いい日竹断ちアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
龍河流
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
易しい
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報酬 |
不明
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参加人数 |
8人
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サポート |
1人
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期間 |
04/30〜05/02
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●本文
着ぐるみ劇団『ぱぱんだん』は、親戚一同でやっている小規模の劇団である。その割に多角経営で、副業でコンビニエンスストアを経営し、その地下に小さいながらもスタジオを作って貸し出しもしていた。他にも細々と、着ぐるみ劇団以外の仕事をやっている。
そしてもちろん、『着ぐるみ』と言っているくせに、かなりの割合で自前毛皮だったりするのだ。凝った衣装に身を包んだ、出来のよい『着ぐるみ』が人気である。
そんな『ぱぱんだん』の事務所兼店舗兼住居の斜め前、正確にはコンビニエンスストア部分のはす向かいに神社がある。この神社の敷地内には保育園があって、毎日多数の園児が通っていた。
この時期、『ぱぱんだん』には保育園と毎年恒例のお仕事が待っている。
「今年も、Tがいっぱいだぁねぇ」
なにやら間延びした話し方をするパンダが、『ぱぱんだん』団長の笹村恵一郎だ。時々保育園児と特撮戦隊ヒーローごっこをすると、その日は一日『隊長と呼んでおくれ』とわがままを言うが、それ以外はまあまあ普通の人である。四六時中、何を考えているのか完全獣化でいることを除けば、だが。
『ぱぱんだん』は副団長が経理担当で恵一郎の妻の文子、他の団員が子供達に弟夫婦、甥姪、時々引退したはずの恵一郎と文子それぞれの両親と、思い切り一族経営だ。現在の主力は、恵一郎と子供達と弟夫婦である。
もちろん、保育園とのお仕事となれば、卒園生でもある子供達や甥姪が大活躍のはずなのだが‥‥
「ぱぴゃ、ティーってゆいまちちゃね」
恵一郎の娘のカンナ、これまた四六時中家の中では完全獣化で過ごしている二人目のパンダ獣人は、ものすごく不機嫌だった。彼女が初対面では意思疎通が難しいほどに変な言葉遣いで話すのは、今に始まったことではない。色々と、似なくてもいいところが似ている父と娘である。
しかし、そんな二人にも決定的に違っているところがあった。
「ご、ごめんよぉ、カンナ。店に行ってると思ったんだよぉ」
「おちぎょとは、おちまいれちゅ」
ぷんすか怒っている娘と、ご機嫌取りに忙しい父親はさておき。
多角経営をモットーとし、中心部は外れているとはいえ札幌市内にけっこう広い地所を所有する『ぱぱんだん』一族は、軒を連ねて住んでいる。
挙げ句に、自分達の家の裏手にある小さな山と言うか丘をまるごと持っていた。彼らが裏山と呼ぶここでは、毎年この時期に筍掘りが出来るのだ。筍と言っても、笹竹。筍は鉛筆のように細い、細竹なんぞと名前が付いて売られているあれの一種である。
でも、取れたての筍がおいしいことに変わりはない。また筍掘りが体験できる機会も、札幌市内では滅多にない。
そんなわけで、毎年保育園児達が二日間に分けてやってきて、裏山の中を歩き回り、小さな筍を見付けては取っていくのだった。その筍は、彼らのお昼ご飯になる。当然保育士の先生達も同行するが、裏山では何か事故がないように『ぱぱんだん』の人々も一緒に筍掘りをすることになっていた。
こうして、毎年お仕事が生み出されていくのである。
ところが、子供達の人気上位に位置するパンダのカンナは、筍が大嫌いだった。筍嫌いが高じて、笹も嫌い。七夕も嫌い。七夕に雨が降ると小躍りするという、なにやら間違った習慣を持っているほどに筍が嫌い。
おかげで、毎年筍掘りのシーズンには、何かしらの理由をつけて出掛けてしまう。家族も『嫌い、美味しくない』と呟き続けられてはうっとうしいので、仕事のことはさておいて送り出していた。今年は短大時代の友人と、何を考えたのか市内観光をする予定でいる。生まれた時から札幌に住んでいるくせに、観光客に混じって、観光客が行きそうなところを巡ってみたいのだそうだ。
ついでにその友人のところに二泊して、すっかり筍とは縁遠い生活を過ごすつもり。
そのこと自体は、笹村家の人々も構わない。カンナが家にいない間に、皆で好きな筍を思う存分食べられるし、仕事も進む。泊まりに行く友人のことも家も知っているので安心だし、これが実は彼氏の家だったりした日には赤飯でも炊きかねない家族である。そんなことがないのも、家族ゆえによく知っていたが。
今年も順調に、筍掘りとカンナの遊びに行く計画は進んでいたはずだったのに。
まず、問題の一つ目はコンビニエンスストアのアルバイトだった。
「オーディションに合格して上京だから赤飯炊いてやろう」
ゴールデンウィークシーズンに集中的に働いて稼ぎたいと言っていたアルバイトが二人、突然欠勤することになった。一人はオーディションに合格して、急ぎ上京するのでめでたい話だ。もう一人は実家の都合で、これまた急ぎで戻らなくてはならない。
彼らが仕事を予定していた分の、筍掘り当日の代替要員を探さなくてはならないのだった。人さえ来てくれれば、筍掘りのほうをお願いしても構わない。人が二人以上都合できれば、細々とした仕事も一気に片付けてしまいたいところではある。
そうして、問題の二つ目。これが大問題だった。
「ぴーちゃー、ちゅごーぎゃあるきゅなっちゃっちゃでちゅ」
意訳、愛称ピーちゃんなる友人の都合が悪くなってしまった。
筍掘り当日にいたくないカンナの、行くあてがなくなってしまったのだ。別に一人で映画でも観てくればいいのだが、そんなことは妹大事の笹村睦月が許さない。両親、弟の葉月、同居の従妹の初美にも『兄馬鹿』と言われる睦月は、本当に過保護だった。
単に、カンナが年齢の割にぽややんな娘であることも関係はしているのだが。それにしたって二十三歳だ。
「誰が他にいないのか、誰か」
「ちゃぎゃちゅでちゅ」
「いっそ、カンナと出掛けてくれる人も募集すれば? お昼代は睦月が出すってことで」
初美は冗談のつもりだったのだが、本当に本気で悩んでいそうな睦月を見て、その頭を引っぱたいていた。
初美の冗談はともかく、『ぱぱんだん』は働き者を何人か必要としている。
●リプレイ本文
●筍掘り編の初日
保育園児との筍掘りに名乗りを上げたのは、熊のトシハキク(fa0629)とパンダの姉川小紅(fa0262)、三条院真尋(fa1081)の三人だった。これでパンダの笹村カンナがいなくても、子供の好きな動物がたくさんで着ぐるみ劇団『ぱぱんだん』はありがたい。
しかし、『ぱぱんだん』の笹村恵一郎団長と長男の睦月に案内された彼と彼女達の前には、いきなり崩れている土手の一角が表われていた。裏山と言っても住宅地の人家の裏手、樹木が多い丘程度のもので、崩れているのは二メートル四方だが、これはいただけない。
「ここはロープで囲って、立ち入り禁止よね。埋め戻せればそっちがいいけど」
「安全だしな。俺は力仕事は全然平気だぞ」
立ち入っていい場所の目印用に派手な色のロープを抱えていた小紅と、両手に大きなスコップとゴミ袋を提げたジスが『やるか』と乗り気なのだが、恵一郎と睦月はちょっと難しい顔付きだ。どうもこの場所は、毎年雪解けの時期には崩れるらしい。単に土を盛ってもまた崩れるのでは、かえって危ないかもと考えているようだ。
「そういうことなら竹やぶからは離れているから、今回は立ち入り禁止で、後日ちゃんと対応するのが一番かしらね」
小紅と協力してロープを張った真尋が、しっかり土留めしないといけないと言ったので、とりあえず五人は裏山の掃除をした。人が入り込むことはないようで、ゴミといっても枯れた笹や落ち葉が積もって足をとられそうな場所をならすような作業だ。人数がいるので半日ほどで終わって‥‥
ジスを中心に、五人は土留め用の土嚢を作るべく麻袋に土詰めをしていた。なんで麻袋がすぐ出てくるのかと、小紅と真尋は不思議がっている。
●コンビニ編の初日
筍掘りには参加せず、コンビニエンスストアでアルバイトを選んだのは狭霧 雷(fa0510)とダミアン・カルマ(fa2544)だった。ダミアンは単純に働き手の分散具合を見ての立候補だが、今回初『ぱぱんだん』仕事の雷はちょっとだけ下心があった。
「スタジオがあるって聞いたので、借りられたらありがたいと思いまして」
コンビニの責任者は副団長の文子である。二人にとっては母親と同年代で雷も丁寧に頭を下げたが、いたって気楽にスタジオを貸してくれることになった。ただし、条件付き。
「なんだか色々散らかしてあるんで、それを片付けておいてくれるかしらね。店で使った発泡スチロールなんかだけど」
代わりに使用料はまけてあげようと言われた雷が頷いたのはもちろんだが、片付けの時には何故かダミアンが入り込んでいた。
「あ、使いたかったですか?」
「いや、発泡スチロールを貰って、ジオラマの土台に‥‥」
使いたいものが違う彼らは、平穏無事に仕事と趣味に没頭したらしい。
●カンナ変の初日
ポム・ザ・クラウン(fa1401)と蘭童珠子(fa1810)は、本日何回目かに慌てていた。
「カンナちゃーん、どこー?」
「あ、タマちゃん、あそこのお店の前!」
彼女達が一緒に札幌観光する札幌市民のカンナは、人間姿だとかなり無口だ。挙げ句に自分の興味を引くものがあると、すうっとそちらに向かってしまう。本日の計画を話して歩いていたポムとタマが振り返ると、姿がないわけだ。
それでもちょっと来た道を戻ると、はぐれたことに気付いたカンナは目立ちそうなところで待っている。離れる前に、一言声を掛けてねと言い聞かせるのだが‥‥また、すうっと。
「カンナちゃん、手を繋ごうね」
「あ、それいいわね。じゃ、カンナちゃん真ん中よ」
二十代前半の三人娘は、手を繋いで大通り公園を歩き出した。今日はまだ、時計台しか行っていない。せめても、羊が丘公園くらいには辿り着きたいものだが。
「とうきび」
カンナはまた、食べ物をご所望である。
●筍を掘ろう!
子供好き、おいしい筍も好き、夕飯に一杯やるのももちろん嫌いじゃない。
そんなジスと小紅と真尋の三人は、『ぱぱんだん』の人々と保育園児達と一緒に筍掘りを行っていた。とはいえ、彼らの仕事はほとんどが子供の誘導だ。『ぱぱんだん』のお仕事の常として、完全獣化中は絶対に口を開いてはいけないから、身振り手振りで『こっちは入ったら駄目』などとやっている。ここの仕事は初めての真尋も、手品を能くするので身振りだけで色々示すのは得意だ。
なにより熊一人、パンダ二人が増量で、カンナの不在もなんのそので筍掘り担当は頑張っていた。筍はやっぱり子供優先なので、たくさんあるのを見付けても素知らぬ振りで手は出さない。小紅の頭の中を炊き込みご飯や味噌汁や焼き筍のいい匂いが横切っても、真尋の記憶から煮物や酢和えが蘇っても、ここは我慢我慢。子供達が見付けやすいようにしてあげなくては。
かと思えば、ジスはちょっとずるかもしれないけど、なかなか見付からなくて泣きべそをかいている子供に幸運付与をして、まだ筍が残っていそうなところまで手を引いてやる。あんまり一人でこれをすると不自然なので、ちゃんと真尋と小紅も加わって、『パンダさん、たけのこ見つけられないのー?』などと言われつつ、子供をあちこちに誘導していた。
幸いにして、小紅が心中どきどきしていた『笹食べてー』はなかったが、ジスは『おうまのけいこ』とねだられて、途中から子供達をおんぶして、山の中をぐるぐる回っていた。筍掘りの二日目は、最初からお馬の稽古で大変な思いをしたようだが、男の子達が喜ぶので服が汚れるのも構わずに遊んでやっていた。
真尋や小紅も、いつの間にやら長靴の中に土が入り込んで、終わるころには靴下が真っ黒になっていたが‥‥洗えば落ちるので気にしない。
ただ。
「不思議だ、不思議だとは思っていたが!」
「首のスカーフが詐欺よーっ」
「別に騙したつもりも、嘘を言った覚えもありませんよ?」
シャワー浴びて汗でも流せばと言われた時になって、真尋が『趣味は女装』という人だったことが判明して、ジスと小紅はそりゃもう驚いたのだが‥‥真尋はあんまり驚かれてちょっと不満そうだ。
「お仕事なら、スカートだってはくよぉねぇ」
恵一郎もトンデモ発言をかましていたが、多分そういうレベルではないはずだと真尋以外は思ったのだった。だって、最初にやってきたときからスカートだったし。
筍の味がそれで変わるわけではないけれど、食べられる量は変わっちゃったりするかもしれない出来事だった。
●コンビニ店員をしよう!
『日本語はなせます』の札をレジにおいて、ダミアンはコンビニの店員さんをしていた。いつも利用してくれる人は、『この店は演劇やっている人が多いから』と多少変わった風貌も気にしないようだが、基本的に子供は正直だ。保育園の帰り道にちょっと何か買い込んでいく親子連れの場合、金髪のダミアンより雷の白っぽい髪のほうが物珍しいらしい。
「あのお兄ちゃん、おばあちゃんの髪してる!」
どうしてお兄ちゃんがおばあちゃんの白髪を引き合いに出されるのかなんてことは、子供の言うことなので深く考えてはいけないが、日本語をまだまだ勉強中のダミアンには気になった。
「どうして、おばあちゃんなんだろう。おじいちゃんはどうしたのかな」
「客の家の事情を悩んでも仕方ないでしょう。単に近所のおばあちゃんのことかもしれませんし」
仕事そのものの手際はどちらもいいのだが、お客の切れ目に日本語教室を開催している二人だった。その後は、揃って地下のスタジオに入り込み、雷はギターの練習、ダミアンはジオラマの作製をしていたりする。ダミアンは、この後の仕事で使うものを作り足しているようだが、雷も時々感想を聞く相手がいると張り合いがあるようだ。
「そういえば、そのお芝居の後に花見する計画だと聞いたので、文子ママに連絡しておきましたから。今日も花見みたいですけど」
「すみませんね。そういえば、筍ご飯ってどうやって作るのか知ってるかな?」
なんだかもう何年も一緒に仕事をしているような二人組は、ダミアンの手作り弁当を食べたりもしていたらしい。
●観光、訂正、食べ歩きをしよう!
ビール博物館に白い恋人パーク、ノースサファリパークにも行った。合間に温泉や岩盤浴を楽しみ、食べ歩き回避策をとったポムの努力も空しく、ボーリングは大量のチョコレートを賭けた勝負事になっている。もちろんチョコレートを買い込んできたのはカンナだ。一人で食べると言い出さないだけいいのかもしれないが、ポムの家に三人で泊まった二日目だって、道々買い込んだお菓子の味見に忙しかったはずだ。途中まで律儀に付き合ったが撃沈したタマと違い、カンナは嬉しそうにしょっちゅう何かを食べている。
「カンナちゃん、そんなに食べるのが好きで、お野菜があんなに大好きなのに、筍が嫌いなのねぇ。びっくりしちゃった。なんで?」
もうチョコレートもいらないと、ボーリングは程々のノリでやっているタマが何気なく尋ねた。と、カンナがものすごい形相で『あたったから』と返してくる。
「あー、それだけ?」
何か複雑な事情があるのではと考えていたポムは思わず口を滑らせたが、何しろ食べ物にあたると苦しい。カンナが筍の名前を聞くのも嫌になるのだから、相当苦しかったのだろう。言ってしまってから、悪かったなあと考え直したポムだったが。
「生で食べた」
「カンナちゃん、あれは生で食べるものではないよ。小さいときでしょ? あたるかもね」
取ってすぐに食べたのかと、いかにもありそうな展開にタマ共々納得してしまった。
カンナはぷんすか怒って、その怒りをエネルギーに素晴らしいスコアを叩き出している。多分チョコレートは彼女の総取りだが、買ったのもカンナなのでそれはポムもタマも構わない。
なにしろ食べ物関係の施設見学で『帰りたくない、ここに住みたい』と駄々をこねられたので、二人ともすでに疲れ果てていたのである。
●宴会をしよう! それぞれ編、一部変
筍掘り隊とコンビニバイト組は、筍掘りが無事に終了した日の夕飯を『ぱぱんだん』にお呼ばれしていた。小紅が楽しみにしていた炊き込みご飯も、真尋が思い描いていた煮物や酢和えも、筍以外の春の食材もたくさん使っての贅沢な食卓である。しかもちょっと部屋が狭いが、二階なので遠目に神社の桜が見える。まだ満開には遠いが、一応花見。
「こんなに美味しそうなのに、食べられないなんてカンナさんは可哀想ですね」
話題の人の弟葉月が腕を振るったご馳走に喜々として箸をつけつつ、雷がそう口にした。彼と真尋はあまりカンナを知らないが、食欲魔人っぷりを承知しているジスや小紅、ダミアンは不思議半分に頷いている。けれど家族は冷淡なもので。
「昔、叔父貴が『生で食べたら美味い』とほざいて、二人で食いまくってあたったんだ。あれほど、地面から取ったものをそのまま口に入れるなって言い聞かせておいたのに」
「無駄よ。今だって、畑の野菜は大抵むしってそのまま齧ってるじゃない」
「柿の木から転げ落ちたこともあったよな。柿は折れるから登るなって言われてたくせに」
自業自得だと、カンナの子供の時の出来事をあれこれ並べてくれている。その度毎に睦月も初美も葉月もビールやら日本酒やら何でもかんでも、ぐいぐい飲んでいた。小紅はすかさずご相伴に預かって、すっかり幸せだ。他の人々も飲める人はお付き合いしていたが、この四人の飲みっぷりにはちょっと追いつけない。
「筍は来年までお預けでも、また今回みたいなのがあったら呼んでね。子供の相手して、お酒が飲めて、こんな楽しい仕事ないから」
小紅が本当に楽しげにビールジョッキを掲げると、それに付き合って乾杯してやったジスが確かにと頷いた。今時子供が土をいじって楽しむのを見守る仕事なんて、滅多にない。子供好きの彼にしても、機会があればぜひと思うところだ。
「じゃ、そのうちにジャガイモ掘りでも。それもうちの畑でやってるから」
「着ぐるみ劇団と聞いたけれど、そんなこともしているの?」
真尋が呆れ半分、感心半分で尋ねると、『目指せ多角経営』と返ってきた。一種イベント企画、実行会社のようであるが、真尋が体験した通りに基本は着ぐるみ劇団だ。ジスも小紅も真尋も自前毛皮だったが、ちゃんと着ぐるみだって用意してある。その割に、竜獣人の雷に『今度は自前で来い』と勧誘が激しかったりするが。
「ジャガイモだったら、僕でも料理できるな」
ダミアンはにこにこと笑っているので、その頃に暇だったら来るのかもしれない。
まあ、今日のところは筍を食べに食べて、満腹したら、面倒だけど手分けして後片付けだ。
その頃、タマとポムとカンナの三人は。
「カンナちゃん、さっきシャーベット食べてたじゃない」
「あれは中休み」
「確かに口変わりにシャーベット食べるけど、普通はメインとデザートの合間なのよ」
ボーリングを楽しんだ後、それで消費したカロリーなんかささやかなものだよねと思わされるくらいに、ブッフェレストランで色々と楽しんでいたのだが‥‥少なくともポムとタマは標準的な量しか食べていなかった。ついついちょっとは欲張ったかもしれないけど、ブッフェレストランでの標準量。
なのに、カンナはシャーベットの後にまた目の前で揚げてくれる天麩羅をたくさん貰ってきて食べていた。野菜が大半だが、もちろん筍はない。白身魚と海老も美味しいようだ。
もう付き合いきれないと、二人はすっかりお茶の時間に逃げ込んでいた。
でも、やがてカンナが『皆で分けようと思って』とデザートを山盛りで運んできてくれるなんて、彼女達は予想もしていない。