ふわふわドラマSPアジア・オセアニア
種類 |
ショート
|
担当 |
立川司郎
|
芸能 |
2Lv以上
|
獣人 |
1Lv以上
|
難度 |
普通
|
報酬 |
3万円
|
参加人数 |
8人
|
サポート |
2人
|
期間 |
06/30〜07/04
|
●本文
“ふわふわ”は、売り出し中の新人アイドルをCM起用している事で人気のチョコレート菓子だ。
白くて丸いチョコは柔らかい食感で、カロリーは控えめ。
ふわふわを発売しているマスミ製菓では、人気に調子こいて‥‥いやいや、好評のCMをドラマとして作成する事に決定した。
これまでのCMにおいては、アイドル達がそれぞれ中心となって案を持ち込んで作成してきた。今回も、出来るだけアイドル達の意志を尊重しようと考えている。
‥‥そして、マスミ製菓の会議室。
いつものように、会議室の掃除をするOLが二人。
そしていつものように、その会話は監視カメラとマイクで盗聴されており、こっそり幹部が見ている。
「ドラマするって言ってるの、聞きましたか先輩?」
若いOLが聞くと、長テーブルを拭いていたOLが振り返った。
「聞いた聞いた。せっかくドラマするんだったら、恋愛が必要よね、やっぱり!」
「じゃ、短パン姿の男子も追加で、心ゆくまで堪能させて。ブルマ禁止」
ブルマが無い体操に、何の楽しみがある! と裏で幹部のオジサマ達が叫んでいる事はさておき。
「放課後のピアノ‥‥部活の練習とか放課後の武道館で竹刀振ってるのでもいいけど」
「下駄箱に間違いラブレター」
OL達の要望は、こんな感じに決まっている様子。
一方、幹部達は狭い管理室にこもって、作戦会議をしていた。
「‥‥いっそ、2話構成にしてはどうですか、部長。そうすれば、我々の要求も通ります。彼女達の意見も無視できませんからね」
「うむ。ではブルマーで!! 部活とかいいな」
「‥‥でも今まで、吹奏楽部がメインでしたけど」
「勝てないスポーツ部の応援など‥‥」
「じゃ、部活の教師が退任して、新しく先生が担任になってという事で」
「運動万能の少年を、勝てないスポーツ部が引き抜き。でも嫌がる少年、と」
‥‥マスミ製菓の要求は決まったようです。
ふわふわのドラマSP、はたして上手く完成するのでしょうか?
シナリオ:2本作成してもらいます。内容はOLのキーワードをメインにしたものと、幹部達の欲求を飲んだものの2本となります。幹部の要求により、ブルマのシーンは必ず入れて欲しいそうです。
撮影:いつもの中学校です。武道館は、小さいながらあるようです。
衣装:体操服とセーラー服、学ランは用意されています。
学校名:ふわふわという学校名はどうかと考えていたのですが、まあFFよりふわふわの方がしっくりくるというのであれば、ふわふわでいきましょう。中高一貫の高校です。
NPC:
羽崎海:ジュリプロ候補生の一人。いつも意味無く自信満々で、元気がいい高校一年生。ピアノが弾ける(ブルグミュラーくらいまで)。
田部哲哉:ジュリプロ候補生。口数少なく、クールな性格。中学2年。
●リプレイ本文
【ラブレター編】
何だかよく分からないうちに、彼は今までとはちょっと違うシチュエーションに置かれていた。
きっかけは、下駄箱の中に入っていた一通の手紙‥‥ラブレターである。
自慢じゃないが、氷咲 華唯(fa0142)にとってラブレターは、あまり珍しいものではない。だが呼び出された以上、その行為を無下にするわけにもいくまい。
「えっと‥‥実はその‥‥その手紙は‥‥」
しどろもどろで、西園寺 紫(fa2102)が言葉を続ける。紫はおろおろしつつ、手の中にしっかりと持った箱を差し出した。
「あの、ケ‥‥ケイ君はふわふわ‥‥知ってますか? ほら、今すっごく人気で‥‥愛瀬先生もよく学校に持ってきてるんですよ」
「ああ‥‥そうみたいだな」
「す‥‥好きですよね、ふわふわ」
もちろん‥‥好きだ。
ケイは、やっぱり何の事だか分からないまま、答えた。
好き‥‥。
「す、好きって‥‥これって‥‥こ、こく‥‥」
いつも冷静な悠奈(fa2726)だったが、同級生の富士川・千春(fa0847)に泉 彩佳(fa1890)
と教室の端で顔をつきあわせ、やや焦ったような声で話した。
「私‥‥あの紫さんって人‥‥よく知らないんだけど」
「大人しい人だよ、紫さんって」
アヤが言うと、悠奈はアヤが食べていたふわふわの箱を取り上げて、机に拳をたたき付けた。
「そういう事じゃなくて」
「紫さんとケイ君、せっかくお互いの気持ちが通じ合えたなら、応援してあげなきゃ」
にっこり笑って千春が言った。
「そういう意味じゃない」
きょとんとして千春が顔を上げると、ケイが珍しくちょっと不機嫌そうな表情で立っていた。
本人にとってはチョコレートの事を言っていたのであって、紫がどうのという段には至っていないのだ。
「ケイ君は‥‥どう?」
「そういう意味じゃ‥‥」
千春の問いに、ケイが口ごもった。
ケイはあちこちで弁解したが、あまり本気にされていない様子。ケイが恥ずかしがっているとでも思われているに違いない。
むろん、いつもケイを見ていた悠奈にはショックだし、悠奈だけでなくケイに憧れていた女子生徒にとってもショッキングな出来事だ。
「いいわね、恋って‥‥先生、女子校だったから羨ましいなあ」
「そうですよね、揺れる恋心☆」
うっとりとした表情で、愛瀬りな(fa0244)と千春が言った。悠奈はむっつりとした顔で、“部活中です”と愛瀬に言うと、練習に戻った。
「本当は‥‥」
紫は、思い切って彼の前で足を止め、しっかりと見上げた。
本当はあのラブレターは、別の人の所に行くはずだったのだと。人生何事も体当たりだ、とせかした親友の阿野次 のもじ(fa3092)に引っ張られるようにして下駄箱に行って、よく確認もせずに手紙を投げ入れたらば‥‥それがケイの所だったのだと。
のもじの事を怒っても仕方ない。
そして、ここでまた弁解しても仕方がないわけで。
「海さん、大親友の友達になってください!」
きょとんとした顔で、羽崎海は紫を見つめた。
告白誤爆事件を処理する間、海と仲良くなって、この噂が消える頃に恋人未満にまで持って来られれば万事OKだ!
そんな考えが頭の中を巡っていた。
しかし海から見て、紫の親友=のもじ。
「何か、紫がお前の友達になってやってくれって行ってたんだけどさ。何だよ、友達になりたいのか? まかせろ!」
海は、笑いながら胸を叩いた。
「えーと紫ちゃんからよろしく頼まれた? ‥‥はっ、もしやこれは、御友達からの紹介という由緒正しき求愛行動の一種!?」
のもじは声に出してそう言うと、顔を上げた。
「ここで退けば、俺様が廃る。よし、その勝負受けてたとう!」
ふんぞり返って、そう答えた。
紫のスーパーコンピューターがはじき出した作戦は、こうして自陣に爆撃して終わった。
ぽつん、と下駄箱の前にたたずむ紫。
夕日の中、のもじが長い影を引きながら海と帰って行くのが見える。ちょっぴり寂しい恋心‥‥。
やっぱり、私じゃ駄目なんだ。そう心中で呟くと、歩き出した。
校庭では陸上部が部活をしていた。短パン姿でグラウンドを走る、ケイが見える。教室から、ケイに向けて手を振る女子生徒の姿があった。
視線をそらし、校門を出ようとした紫に声がかけられた。ゆっくりと振り返る、紫。
ケイはタオルで汗を拭きながら、少し視線を落とした。
「残念‥‥だったな。海」
紫が答えずに居ると、ケイが再び口を開いた。
「俺‥‥好き、かも。ふわふわも‥‥お前も」
待ってるから、とケイはそう言うとグラウンドへと駆けだした。
【メイキング】
撮影に臨み、のもじは皆を集めて“円陣を組もう”と言った。
よく知ったメンバーが多いという事もあり、皆あまり緊張せずに撮影を続けられている。しかしCMとは違いドラマという事もあってか、千春が他のメンバーに演技指導をこう場面もある。
後半に教師役として登場する都路帆乃香(fa1013)は、海と哲哉に役柄の説明や演技指導をしていた。
都路は以前、哲哉と海に会った事があった。海がメインでジュリプロの1日舞台を企画した時、彼らのサポートをしたのが都路である。
舞台女優である都路と哲哉、それぞれ仕事場で会う事はなかなか無いが、都路はモニター越しに彼らを見かけるとつい、あの日の事を思い出していた。
「どうやら心配ないようですね」
にこりと笑って、愛瀬が言った。彼女の視線の先に、海と話す哲哉がある。
「2人でデビューする話が上がっているそうなんですよ、ジュリプロで‥‥知りませんでした?」
「そうだったんですか‥‥はい、大丈夫ですね」
都路は深く頷いた。以前と違い、哲哉にかりかりした様子は無いし、海も哲哉を置いて一人で突っ走っているような様子も無い。
そして愛瀬は千春やスタッフと話して、ふわふわドラマSPの挿入歌の打ち合わせをはじめた。愛瀬が推していたのは、“春色チーク”だ。これは、以前アイドルフェスで愛瀬、千春、悠奈の3人が臨時ユニットを組んで歌ったオリジナル曲だ。
一方千春は、まず「ふわふわKISS」を前半部分のケイ告白シーンに。「ふわふわ学園応援歌」は、後半の部活シーンに挿入し、バレー部の場面と交互に場面が重なるように吹奏楽部で練習風景として入れる。最後に「ふわふわ学園校歌」でテロップを流す事にした。
【部活編】
来る者と去る者‥‥。
都路は、元気あふれる明るい笑顔で手を差し出したブリッツ・アスカ(fa2321)の手を、ぎゅっと握り返した。
「本当、アスカ先生が引き受けてくださって助かりました」
「いえ‥‥俺でつとまるかどうか分かりませんけど‥‥精一杯させていただきます」
母校へと戻ってきたアスカに舞い込んだ、バレー部担任の任。交代で去る都路は、産休の為一時ここを離れる事になっていた。
都路は、柔らかな雰囲気の女性だ。若いが落ち着いた物腰で、スポーツ部の担任をするタイプにはちょっと見えない。故に部活でも、積極的に参加するよりものんびりと眺めている事の方が、多かった。
さっそくバレー部の部活をのぞきに行ったアスカを、都路は遠目から眺めていた。
自分は彼らに何もしてやれなかったが、きっと彼女なら‥‥。
のんびりペースの都路の残したバレー部、アスカは大きく落胆させられる事となった。彼女が会った所、都路はルールを把握していたのかも怪しい。
また部員には緊張感が足らず、やる気もなければ部を引っ張っていくリーダーも居ない。
これじゃあ駄目だ‥‥。
チーム戦には、リーダーが接待に必要だ。しかし、この中からだれを選んで鍛えても、臨む所までは持って行けないだろう。そこでアスカが選んだのは‥‥。
「よし、気合い入れていくぞー!」
体育の時間、人一倍元気に飛び回っていたのもじだった。
しかし、のもじは既に吹奏楽部に入っている。
それを聞いた部長の竜堂悠奈は、ぴしゃりと一言言って返した。
「悩んだ末にどっちつかずになるなら、迷惑だから辞めなさい!」
そう言われてつい飛び出したのもじの背中に、声がかかった。振り返ったのもじの目に、哲哉が映る。
「部長はああ言ってるけど‥‥心配してると思うから」
ぽつりと哲哉が言った。
「うん」
「‥‥愛瀬先生に相談してみたら?」
こくりとのもじが頷いた。ちらり、と窓から廊下覗く悠奈。くすりと千春が笑った。
「心配してるなら、もっと応援してあげればいいのに」
悠奈は、ただ黙って‥‥少し顔を赤くしてトランペットに口をつけた。
愛瀬はにっこり笑ってふわふわの箱を差し出し、皆には内緒ねと小声で言った。では遠慮無く、とのもじがチョコを口に入れる。
のもじが悩んでいたのは、身長の問題だった。もちろん吹奏楽部の事も気になるが、身長の足りない自分でどこまでチームを引っ張っていけるのかが不安だったのだ。
「学生時代なんて何度もある訳じゃないし、後悔しない選択をしてね。自分で選択した道なら、反省はあっても後悔はないと思うから」
愛瀬はそうことわった後、言葉を続けた。
「今はまだ、グルグル混乱してるかもしれないけれど‥‥ふわっと肩の力を抜いて、一息しましょ。きっと、落ち着けば見えてくるはずよ。一番大切なものが‥‥」
「よし、やらずに後悔するよりやって後悔しろだ!」
すっくと立ち上がると、のもじはアスカの所へと駆けていった。
のもじが入り、アスカの特訓と相まって部員達は徐々にまとまるようになってきた。そして試合の日を迎える。
緊張する部員に、ブルマーも眩しいのもじが仁王立ちして声をかける。
彼女達を応援する吹奏楽部の中には、もちろん悠奈の姿もあった。
補欠要因としてベンチ入りしたバレー部麻倉 千尋(fa1406)は、彼女の視線に気付いてのもじの肩を叩く。
そっと指さした先で、悠奈が真剣な目で部員に指示をしているのが見えた。ちらりと振り返った悠奈とのもじ達の目が合う。
「よし、円陣組もう!」
ぐい、とのもじが千尋の肩を掴んだ。部員を集めて円陣を組み、声をあげる。
そうして初戦は辛くも勝利を得たが、2戦目で惨敗。アスカは、彼女達の目に悔し涙を見て満足そうに頷いた。
価値ある一勝と、価値ある心に気付いてくれた。
「‥‥勝ちたいと思う気持ちが、大切なんだ」
そう言うと、アスカはのもじを見返した。
「ありがとう、のもじ」
これからも、よろしく。そう意味を込めた手を差し出すと、のもじが握り返した。