殺人ゲームアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 立川司郎
芸能 フリー
獣人 フリー
難度 普通
報酬 0.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 05/20〜05/22

●本文

 ここに一軒の洋館がある。
 昭和初期に建築された、二階建ての白い洋館だ。何度か改築されたあとはあるが、古い雰囲気が残っている。
 差出人は、顔を見せないまま依頼をしてきた。
「僕は、映画監督を目指している‥‥Aという者だ。ちょっとしたゲームをしようじゃないか。よくあるゲームだ」
 Aは、一軒の洋館に一晩宿泊するように依頼した。一人一部屋ずつ用意してあるという。また、室内と廊下各室には監視カメラが付けられており、Aにその映像が届けられる。
「館の一夜は、後に編集して自主制作映画として公開しようと思う。そう、あなた達を映した映像をね」
 Aはゲームの説明を続けた。
「まず、あなた達のうち、一番最初に挨拶した人(相談板)が、内緒で一人を“殺人鬼”に指定する。殺人鬼として指定された人は、その一晩で誰か一人を殺害に向かう。‥‥むろん、相手が強ければ返り討ちにあうかもしれないけど。それから館に紹介した(パーティー主催者)役、殺人鬼の協力者といった設定のキャラクターを演じて貰う」
 さあ、パーティーを始めよう。
 Aは招待状を手渡した。

ルール
キャラクター設定:各人、館に到着するまでの設定を考えておいてください。その後の一晩の行動は自由です。固定設定は、下記を参照にしてください。
設定
最初に挨拶した者:相談板で最初に挨拶の書き込みをした人は、殺人鬼となるPCを“他のPCに内緒で”指定してください。殺人鬼の知り合いという固定設定が付きます。参加PCが規定人数に達したら、殺人鬼とは別に“パーティー主催者”を指名してください。これは、殺人鬼と同一でもかまいません。
殺人鬼:何らかの理由で、パーティー参加者の殺害を企てています。誰を殺害するかは、誰にも話さないように。参加者が規定人数に達した後、“自分の協力者”として一名を、“他のPCに内緒で”指定してください。“本当に”瀕死の傷を負わせたりする事がないよう、気をつけてください。
殺人鬼の協力者:何らかの理由で、殺人鬼に協力しています。殺人鬼が誰かを話してはなりませんが、それ以外の行動は自由です。
パーティー主催者:パーティーを主催した者を演じてください。パーティーの趣旨は何でもかまいません。
その他参加PC:主催者に呼ばれた料理人、メイド等話し合って設定を詰めてください。
期間:夕方から、翌日九時まで。参加者が殺人鬼を見つける必要はなく、翌日九時に終了となります。それまでに殺人鬼が殺人を執行出来なかったとしても、その時点で終わります。

館内
・横に長い建物。1F2Fともにほぼ同じ作り。
1F:真ん中がロビーと階段、奥は食堂で、部屋の右奥に暖炉があります。左側はキッチンと倉庫、裏口となっています。右側は廊下を挟んで下が主催者の部屋、上は館の使用人の誰か一人の部屋となります。
マップ:簡単に下記のような作りです。
−−−−−−−−−−−−
−××××食堂××××−
−−−−−扉扉−−−−−
−××−上××上−××−
−××−××××−−−−
−××−××××−××−
−−−−−扉−−−−−−

2F:横一直線に廊下が走っており、真ん中は1Fからの吹き抜けで階段がある。左右に上下二つずつ部屋が、全部で八つ部屋がある。

内容:館に招待された(または招待した)という、与えられた設定を演じつつ、一晩過ごしてもらいます。Aの目的は、割り振られた役割の各人を撮影する事にあります。食事は誰かが作ってください。その他必要な物は、館内にそろえてあります。

●今回の参加者

 fa0745 ミーア・ステンシル(18歳・♀・小鳥)
 fa0911 鷹見 仁(17歳・♂・鷹)
 fa1077 桐沢カナ(18歳・♀・狐)
 fa1414 伊達 斎(30歳・♂・獅子)
 fa1771 由比美紀(20歳・♀・蝙蝠)
 fa3179 和泉 姫那(23歳・♀・猫)
 fa3579 宝野鈴生(20歳・♀・蛇)
 fa3728 セシル・ファーレ(15歳・♀・猫)

●リプレイ本文

 ボンネットをあけると、うっすらと白い煙があがった。
 後ろに立った志保は、腕組みをしてその様子を眺めていた。
「大丈夫?」
 一言、彼女が声を掛けた。
「んー、古い車だから‥‥前からバッテリーが上がりぎみでさあ、交換はしたんだけど‥‥やっぱり駄目か」
 瀬尾由紀[由比美紀(fa1771)]は、ため息まじりに答えるとボンネットを閉めた。彼女、森崎志保[桐沢カナ(fa1077)]は由紀の友人である。
 瀬尾と志保は大学の民俗学の研究室に所属しており、眼鏡をかけてややきつめの印象がある志保は、見た目の通り‥‥民俗学に打ち込む学者肌だ。かたや瀬尾は、楽観的で何にでも興味を持つ性格だ。
 車は壊れてしまったが、何とかなる。瀬尾はくるりと振り返り、そびえ立つ洋館を見上げた。
 志保の元に招待状が届いたのは、一週間ほど前の事だった。
 この館の主、西院城美咲(さいじょう・みさき)[セシル・ファーレ(fa3728)]は、何の前触れもなく彼女にパーティーへと招待したのだった。
 今、なぜ‥‥。志保は、訝しんだ。
 志保は、美咲の兄とは面識があったが、美咲とはそれほど親しくしていた訳ではなかった。その兄が死んだのが三年前の事だ。
 高校の山岳部に所属していた兄は、落雷事故で死亡している。
 同じように見上げる、瀬尾。煉瓦作りの建物は、歴史を感じさせる造りだ。
「へえ、中々風情のあるいい所じゃない」
「古い旧家なんだ、って聞いた事があるわ。ご両親は亡くなっているんだけど、後見人叔父さんが一人一緒に住んでいて‥‥幼なじみで住み込みの執事で、陣内という人が居るの」
 志保が答えた。
 屋敷は、静かだった。まだ先輩が生きていた頃は、こんなに静かな屋敷だとは思っていなかった。いつも先輩は陣内と一緒に、明るく妹や家の話をしてくれたから。
「ねえ、せっかくだから私もパーティーに参加していいかな? ‥‥いいよね、こんなお屋敷なんだもの。一人くらい泊まる余裕、ありそうだもの」
 志保の返答も聞かず、瀬尾は深紅色の両開き扉を開いた。
 さあっと明るい光が差し込み、広いロビーと階段が目に映る。
「いらっしゃいませ、森崎志保様、赤坂未亜[ミーア・ステンシル(fa0745)]様」
 黒色のスーツに身を包んだ青年が、一礼して迎えた。彼が陣内さんよ、と志保が小声で瀬尾に話す。
 未亜というのは、招待客の一人だろうか?
「これは私の大学の先輩で、瀬尾由紀と言います」
 志保がそう答えると、続けて瀬尾が口を開いた。
「彼女を送ってきたんだけど、車が故障しちゃって。今日、お世話になれないかな?」
「わかりました、主に伺って参りますので、しばらくお待ちください。‥‥小夜子さん」
 青年が、後ろに立っていた女性に視線を向ける。長めのワンピースと、白いエプロンドレス。瀬尾は、階段を上がっていく彼女の後ろ姿をじっと見送った。
「本職のメイドさん? わあ、初めて見た」
 物珍しそうに、瀬尾が調度品やロビーを歩き回る。すると、右扉がかちゃりと開き、一人の少女が姿を現した。
 緩やかにウェーブのかかったツインテールが肩の下まで伸び、両手で胸元にスノゥベアーのぬいぐるみを抱えていた。
 端正で、表情の少ない顔立ち。
 彼女がパーティーの主催者、西院城美咲だった。

 静かに見上げる‥‥影。
 そっと手を伸ばし、ポストに何かを差し込んだ。そしてゆっくりと、扉に向かう。

 山村小夜子[宝野鈴生(fa3579)]が扉を開けると、彼は机上のパソコンに向かっていた。
「お仕事中失礼します、政樹様。美咲様のお客様がおいでになりました。‥‥それで、森崎様のお連れの方が車が故障されたとの事で、今日一日お世話になりたいと、お申し出があったのですが、よろしいでしょうか」
「美咲がいい、というならかまわないだろう。‥‥私もあとで顔を覗かせる」
「かしこまりました」
 小夜子は一礼し、退出した。
 ふ、と西院城政樹[伊達 斎(fa1414)]が顔を上げる。
−この時期、美咲が‥‥あの子の旧友を呼んだのはなぜだ? 彼女は、あれから‥‥兄が亡くなってから、僕にすら心を開こうとしなくなった−
 何度も、美咲には後見人として‥‥そしてあの子の親代わりとして、もっと話してやらなければならないと考えていた。
 しかし、仕事が多忙になるにつれて、それが思うようにいかなくなった。
 いや‥‥怖いだけだ。あの子にどれだけ近づいていいのか、どれだけ距離をとればいいのか‥‥。
 深いため息をつき、政樹は再びモニターに視線を落とした。
 バイキング形式で用意された料理は、料理研究家でもある宮本繭子[和泉 姫那(fa3179)]の手によって作られ、テーブルを彩っていた。
 一通りの料理が出されると、玄関で出迎えた青年が彼女の紹介をした。
 それと会わせるように、扉から一人の男性が姿を現し、テーブルの端の席についた。年齢は、三十過ぎ程だろうか。
 繭子は一礼すると、すうっと笑った。
「宮本繭子です。まず今回のお料理は、和風フレンチをテーマに、ホタテのカルパッチョ、トマトと水菜のサラダ、ブロッコリーのクリームスープ、子羊肉とポテトとキノコのソテー赤ワインソース、洋ナシのコンポートと‥‥またのちに、デザートとしてバニラアイスのストロベリーソースをご用意しました」
 飲み物は紅茶やコーヒー、ワインなども用意してあった。
 テーブルに着席しているのは、美咲、瀬尾、志保、そして遅れて到着した赤毛の少女‥‥未亜。
「こちらは、美咲様の後見人である西院城政樹様です。ご挨拶が遅れましたが、私はこの館の執事、陣内 隆之[鷹見 仁(fa0911)]、彼女は山村小夜子と申します。ご宿泊中、何かありましたら私どもまでお言いつけください」
 説明の間、未亜はじっと陣内を見ていた。ちらりと瀬尾が、美咲を見る。彼女は片時も、ぬいぐるみを離す様子がない。よほど気に入っているのだろうか。
 食事は、未亜があれこれと皿に取って食べ続けていた。それを見た志保は、しかめ面を浮かべている。
「こういう料理であれば、バイキング形式でなくてもいいんじゃないかしら? 何かご用がおありの美咲さんと、ゆっくり話も出来ないと思いますけれど」
 ちくりと志保が、未亜を横目に言う。
 未亜は、きょとんとした顔をした。
「‥‥由紀さん、彼女は高校の時の同級生なの。美咲さんのお兄さんと同じ部活だったのよ」
 志保がそう話すと一瞬、時が‥‥止まった。
 彼女は、口を閉ざしたまま。政樹が何事もなく食事に戻ると、再び未亜や瀬尾も料理を口にしたのだった。

 見知らぬ、カード。
 陣内は、じっと白い封筒を見つめていた。表にも裏にも、何も書いてない。
「‥‥陣内さん、何かあったの?」
 やんわりとした口調で声を掛けられ、陣内が振り返った。ダイニングルームの食器を小夜子と2人で片付けていた、繭子が立っていた。
「いや‥‥こんなものがあってね」
 毎日、陣内は夕方決まった時間にポストを覗いている。今日届いた手紙は、一通。しかも、表も裏も何もかかれていなかった。
「誰にお渡しすればいいのかしら」
 繭子が首をかしげると、小夜子が皿を乗せたトレイを片手で抱え、手紙を受け取った。
「政樹様にお渡ししておけば、いいんじゃないのかしら? たとえ美咲様のお手紙でも、政樹様でしたら差し支えがないように思えますけれど」
「‥‥そうだな、一応私も行こう。あとは頼んでおいていいかな」
 陣内が繭子を振り返ると、彼女は頷いた。
 小夜子と陣内が二階にある政樹の部屋を訪れると、政樹は再び室内で仕事をしていた。今回美咲がパーティーを開くと聞き戻っては来たが、政樹には残した仕事がまだ残っている。
「不審なカード?」
 小夜子が手紙を差し出すと、政樹は手紙を返してみた。差出人も、宛先も何も書いてない。
「誰かが直接持ってきた‥‥という事か」
 陣内が、封筒を開いて封筒を引き出す。
 手紙には、プリントアウトされた文字が一行。

−今日、あなたに死を与えよう
 大切なあなたに‥‥−

「殺人予告‥‥?」
 小夜子が声を上げると、きい‥‥と扉が開いた。振り返った小夜子と陣内の目に、未亜が映る。彼女はびくっと体をすくめると、うわずった声をあげた。
「‥‥ご、ごめんなさい‥‥小夜子さん達の様子が‥‥気になったから」
「赤坂‥‥」
 陣内は、彼女を見返した。

 ぽつん、とテーブルの置かれたカード。
− 親愛なる君へ
      次の誕生日 とびきり最高のプレゼントを用意しよう −
 カードには、そう書かれている。
 兄が死んでから、送られて来るようになった誕生日プレゼント。兄が生きていた頃は、もちろん兄から直接手渡されていた。
 ‥‥もしかすると、兄は死んでないのかもしれない。遺体の損傷は激しかった‥‥もしかすると‥‥。
 去年の誕生日に送られた、そのカードとスノゥベアーのぬいぐるみ。
 彼女達から、何かきっかけになる話が聞けるのではないか‥‥そう期待していた。

 殺害予告が届いた事は、宿泊予定であった瀬尾や志保、そして繭子達にも動揺を与えた。
「たちの悪い冗談だわ、どうしてこんな時に殺害予告が届いたりするの」
 志保はそう怒鳴った。冷静さを装う彼女も、やはり動揺しているようだった。
「皆様、お静かになさってください。ここで冷静さを失っては、予告状を出した者の思う壺です」
 陣内が言うと、小夜子はふと笑った。
「何かの悪戯でしょう。私が責任をもって戸締まりと見回りをいたしますので、ご安心ください」
 呼ばれた客という立場からか、志保や瀬尾は落ち着きを取り戻して自室に戻った。

 片付けを終えた繭子に、寝間着に着替えた未亜の姿が映る。
「未亜さん、まだ起きてたの?」
「もうお部屋に戻っているかと思ったんだけど‥‥寝られなくて。繭子さんは?」
 未亜が聞くと、繭子が笑って瓶を出した。
「先ほど森崎さんと瀬尾さんが来たの。何でも、瀬尾さんが残ったお酒を頂きたいとおっしゃって、館内の調度品を飲みながら見て回りたいとか。お二人、美咲さんに聞きたい事があると言って、お部屋に向かったわよ」
「そうなんだ‥‥」
 キッチンの端に置かれた椅子に、未亜がちょこんと座った。
「未亜、森崎さんや美咲さんのお兄さんと、同級生だったの。‥‥お兄さんが山岳部の事故で死んだの、知ってるでしょ? ‥‥あの時、未亜は部活に行けなかったんだ。‥‥それで‥‥」
 部活で山に向かった者が落雷事故で死亡した事は、繭子も少しだけ聞いた。
 その部活に行けなかった、それが幸いして未亜は今生きている。
「何だか、それを思い出して眠れなくて。繭子さん、お部屋変わってもらえないかな? 未亜、枕がかわると眠れるかもしれないし‥‥端の部屋がいいな。繭子さん、端の部屋だよね」
「ええ‥‥じゃ、森崎さん達が帰ってきたら私も部屋に戻るから」
「ありがとう」
 にっこりと未亜は笑った。
−久しぶりにあったあの人‥‥でも気になる。あの人の中に、あの時と同じ影が見えるから。あの、西城院先輩が死んだ時と同じ‥‥影。お願い、気づいて‥‥私の出したカードに‥‥−
 未亜はそっと目を伏せ、すぐに繭子との会話に戻った。

 ベッドの上に座り、志保はずっと考え込んでいた。
「‥‥まだ気になる事があるの?」
 ワイングラスを傾けながら、瀬尾が聞く。
「あなた、ほんと羨ましい性格なのね。‥‥美咲さんの話‥‥誕生日にプレゼントとカードをもらったって言ってたわよね。もしかすると、お兄さんが生きているかもしれないって」
「でも、死んだんでしょ?」
「遺体はかなり損傷が激しかったから‥‥歯形で確認しているから、間違いはないと思うわ」
 志保も、兄は生きていないと考えている。
 しかしそのカードは、いったい誰が‥‥。
 その時、どこかから悲鳴が聞こえた。はっと顔をあげる、志保と瀬尾。まず先に、瀬尾が飛び出した。

 美咲。
 声に、振り返る。美咲の後ろに、陣内が立っていた。うっすら、笑う美咲。
「隆之兄さん‥‥」
「今日は君の誕生日だね」
 そうして陣内は、何度も‥‥彼女の兄や両親達とお祝いした。
 あの事故の“後”も‥‥。
「そのぬいぐるみ、大切にしてくれているんだね」
 静かに美咲がぬいぐるみを見下ろす。
「これ‥‥隆之兄がくれたの?」
「ああ。‥‥大切な君に、今年もプレゼントをしなければ‥‥ね」
 陣内がナイフを取り出した。美咲が小さく声をあげ、胸元にナイフが食い込む。血が、ナイフを彩った。
「覚えているかい? 俺の両親が死んだ日の事を。転落事故だと言っていたよね」
 でも、本当は‥‥見てしまったんだ。君のお父さんが、俺の父さんと母さんを‥‥。
「隆‥‥兄」
 美咲の顔が苦痛にゆがむ。陣内の手を、ぎゅっと掴んだ。
 復讐? いや、違う。君をこの世界から解放してあげたいだけだ。
 死こそ、全ての者を平等にする。甘美で愛おしい‥‥行為だ。

 かしゃん、と懐中電灯が床に落ちる。
 駆けつけた瀬尾が小夜子の肩を掴んで覗くと、政樹が美咲の体をしっかりと抱きかかえていた。
 床は血まみれで、抱えている政樹もまた美咲の血で塗れていた。
「美咲! ‥‥なぜおまえが、こんな事に‥‥僕がもっと君の事を分かってやれたら、こんな事にならなかっただろうに‥‥」
 土色にかわった、美咲の顔‥‥。側には、血まみれで横たわる、陣内の姿がある。
「美咲! ‥‥早く救急車を呼んでくれ!」
 小夜子は、慌てて駆けだした。
−死こそ、人に平等で甘美で愛おしい行為−
 あの、先輩が死んだ時の陣内さんの顔を‥‥未亜は見てしまっていた。
「‥‥陣内さん‥‥」
 呆然と、未亜が陣内の側に座り込んだ。