ポップルスタック南北アメリカ
種類 |
ショート
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担当 |
想夢公司
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
3.6万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
04/25〜04/29
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●本文
その日、暫く忙しく立ち働いていたジェイク・オーエン監督とジャイル・マイル監督が顔をあわせたのは、既に日も傾いた夕刻、夕食を作るのが面倒になったという理由で漸く自宅へ戻れたジェイクにジャイルが夕食をたかりにきた時の事でした。
「ジェイクぅ〜いーい話があるんだけどぉ〜」
「却下」
「待ってお願いはなしだけでもっ!?」
「そのお話を聞いたお陰で、俺は漸く長い缶詰から今日、たった今帰宅したところなんだが?」
「細かいこと気にしない気にしない」
「‥‥この男は‥‥」
苦笑混じりに溜息をついて、ジェイクが出来立てのラザニア2人前をテーブルへと運べば、かって知ったるという様子で珈琲メーカーのポットとカップを持って後に続くジャイル。
「ポップルスタック、覚えてる?」
「あぁ、懐かしいな、あの、何をやってもついてない、忍び込めば隣の家と間違えて拳銃狂に追っかけまわされ、鑑定頼めば贋作とすりかえられての、あのめげない盗賊ポップルスタックか‥‥」
ポップルスタックは両監督にとって思い出の児童書のようで、きらきらと目を輝かせるジャイルに遠い目をするジェイク。
「で、そのポップルスタックがどうした?」
「うん、短編で試しに撮って良いよって許可が下りたんだ♪」
「‥‥‥‥」
「‥‥?」
「そっか、頑張れ」
「何で? 頑張るのはジェイクだよ?」
「ちょ、ちょっと待て、待て待て待て、どこでどうしてそうなるんだ」
「だって、僕だと許可が下りなかったんだもん」
一部では熱狂的なファンがいるとかいないとか、深夜帯俗悪映画をこよなく愛するジャイルでは原作者がうんと言わなかったよう。
「‥‥でもさ、あれ、その、言いたくはないが‥‥凄くマイナーな作品で、しかもZ級コメ‥‥」
「とりあえずは一番初めの話、ポップルスタックが下宿屋の娘さんが気に入って衝動的にそこへと下宿し始めたときの話だね」
「聞いてないし‥‥あれは確かそこにあった児童書を見て裏の顔が盗賊って格好良い、と一念発起したは良いけど、忍び込んだ先の人間に見つかって右往左往、ほうほうの体で逃げ出す話だっけ?」
「そうそう、まぁ、そこの掛け合いは出演者に任せ‥‥あ、出演者はもう募集出しておいたから。ポップルスタックは毎回姿が変わるから固定じゃなくても良いし、ポップルスタックの下宿先の管理人さんにはあの絵理亜ちゃんを拉致決定♪」
「‥‥これがうまく行けばポップルスタックを幾つかまた撮るって言うことか?」
「うん、わざと駄目な作品撮っちゃ駄目だからね」
「いや、そもそも元々あれはZ級コ‥‥」
「楽しみだなぁ、ポップルスタック♪」
全く人の言葉を聞かないジャイルに、ジェイクは深く溜息をついて珈琲を啜るのでした。
●リプレイ本文
●ポップルスタックたんじょう?
軽快な音楽、引っ越し用の段ボールが運び込まれ、絵理亜・フォーロードがエプロン姿で出迎えるのは焔(fa0374)。
ぺこりと礼をしてエリアの部屋に入ったホムラはふと目に入った本棚へ、一冊を手に取り、食い入るように見る姿、お客様用ティーカップをお盆に載せて出て来たエリアがその姿に怪訝そうに見ます。
ホムラの手の中の本は緑色の装丁、シルクハットにマントの男の子の姿、そこに画面寄っていき。丸い文字でタイトル。
『めげないかいとうポップルスタック』
引っ越しの山積み荷物が画面切り替わる事に減っていき、部屋も住めるように整っていく中、ホムラもまた、最初は覗き穴あき段ボールを被り、首を傾げつついろんな帽子の山からシルクハットを選び出し、黒いマントを広げたり。
会社勤めの様な普通のスーツの上にシルクハットとマントを羽織って鏡の前、ホムラは傘立てを漁るようにしてステッキを引っ張り出すと、少々妙な姿の怪盗の出来上がり。
眼鏡を軽く押し上げて一つ頷くと、ノックの音に慌ててマントとシルクハットを洋服ダンスへ放り込み。
「引っ越したばかりで色々大変かも知れませんが、何かあったら声をかけてくださいね♪」
にっこり笑顔のエリア演じる『げしゅくやのむすめさん』に笑って頷くホムラの下に役名『ポップルスタック』、後ろ手にはステッキを隠し持っているのでした。
●マンションをたてよう!?
「ファンタジーのように違う世界じゃないから簡単になれると思ったんだが‥‥」
アパートの鍵を開けて中へと入るホムラ、自分の部屋へと向かう階段を昇りかけ、話し声に気が付き立ち止まります。
『こんなぼろアパートは取り壊して、マンションを建てるのがいいと思わんかね?』
『そんなぼろアパートを気に入ってくれる方はいらっしゃるんですよ』
声のする方へとホムラが近付いていき覗き込めば、リーベ・レンジ(fa2825)がエリアとやり合っているようで、レンズの下には『おかねもち』と表示されます。
「チミの所の住人がいなくなれば、こんなぼろアパートがお役御免だって気が付くのかね?」
「脅しですの?」
「いいや、遠くない未来を言っているのだよ」
にたっと笑って帽子を手に取るレンズに気が付いて慌てて階段を駆け上がるホムラ、部屋に駆け込むと、机へと歩み寄るのでした。
「少し丈夫な紙ですか? ええっと、それなら確かここに‥‥」
ホムラに言われ捜し物をしているの所へ顔を出すのは丸眼鏡に老け顔メイクをした小野田有馬(fa1242)で『ざっかやのおじさん』。
「おいおい、迷惑かけるんじゃない」
「あ、ありました、これでいいですか?」
社長に言われて眉を寄せホムラですが、そこに紙の束を手に出て来るエリア。
「まあ、しっかり男手として働いて、エリアちゃんの役に立つようにな」
「あらおじさん、荷物ですか?」
「ついでに若造に説教をしてやったんだ。騒ぎを起こすのはわしが許さんぞ」
「騒ぎなんか起こさないよ。エリアさん、ありがとう」
紙の束を手にそそくさと戻っていくホムラに怪訝そうな顔をする社長、すぐにエリアとの談笑へと戻っていくのでした。
「『‥‥こらしめる意味を込めて、今夜お邪魔させていただきます。――怪盗ポップルスタック』‥‥こんなものだろうか?」
紙に書き上げた予告状を、何を思ったか織り始めるホムラ、出来上がったのは紙飛行機で、窓からレンズの家の方を確認してていと投げると、紙飛行機はくるくる回りながら下の通りへと落ちていきます。
「‥‥まぁ、予告状をわざわざ出して盗みに入る奴もいないよな」
何も見なかったかのように部屋へと戻っていくホムラを、頭のてっぺんを押さえて見上げるダース・リィコ(fa3330)。
「怪盗ポップルスタック?」
ダースの下には『こうこうせい:川原吉之助』と書かれ、まぁいいや、と言いながらぽいと紙飛行機を放り投げて立ち去り、暗転。
●はつしごとのよる
黒い普通のスーツに黒のマントとシルクハット、勇んで階段を下りていけば、エリアの部屋の前。
「あら、お出かけ? この街が平和だからって、夜は危ないかも知れないですよ。気を付けて行ってらしてくださいね」
その出で立ちも特に気にしないエリアに見送られると、地図を手にてくてく歩くホムラ。
「ここか」
でんとそびえる立派な豪邸、『おかねもちのいえ』の呼び鈴を押せば、音は鳴らずに門ごとそのまま押されて開いてしまうお金持ちの家。
画面一杯の美術品など、成金趣味たっぷりのロビーから、玄関が開き、お邪魔しますとホムラが入ってくると、右のドアに入り、暫くして左のドアから出てきます。
「あれ?」
2階に上がって手近な戸に入っていくと、すぐにロビーの戸から顔をだしてますます首を傾げるホムラ。
左の戸に入っていくのと同時に、右の戸から出て来るのはお仕着せなかっちりとしたハウスメイドの姿の高白百合(fa2431)で、すぐ下に『しようにん』と書かれ、画面正面へと顔を向ける百合。
「あ、メイドさんじゃないですよ? あくまで使用人ですから」
言ってから物語の世界へ、左の戸に百合が入っていくと、2階から出て来るホムラ、百合はすぐにロビーの奥の戸から当たり前のように出てきます。
「??」
今来た戸に戻っていくと、ロビーの右側の戸から出て来るホムラと、玄関の鍵を確認している百合、互いに背中を向けたまま相手の方へと進んでいき、接触。
「あ、済まない」
「あら? 夜分遅くご苦労様です。どのようなご用件でしょう?」
「いや、ここに住むお金持ちに反省して貰おうとやって来た怪盗だが‥‥」
「え?」
「‥‥?」
「も、もしかして泥棒さんですか?」
「いや、あくまで怪盗であって、泥棒では‥‥」
「きゃ、きゃーっ! たーすけーてー! おかあざーんっ!!」
屋敷中に響き渡るような叫びが上がり、どたどたと駆けてくる足音、ばんと戸を開き駆け込んでくる霧村鑑(fa0231)の下に『ちょっときのつよいおてつだいさん』と表示されます。
「何っ!? 泥棒っ!? えっと、さ、殺虫剤っ!」
すちゃ、と取り出した缶に慌てて階段上へと逃げるホムラ、きゃーきゃびーびー泣く百合を他所に、右へ左へ、扉から扉へと逃げていく様子が固定された画面前で繰り広げられ、何度目かの階段駆け上がりにUターンで左のドアへとは言って行くきりむー、2階の階段へと先回りしたようですが、出てきたところをホムラと激突、何故かホムラだけがころころ階段を転落していきます。
『よいこはまねしないでね』の注意書きの中、上に『REPLAY』と書かれ、いろんな方向から転がるホムラですが、なんだか転がり落ちる度に服がよれていきます。
「で、出直そう」
「あ、お帰りですか?」
それまで泣いていた百合がぴたりと止まるのに見送られて逃げていくホムラに、殺虫剤を手に表までかけ出していくと、自転車に乗るきりむー。
「つ、捕まえてやっ‥‥ぬあぁっ!?」
ドップラー効果で離れていく声が遠くで響く悲鳴と急ブレーキの音、激突音になり、辺りがすっかり静まると、百合は手を口にあて欠伸を噛み殺して部屋へと戻っていくのでした。
●おわりよければ‥‥
「大変な目にあった‥‥やっぱり準備が足りなかったな」
言いながらよろよろ歩いてくるホムラ、そこへ通りかかったダースが何かに気が付いたように声を上げ。
「あっ、あいつだ、ポップル! ポップル‥‥ポップル何とかだよ!」
ダースが騒ぐ声に守山脩太郎(fa2552)が顔を上げると、『ほあんかん:ショーン』と表示、つかつかホムラへ近付きます。
「怪しい奴だな、保安官事務所へ一緒に来て貰おうか」
「まずい‥‥」
よたよたと走り出して飛びつくように手近なお店、『ざっかやさん』へ。
薄暗い店内、整然と並んだ品物の数。
「こらっ、逃げるな!」
「無茶を言うな!」
書けだしたホムラの足に何かが引っかかり転倒、大きな物の崩れる音。
「うわっ!?」
そして修さんの悲鳴。
「‥‥保安官、何をしているのかね?」
寝間着姿にガウンを羽織った社長がそう言って電気を付ければ、物の散乱した店内、小さな箱に埋もれた修さんがよろよろと身体を起こし、脱兎の如く店内から逃げていくホムラに気が付いた社長は渋い顔をするのでした。
「あら、大丈夫?」
傷だらけの身体でふらついていたホムラに気が付いて声をかけるのはアドリアーネ・ロッシ(fa2346)。
「寄っていきなさいな、私の家はすぐそこだから」
言って部屋へと招き入れて医療箱を手に歩み寄るアーネに『さかばのうたひめ:アマンダ』。
「しみる? 何でこんな怪我をしたのかしら?」
「いや、怪盗をしに行って‥‥――っ!!」
ホムラの声にならない叫びの後、画面はフェードアウト。
『私昨夜、怪盗さんの手当をしたんですよ〜』
『あら、そうなんですか?』
ほのぼのとアーネとエリアの会話が聞こえてきて起き出すホムラ、そこへいつもの荷物を手に現れる社長。
「エリアちゃん、ほれ、今日の分。アマンダも来ていたのかい?」
エンディングテーマの流れ始める中、ホムラに顔を向ける社長。
「あとお前にはこれだ」
ぺらりと渡される紙を覗き込むホムラ、紙へ画面寄ると『請求書』と書かれてあり、困りガオをホムラを映してから画面は暗転、右の隅に小さく『END‥‥?』と書かれて、映像は終わるのでした。