後輩育成〜地下遺跡調査中東・アフリカ
種類 |
ショート
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担当 |
龍河流
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芸能 |
フリー
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獣人 |
3Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
7.9万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
05/10〜05/14
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●本文
エジプトのとある街から車で小一時間ほど離れた場所に、その昔オアシスを抱えていた城塞都市がある。
五キロ四方の城砦で囲まれたその都市は、地下水脈の移動でオアシスが枯れて以降、住民が移住してしまい廃墟となった。打て捨てられた理由は、水が枯れた以外にもライフラインの敷設が大変で、現代的な生活に住居が合わなくなっていたことなどがあるらしい。しかし建築年代の古さと、過去の生活習慣などの研究が可能なことから、近年この廃墟を遺跡として保護する活動が始まった。
この都市はローマに本拠を置くアフリカの遺跡・文化保護団体が、保全活動を行うことを条件に五十年契約で全域を借り受けている。内部の調査、発掘権なども所有するが、この場合は適宜担当部局への届出が必要だ。最も近い担当部局は車で一時間の街にある。
先日までは都市内の相当部分が砂に埋もれていたが、地道な掃除の結果と一部が崩れていた城砦の修繕が済んだことで、内部への砂の侵食はほぼ停止した。
ところで。
一部の獣人間ではこの都市の地下には古い遺跡、二千年以上前の獣人達が遺したなんらかの祭祀場があると噂されているが、現在まで発見には至っていない。別の説では祭祀場ではなく、戦場跡でオーパーツが眠っているともされる。
都市の地上部中央に集会所と思しき大きな舞台があり、他の同様の城塞都市とは異なっている。また獣人一族が複数住んでいたことが確認されており、彼らの間にも『地下に宝がある』と伝えられていることが『地下遺跡実在』を信じる人々の拠り所になっているが、元住人の子孫もそれ以上のことは知らない。
けれども先日、『お掃除』の最中に、ようやくその遺跡に繋がっているのではないかと思われる扉様の物が複数見付かったのである。
ここで、舞台はしばしローマに移る。
城塞都市を一時的にでも保有している遺跡・文化保護団体の代表で劇作家のキールは、歳の離れた友人のアレキサンダーを前に熱弁を振るっているところだった。キールは調査の主スポンサー、アレクは孫のシンデレラが現地で活動中だ。
「北東、東南、南西、北西の四箇所の城壁に、アフリカ黒トキらしいレリーフが刻まれた部分があるそうだ。扉と言うには開けられる様子がないらしいから、上手に外して入るしかないね。ところで、黒トキって、どういう意味があるんだろう? シンデレラが連呼していたが」
アフリカ地域全般で活動しているせいか、あちこちの伝承が頭の中で未整理のキールに、インターネットを介して送られてきた写真を見たアレクは説明してやった。
「ここに水時計の意匠があるだろう。エジプト神話の主要神のトトが水時計を発明した伝承があって、化身が黒トキだと言われたり、そういう姿をしているなど諸説があるね。エジプトには、動物の姿をした神が多いから、トトが珍しいわけではないが」
「それなのに、イシスの杖?」
遺跡の地下には遺跡があって、そこにはオーパーツが眠っている。
これは獣人の一部で有名な話らしいが、さらにその中でも一部の人々はオーパーツを『イシスの杖』と呼んでいた。なにやら絶大な魔力を秘めた杖らしい。定石通りに、誰も見たことはないのだが。
このキールの疑問には、アレクはものすごく素っ気無く答えた。
「絶大な魔力を秘めた杖なら、エジプト神話でも強大な魔力を振るったイシスの名前がふさわしいと、勝手に決めた人がいるんだよ。絶大な魔力を持つらしいオーパーツの杖、では言い難いから、通称だね」
「そうか。パナシェは相変わらずセンスがいい」
アレクが誰とは言わないのに、キールは一人で納得している。二人が共通で知る人の中で、そんな好き勝手なことをするのは、アレクの妻のパナシェだけだ。昔から今まで、ずーっと勢いと根拠の不明な自信と他人の何十倍もの悪運に満ち溢れ、遺跡探索では一時期名を馳せた女傑である。流石に六十代に入って久しく、現在はそれほど派手な活動はしていない。
単に孫をはじめとする後輩をいびったり、育てたりしているだけだ。
そのパナシェは現在、ローマの劇場の一つでローマ時代を扱う劇の背景美術の考証に出向いている。よく同窓の学徒からは『芸能かぶれ』と陰口を叩かれるらしいが、パスポートに考古学者と記載する彼女の主たる仕事はこうした劇の歴史考証なのだ。だって獣人だし。
まあ、ここにいようといまいと、人妻に横恋慕して何十年のキールには『我がミューズ』である。そんなキールは、アレクに当然あまり好かれてはいない。
だがしかし、遺跡が見付かったとなれば話は別だ。
「で、次は扉を開けさせて、中に入ってもらうんだね?」
「決まっているじゃないか。もちろん、関係各局には内緒でね。その辺のごまかしが利くように丁寧に開けられる人がいるとありがたいねぇ。後で日時を誤魔化して、届出しないといけないから」
幾ら都市全体の管理をしていて、遺跡の調査、発掘権を所有していようと、出て来た遺物をキール達が私有化することは叶わない。勝手に持ち出そうとしたら、それこそ手が後ろに回るだろう。よって、今回はお役所には黙って、こっそりこそこそ遺跡を調べるのである。オーパーツが出てたら、もちろんWEAのもの。
「ウェンリーの調査は難航しているようだが、そんなことにならないといいものだね」
「アレク、あっちは難航しているなんてもんじゃないと思うが‥‥万が一にも、逆ピラミッド型をしていたら即引き上げるように言っておこうか。普通の発掘様装備の他に、武器も必要かなぁ」
こうして、エジプトで遺跡調査の依頼が出ることになった。
●リプレイ本文
アルケミスト(fa0318)は、無口でかなり無表情な女の子だった。けれども、今はちょっと顔色が蒼くなっている。何も知らずに後部座席に乗ってしまったゼクスト・リヴァン(fa1522)とマーシャ・イェリーツァ(fa3325)、小塚透也(fa1797)の三人は、三者三様の反応を示していた。
「わははははー、道しかねえ! すげえ!」
「ちょっと、行き過ぎたわよーっ!」
「‥‥マジか?」
同じ頃、遺跡保護団体こと獣人宝探しチーム・カクテル同好会一派が所有するトラックで移動している源真 雷羅(fa0163)と海斗(fa1773)と甲斐 高雅(fa2249)とフゥト・ホル(fa1758)と何人かの現地スタッフは、前方を眺めて思っていた。
ああ、もう見えない‥‥と。
最年少アルミ所有のモービルスパイクWは、シンデレラの運転で時速百二十キロを優に超えて疾走中だ。行き過ぎたことにシンデレラが気付けば、今度は百八十度スピンの真似をして戻ってくるだろう。途中で転げなければ。
「誰か止めなきゃ駄目じゃん」
「えー、僕が気が付いたらもういなかったし」
「ちょっと油断した」
「あら、いい経験よ。こんなにまっすぐで対向車もない道路なんて、滅多にないもの」
スピード狂の運転手が乗り込んでしまった車に対して、後続トラックの人々はそれぞれに神頼み、仏頼みしている。アルミもゼクストもマーシャもトーヤも、祈る前に『この人の運転は危険』と教えて欲しかっただろうけれど。
やがて。時速八十キロで進んだトラックと、百二十キロ以上でぶっ飛ばしたモービルスパイクWは、ほとんど同じ時間に城塞都市に無事到着した。
「シンデレラ‥‥ネズミの‥‥御者、見付‥‥けて」
「ハムスターのお友達は、今頃ドイツですわ」
アルミの助言は、シンデレラの耳をすり抜けてしまったようだ。
城塞都市で見付かった、地下遺跡への入口と思しきレリーフは、高さが八十センチ、幅が五十センチ程度のものだった。人が入ることは可能だが、翼のある獣人の場合は翼がつかえそうな大きさだ。中に入ってから獣化出来るかどうかは、このレリーフ部分を外してみないと分からない。
そして、こんなものをこそっと外して、また元に戻すような技量の持ち主は大きなカイ君しかいなかった。他は完全獣化して器用さが人間のときよりアップしても、全体的に心もとないのだ。
「僕も自信があるわけじゃないけど‥‥記録は得意な人、お願い」
お守りの数珠とご利益があるのかないのか指輪を幾つか外して、マーシャがハンカチを差し出してくれたのでそれに包んでもらった大きいカイ君は、レリーフの様子をよく見ようと壁に顔を近付けて。
「こら、それは結婚指輪だから悪戯しない」
非常に熱心に、指輪を眺めているアルミとシンデレラを注意することから始めた。『いつの間に』とライラに突っ込まれたりしているが、まあそれはさておいて、大事なものはポケットに仕舞ってから作業再開だ。
ちなみに、レリーフのトト神は夜や時間を司る神なので、遺跡内に入るのは夜間のほうが何か発見できるのではないかと相談がまとまっていたが、開けるのは昼間だ。何も暗くなってから、細かい作業をすることはない。開けられる人が限られるので、見物人ばかりが多かった。
ただ、相変わらずアルミは指輪が気になるらしい。
「やっぱり女の子はアクセサリーなんかが好きだよね」
「お守りもこういう形だと身に付けやすいもの。遺跡に入るときには、一つくらい欲しいものね」
小さいカイが『女の子はお姫様抱っことアクセサリーが好き』と持論を展開していると、マーシャが相槌を打った。ビデオを構えているトーヤも、開くのを心待ちにしているゼクストも、男性だが一つくらいは飾り物の護符を持っている。小さいカイも言うに及ばず、マーシャやライラ、ハトホルも同様だ。
「俺、武器はなんにも用意しなかったけど、ナイトウォーカーがいきなり出てくることはないだろうな」
「遺跡が封じられて長いなら、まずないでしょうね。誰かが持ち込んでいたり、どこかで外と繋がっていれば別だけれど」
ゼクストが多少の危険は覚悟しているけど映画みたいに飛び出してきたら嫌だと冗談交じりに言うのへ、ハトホルは不吉な予測を返した。誰かが持ち込んでって、そんな物騒なことをする輩とお近づきになるのは誰もが遠慮するところである。
なのに。
「ナイトウォーカーはいなくても、一番に白骨死体とご対面は嫌よね」
だから祭祀場だといいとは、マーシャの弁である。女って強い、とビデオ撮影を引き受けているトーヤが呟いた。
かと思えば、小さいカイが準備してきたお菓子を広げて、見物人の一部はすっかりお茶の時間とくつろいでいる。
「中の仕掛けに当たらないように、栄養つけないとな」
ライラの言い分はそうだが、日暮れにはまだ遠い。単なるお茶の時間である。一部飲酒しているのもいるけれど。
「そういえばさ」
忙しく手と目を動かしながら、大きいカイ君がスピリッツを舐めているシンデレラに尋ねたのは、キールが『逆ピラミッドだったら引き返せ』と指示に入れていたことだ。指示には親切に、クフ王のピラミッド内部の見取り図まで付いていた。
「他所のピラミッド関連遺跡で死亡者が出ましたのよ。それでですわ」
細かいことは自分も知らないと言いつつ、シンデレラがぽろぽろと話したところによれば、WEAの関与していない武装獣人組織が、遺跡発掘チームを襲撃したとか。
「そういう大事なところを言わないで、これも試練だと送り込むあたりがあの方々らしいけれど」
ハトホルの感想には、大抵誰もが『そういう問題?』と思ったが、口には出さなかった。とりあえず個人所有以外に、ライフルや拳銃、スタンガンが準備されていたが、徹底抗戦させるつもりはカクテル同好会にはないらしい。
「獣人同士で殺し合いなんて、納得いかないな」
トーヤの今度の呟きは、先程とは調子が大分違っている。アルミが手荷物からリボルバー式の拳銃を取り出したので、いっそう顔付きが渋いものに変わっていたが‥‥小さいカイが物珍しそうに『持たせて』などと始めたので、何か言う気にはならなかったようだ。
他の大人も見るからに子供のアルミが拳銃を取り出したことにはコメントせず、ややあってライラがばさばさと髪を掻き揚げつつぼやいてみせた。
「一番の問題はさ、見たこともないものをイシスの杖って命名してあることだよな」
「あの方のセンスには本当に勝てないけれど、杖の形をしているかどうかも怪しいところね」
「そういう人なのか? かーっ、美味いもんをたくさん用意してくれるから、いい人かと思ったのに」
「イシスの‥‥杖、‥杖で‥‥なかったら‥‥売れない?」
城砦の上に上がる階段の途中に座っているゼクストは、ダンサーなのだが料理が好きだった。食料品が豊富な今回の仕事を、食べる以外にも作る楽しみがあると喜んでいたが、カクテル同好会の所業の数々を聞いているうちに印象が変わってきたらしい。一度でもシンデレラの祖母のパナシェと面識がある人々は、さもありなんと納得した。分からない人は、それが幸せだといわれる始末だが、ハトホルには憧れの先輩らしい。
アルミの発言は、女の子が口にするとあまりに物悲しいので、ゼクストが更に料理に腕を振るう決心を固めたようだ。大きいカイ君は指輪を見ていた理由が貧乏だと知って、ちょっとどきどきしたかもしれないが。
遺跡に入らないうち、危険と謎が深まっているようなと何人かが思っていたが、幸いにして大きいカイ君は首尾よくレリーフを外すことに成功した。けれども、ちょっと様子を探って、なんとなく表情が冴えない。
「これ、足場がなさそうで‥‥相当深いけど、どうする?」
皆も覗いてみたところ、確かにレリーフの向こう側は空洞だが、真下に延々と続いているだけだった。
しかも、羽を広げる余裕はちょっと見にはない。その先は不明。
最初に外したレリーフは、マーシャの発案でテーベの『トトの丘』の神殿と同じ方向からにしたが、垂直降下式。仕方がないので、大きいカイ君が次々とレリーフを開けたのだが、四箇所共に全部同じである。
挙げ句に。
「ガスって、下に溜まるんだろ? いつ頃入れるか、目処も立たないのか」
鳥系獣人のトーヤ、小さいカイ、アルミの三人は、多少広くなれば羽が使える。通路は下に行くと多少は広がっているようだから、そこまで降りれれば中の様子の確認くらいは出来るはずだ。
そう考えて、一同はまずは身の軽いマーシャやゼクストが途中までロープで降りてみようかと相談していたのだが、その間に大きいカイ君とシンデレラが何度もろうそく式のランタンを入口から下ろして確認したところでは、内部の空気は相当澱んでいた。なんらかのガスが発生していてもおかしくないし、百年以上も締め切りならそもそも呼吸には適さないだろう。
それでも四箇所全部を開けたので、当初はマーシャとシンデレラの兎獣人二人がかりでも空気の流れは聞き取れなかったのが、現在は外の風が強いとちょっとは空気が攪拌されているのだが‥‥ゼクストがぼやく通りに、中に入っていいかの判断は、なかなか難しいところだ。
「酸素ボンベがあるけど、これを背負ってロープを伝い降りられる人って、何人もいないしね」
「縄梯子を作って降りればいいんですわ。私、頑張りましてよ」
シンデレラが意気揚々と宣言したが、酸素ボンベを背負わせるとバランスが怪しいので、マーシャ共々却下された。次にビデオカメラだけ下ろして、撮影したものを確認する案をハトホルが出し、試してみる。
「広くなってるなら、僕がいけるよ。酸素ボンベは、スポーツ用の小さいのがあったから、それでどう?」
「アルミも‥‥行く」
四箇所のうち、三箇所は十メートル地点まで羽を広げる余地がなかったが、最初に開けた一箇所だけは五メートルほどで周囲が開けているようだと判明した。となると、自分達の出番だとばかりに小さいカイとアルミが自己主張するのだが、目が利くというトーヤの主張には叶わない。同じ獣人でも、流石に女の子と少年を先頭に立てるのは、大人達にためらいもあっただろう。
それでも一人では何かのときに危険だと、ゼクストもロープを伝い降りることになった。
「事前に、他の三箇所から電気式の明かりを下ろして、見えないか試す価値はあるだろうね」
「一箇所はあたいがやる。どうせ無線とか分かんないし」
大きいカイ君が、降りる二人と無線交信をする準備を整え、その間にライラ、アルミとシンデレラ、マーシャと小さいカイが三方に分かれて、明かりを吊るしてみることになった。ハトホルは大きいカイ君と共に、緊急時に備えてトーヤとゼクストが降りる入口で待機である。他に現地スタッフも加えて、この場所は待機人数が多めに割り振られていた。
中で失神したら、命綱で引きずりあげる態勢なので、ゼクストとトーヤはあんまり嬉しくなさそうだが、好んで危険に突っ込むほど無謀でもなかった。牛獣人のハトホルや亀獣人のカイ君が力があるのは、種族的特質というものである。
こうした準備に随分と時間を取られたが、なんとか現地四日目の日没直後にまずはトーヤが、続いてゼクストがロープを伝って降りていった。彼らの装備は酸素ボンベにヘッドライト、肩や腰の位置にビデオカメラである。胸元に着けられた無線機から返答がなくなったら、電波障害でも何でも、引きずりあげられる手筈。
「こちら降下点、予定通りにトーヤとゼクストが入りました」
当然これに先立って、他の三箇所では準備できた中で最も光度があるライトが降ろされていた。
そうして、内部に入った二人は。
翼の都合で、酸素ボンベを背負えないトーヤは、無線機と反対の脇に無理やり括りつけたそれに難渋していた。けれども翼を広げられれば、降下するのは力によらない分楽なので、周囲に目を光らせている。あいにくと、他のレリーフ部分から下ろされた明かりは、まだ確認できない。
二十メートルまで下がって、やはり明かりは見えないが、代わりに床面が見えた。ちょうど三十メートルあたりだ。
これはいいと、無線を通じて報告したトーヤだが、そこでふとゼクストの様子に気付いた。上がっていって、ベルトを掴む形で支えてやると。
「ここ、壁に取っ掛かりが全然ない。後も遺さずに調査に降りるのなんか、絶対無理!」
獣人能力と腕力だけで勝負するには、三十メートルの縄梯子降りはいささかどころではなく厳しいらしい。それなりの装備があれば無理ではないにしろ、縄梯子になっているのも途中までだ。しかも周囲は真っ暗、明かりにも限界がある。
「無理をして、怪我人が出てもいけないし‥‥クライミング用の装備一式を要求して、再挑戦かしら。あと他には‥‥」
壁が平面に削られているのは二人が確かめ、映像記録も撮れたので、ハトホルはなにやら必要装備の目録など作っている。
「これで‥‥終わったら、‥罰金、とか?」
「それはないと思うよー。ないよね、シンデレラ?」
「ボーナスもありませんけれど。あ、でも鹿肉のハムが残ってましたわね」
「今日はあたしが料理は引き受けるわ」
「んじゃ、ロープの片付けはあたいがやる」
まだまだ不完全燃焼で元気の有り余っている女性陣と小さいカイはともかく、重労働をこなしたトーヤとゼクストと、撮られた映像の画像解析に忙しい大きいカイ君は、それぞれの理由で声もなかった。
この頃、一番近くの街で城塞都市に関わる話し合いが進んでいのだが、それはまだ関係者の耳には入ってこない‥‥