バーバリアンレディ南北アメリカ

種類 ショート
担当 想夢公司
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 1.2万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 10/30〜11/03

●本文

 その日、彼の事務所には誰も来ていませんでした‥‥。

『バーバリアンレディ〜殺戮の86Th.St駅〜』
 そう書かれた企画書をテーブルにぶちまけて、気の弱そうな細身で小柄な監督は溜息をつきます。
「ジャイル、どうしたんだ、今度は?」
「‥‥良く来てくれたねジェイク‥‥実は主演女優が‥‥」
「あぁ、あの我が儘な女、どうしたんだ?」
「『こんな駄作にあたしの名前を出したら名誉毀損で訴えるわよ! 出演費を返せって!? 冗談じゃないわ、こんなに時間を無駄にさせて! 損害賠償請求しても良いのよ!?』だって‥‥」
「それで引き下がったのか? 契約書もちゃんと‥‥」
「おっかない奴らに持って行かれちゃった‥‥」
 しょんぼりと肩を落とす幼馴染みに溜息を漏らすと、ジェイクと呼ばれた男は歩み寄って首を傾げます。
「で、どこまで出来たんだ?」
「主演女優の部分を全部差し替えだから、顔と体格がはっきり分かるところは取り直しだけど、後は地下鉄のストリート駅で宴会しているシーンと1人の掃除夫が通りかかるのに群がるバーバリアン達‥‥ぐらいかな。あとは僕がCGを寝ないで遣れば間に合う、と思う‥‥」
「‥‥仕方ないな‥‥それは手伝ってやるよ。他のスタッフもあの女が降りたら居なく‥‥?」
「うん‥‥」
「何人雇える?」
「僕の手持ちだと、あと4人‥‥」
「俺も少し出そう‥‥給料日後だったらもう少し払えるが、何とか4人分‥‥」
「この際贅沢は言えないな‥‥募集人員で女が来なけりゃ女装でもさせて作りゃいいだろ。ほら、いつまでもしょぼくれてんじゃねーよ!」
 ばん、とジェイクはジャイル・マイル監督の肩をばんと叩いて立ち上がるのでした。

●今回の参加者

 fa0280 森村・葵(17歳・♀・竜)
 fa0373 ボンバー雛ちゃん♪(25歳・♀・虎)
 fa0919 六道 凛音(17歳・♀・牛)
 fa1206 緑川安則(25歳・♂・竜)
 fa1242 小野田有馬(37歳・♂・猫)
 fa1390 アンリ・バシュメット(17歳・♀・狐)
 fa1688 ライトニング・サツキ(16歳・♀・猫)
 fa1866 天野 檸檬(20歳・♀・小鳥)

●リプレイ本文

●オープニング
 オープニングは音楽が流れるなか、色々な画面の切り貼り。
 衣装合わせを楽しむボンバー雛ちゃん♪(fa0373)や天野檸檬(fa1866)が写ると、小道具である掃除道具セットを座って確認している緑川安則(fa1206)へと画面が転じ。
 何やら籠にお菓子などを入れて抱えて入ってくる森村・葵(fa0280)に、脚本を手に何やら話し合っている他の人と小野田有馬(fa1242)。
 六道凛音(fa0919)がPCで埋もれている部屋で1人モニタに向かっていると、そのモニタへ画面が近付いてゆき。
 モニタの向こうへ切り替わるとジャイル・マイル監督とジェイクがブルースクリーンの前に立っているアンリ・バシュメット(fa1390)と談笑するシーンが入り、そして暗転。

●殺戮の86Th.St駅
 セントラルパークの木々の間から、何やら民族音楽が流れてきます。
 ぐるりと辺りを見回す画面には、何も写らず、徐々に慌ただしく画面が切り替わる中、ちらりと肌も露わな女性がちらりと過ぎり、慌てて画面を戻すと、そこにはおびただしいまでの蛮族が何時の間に現れたか、すっかり囲まれてしまいます。
 どちらを見てもバーバリアンしか見あたらない周囲。
 アンリがずいと前へ出て来ると、一声‥‥甲高い一声が発せられたかと思うと、一斉に襲いかかり倒れる画面。
 そして、ジェイクの足が連れ去られるのを映し出していた画面は、そこでぷっつりと切れ、ぶつっと言う音と共に画面は灰色へと。

 『バーバリアンレディ〜殺戮の86Th.St駅〜』

 ばんとそう表示された画面の向こうでは、何やらニュース画面が展開されています。
『セントラルパークで保存生物として保護されていたバーバリアン達ですが突如その生息地であるセントラルパークより大量発生をして流れ出しました。
 警察では市民へと警戒を呼びかけると共に86Th.St駅の閉鎖を発表しております』
 そう言うと、画面がぐっと近寄り、ほぼ同一の大きさになると画面の向こう側に転じます。
『バーバリアン達は保護生物に指定されており、各方面では対応に迫られています。
 なお、パークから86Th.St駅へと移動するまでに数人、駅に残っていた職員数名の生存は、絶望的との‥‥』
 フェードアウトしていくキャスターの声と共に、アンリが古い西欧の衣装、蛮族のそれを身に纏って、駅のゴミ箱の上に背筋をぴんと伸ばして立っています。
 雛ちゃんが虎のマスクに虎柄のビキニを身に纏い、売店を襲撃し、唸るような声に売店の職員が泣いて命乞いをしていますが、その横では胸にこれでもかと詰め物をして女装した小野田が自動販売機を体当たりで倒すとそのボディを引きちぎり、中から缶ジュースを引きずり出しています。
 先程からレモンが毛皮のビキニに同じく毛皮で作ったパレオを身に纏い、駅構内の階段で歌っており、その歌が徐々に早まっていったかと思うと、アンリはゴミ箱から降りて売店へと近付いていき‥‥。
 誰もいない地下鉄の駅が映し出された画面に、売店の男の絶叫が響き渡るのでした。

●掃除夫の哀歌
「今日も元気に仕事仕事‥‥彼女いないオレッチを慰めてくれる天使みたいな女の子、そんな女の子と出会いたいね〜」
 じゃかじゃかとヘッドフォンから流れる賑やかな音と共に、掃除道具をカートに乗せてだらだらと歩いてくると、何やら呟く緑川。
「ってジャパニメーションじゃねえから無理だな‥‥とりあえず仕事すっか」
 そう言って無造作にモップを手に取り床を拭き始めてふと顔を上げる緑川。
「それにしても、誰もいないってのも珍しいな」
 ニュースを見ていない様子の緑川は不思議そうに首を傾げるも、すぐに道具をカートから降ろしてモップを水の入った容器へと突っ込んで、それを引き出して黒くこびりついた目に見えて派手な汚れをごしごしと洗い流し始めます。
 あからさまな異常の様子に気が付かない緑川は、ふとすぐ後ろに突如現れた人の気配に慌てて振り返れば、そこにいつの間にかアンリが立っています。
「な‥‥何だ、お前‥‥」
 そう言いかけた緑川は、あっという間にうじゃうじゃと群がってくるバーバリアン達にずさっと後退り。
「な! なんだ! く‥‥くるのか!? こっちとら軍にいたんだ。数で勝っていても簡単には‥‥」
 威勢の良い言葉もその自身を包囲するその様子に途切れさせ。
 さっと襲いかかってくるバーバリアン達を必死でモップで応戦して蹴散らす緑川ですが、目の前に現れた雛ちゃんが、緑川の盾にした柱を一撃粉砕。
「な‥‥」
 思わず絶句する緑川にぞろぞろと群がった彼等に上がる絶叫。
「待て、脱がすなー!?」
「ふふふ、諦めなさいー!」
「そ、それはダメですー!!」
 何やら群がる彼等の間にはそんな遣り取りはあったようですが、抵抗続ける緑川に、マイクを手にした檸檬がすっと一つ息を吸い込むと、次の瞬間には凄まじい超音波な声が響き渡り、耳を押さえて悶絶する緑川。
「やめろ〜〜〜!! 耳がはじけ飛びそうだ〜〜!」
 絶叫むなしく、緑川の姿は群がるバーバリアン達の姿に、沈んでいく緑川の手が沈んでいき切り替わるのでした。

●バーバリアンの宴、永遠に‥‥
 小野田が缶を潰して杯に飲み物を出すと、大皿でそれを飲み干して、満足げな様子です。
 既に画面では掃除夫の服が転がり、彼がどうなったかを感じさせる様子です。
 何やらジャンクフードの袋を引きちぎるとその中身を食べて食べて食べて食べて食べまくるのがあおい。
 先程から檸檬があり合わせの物で音を上げては歌を歌い続けています。
 ひときわ高いところに座ってじろりと一同を見回すアンリ。
 そんなアンリの様子に吠える雛ちゃんは、ずいと立ち上がりアンリのすぐ近くにあったゴミ箱へと向き直りそれを引きちぎってしまいます。
「!!!」
 何やら怒声と共にアンリが手を振り上げ、力一杯傍らの肘置きに使っていた白い台をたたき割れば、忌々しげに唸った雛ちゃん、ゴミ箱を叩き付けるようにして破壊し尽くします。
 檸檬の歌う歌がどんどん速さを増していく中、ずっと画面が引いていき86Th.St駅の外観を映し出します。
 そして、ある程度まで下がると黒尽くめの武装した男の腕が映り、その手が手慣れたように銃を持ち上げ、かしゃかしゃと銃器の点検を行います。
 そして、その部隊が86Th.St駅へとゆっくりと不気味に歩寄る中、相変わらずアップテンポな曲と共にバーバリアン達の雄叫びが続いていくのでした。

●エンディング
「ふっふっふ、これでもかとばかりにっと♪」
 スタッフロールの流れる中、その背後では嬉しそうに詰め物を胸元へと突っ込んでごそごそとしている小野田が画面へと気が付きにっと笑います。
  どうやらスタッフロールと共に撮影風景が流されている模様。
「アカデミー賞にノミネートされたときには呼んで下さいネ」
「いや、無理だから」
 ジャイルとシェイクハンドしながら明るく笑って言うアオイとジェイクの突っ込み。
「こんな感じの曲でどうかな?」
「うーん‥‥もうちょっとモップでこうリズムを‥‥」
 檸檬が遣ってみせるバケツを叩いての音に、モップで缶を叩き音を確認するのは凛音。
「うーん、ここでバーバリアン達と格闘‥‥」
「あ、あんまり抵抗しちゃダメだよ、掃除夫が勝ってしまったら‥‥」
 軽く首を回しつつ言う緑川に慌てて付け足すジャイル。
「で、ここの柱を壊して‥‥」
「頼むからセットの方を壊してくれよ、本物じゃなく」
 雛ちゃんが差す本物の柱を前に、ちらりとセットで用意した柱へと目を向けるジェイク。
 そして‥‥。
「受けた仕事が嫌だから放り出すだなんて、素人にも劣る人ね。プロ意識があるなら‥‥」
 そう言いながら振り返ると、カメラが回っているのににっこりと笑ってそのまま手を伸ばしてカメラの映像を落とすアンリ。
 そのまま暫く暗い画面のままスタッフロールが流れ続け、再び画面が戻ると、そこには荒廃してあちこちの設備が壊された駅の構内にぽつんと立つジャイル・マイル監督の後ろ姿を映してから、今度こそその映像を終えるのでした。