マヤの夢跡・遺跡取材1南北アメリカ

種類 ショート
担当 想夢公司
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 やや難
報酬 1.6万円
参加人数 8人
サポート 1人
期間 05/25〜05/31

●本文

「そうだ、チチェン・イツァに逝こう‥‥」
 とある昼下がり、自室の部屋からどこまでも遠くを見つめながらぼそっと呟く男が一人。
「ジェイク、現実逃避は駄目だよ」
 そこはジェイク・オーエン監督の自室、窓から遠くを眺めているのはこの部屋の主、ジェイク、そしてその部屋のソファーを占拠して、紙の束を積み上げながら言うのは幼馴染みで腐れ縁の同業者、ジャイル・マイル監督です。
「まぁ、冗談は置いて置いて、実際取材に行ってこなきゃいけないんだ、何度かに分けて」
「あ、じゃあ僕が行くー」
「却下。今度という今度は俺が行くんだ、というか、何を取材してくりゃ良いのか分からないだろうが、お前は」
「ジェイクだけ遊んでくるの、ずるいー」
「‥‥お前なぁ‥‥」
 深く溜息をついて言うジェイク監督。
「マヤ文明の探検家達の話と、跡は実際にマヤを舞台にした奴、一話完結とかそう言うノリで作ろうと思っているんだが、まずは情報集めに南米といったり来たりになる予定なんだ」
「むー僕だって、マヤのやりたいよ、生け贄の井戸や髑髏の祭壇を使ってこう、深夜帯俗悪のー」
「だから微妙なんだよ、お前と行くと‥‥」
 額に手を当てて言うと、溜息をつくジェイク。
「まぁ、何だ、そう言うわけで、手伝ってくれる人間とかと、色々イメージを膨らませて脚本の種を色々拾って来たくてな」
「で、いつ行くの?」
「あと数日後に」
「えっ‥‥に、荷造り急がなきゃ!」
「お、おいっ、連れて行くとは誰も‥‥」
「じゃ、ジェイクあとでね〜!」
「‥‥言っていない‥‥」
 ぽつんと一人残されて暫くぽかんと見送ると、ジェイクは溜息をついて、のろのろと荷物の準備にはいるのでした。

●今回の参加者

 fa0288 水無瀬霖(21歳・♀・猫)
 fa2153 真紅(19歳・♀・獅子)
 fa2187 小金#キララ(25歳・♀・鴉)
 fa2266 カリン・マーブル(20歳・♀・牛)
 fa2579 藤岡・作治(45歳・♂・蛇)
 fa2671 ミゲール・イグレシアス(23歳・♂・熊)
 fa3308 ヴァールハイト・S(27歳・♂・竜)
 fa3763 グリフォン・小鳥遊(24歳・♀・鷹)

●リプレイ本文

●嬉し楽しい観光旅行
「もう、思ったよりも大荷物になったわね」
 朝方の空港、タクシーの荷台から大きな旅行鞄を引っ張り出そうと苦心しているのは真紅(fa2153)。
 空港入口は人でごった返し、姿の良いルージュを振り返るものもちらほら、と、ひょいと大きな旅行鞄が横から伸びた手に持ち上げられて振り返ると、そこにはジェイク・オーエン監督が笑っています。
「鞄をお持ちしましょうか? お嬢さん」
「ジェイク監督! おはようございます」
「ルージュさん、やっほ〜」
「それにジャイル監督も」
 笑うルージュにカート付の旅行鞄を降ろし、タクシーにチップを渡して残りの鞄を取り出し歩き出すジェイクに、ルージュとジャイルは後について歩き出すのでした。
「チチェン・イツァ‥‥本やテレビでしか見た事がないから楽しみです!」
「それは良かった、俺は学生時代に一度行っただけだが、興味深いものもいろいろと見られるだろう」
 荷物を預けルージュと談笑していたジェイクに水無瀬霖(fa0288)が少々興奮気味に言えば、ジェイクは笑いながら頷き。
「夢のようです、天文台のように使っていた建物やカスティージョのピラミッドなどが見れるのって」
「緑の中に存在する美しい遺跡だよ。興味が無ければ妙な石の塊なんだそうだが、やはりロマンがあるな」
「ジェイク監督は学生時代に行ったとき、どこが一番印象に残りました?」
 幸せそうなリンに笑うジェイク、ルージュは軽く首を傾げて言えば、遺跡の真ん中で辺りを見回した時は感動の一言だったよ、と答えます。
「遺跡やから一応は、ナイトウォーカーが出てくることとかあるんやろかな?」
「一応警戒はしておくか、こう監督たちの目的があまり読めんからな」
「ん〜? 気分転換とアイデア集めの取材だよ〜? といってもジェイクはいくつか南米の遺跡を使った企画を立てているらしいけど」
 ミゲール・イグレシアス(fa2671)とヴァールハイト・S(fa3308)が話し合っていると、ジャイルがひょっこり顔を出し。
「ジェイク働き詰めだから、お休みもかねてー。仕事してないと落ち着かないらしいから、ついでに取材なんだって」
「なんや、監督サンもご苦労な性格やなぁ」
 ミゲールはそう言って苦笑するのでした。
「ジャイル監督、機材はこれで良いんですか?」
「うん、デジタルビデオに防水プロテクタ。今回のは刊行しながら資料としていろいろととって回る予定だから、データとして残しやすいのでってね♪」
「初日は到着してから、カンクンのホテルで情報の整理と、各種手続きの確認だな」
 カリン・マーブル(fa2266)が撮影道具の入ったバッグを確認してジャイルに聞くと頷くジャイル、小金#キララ(fa2187)が手帳を取りだして確認します。
「後は現地でのバンの手配を申し込んでおいた。まずはメキシコシティまで4時間半、そこから乗り継いでカンクンまでは2時間弱だな」
「ゆったりと楽しい空の旅になりそうですね☆」
 カリンがチケットを見てにっこりと笑うと、鉄も同意を込めて口元に笑みを浮かべて頷くのでした。 

●遺跡
 白のバンがチチェン・イツァへと辿り着くと、車からわらわらと降りて、めいめいに体を解す一行。
「あそこから見渡す景色は最高だったなぁ」
 笑みを浮かべて見上げるジェイクに、ぴたっと動きが固まりさりげなく離れていくジャイル、怪訝そうに見るのはルージュです。
「どうしたんです?」
「い、いや、僕あんな急勾配に登ったら降りられないし」
 戦士の神殿は登れませんが、エルカスティージョは急勾配の9層基盤を持った立派な神殿。
「登ってみる?」
「カスティージョのピラミッドは四方に設けられた91段の階段と頂上の1段とで、365日を表わしているんでしたよね」
 首を傾げるように言うリンに、頷くジェイク。
「さすがにあれは‥‥凄いわね」
「まぁ、手を貸すから、登ってみよう」
「はぁ‥‥昔の方の、と言いますか、マヤ文明の偉大さを身に感じる瞬間と言うか。私たちはカレンダーや何か情報で知っていくのに、身で感じようとしていたなんて‥‥」
 ぱっと盛り上がっているそばでは、ミゲールがマシンガントークとでもいえそうな勢いで現地のガイドと談笑をしてます。
「オー、アミ〜ゴ!」
 ミゲールが身振り手振りで指を立て、折り金額交渉を持ちかけ、首を振りつつ葛藤する様子の現地ガイド。
「何をしていたんだ?」
 思わずヴァルが聞けば、なにやらちょっとだけでも登れない? と交渉してみたけど無理だった、などと笑い。
 暫くすれば段を登りながらの歓声や悲鳴が聞こえてきて、ジャイルはそんな一行をカメラで取り巻くっています。
「ほう‥‥これは、素晴らしいな‥‥」
 ほう、と目を細めてため息をつく鉄、最上段から見渡す景色は、緑に囲まれた神秘的な遺跡の姿。
「次は神殿の中だな」
 降りるのに手間取りながらも神殿内部へと進めば、大人一人が通れるような暗く細くじめじめとした通路を進み、一同を迎えるジャガーの姿。
「‥‥凄い‥‥とはいえ、ホラーとかスプラッタは少々苦手なのよね‥‥一人じゃ見られないタイプなの」
 自分の腕を抱きしめるようにして言うルージュに、くすりと小さく笑みを零すジェイク。
「もう、笑わないでくださいよ」
「はは、悪い。でも、そういうのも良いんじゃないか? 一人で来なければいいんだから」
 笑って言うジェイクに赤くなったルージュも顔を綻ばせて頷くのでした。

●上空から
「うわー‥‥こうして見ると、本当に綺麗な遺跡ですね」
 その後、カコラルや球戯場を見て回り、写真もたくさん収め雨に降られてずぶぬれになったり、思い思いの観光を楽しんだ一行、残すところも帰る日を入れて2日、いわば最後の観光に使える日です。
「ヘリをチャーターしようとしたんやけど、こっちなら用意できるいうてなぁ」
 そう言って笑ったミゲールは、自身が重いことを理由に乗り込んでおらず、高いところが怖いらしいジャイルも下でセノーテを覗いているよう。
 そこはチャーターしたセスナ機の中。
「森の中に突如開ける遺跡の数々、といった感じですね」
 ほう、と頬に手を当てカリンがため息をつけば、鉄は地図と見合わせて、それぞれの施設がどれかを確認しながら、時折周りに遺跡の位置を教えたりしています。
「まぁ何にせよ、監督たちの懐具合に余裕があって良かったな」
 そう言いながら見下ろすヴァルに、上空からっていう手もあったんだよね、確かに、と頷いて言うジェイク。
「実際撮影に入るとしたら、他の遺跡も見てここをロケに使ったり、カンクンと自宅を行ったり来たりになりそうだな」
 ジェイクがしみじみ言えば一同頷いて改めて遺跡を見下ろすのでした。
「泉のほとり‥‥やっぱり、チチェンといえばここだよね〜♪」
 そう言って、セスナから戻る一同を引っ張ってセノーテに行くのはジャイル。
 言うと開ける聖なる泉、セノーテ。
「‥‥ここのそこには、生贄として捧げられた人が身に着けていた、金銀財宝が沈んでるとか、いろいろ言われてるよねー」
「セスナに乗らずにわざわざここに来たのは、そういう話をする下調べか」
「良いじゃん、泉のそこに沈む財宝を巡っての血みどろな戦いとか、パニックホラー♪」
「‥‥ジャイル監督は何でもパニックホラーをつけるのが趣味のようだな」
 泉のほとり、思い思いに眺めれば、茜色に染まるチチェン・イツァ。
「帰るのが勿体ないな‥‥」
「‥‥また来れば良いんですよ」
 ポツリとつぶやくジェイクに、微笑を浮かべてルージュは言うのでした。

●マヤの夢跡
 カンクン最後の夜、レストラン、窓辺の席でちらほら見える明かりを眺めながら、各自が感じた感想や脚本の案を話し合う一行。
「生贄が捧げられたこの地で、今こんなに美しい場所なのは、信仰が根付いていたからでしょうね」
「何かを作り上げる場合、信仰への姿は不可欠といったところか‥‥異教の徒であったとしても、感じるものがここには確かに在る」
 リンが感慨深げに言えば、頷く鉄。
「生贄を決めた球戯場‥‥そうね‥‥それまでは『敗者』が贄となっていたのにイカサマを持ちかけられた男が全力で勝ち、『弱き者を贄にしても神は喜ばぬ』と自ら生贄に志願と言うのを思いついたけど‥‥」
 こちらは脚本の種を話し合っている様子のルージュとジェイク、そしてジャイル。
「‥‥こんなのはどうかしら、ジェイク監督?」
「ん、そうだな、戻ったら少し考えていくつかと相談してみようかな」
 ルージュの言葉に笑みを浮かべると、ジェイクは窓の外に広がるカンクンの町を眺めるのでした。