下積生活〜調教しましょアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
龍河流
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
0.8万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
03/04〜03/08
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●本文
それは雪の降る夜のことでした。
「あー、飲んだ飲んだ。合コン相手は外したけど、料理はおいしかったなぁ」
友人に誘われて、芸能関係者オンリーという隠れ蓑の獣人オンリー合コンに参加してきた、着ぐるみ劇団『ぱぱんだん』の笹村初美さんは、いい気持ちでおうちに帰るところでした。
ところが。
「あれ?」
そんな初美さんに、運命の出会いが待ち受けていたのです。
おうちの近くのゴミ捨て場の前でした。
「ほらほら、遠慮しないで入りなさいよぉ。外は寒いんだから」
初美さんは、とってもご機嫌でした。
その次の日です。
「あー、ねーね。ねーねのぶちゃちゃんれるよー」
初美さんが昼前に目を覚ますと、妹のカンナさんがやってきました。カンナさんはパンダ獣人です。本当は初美さんと姉妹ではありませんが、細かいことはどうでもいいのです。
問題は、カンナさんが連れていたものにありました。
「カンナ、そのミニブタどうしたの?」
「ねーねのぶちゃちゃんでちゅ」
カンナさんのお話の仕方が個性的なのはいつものことです。パンダの姿なのも、以下同文。気にしてはいけません。
だけど、カンナさんがミニブタちゃんを抱えているのは、気にしたほうがいいでしょう。ミニブタちゃん、ぶうぶう鳴いてます。
「あたし、ブタなんか買ってきてない」
「ねーね、にゅーべ、ぷたらんちゅれち来たらないれるか」
「どこから?」
それからしばらく後になって。
「つまり、お前は昨夜の記憶が飛んで、そこのゴミ捨て場からこのミニブタを拾ってきたことを忘れたんだな。あれほど飲みすぎるなと、いつも言ってるだろうが!」
カンナさんのお兄さんの睦月さんが、大根のお味噌汁を飲んでいる初美さんを怒っています。初美さんと睦月さんは同い年ですが、双子ではありません。細かいことは、ここでもどうでもいいことです。
つまり、初美さんは昨日の夜、お酒をたくさん飲みすぎて、ゴミ捨て場でミニブタちゃんを『かっわい〜』と言いながら拾ってきたのに、そのことを覚えていないのでした。
しかも、二日酔いです。
「なんで、ブタが捨ててあるのよ。今日は不燃ごみの日なのに」
「いきもろちゅてたら、いけにゃいでちゅよぉ」
「拾ったからには、責任をもって世話をしろ」
餌代も出しなさいと、睦月さんが初美さんに言い聞かせていると、玄関に誰かがやってきました。そのまま上がってきます。
「初美姉ちゃん、拾ったブタが逃げてた‥‥あれ、そのブタは?」
やってきたのは、漆畑卯月くんでした。カンナさんと睦月さんの従弟です。初美さんとの関係は複雑なので、知らなくても大丈夫。
この卯月くんも、ミニブタを抱えていたのでした。二匹目です。
「どこの誰よ、二匹も捨てたのは!」
初美さんは怒っていますが、ミニブタちゃん達はカンナさんにキャベツを貰って幸せそうです。
また次の日になって。
「ねえ、誰かブタの知り合いいない? ミニブタを飼ったことがある人でもいいけど」
初美さんが、とっても疲れたお顔で言いました。だけど残念。ぱぱんだんの人達は、すぐに来てくれるブタ獣人のお知り合いはいないのです。よその国にならいたりしますが、いきなり呼ぶのは無理でしょう。
そうして、初美さんは言うのでした。
「あんた達も、自分の食い扶持くらいは稼げるようになってね。せめて、餌の時間は覚えなさい」
勝手気ままなミニブタちゃん達は、家の中で好き勝手に振舞っています。これは大変。
初美さんが『食べちゃえ』と言わないうちに、誰か、調教してあげましょう。
●リプレイ本文
●交番に届けましょう。
良い子のお約束通りに、ポム・ザ・クラウン(fa1401)さんと蘭童珠子(fa1810)さんとダミアン・カルマ(fa2544)さんと火野坂・猛(fa2878)さんは、『ぱぱんだん』の初美さんと一緒に交番までお出掛けです。ミニブタちゃんたちも一緒。ダミアンさんは、手作りの飼い主さんを探すポスターも作ってみました。
だけど、初美さんがブタちゃんたちを拾った時、箱には『ひろって』と書いてあったので、飼い主さんが出てくるかは分からないのでした。その箱は猛ぽんが持っています。
そして、交番まで来たら。
「良かった、生きてたかーっ」
おまわりさんに、言われたのでした。
「よかったわねぇ、これで心置きなくブタちゃんが飼えるわよ」
タマさんが手を叩いて喜んでいるのは、ブタちゃん達の前の飼い主の人が夜逃げをしていたからでした。タマさんとカンナさん以外は複雑なお顔です。
「ここのおうちでは、もう絶対に苛められないからな。代わりにいい子にするんだぞ」
今回お手伝いに来てくれた八人の中では唯一の豚獣人、舞腹 旨井蔵(fa0928)さんが、ブタちゃんたちに涙ながらに言い聞かせています。ブタちゃんたち、前のおうちではおまわりさんに連絡が行くくらいに苛められていたみたいで、お化粧の臭いがたくさんするのは怖いと言っているようです。
「まあ‥‥名前もブー、フー、ウーに決まったことだし、しつけましょう」
『ぱぱんだん』の誰もちゃんと名前を考えていなかったので、ブタちゃん達の名前は黒とピンクのまだら模様がブーちゃん、真っ黒けがフーちゃんになりました。ウーは『ぱぱんだん』の卯月くんに決定です。
でも、名前はみんなが考えてくれましたが、イルゼ・クヴァンツ(fa2910)さんに勝手に『ウー』にされてしまった卯月くんは不機嫌です。
ブーちゃん、フーちゃん、嬉しそうです。ウーくん、ご機嫌斜めです。
「あれよりはましって、あれはあれでいいのか?」
ひどいことをする人がいるものだと思っていたジーン(fa1137)さんですが、ブタちゃんたちをしつけるのには大賛成です。ただ、とっても不思議なのは、ジーンさんの横では佐崎寿徳(fa0551)さんが、カンナさんにこう言い聞かせているのでした。
「こら、お菓子はまだ。ほら、待て」
猛ぽんとウマイさんはちょっとびっくりしていますが、他の人はこう思っていました。
やっぱりこうなっちゃったけど、どうしてこうまで予想通りなんだろう?
そう。『ぱぱんだん』のカンナさんが、みんなのお茶の時間用に出されたお菓子をどんどん食べようとして止められているのでした。
さあ、ブタちゃんとパンダちゃんのしつけと、ブタちゃんとウサギちゃんの芸の練習に取り掛かるのです!
●ブーちゃんの場合
黒にピンクのまだらなのか、それともピンクに黒のまだらなのか、ちょっと分からないブーちゃんは、食いしん坊でした。今日も朝から、餌くれと鳴いています。どうしてくれないのって、首をかしげるところが可愛いのです。
でも、人がご飯を食べていると『寄越しやがれ』とすごい勢いで鳴くのでした。
「なんだか、どこかで見たことがあるのよね〜。可愛いけど食いしん坊で、人のもの欲しがって、いい子いい子すると付け上がっちゃうところが」
『どこかのパンダ、そっくりだな!』
タマさんが、腹話術人形のキーちゃんとお話しています。だけどそれって、もしかして独り言? 横ではジーンさんとポムさんが、力の入らない笑い顔です。みぃんな、『どこかのパンダ』が誰のことか、よく分かっているのでした。
ちなみにタマさんやひーさまのことではありません。『ぱぱんだん』の恵一郎パパのことでもありません。残った一人のことです。
まあ、それはそれとして、ブーちゃんの特訓です。ご飯のことは、ウマイさんに人のものを欲しがってはいけませんと、よっく言い聞かせてもらいました。おやつが食べたかったら、みんなの言うことを聞くのです。
「50センチ以上飛ぶブタもいるらしいから、高飛びや輪くぐりも出来ると思うけど‥‥こら、バーを齧るな」
ジーンさんが用意した高飛びのバーも、タマさんが探してきた輪も、全部一度は齧ってみるブーちゃんでした。大好きなのは、ポムさんが切ってくれるサツマイモやかぼちゃです。試しに、輪っかの向こうでサツマイモを振ってみましょう。
「お約束だよねぇ‥‥輪転がし出来るんじゃないの?」
ポムさんが笑ってしまったのは、ブーちゃんが輪っかをよいしょと鼻で押し上げて、下をくぐってきたからでした。タマさんとジーンさんは、溜息をついています。
「「「待て」」」
サツマイモをもっと寄越せと鳴いているブーちゃんに、三人揃って『待て』が出たのは、きっと偶然ではありません。
ブーちゃんが、バーや輪の下をくぐらなくなる日は来るのでしょうか。
●フーちゃんの場合
真っ黒けのフーちゃんは、ブーちゃんと同じ一歳のはずですが、お医者さんに見せたら小さいそうです。あんまりちゃんと餌を貰っていなかったみたいで、人がたくさんになったらお部屋の隅でじっとしています。
「ここの人たちは誰もぶたないから、心配しないんだよ。ほら、おうちだって立派なのを作ってあげるからね」
お話の出来るウマイさんが、しみじみとフーちゃんとお話しています。だけど他の人にはフーちゃんが何を言っているのか分からないので、やっぱり独り言みたい? 獣人の人ばっかりだから、別に不思議には思いません。
「水はカルキ抜きした湯冷ましで、温度はこっちの家は夜もあったかいからええとして、外に出んように気を付けたらなぁ」
「あ、それは安全柵みたいなのをドアのところに付けようかと思ってるんだよ」
猛ぽんが水の容れ物の点検をして、居間のものでフーちゃんが口にしそうなものは上のほうに置きなおしています。笹村さんのおうちは広いので、フーちゃんとブーちゃんは居間に続いている三畳間を使っていますが、時々は居間にも出てくるのです。
皆で調べたら、ミニブタちゃんは落ちているものを拾い喰いしたり、段差で転んだり、置いてある食べ物を勝手に食べたり、時々冷蔵庫をこじ開けたりするらしいので、つまりは小さい子供がいるような気分で暮らさないといけないようです。
それで、ダミアンさんと猛ぽんはフーちゃんとブーちゃんのおうちに、転がして遊べるおもちゃや、危ないところに行かないように取り付ける柵を作っています。二人とも、とっても手先が器用なので、どんどん出来上がっていきます。
「ほら、綺麗なおうちだろう? あれがフーちゃん達のお城だからね」
ウマイさんが、ぽよよんなおなかの上でフーちゃんを遊ばせながら、またお話しています。フーちゃん、餌の時間でなくてもちょっとはお部屋の中に出てくるようになったみたいです。
猛ぽんとダミアンさん、ブタちゃん達のおうちに、お城の絵を描き始めました。
●ウーくんの場合
イルさんが『ウー』と呼んだら、卯月くんはお返事しませんでした。
「ウー、お返事」
イルさんは、割と無表情です。それなのに、さりげなく半獣化していて、爪がキラーンなんてしています。卯月くん、ちょっとびびってますが、『ウー』でお返事はしないのです。
そんな二人の後ろでは、フーちゃんどころか、ブーちゃんまで逃げ出しているのでした。
「ウー、ブーとフーが逃げた」
「俺のせいじゃない。俺、可愛いウサギだし」
やっぱり半獣化した卯月くんにパンチを放って、イルさんは避けられてしまいました。これはちょっと、本気で勝負かも?
●カンナさんの場合
ひーさまは、なぜか完全獣化しています。カンナさんも完全獣化なのでパンダさんが二人。しかもカンナさんはひーさまのお膝の上でした。
「だからブタさんを飼うなら、カンナもつまみ食いしながら歩き回ったらいけないんだ。ブタさんに我慢させたら可哀想だろう?」
ペットを飼うには、飼い主がしっかりしないといけません。本当の飼い主は初美さんですが、カンナさんも家族ですから、ちゃんとご飯の時間は守らないと。
「それにつまみ食いすると、太ってこんなこと出来なくなるぞ」
ひーさまがカンナさんを高い高いしているのを見て、恵一郎パパが悔し涙にくれていましたが、みんなは見なかった振りをしました。カンナさんだけ、大喜びです。
●ご飯と餌の時間です
ブタちゃん達のご飯は、ペットショップで飼ったドライフードとお野菜です。果物は食べ過ぎるとぷくぷくになっちゃうから、おやつにとっておきましょう。人と同じものばっかり食べると、やっぱりぷくぷく。
お野菜を切るのは、ポムさんのお仕事です。なんとポムさんは栄養士さんなので、お野菜も栄養を考えて準備してくれました。
みんなのご飯は、葉月さんが作ります。葉月さんはカンナさんの弟ですが、調理師さんなのです。ポムさんと楽しくおしゃべりしていましたが、なんだか難しいお話なので他の人にはちょっと分かりません。
でも、この人達のお話は誰にでも分かります。
「みゃーぼーろーふぅ」
「いいねぇ、中華。春巻きやシュウマイも好きだなぁ。お、大根サラダがこんもりと」
「不思議ねえ、あたしも大根サラダは作るけど、あんなに綺麗に盛り上がらないの」
カンナさんとウマイさんとタマさんが、台所の片隅に座り込んでお話し中です。お手伝いをしているわけではありません。ご飯が出来るのを見ているだけ。作っているのは、ポムさんと葉月さんでした。二人だけで、どんどんご飯が出来ていくのも不思議。
そこへ、ひーさまがやってきて言いました。
「また、つまみ食いして。もうすぐご飯なのに、何してるんだ」
「あたしは食べてませーん」
食前のおやつに、人参スティックをかじっていたウマイさんとカンナさんは、まだお口がもぐもぐしています。タマさんは見ていただけなので、全然平気。
「あのね、みんな。お皿を出すとか、テーブルを拭くとか、お仕事は一杯あるんだから」
ちゃんとお仕事しなさいと、ポムさんに叱られて、ようやく台所の井戸端会議は終わりのようです。
そのころ、居間ではジーンさんとダミアンさんと猛ぽんが、長テーブルを広げているところでした。みんなでご飯にお呼ばれなので、お手伝いです。長テーブルも一つでは足りません。
「お、ブーとフーの水も足しておかな。初美はん、ちゃんと水の世話したれやー」
テーブルを出し終えて、猛ぽんがブーちゃんとフーちゃんのおうちの様子を確かめています。猛ぽんは『出来なかったらご飯抜き』と怖いことを言うのに、細かいところをよく見ています。水の容れ物も、転げてしまわないように台を作ってくれました。でも、ブーちゃんとフーちゃんのおやつを持って逃げるので、いっつも追いかけられています。
ジーンさんは、餌の器が置いてある台が揺れないか、ダミアンさんと確認です。台の上に上らないと餌が食べられないようにしたら、高いところも大丈夫になるはず。そうしたら、きっと高飛びも輪くぐりも出来るようになるでしょう。
「餌の取り合いをして、転げ落ちないといいけどな」
「ウマイさんに言ってもらったから、大丈夫だと思うよ。それにほら、餌が足りなかったらねだる相手はわかっているみたいだし」
「カンナにも、よく言っておかないと‥‥」
台の具合は良かったのですが、ブーちゃんとフーちゃんは食べるのが大好きです。そして、同じように食べるのが大好きなカンナさんのところに行って、おねだりをします。食べさせすぎないように、カンナさんにはよく言っておかないといけません。
「スキーに連れて行かないって言えば」
「また泣き付かれるのはお断りだ」
ジーンさん、カンナさんがスキーが好きだとダミアンさんに聞いたので、今度行こうと言ったら、今すぐ行きたいと駄々をこねられたのでした。大変です。
このころのブーちゃんとフーちゃんは、イルさんに抱えられて、居間でご飯を待っています。捕まえておかないと、台所に走っていってしまうので大変です。
「どっちが三男だろう‥‥」
イルさん、何か悩んでいます。イルさんは狼なので、もしかするとブーちゃんとフーちゃんは絶体絶命かもしれません。猛ぽんとダミアンさんが作ってくれたお城のおうちは、お隣のお部屋です。
でも、ブーちゃんもフーちゃんも、ぶいぶい鳴きながら抱っこされているのでした。
●リピート
朝になったらご飯です。それからお散歩も行きましょう。あんまり寒い日は、おうちの中で運動です。トイレはちゃんと出来るようになりましたが、ご飯の待てはまだ時々駄目です。『にゃいちょ』って食べさせちゃう人も、併せてしつけなのです。
昼間は芸の特訓です。お洋服も作ってもらいました。特訓、特訓、また特訓。
夕方は、お風呂に入ってみます。フーちゃんは全然平気ですが、ブーちゃんはシャワーが怖いみたい。たらいのお風呂に入れましょう。入れてあげる人は、濡れてもいい服でないといけません。
夜になったらご飯です。遅れるとぶうぶう言われます。それからブーちゃんとフーちゃんが寝られるように、テレビの音は小さくします。おやすみなさい。
朝になったら、また繰り返し。
●そんなこんなで
ブーちゃんとフーちゃんとウーくんが、新しい芸でデビュー出来そうな気配がそこはかとなく漂ってきた日のこと。タマさんが、カンナさんに言いました。
「あたし達も、迷いパンダのお世話を覚えておかないと」
「‥‥ワシントン条約」
イルさんの冷静なツッコミがなくても、迷いパンダは普通いないのでした。
捨てブタ二匹は、『ぱぱんだん』のお仲間になっています。