戦慄のアニマルパーク!南北アメリカ
種類 |
ショート
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担当 |
想夢公司
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
1.2万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
11/25〜11/29
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●本文
「ZOOに閉じこめられちゃった数組のカップルが脱出するまでという映画を取りたいんだ」
「‥‥‥‥は?」
「だ・か・らぁ〜動物園からの脱出だよ」
ここはジェイク・オーエン監督の私室。
先程から消し炭をそのまま飲んでいるかのような苦く濃いコーヒーを啜りながら、欠伸を噛み殺しPCへと向き直っていたジェイクは、幼馴染みで同業者、いわゆる腐れ縁であるジャイル・マイル監督へとしょぼついた目を向けます。
「襲い来る獣人達から必死に逃げまどうカップル達! 徐々に変貌してゆく己の姿! 果たして生還できる物はいるのか!? 『戦慄のアニマルパーク! 〜死んで花実が咲く物か〜』なんてど? どうよ?」
「‥‥」
きらきらとした眼差しをジェイクへと向けるジャイルに、当のジェイクは沈痛な面持ちでガックリ項垂れます。
「なぁ、ジャイル」
「なんだい? ジェイク」
「んな獣人だって吹聴してどうするんだこんの馬鹿野郎ぉ―――っ!!」
「‥‥最後までシナリオを聞いてくれよ、とりあえず怒鳴る前に‥‥」
「で、とりあえず仕事中断してるんだ、話すならさくっと要点を」
頷いたジャイルは少し考える様子を見せてから、ざっとあらすじを説明します。
日が沈んだ動物園、カップルが二組、動物たちの唸り声の中をそれぞれ彷徨い、出口を目指すと言うもの。
ただ、その動物園の中にいた飼育されていた動物達へとある科学者が投与した薬の影響から凶暴化し、その動物に襲われた人間が徐々に凶暴に、獣へと変じていってしまう。
「で、その日動物園でいちゃついていて閉館時間をやり過ごした二組のカップルが標的になっちゃうと言う‥‥」
「お前、怖いの嫌いなくせにほんっとうにそんな話好きだなぁ‥‥」
「良いじゃんか〜こういう話」
「それで人を募集か‥‥とりあえずどーせ俺は頭数には言っているんだろうから、後は‥‥カップル二組だから、最低男2人と女2人か‥‥」
「へ? なんで?」
きょとんとするジャイルに、こちらも訝しげに首を傾げるジェイク。
「なんでって、カップル二組だからに決まってるじゃないか」
「駄目だよジェイク、差別しちゃ。ノーマルだろーと男同士だろうと女同士だろうとカップルはカップルだよ?」
「‥‥‥‥もー良い、分かった、とりあえず人員募集は出しておくな‥‥」
疲れ切ったようにジェイクは言うと、コーヒーカップを呷ってからPCへと向き直るのでした。
●リプレイ本文
●逃走〜アニマルの唸り声〜
「動物園でお仕事? わ〜い動物見て、さわれるかな?」
薄暗い部屋、遠くで動物たちの唸り声が聞こえる中、華やいだ少女の声が聞こえてきます。
「後少しでおまえは元の姿に戻ることが出来るからね‥‥」
その声は低くくぐもって聞こえ。
「それまで大人しく私の傍に‥‥」
「うん、パパ!」
暗がりに浮かび上がる男と傍らの少女を映し出し、フェードアウト、動物用の金属格子が鋭い音を立てて閉じ、暗転。
『戦慄のアニマルパーク〜死んで花実が咲く物か〜』
単調な白い文字で浮かび上がったタイトル画面が切り替わると、すでに薄暗くなった動物園の順路に面した檻で、帽子を目深く被ったTosi(fa2339)がデッキブラシでごしごしと床を洗っていました。
かしゃん‥‥、画面は檻を開けて飼育員の後ろへ。
「‥‥う、うわぁぁぁっ!?」
何気ない様子で振り返った飼育員へとぐんと近づくと、絶叫と共に暗転。
「迷ってしまったようですね」
言いつつ動物の檻を眺めながら歩いているのはリネット・ハウンド(fa1385)。
閉園時間は過ぎ日は落ちていましたが、リネットはのんびり歩き女性が必死に逃げる姿が目にはいると弾かれたように走り出します。
女性を襲っているのは狐。
しかもその狐はジーンズを身につけ、高く跳躍して女性――由比美紀(fa1771)へと飛びかかります。
「危ないっ!」
リネットが美紀をかばうとじりじりと様子を窺って逃げていく狐。
「大丈夫‥‥」
「もう‥‥もう嫌あぁぁっ!」
リネットが声をかけるも手を振り払う美紀はすでにあちこち傷を負い、怯えた様子でそのまま園内へ走り去ってしまいます。
「何が起こっているのでしょう‥‥」
小さく漏らしたリネットは、背後からする草を踏み分ける音に振り返ると、手に棒を持って現れたのは敷島オルトロス(fa0780)とヒョウ柄のタンクトップに革のジャケットを羽織ったフェリシア・蕗紗(fa0413)。
2人はリネットへと警戒した視線を向けますが、やがてほっとしたように息をつくとオルトロスは口を開きました。
「あんた、大丈夫か?」
「ええ‥‥いったい何が?」
「私たちもわからないの。突然動物たちが‥‥」
フェリシアが言いかけた時、近くで女性の悲鳴が上がるのでした。
●衝動〜崩壊する自我〜
「なっ‥‥なんだよ、こいつっ!?」
トシは真紅(fa2153)を後ろ手で庇い、手に持った鞄で襲いかかる美紀を必死でかわしていました。
「いやっもう嫌ぁぁっ!」
美紀は怯えて悲鳴を上げるルージュを狙っていて、その腕は毛に覆われ長く伸びた指とその腕に張られた羽根が異様な様を際だたせていました。
『うぐ‥‥ぐぎゃあぁぁぁっ!!』
人とは思えない絶叫と共に悶えながらその姿をみるみる獣人へと変じる美紀に、トシへと掴まって悲鳴を上げるルージュ。
「お前ら、こっちだっ!」
オルトロスは2人に声をかけて、獣へと変じてルージュへと飛びかかる美紀を駆け寄り棒で振り払うと逃げる一同を庇うようにして駆け出します。
「なっ‥‥何なんですか、あれは!?」
「俺たちが知るかっ!」
美紀を振り切った一行は息を弾ませながら声を上げると、そこへ草むらからひょっこり顔を出す影が。
「‥‥っ!」
身構える一行にしゃくりあげて草むらに座り込んでいたのは月 李花(fa1105)。
猫の耳としっぽが飛び出し手も既に毛皮で覆われていますが、他の者達と違い特に変わった様子もなく幼い顔で一同を見回しています。
「‥‥大丈夫? 家族とはぐれたの?」
「や、やめてよ‥‥だってその子もう‥‥」
怯えたようにフェリシアに言うルージュですが、リィファはフェリシアにおずおず歩み寄って見上げます。
「桜ね、パパとはぐれちゃったから探してるの」
「仕方がないな‥‥どちらにしろこのままにしておけませんし」
トシの言葉にリィファを加え一同は出口へと向かって歩き出すのでした。
同じ頃、薄暗い研究室で息も絶え絶えの狐を前に笑みを浮かべている弥栄三十朗(fa1323)。
手には注射器と不気味に濁った青黒い液体が入った小瓶を持ち、注射器を小瓶の液体で満たした三十朗の背に狐が隠されると、狐の口から絶叫があがります。
「この私の偉大なる実験体となれたことを望外の光栄と思うのだな」
酷薄に笑った三十朗は、狐から離れると隣のソファーやテレビが置いてある部屋へと入ると、テレビと開け放たれた扉が映されると三十朗の愕然とした顔のアップへ。
「桜っ!?」
階段を駆け上がって行く三十朗の研究室は開け放たれたままなのでした。
●悲劇〜生と死〜
画面は再び生き残っていた一行へと戻ります。
「‥‥もう嫌よぉ‥‥」
「大丈夫、俺が付いてるから‥‥」
暗い辺りがぽつりぽつりとある街灯に照らされる中、しゃくり上げたルージュを励ますように肩を抱き、オルトロスに渡された棒を握って辺りを警戒するトシ。
「案内図ではこっちだが‥‥ちっ、こうなると広いのも‥‥」
「お姉さん達がお父さんを捜してあげるからね」
「お父さんは何をしている人なの?」
植え込みの看板を引っこ抜いて握りしめたオルトロスが先行して見て回ると、フェリシアとリネットがリィファの手を引きながら後に続きます。
「お父さん、とっても優しいの。動物のことを研究しているの!」
「‥‥動物‥‥?」
「科学者なんだって、桜を戻してくれるって言ってたの」
「戻す‥‥?」
リィファの言葉に怪訝そうな様子を見せるフェリシアですが、突如現れた複数の獣たちに言葉を途切れさせます。
「走ってっ! 早く逃げてくださいっ!」
飛びかかる影をオルトロスがなぎ払い血路を開きトシとルージュを先に逃げさせると、フェリシアとリィファを庇うように襲いかかる獣に腰を低く落としてリネットが突進していきます。
「お前も早くっ!」
「良いから、逃げてぇっ!」
叫ぶと共に獣たちに群がられ見えなくなるリネットに、血路を開いたときに受けた自身の腕の傷を袖で隠し押さえ歯を食いしばり駆け出すオルトロス。
動物達がリネットから離れ一同を追いかけると、よろりと身体を起こしたリネットは、すぐに倒れ転がり声にならない悲鳴を上げながら、徐々にその姿は街灯に照らされる中、獣へと変わっていき‥‥。
既に身体の8割を獣へと変貌させながら、人らしさの残っていたリネットの目元が狼の物へと変貌し、暗転。
「お姉ちゃんが‥‥」
ぎゅっとフェリシアの手を握りながら言うリィファですが、苛ついたようなオルトロスに目を伏せます。
フェリシアが何か言おうと口を開いた瞬間、ルージュの頭に飛びついた蝙蝠に悲鳴を上げ、トシが引きはがし、トシの様子を見ると狂ったように暴れた蝙蝠は壁へと自ら突っ込み息絶えました。
「さっきからこの蝙蝠私ばかり‥‥」
ルージュが言い終える前にがさりと聞こえた足音にぱっと向き直ると、そこには白衣を身につけた男、三十朗の姿が。
「あっ、パパ!」
「桜、駄目っ!」
フェリシアが飛び出しかけたリィファを押さえると、ただならぬ様子の三十朗はゆらりと空の小瓶と注射器を手に近づきます。
出る事に小瓶を落とし注射器を落とし。
「きしゃぁあぁっ!!」
みるみる表面が緑色に移り変わり、跳躍するのに、フェリシアとリィファを突き飛ばしてそれを受け止めるオルトロス。
「早くっ、出口はあと少しだ、早くいけっ!」
そう言うオルトロスの身体も、徐々に爪が伸び顔や腕に怪我びっしりと生え、そのオルトロスを振り払い壁にたたきつける三十朗。
「駄目だよ! 人傷付けちゃ、やめてよ! 元に戻ってよ!!」
飛び出してきたリィファにその腕を振るった三十朗は、絶叫して暴れ出し。
「あう‥‥パパ? なん、で、どうし‥‥」
崩れ落ちたリィファに背を向け向き直った三十朗へ、フェリシアは折れて曲がったパイプを投げつけ隙を作り出してトシとルージュを背を押して逃がすと、オルトロスへととどめを刺そうと近づいた三十朗へ飛びかかるフェリシア。
「ぁ‥‥」
爪で切り伏せられたフェリシアに、獣へと変貌したオルトロスはたてがみを振りトカゲに変わった三十朗へ噛みつき、三十朗の爪がオルトロスを貫きます。
「悪ぃ‥‥な、馬鹿な男に付き合わせちまってよ」
崩れ落ちたオルトロスは這うようにしてフェリシアの元へ向かおうと這いずり、そのまま動きを止めるのでした。
●生還〜EndCredit〜
トシとルージュは振り返らずに道を駆け抜け鉄格子の扉を見つけると、そこへと体当たり開け共に転がるように飛び出した2人。
「た‥‥助かった、の‥‥?」
「あぁ、助かった‥‥」
よろよろと公衆電話へと歩み寄り受話器を取り上げるトシ。
画面が引いていき、動物園の草むらに狐と狼が立つ姿が一瞬だけ映り、画面が暗転、スタッフロールと共に顔へメイクの毛を貼り付けたり衣装を合わせるルージュやリネット、フェリシアが映り、三十朗とリィファが脚本を読み合わせながら楽しそうに笑い合い。
トシが茶目っ気たっぷりに飼育員の帽子をくいっとあげて顔を見せると、腕の所に羽根をつけてみてジェイクと調整している美紀。
そして、オルトロスとジャイル・マイル監督がカメラの側で脚本を手に真剣な面持ちで視線の先を指さしながら言葉を交わしている姿が映りフェードアウト。
真っ暗な画面に『END』と表示され、終わるのでした。