すと、受け取ってそうっとスプーンでマーマレードを一掬い、一口食べたエリアがほんのり頬を染めて美味しそうに食べるのにやった、と喜ぶアイリーン。
「こらこら、教室はお菓子を食べる場所じゃないと――」
 マックスの声に慌てて瓶を隠し、ラスクを隠して目を見合わせる2人。
「はい、没収」
 ひょいと瓶を取り上げ教室を出るマックスは、小さく瓶を目の位置まで持ち上げて呟きます。
「ふむ、今日はマーマレードか‥‥ジャムは特に評判良いんだよな、教師の間では」
 瓶をポケットへと収めて、マックスは歩き去るのでした。

●甘いマーマレードな日々
「ほう、素敵なお嬢さんだ」
 膝をついて真っ赤な薔薇を一輪差し出すディノ・ストラーダ(fa0588)演じる『ジム』に驚いた顔をするエリアと笑うマイとカナカ、恥ずかしいと怒るアイリーン。
「俺はジム、恋に囚われし哀れな道化師さ」
 テーブルには紅茶とオレンジマーマレードのパイ、ディノやアイリーンの写真が飾られた部屋、見つめられ真っ赤なエリア、アイリーンに追い払われて笑って出て行くディノ。
「エリアさん、顔真っ赤ですよ」
「ほんと、なかなか引かないわね」
 マイとアイリーンが言うのに小さく首を傾げてエリアを見るカナカですが、直ぐに笑いながらお茶会をはじめ。
「ねぇ、何が食べたい? ママ何でも作るわよ?」
「エリアはマーマレードに目がないんですよ、おば様」
 暖かな日差しのテラス、エリアの家に遊びに来る3人と、ついでに寄ったディノ、それに星海とで楽しそうな談笑。
「まぁ! ママも頑張って作るわね♪」
「ありがとうママ、大好きよ」
 エリアに優しく微笑む星海、アイリーンとレシピを聞きにキッチンへ向かう少女達とテラスに残るエリアとディノ。
「‥‥馬鹿な妹だけど、良い所もあるんだよ」
「アイリーンは本当に優しくて‥‥みんなも‥‥ジムさんも」
 ふと笑いあう2人、キッチンから『また悪口言ってるー』と聞こえると、笑い出す2人にむくれたアイリーンと星海、並んで映る横顔。
 ハンカチで軽く目頭を押さえる星海に不思議そうな顔をする3人ですが、目にゴミが、と笑って言う星海に微笑んでマーマレード作りに戻ります。
「ね、一枚だけ」
「何度来ても駄目ですよー」
「ごめんね、うちのエリアさんは写真が苦手なんですよ」
 ファウスト=ソリュード(fa1527)がカメラを片手に近付くとカナカとマイに断られるのが映ります。
「貴方も懲りないわねぇ」
 ほうっと頬に手を当てて言うアイリーン。
「そりゃ、新聞部部長っすからねぇ?」
 ファスとエリアを見比べるアイリーンは、にっこり笑います。
「ねぇ、どうせだったらみんなで写真撮らない?」
「ん〜‥‥じゃあ三脚持ってこないと」
「先生ー写真撮るんで先生もどうですか?」
 瞬く間に教室の半分にみんなが集まり、ファスはファインダーを覗きます。
「ほら、エリアはこっち、そんな端っこじゃ写真に入らないじゃない」
 笑顔で言うアイリーンに押され中心で並ぶエリア。
 ファスが慌てて駆け込んできて、笑顔の集合写真、画面停止後、反転。
 夕暮れ時の帰り道、ディノアイリーンの家への分かれ道。
「じゃあ、またな」
「エリア、また明日ね」
「うん、また‥‥!」
 角を曲がる二人を見送り、茜色の中、赤黒い顔、胸元をきつく掴んでずるずると崩れ落ちるエリア、暗転。

●夢の終わりに
「心配かけてごめんね」
 一週間後の表示、少し痩せ薄ら赤みがかった顔で言うエリア、心配そうなアイリーン達とマーマレードを塗ったパウンドケーキを食べながら話しています。
 エリアがマックスに声をかけられビクッとする4人、ケーキには何も言わず証明書類を受け取って戻っていくマックス。
「エリア、また入院するの?」
「ん‥‥検査の為、かな‥‥昔私よく寝込んでたでしょ?」
「ん‥‥そうだったね」
 なんともいえない間、そこへファスがエリアの分の写真を手に近付きます。
「これ、直ぐに渡したかったんすけど‥‥」
「‥‥ううん、ありがとう、大事にするね」
 エリアの笑顔から一転、病院の廊下。
「申し訳ございませんが‥‥」
「私は担任だっ! 容態も知らないで適切な‥‥」
「既に手遅れです、エリアさんが再び学校へ通えることは、ないでしょう」
 看護婦姿の相川 聖子(fa2612)に『レベッカ』と表示され、ヒジリに詰め寄るマックスはぴしゃりと言われ言葉を途切れさせます。
 微かに廊下聞こえる啜り泣き、細く開いた病室に寄る画面、個室のベッドに生命維持装置に繋がれたエリアが横たわり、エリアの頬を撫で涙を零す星海。
「こんな身体に産んでしまった、ママを許してね‥‥」
「‥‥私、幸せだった、わ‥‥、愛してる、ママ‥‥」
 擦れた声が入り、暗転。
「お願い、せめて少しだけでも‥‥」
 病院の受付でヒジリと掛け合うアイリーン、カナカとマイ、イラついた様子でロビーの椅子に腰をかけるジム。
「もう一月も‥‥お願い!」
 涙目で言うアイリーン、そこへやつれた姿を見せる星海。
「看護婦さん、会わせてあげて‥‥あの子もきっと‥‥」
 泣き崩れる星海、静かに開く真っ白な病室にアイリーンは足を踏み入れます。
「‥‥」
 微かに動く指先に手を重ねぼろぼろ泣き出すアイリーン。
「大丈夫、側にいるから‥‥ね」
「‥‥」
 マスクを付けた顔は別人のように赤黒く徐々に遅くなる『ぴっ』という無機質な音。
「あなたがいてくれて私達も楽しかった。一緒にいてくれて本当に有り難う」
 泣きそうな顔でエリアに言うマイと、泣きながらアイリーンの肩に手を置き見つめるカナカ。
「貴女が生まれてきてくれて、本当にママは幸せだったわ」
 そして愛おしそうにエリアの頬を撫でる星海。
「お休みなさい‥‥私の可愛いエリア」
 小さく告げる言葉、音の無くなる病室、画面に映し出された、二度と反応することのない緑色の線。
「ばっかやろぉぉ!」
 1人廊下で壁を殴り慟哭するディノ、目元を拭ったヒジリがディノの手から流れる血に気づき止めると、ディノはがっくりと膝をつき『ばかやろう』と繰り返すのでした。

●貴女のくれた時間〜エンドクレジット〜
「おば様、もういいですよ」
 憔悴した星海に話すアイリーンも少し痩せたものの気丈な笑顔を見せています。
「マーマレードは一晩寝かせないと‥‥」
 アイリーンは火から鍋を下ろし言いかけ、鍋を置くと目に留まった集合写真へとそっと手を伸ばし。
「じゃあ、おば様、また明日」
「ええ、有難うね」
 消え入りそうな笑顔を浮かべ見送る星海に手を振り、駆けていくアイリーン、戸を潜りディノと言葉を交わし戻る自室。
 そっと写真立てのエリアのはにかんだ笑顔を撫でると微笑みます。
「エリア‥‥あなたのこと、絶対に忘れないから」
 呟きことんと写真立てに添えられる可愛らしいマーマレードの瓶を映し、フェードアウト。
 最後に『カメラワーク:ファウスト=ソリュード』が表示され幕を閉じるのでした。