素敵な猫の育て方南北アメリカ
種類 |
ショート
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担当 |
想夢公司
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
4.9万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
05/25〜05/31
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●本文
「マネージャーさん‥‥」
脚本を手になんだか少ししょんぼりとした様子で入るのは、豊かな黒髪を束ねた少女・絵理亜・フォーロード。
父親が著名なアクション俳優の父と2番目の妻である日本人の母との間に生まれたハーフの17歳で、最近は国内で出た映画の評判も上々の期待される新人女優です。
「あれ? どうしたの? 今度は問題ある依頼は取ってきてないと思うんだけど‥‥」
困った顔で首を傾げるマネージャーに、エリアはばっと脚本の配役を指さしながら突きつけます
「だって‥‥だって、猫嫌いの演技なんて、出来ないっ!」
「‥‥へ?」
「この子、こんなに可愛いのに、猫が嫌いーって‥‥うう、可愛いのにー‥‥」
「あ、そっか、忘れてた‥‥」
そう言って頭を掻き、エリアの少々錯乱気味の状況を見て頷くマネージャー。
「えっと、本当にちっちゃくて物心付く頃に可愛がっていた猫が居なくなっちゃって猫嫌いになった女の子の役だったんだっけ」
そう言って脚本を受け取ってぺらぺらとページを捲るマネージャー。
その表紙には『素敵な猫の育て方』と書かれていて、黒くてふわふわの仔猫が大きな目を僅かに潤ませて見つめてくる、何とも愛らしい写真が貼り付けられています。
「性格はちょっと臆病だけど、お利口さんで、聞き分けが良い‥‥ふわふわのゴージャスな毛並みの雑種で、その黒い毛並みは滑らかで柔らかい‥‥?? あぁ、これ、ノラだった猫一家を引き取って育てる話なのか、しかも本物のノラ一家を使って」
「‥‥撮影以外の時、私飼っちゃ駄目かなぁ‥‥」
「一家ごと引き取れるならね。まぁ、撮影が終わるまではスタッフの方できちんと管理して育てる形になるみたいだけどね」
写真を見て実に幸せそうなエリアに、苦笑気味に笑うマネージャー。
「それに大丈夫、元々は猫好きの子が、トラウマで飼えなくなってたってだけの展開だから、最後に『やっぱり猫が好き』って思っているのが分かりながらも、『猫は嫌い!』って言っちゃう意地っ張りな子のお話だから」
「猫が嫌いだなんて、言えない〜‥‥」
「エリアは無類の猫好きだからねぇ‥‥まぁ、大丈夫、それにこの役、猫との絡みはばっちり、だって、一家を引き取ることになっているわけだし?」
「んみゅ‥‥」
マネージャーの説得に、エリアは困ったような表情を浮かべて脚本を眺めるのでした。
●リプレイ本文
●雨の日の出来事
薄暗い画面、白いベンチ前にバスが停まり青い傘と荷物を手に降りるエリアの姿。
バスの窓からむすっと興味なさげに座っていた鷹部 志朗(fa3716)が目で青い傘を見送ると、バス走り去り。
長閑な道を青い傘がゆっくりと歩いていき、タイトル。
『素敵な猫の育て方』
大きな鞄、両手に缶詰の詰まった手提げ袋、器用に肩と腕で傘を差し鼻歌混じりに歩くのはジョゼ・ジャクリーン(fa3768)。
「〜♪ ‥‥あれ?」
橋に差し掛かり流れてくる箱に気付き、中州に引っかかった箱で何か黒いものがぴこぴこ動き耳を澄ませば、弱々しい猫の鳴き声、荷物を放り出して河原へと駆け下りるジョゼ。
「猫がっ、流れが速くて‥‥誰かー!」
川に足を踏み出しその強い流れに悔しそうに辺りを見回すと、放り出した荷物を怪訝そうに見下ろすエリアを見つけ声を上げるジョゼ。
「エリア姉ちゃん!」
「ジョゼ君? どうしたの、そんな‥‥」
言いかけ駆け寄るエリアに箱を指し示すジョゼ。
「猫が流されてるんだっ!」
縋り付きずぶ濡れのジョゼに顔を上げるエリア、箱は既にぐらぐらと揺れ今にも流れ出しそうで、大きな鞄と青い傘を放り出し川へと入っていくエリア。
「まぁ何です、二人共!」
エマ・ゴールドウィン(fa3764)の声が入り、場面は閑静な住宅街の玄関先、ずぶ濡れで箱を抱えて顔を見合わせるエリアとジョゼに、エミーは大きなバスタオルを持ってくると浴室へと促します。
「‥‥この箱は?」
「川を流されてて、姉ちゃんに‥‥」
リーベ・レンジ(fa2825)演じる『レイベンハイト』が箱を見ながら聞くのに応えるジョゼ、エミーがごしごしとバスタオルで頭を拭うのに言葉を途切れさせます。
「猫‥‥」
眉を顰めるレンズは窺うようにエリアが消えた浴室へ目を向け、バスタオルを被ったままジョゼは箱を開けると、黒い母猫が大きく目を見開いてジョゼを見、寄り添う小さな黒い毛玉が二つふるふる震えながら同じ顔で見上げてきます。
「‥‥ぅな〜ん」
「この猫、たぶん飼われていたんだろうな‥‥」
指を差し出せばざりざり舐める母猫にジョゼが呟くと、着替えてきたエリアがタオルで髪を拭いつつ来ると、エミーは母猫や仔猫をふかふかのクッションを敷き詰めてあるソファーへ、タオルで拭って出し小さく息を吐きます。
「パパ、おばあちゃん、ただいま」
レンズとエミーの頬にキスをしソファーの猫を見るエリア、それまで怯え竦んで固まっていた長毛の仔猫が、みーみー必死にエリアへ訴えるように鳴きだし。
母猫が仔猫達をぺろぺろと舐め始めれば、もう一匹の母親似の短毛な仔猫はみゅーみゅー母猫のお腹に潜り、やがて母猫は落ち着いたかごろんと横になり仔猫達へお腹を見せるのでした。
●責任
呼び鈴の音にエミーが出ると、カイン・フォルネウス(fa2446)と甲斐・大地(fa3635)が入ってきました。
「相変わらず元気そうだな、エリア君。ジョゼが世話になったようで‥‥」
言うカインの頭と肩にそれぞれ、合わせて3匹の猫がでんと陣取り、頭の猫が目をしぱしぱさせくわっと欠伸をします。
「エリア、落とし物〜。で、猫拾ったんだって?」
のんびりダイチがポーチを軽く振って言えば、可愛いと指でちょいちょい母猫の額を撫で、母猫はぐるぐるとしながら仔猫達にミルクを与え。
「ふむ、仔猫は可愛い盛りだし、なかなか‥‥」
「ウチにはもうそんな余裕ないだろー?!」
羨ましそうに見るカインに突っ込むジョゼ。
「猫可愛いよね。ボクのところでは飼えないんだけど〜‥‥飼い猫だったみたいだね、首の所に首輪の跡みたいな癖が付いているし‥‥子供を産んだから飼えなくなったのかなぁ?」
「そんな、飼えなくなったから捨てるなんて‥‥しかも川に流すなんてっ!」
首を傾げるダイチに言うエリア、そんなエリアをじっと見て静かにジョゼは口を開きます。
「なぁ、姉ちゃんのウチで飼えない? 家はもう猫が一杯でそんな中に連れて行くのは可哀相だし‥‥」
「え‥‥でも、私猫は‥‥」
「嗚呼、猫の愛くるしさを理解出来ないなんて、こんな悲劇が他にあろうか!? いや、ない!!」
「‥‥あれはほっといて‥‥猫の為にあれだけ怒れるんだったら大丈夫、僕も困ったことがあったら手伝うし」
「でも‥‥」
言い淀むエリア。
「貴女が救った命です、エリア。責任を全うしなさい」
そこへぴしゃりと厳しく言葉を発したのはエミー。
焼き立てアップルパイをテーブルに置くと、パンをちぎりミルクに浸して暖めたものを母猫へと与え、じっとエミーはエリアを見つめます。
「助けたからには責任と義務が生じます。そうでなくては貴女が憤ったこの子達の元の飼い主と変わらないのですよ」
「‥‥」
エミーの言葉にエリアは困ったように猫達へと目を落とすのでした。
●再現された悪夢
良く晴れた昼下がり、ステラ・ディスティニー(fa2443)は母猫がてちてちと身体を舐めて毛繕い中を見て立ち止まると、ゆっくり近づき屈みました。
「‥‥」
「みゅ‥‥」
手を伸ばすとくるりと振り返った母猫、くんと小さく鼻を動かしすとぷいと離れて行き、じっと手を見るステラは大きく溜息をつきとぼとぼと歩き出すと歩き去っていきます。
「どうしたの? ママさん?」
「みー!」
てこてこ戻った母猫にダイチの膝の上にいた短毛の仔猫が母猫にすり寄りますが、見れば長毛の仔猫が居ないことに気付き、キッチンにいるエリア達に声をかけ。
「エリアー、チビちゃんが一匹いないよ〜」
キッチンで並んで魚やチキンでの猫ご飯をエリアに教えていたジョゼも不思議そうな顔で見回します。
「エマおばあちゃん、仔猫知らない?」
「いいえ、エリアの側にいなければテラスでお昼寝しているのでは?」
年代物のオーブンの火加減を見ながらのエミーに、テラスを見に行くエリアとジョゼ。
「テラスには‥‥あっ」
「‥‥!」
か細い声で必死に鳴く仔猫は庭の木の枝に必死にしがみつき、その下で見上げる志朗の姿。
「何するのよっ!?」
怒り背伸びをし猫を降ろすエリアに、フンと鼻を鳴らし睨み付ける志朗、怯えエリアの服に爪を立て掴まる仔猫を庇い、エリアはジョゼと家の中へ戻るのでした。
「乱暴で男の子って嫌い! 何度もこの子を苛めて‥‥」
「姉ちゃん、僕も男‥‥」
苦笑しわしゃわしゃと短毛仔猫のお腹を撫でて言うジョゼに、エリアの足にぴったりと付く長毛の仔猫、そして母猫はソファーの上でお腹を見せて幸せそうに夢の中。
「短い毛の子なら飼っても良いって人居るんだけどね〜」
「‥‥家族ばらばらにするのは‥‥」
ダイチが言えば眉を寄せ焼き立てのカスタードパイを食べエリアは小さく息をつき、構って貰えない臆病な仔猫は小さく鼻を鳴らしました。
「エリア、もう名前は決まったのか?」
画面は夕刻、尋ねるレンズにエミーと片付けをしていたエリアは顔を上げると首を振ります。
「男の子の名前だからなかなか‥‥母猫はすっかりママが自分の名前だと思ったみたい」
くすっと笑い猫達が眠っているのソファーを見れば、長毛の仔猫はお気に入りのテラスで眠っているかのか姿が見えません。
「‥‥」
「どうした? エリア」
「昼間にクラスメイトがあの仔猫に意地悪したの、テラスのベンチで眠ってたのを‥‥」
「あの子は少し乱暴だと聞くわね。お兄様が独立してお母様と二人だから肩身が狭いのだとか聞くけれど」
言うエミーに不安げな表情でテラスへ向かうエリアは仔猫がいないと懐中電灯を手に飛び出していきます。
「エリア姉ちゃん、どうしたん?」
「仔猫が一匹いないの!」
「まさか‥‥」
慌ててパーカーを手にとって出てくるジョゼ。
「僕も探すよ!」
捜しながら2人は自然と川の方へ駆け出し、画面川原、橋の上からぼんやり眺める志朗に真っ青な顔で近付くエリア。
「あの子、どこにやったの‥‥?」
「そろそろ急流に飲み込まれてるんじゃないか?」
顔を顰めて言う志朗に、ぱんと乾いた音。
頬を押さえる志朗から画面は川原へ降りるジョゼ達、そしてざばざば水に入っていくエリアが映し出され、消え入りそうな猫の鳴き声に徐々に近付きエリアは箱を手繰り寄せると泣きながら仔猫を取り出してぎゅっと抱きしめます。
「姉ちゃん、早く! 濡れたままだと冷えて危ない!」
ジョゼの言葉に川原へ上がると、ふるふる震えながらざりっとエリアの涙を舐める仔猫。
「‥‥悪かった‥‥鳴いてりゃ何とかして貰えるって感じのそいつがなんか、むかついたんだよ‥‥」
僅かに赤い頬を擦り歩み寄りぽつり言う志朗。
「悪かった。もうしない‥‥」
猫を抱きぼろぼろと泣くエリアに、志朗は呟くように告げるのでした。
●やっぱり猫は嫌い? 〜スタッフロール〜
「いやー、この子がエリアを気にいってね、休みが終われば週一でしか帰ってこられないので、可愛そうなんだよ。まあ、学校の方にも掛け合ってみたいけどね。何か良い言い分は無いものかね?」
「君にはその素質があると思っていたよ。そう! 猫好きの素質が! 君はもはや、我が同士!」
「ち、違っ‥‥第一それは猫の方が‥‥わ、私は猫は嫌いなんだからっ!」
「ふみゅ‥‥」
「あ、ああっ、そんな顔をしないで〜」
猫を見せ言うレンズにエリアに自分の猫を見せ力説するカイン、そして嫌いと言って仔猫に悲しそうに見られあたふたするエリア。
「で、エリア、良い名前は決まったか?」
「この子達は弱々しいから強い子になるように、こっちがトムでこっちがイーグル」
言って短毛の仔猫、長毛の仔猫の順で指すエリア、ステラが近づきトムと呼ばれた短毛の仔猫を抱き上げると、ふみふみと腕を踏んで腕の中に潜り込むトムにステラも嬉しそうににっこり。
「でも、何で姉ちゃんそんなに猫が嫌いなのさ」
「小さい頃に引っ掻かれ叱ったら逃げちゃったから‥‥」
エリアの言葉にミートパイを運ぶエミーが軽く首を傾げます。
「おや、覚えてないの? 大人しくて年寄り猫だったけど、貴女はそれはそれは可愛がっていて‥‥」
ソファーに腰を下ろし話し出すエミーに、膝へママが乗っかり擦り寄り、撫でるエミー。
ジョゼと並び聞くエリアに、イーグルはぴったりとくっついて、そのふわふわの尻尾をピンと立て、暗転。
猫達が運ばれるとトムに近付いてわしゃわしゃ撫で話しかけながら頬擦りするジョゼ、隣でイーグルがエリアの肩に乗り辺りを見回し。
沢山の猫と遊び戯れているカインや猫に群がられたダイチの、そのたわわな胸をふみふみと整えでんと眠り始める猫。
エミーがパイを取りに行けばレンズが撫でていたママがエミーの足元へと尻尾を立て甘えて擦り寄り。
叩かれた頬に手を当てる志朗、カットと共に謝るエリアにぷっと小さく吹き出し、ステラがトムを画面へと差し出すと、トムが画面へ猫パンチをし暗転、スタッフロールが流れ始めるのでした。