宵闇の約束南北アメリカ

種類 ショート
担当 想夢公司
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 4.6万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 03/25〜03/31

●本文

 とある一冊の企画書を前に小さく溜息をつくのは絵理亜・フォーロード。
 エリアは父親が著名なアクション俳優の父と2番目の妻である日本人の母との間に生まれたハーフの17歳で豊かな黒髪の少女です。
「どうしたんだ? そんな変な企画では‥‥っていうかそんな溜息つくものでも‥‥」
「私‥‥実は私、恋愛ものってやったことがないの‥‥」
「へぇ、そうか〜‥‥‥‥‥‥へ?」
 仕事を取ってきたマネージャー、手持ちの手帳に目を落としてなにやらぺらぺらと捲っているのですが、目を瞬かせます。
「えっと‥‥無いね、シリアスなものばっかりで‥‥あ、でも、これ別に恋愛重視じゃないし、ほら、何かのイベントの夜に約束をした子供達が、高校生になって再会したら、っていうのだから、恋愛要素が無くても平気なんじゃないかな、きっと」
「‥‥‥赤字でフォントを2倍にしておいて?」
「‥‥ごめん、確認不足だった‥‥」
 顔を見合わせる2人は企画書を改めて眺めます。
「また、今回もそれ以外のキャストとかはうちの事務所で手配なの?」
「うん、再会する友達と、その周りにいる人たちが必要なんだよね」
「一応、私が誰かと約束をするけど、覚えていないのよね?」
「うん、何で覚えていないのかの謎を探っていくと、書いてある‥‥ね」
 目を見合わせる2人。
「もしかして、それだけしか決まっていないの?」
「‥‥‥うん、なんか、いろいろとテレビ局とかスポンサーとかの関係で突発的にたった企画らしいから‥‥」
 2人は企画書を前に暫く無言で座っていますが、やがて諦めたのか出演者などの手配にマネージャーは立ち上がるのでした。

●今回の参加者

 fa0588 ディノ・ストラーダ(21歳・♂・狼)
 fa0826 雨堂 零慈(20歳・♂・竜)
 fa1463 姫乃 唯(15歳・♀・小鳥)
 fa2153 真紅(19歳・♀・獅子)
 fa2446 カイン・フォルネウス(25歳・♂・蝙蝠)
 fa3081 チェリー・ブロッサム(20歳・♀・兎)
 fa3124 弥生 飛鳥(30歳・♀・ハムスター)
 fa3205 桜庭・夢路(21歳・♀・兎)

●リプレイ本文

●オープニング〜再会の日〜
 落ち着いたダイニングで朝食を取るディノ・ストラーダ(fa0588)と絵理亜・フォーロード。
 『ディノ』『エリア』と表示され、トーストを囓りディノのカップに珈琲を注ぐエリアに顔を上げるディノ。
「この街の学校は久し振りだろう」
「もう10年ね」
「仲良かった友達もいたんだよな? 逢えるといいな」
「余計なお世話。じゃあ行って来るわ、兄さん」
 微笑のディノと鞄を掴んで部屋を出て行くエリア、画面は窓へ、青空が映し出されタイトル。
『宵闇の約束』
 穏やかな音楽の中、白いカーディガン、チェックのロングタイトで通りを駆けて行くエリアを見送り、珈琲を飲み干し立ち上がるディノ。
 エリアをバイクを止め見送る男、ヘルメットを外すと『レイ』と表示、雨堂 零慈(fa0826)が何かを思い出すように首を傾げ、クラクションにヘルメットを戻し再び走り出します。
 店に入っていく弥生 飛鳥(fa3124)に『あすか』と表示、そこを急いで通り過ぎるエリア。
 エリアが公園を駆け抜ければベンチに腰を下ろしていた真紅(fa2153)に『カオル(薫)』と表示。
 エリアに気が付き声をかける桜庭・夢路(fa3205)に『セシリー』と表示され、手を振ってまたね、と通り過ぎるエリアを抜かして走っていく高級車。
 高級車が学校の前に止まりチェリー・ブロッサム(fa3081)が降りれば姫乃 唯(fa1463)に笑いながら声をかけ。
 チェリーには『シンシア』、ユイには『ユイ』と表示が出ると二人は笑いながら他の生徒達に紛れ校舎へと。
 職員室、カイン・フォルネウス(fa2446)がエリアを見ると、役名『カイン』が表示され、チャイムが鳴り、暗転。

●思い出
 カインが教室に入ると、後に続くエリアにざわつく教室。
「このクラスに編入されるエリアだ。皆、仲良く‥‥」
「エリア!? 本当に? 久しぶり! 私、覚えてる? シンシアよ」
 手を挙げ声をかけるチェリーに吃驚した顔のエリア、直ぐに嬉しそうに声を上げます。
「シンシア!? 凄いわ、同じクラスになれるなんて!」
「こら、再会を喜ぶのは良いが、休み時間にしなさい」
 カイルに言われて指示を受け席に着くエリアを複雑な表情で見るユイが映り、画面は切り替わります。
「久々に友人に会えて嬉しいのは分かるんだけど、授業は聞いて欲しいな」
 授業の最中、小さな紙のやりとりを見つけて注意をすると後で職員室に来るように言うカイン。
 職員室に入るエリアに向き直るとカインは口を開きます。
「転校生だからといって優遇する気はないので、しっかり友達からノートを見せて貰うように。それと、これが君が転校して来るまでにクラスの皆がこなして来た課題だ」
 プリントの束を渡して言うカインは続けて言います。
「クラスが上がる前に提出するように。‥‥『約束』だぞ」
「約束‥‥」
 受け取り何とも言えない表情のエリアに帰って良いと伝えるカイン。
 職員室を出て行くエリアを見送ると、カインは不思議そうに首を捻るのでした。
「懐かしいわねぇ、あの頃良く一緒に遊んだじゃない?」
 エリアとチェリーが談笑をしている画面、笑いながら頷くエリア。
「まさか、同じクラスになるなんて。逢えたらとは思ったけど」
 笑うエリアに一緒に歩いて帰ろうと誘い鞄を持って立ち上がるチェリー。
 チェリーは家の車を手で帰れと指示しすり抜けると歩きながら話す2人はいつしかアーケードへ。
「そういえばあの約束覚えてる?」
「‥‥約束?」
「10年後にあの場所で‥‥」
 言いかけチェリーは、道を行くレイに気が付いて声を上げると呼びかけます。
「シンシア。それに‥‥ぇ‥‥?」
 驚いたようにエリアを見るレイ、エリアも吃驚したように口元に手を当ててレイを見ます。
「エリア‥‥?」
「本当にレイ? 凄いわ、見違えちゃった」
 笑って再会を喜ぶエリアに僅かに顔を赤らめるレイ。
「お帰り、エリア」
 レイの言葉に嬉しそうに笑って、エリアは頷くのでした。

●約束
 セピア色の世界、小さく聞こえてくる言葉。
『ね、約束、あの缶を開けるとき一緒に薫に告白‥‥』
『一緒に卒業できないから、俺たちのプロムナイトを、この桜の下で‥‥』
『ずっと一緒にいられたら良かったのに‥‥』
『カオルはユイのことが好きなんだよ!』
 遠く近く聞こえる子供達の声、楽しげに悲しげに聞こえるそれは、叩き付けるような声と共に真っ白に。
「‥‥ゆ、め?」
 目を覚まし額の汗を拭うユイ。
「‥‥だって好きだった‥‥転校して行っちゃったのは‥‥仲直りしないで行っちゃったのは、エリア、なのに‥‥」
 小さく肩を震わせユイは布団に潜り込み。
「法学‥‥アルバイトと両立はとっても大変じゃ」
 レイとアーケードを歩き言うエリアにたいしたこと無いと告げ街を案内していると、サクラお店から出てきて2人に声をかけます。
「エリア、久し振りね、大きくなったわね〜」
 笑って言うサクラは続けます。
「エリアたちは仲良かったよね。それにレイが加わるとリーダーが参加だって走り回ってた」
「シンシアにカオル、あとユイ‥‥」
 言って気まずそうに言葉を止めると溜息をつくエリア。
「約束‥‥みんなであの桜の木の下で、そう約束したけど、きっとユイは‥‥」
「みんなと、か‥‥」
 苦笑混じりに見るレイに、ユイとエリアの喧嘩のことを話すサクラ、そこで画面暗転。
「飛鳥さんには全部お見通しって感じだね‥‥その通りさ、エリアは俺にとって妹以上の存在だ」
 グラスを磨くディノに、あすかはからかうような視線を投げかけ。
 ジャズが流れ照明で橙に染まる店内、カウンターには名の知れたアルコール類が並ぶ中、チョッキと蝶ネクタイの制服でバイト中なディノは苦笑します。
「さっきエリアちゃんに会って、つい本当の兄妹じゃないってことと‥‥」
「飛鳥さん、俺どんな顔してエリアに会えと‥‥」
 からかいを帯びた声に額を押さえるディノと楽しげに見るあすか。
 最初のシーンのキッチン、微妙な沈黙。
「兄さん、飛鳥さんって言う人が‥‥」
「なに、お前が気にすることじゃない、死んだ親父に約束したんだ‥‥エリアを幸せにするって」
 幸せな結婚をして欲しい、だから『兄として』頑張っている、その言葉に頷いて俯くエリア、その頭を撫で、ディノはどこか自嘲気味に笑うのでした。

●新しい約束〜エンドクレジット〜
「ユイ、行かないのか?」
 レイの言葉に言われて戸惑った表情を浮かべるユイ。
「行かなかったらきっと後悔するぞ」
「‥‥ん、そだね。兄さんも‥‥」
 エリアと約束した時、私直ぐ側にいたんだよ、笑って立ち上がるユイ。
「じゃあ、先行ってるから」
「俺も直ぐに行く」
 ポーチを手に駆けて行くユイ、そのまま画面満開の桜の下へと。
 黄昏に染まる桜の木の下で俯くユイは、直ぐにパタパタと駆けて来る二つの足音、息を弾ませてやってくるチェリーとエリアの姿に目元を潤ませます。
「エリア‥‥あの時はごめん。ずっと謝りたくて、でもきっかけがなくて。約束、思い出してくれたんだ。嬉しいよ」
「ユイ‥‥私もごめんね。二人が離れてしまう気がして‥‥」
 私が転校したのにね、と泣き笑いの2人、チェリーが二人を呼ぶと、橙と紫が混ざり始めた空、すらりとした女性のシルエット。
「あは‥‥久し振り。みんな変わってないねぇ!」
 明るいその声に顔を見合わせるエリアとユイはくすくすと笑い出すと、チェリーと3人でルージュに駆け寄ります。
『なんだ、カオルって女の子だったんだ。私達、勘違いで喧嘩していたんだね!』
 小さく入る声、ルージュの見せる木の細工の小さな人形が一瞬、拙い小さな人形と重なり、直ぐにしっかりとした細工のそれへと戻り。
「あの頃と同じ夢を追いかけてるよ。‥‥ははは、子供のまんまだね、一人だけ」
「そんなことないよ、私たちだってまだ子供だもん」
 笑いながら桜の木の下を掘り、小さな菓子の缶から取り出される『皆でまたこの場所で会おう』と書かれた幼い文字の古ぼけた手紙。
「‥‥もしかしたら、こないかと思ったんだ。二人が喧嘩してたからね。また皆でこの桜、見られて良かった」
 チェリーがジュースや料理を隠し用意していて、それを広げながらルージュが言えば、ユイは照れたように笑ってごまかし、近付いてくる人影に手を振り呼びます。
「エリア、もう一つの約束」
「もう一つの約束?」
 エリアをレイへと押し出すユイ、向かい合い照れている2人を見つつユイに聞くチェリー。
「一緒にプロムナイトをする約束したんだってさ」
「卒業パーティー? 何から卒業するんだか」
 笑いながら見る3人の元へ赤い顔で戻ってくるエリアと加わるレイ。
 既に日は沈みさやさやと夜桜が一同を見守っています。
「じゃあ、揃ったところで」
 コホンと咳払いで瓶を手に笑顔を浮かべるチェリー、重なる言葉。
「また10年後にこの場所で会いましょう!」
『乾杯!』

 楽しそうに笑い合う撮影風景、台本手に赤い顔でむむと眉を寄せるレイや真面目な顔でディノが台詞を間違えふと格好付けるのに笑い出すエリアやセットの外で見ていた少女たち。
 打ち合わせでプリントの束を渡す真似をし深呼吸を繰り返すカイン、声のタイミングが合わずに何度も走るエリアとサクラが顔を見合わせ笑い。
 スタッフ打ち上げの風景、皆が手に瓶を掲げて乾杯と共に画面は暗転するのでした。