六月の偽花嫁たちアジア・オセアニア
種類 |
ショート
|
担当 |
龍河流
|
芸能 |
フリー
|
獣人 |
フリー
|
難度 |
易しい
|
報酬 |
不明
|
参加人数 |
8人
|
サポート |
0人
|
期間 |
06/28〜07/01
|
●本文
六月のある日のこと。
着ぐるみ劇団『ぱぱんだん』のメンバーである笹村睦月、初美、カンナ、葉月の四人が喧嘩をしていた。組分けは睦月と葉月、初美とカンナで、要するに男女別だ。
「四の五の言わずに付き合いなさいよっ」
「ちゅきあふでちゅ」
「なんで俺が初美とブライダルフェアに行くんだ。その日はコンビニの仕事だ」
「俺も姉貴と行くのはやだ。それに夏向けメニュー開発しないと怒られる」
喧嘩の元は、初美とカンナが申し込んだ札幌市内のホテルのブライダルフェア。それなりにご予定のある方向けで、男女一組お一人様三千円の参加料が掛かる。
これに行きたい初美とカンナが、申込者一人の名前しか書かなくてもいいことに目をつけて、睦月と葉月の名前で勝手に申し込んだのである。参加費は当日徴収だ。
でも、ブライダルフェアに家族で連れ立って参加してどうするのか。
それに睦月はブライダルフェア三日間のその日程、いずれも仕事で埋まっている。葉月は調理師アルバイト先のゲイバー新メニュー開発に駆り出されており、頭を悩ませている最中だ。二人とも、暇などない。
かたや、初美とカンナはまったく諦めていないらしく、二人でごにょごにょ相談していたが、やがて初美は自室に戻っていった。カンナだけが二人の説得に当たるらしい。相変わらず、完全獣化のパンダ獣人姿。
「にーにもはっちーも、ちゃまにゃー、あちょびにゆくでちゅ」
「それでなんで家族でブライダルフェアだよ」
「三千円あったら、なんかうまいものが食えるだろ」
「もー、ひょら、ぎょりょーけぎょふちゃんきんぎゃく、じゅーしゃちみゃんでちゅよ」
「十八か、十七か、はっきりしろ」
「はっきり聞きたいのか、兄貴は」
「じゅーしゃちみゃん」
道民以外には大抵通じない結婚式の『ご両家ご負担金額』は、この場合十八万円らしい。結婚式の大半を占めるらしい飲食費は、北海道の結婚式では会費制、言うなれば招待された側が自己負担するので結婚する人達の負担金である『ご両家ご負担金額』は多くが二十万円前後である。他に引き出物代金など色々掛かるが、本州などの結婚式とは費用の掛かり方が違う。もちろんお祝いに包む金額も全然変わる。
それはさておき、カンナが粘る理由はあっさりと知れた。
「なるほど、参加費用が掛かる分だけ色々特典があるのか」
「姉貴、行くな。恥をかくだけだから」
ブライダルフェアの特典は、ウェディングドレス試着可能、しかも枚数無制限に始まり、実際に使用する教会と披露宴会場をセッティングされた状態で見学できて、披露宴用の料理の試食ブッフェの時間があり、お茶とケーキも供されるのだ。
こんなものに行ったら、当然予約しないで帰ってこれるかという代物だが、初美とカンナは特典を楽しんで帰ってくるつもりなのだろう。カンナは食欲、初美はそれにプラスして、おそらくウェディングドレス試着狙いだ。彼女は時々友人の手伝いで、オーダーメイドウェディングドレス作成のアルバイトをしている。
「いきょーよ、いきょーよ」
「勝手に行って来い」
「俺忙しいんだってば。恥かきたくないし」
すげない態度の兄弟にねだりまくっていたカンナだったが、初美が戻ってきた途端にそちらに向かった。またなにか別の方法で言ってくるだろうと思えば、そんなことはない。
ただ、二人して初美の携帯電話を覗き込んでいたが、やがて満足げにメールを送信して‥‥睦月と葉月とカンナの携帯電話にもメールが届いた。
『ブライダルフェア強襲のための協力者募集
常日頃、ぱぱんだんにご協力いただきありがとうございます。
突然ですが、来る6月29日から7月1日の3日間に行なわれるブライダルフェアに、同行していただける方を募集中です。
募集人員、男性2名。年齢不問。男装してくれる女性の方でもOK。
当方笹村初美とカンナと、3日間の内1日をブランダルフェアにご一緒いたしましょう。
ブライダルフェアについては、以下のアドレスでご確認ください。
初美はドレスの現物見物と写真資料作成に、カンナは会場セッティングを学びに行く予定です。
睦月と葉月が協力してくれないので、どなたかエスコートをお願いします』
四人の喧嘩が激化したことは、もちろん言うまでもない。
「俺達が悪者みたいじゃないか!」
「もちろんそう書いたわよ! 悔しかったら自分も行けばぁ?」
「はっちーらって、ほべんひょーににゃるにょに、やらってゆーきゃら」
「一度でもそういう勧め方をしてくれたのか。そもそもフリーじゃねえだろ、あんたはっ」
多分彼らは、喧嘩するほど仲がよい。
そんな訳で、色々な生贄募集中だ。
一般客の迷惑は、まったく考えていない。
●リプレイ本文
相変わらず言い争っている笹村家の四人に、中松百合子(fa2361)が、
「外でおやんなさい。恥ずかしくてやる気が失せるから」
と言い放ったところ、カンナが完全獣化で飛び出そうとしたので、トシハキク(fa0629)が慌てて羽交い絞めだ。人間姿の彼一人では引き摺られたので、姉川小紅(fa0262)と蘭童珠子(fa1810)が半獣化して手助けに加わっている。
「姉御、この家に常識はあんまり通用しない」
身も蓋もない事を言うのは蓮城久鷹(fa2037)で、どういう経路でこの話を聞きつけたか不明の三田 舞夜(fa1402)は他人事だからと素直に馬鹿馬鹿しがっている。でも人間観察の場としては、色々取り揃っていて多分楽しい。
アルバイト常連の諫早 清見(fa1478)とダミアン・カルマ(fa2544)が、なんともフォローのしようがないと困惑してたたずんでいるのだけれど。
ともかくも、心優しい人々のおかげで、初美とカンナはブライダルフェアに行けることになった。お相手はマイヤーとジスだ。
ついでにユリ姉御とヒサが取材を兼ねて、周囲の『行け』という要求により睦月とタマ、葉月と小紅も行くことになっている。
生贄ならぬ天の助けのアルバイトはキヨミとダミアンだが、後者は。
「日本の結婚式の様子も知りたいから、色々資料よろしくね」
そんな要望を語っていた。
恋愛ごとにはマイペースにして、ブライダルの予定もなく、今のところアルバイトにも事務所から禁止令が出ることもなさそうなキヨミは、翌日からのコンビニ店員三昧に備えて、笹村家でシフト表を睨んでいた。
ついでにご飯も食べさせてもらうのだが、その際に葉月が悩んでいる夏向けメニューのアイデアも書き留めておいた。葉月は現在コンビニでレジ担当。
「この大葉の豆腐巻き揚げ、美味しいな。ソースの作り方、教えてもらおうかな」
知っていればそのうち作る気になるかもしれない。多分揚げ物は自宅ではしないから、ここで手伝いをするときに。
そんなことを考えつつ、彼の手元のメモには『豆腐とスィートチリソース』や『大葉を使ったジェノベーゼ』などが書かれている。今食べているものからの連想と自分が食べてみたいものとでアイデアが浮かんでいる様子。
「ハスカップのパイにバニラアイス添え。いいなぁデザート」
「アイスだったら冷凍庫にあるわよ」
今のうちに食べちゃいなさいと、見ようによっては親子の食卓を形成していた笹村文子と恵一郎がキヨミに勧めてくれた。そういう時は、遠慮をしてはいけない。
だが、黙々と食べるほど付き合いが悪いわけではないキヨミは、文子に七月は誕生日かと尋ねていたりする。子供達の名前の連想だが、大当たり。もうお祝いされても嬉しくないと言うのへ。
「じゃあ、気合入れて働くから〜」
にかっと笑ってそう言ったら、にっこりと笑い返された。
ものすごく気合を入れて働こうと、心底思った瞬間だった。
ブライダルフェア初日。
仕事の都合で全員同日とはいかず、くじ引きで決めたこの日の出陣はヒサとユリ、マイヤーと初美の二組だった。
「初美をよろしくお願いいたします」
「連れて行って、また送ってくるだけですが」
恵一郎に深々と手を付いて挨拶されたマイヤーは、『単なる付き添い』と断言した。当初は睦月の名前を名乗る予定だったが、本人も別の日ながら行くので、初美が自分で予約をし直している。
「じゃ、初美。出掛けようか」
「よろしく」
手にしているのは、初美に預けられたデジタルカメラ。スケッチブックまである。カメラはともかく、スケッチブックはなんだと思っていれば、謎は会場で合流したというか、一緒になったユリが解いてくれた。
「衣装の細かいところを描いておくのよ。あ、ヒサ君、カメラの準備よろしくね」
更に大荷物をヒサに持たせて現れたユリは、さっそく初美と二人してドレスの並んだエリアに陣取ってしまった。その前に紅茶とケーキは素早く食べて行ったが。
「マイヤーさん、あんたもカメラマンすんの? 三脚は?」
「入ってるが、お前さんにやらせてやろう。行け、本職」
ここで三脚使用はどうかという疑問点はさておき、マイヤーがあまりに悠然としているので、渋々ヒサが二台のカメラを抱えて女性陣を追いかけた。この頃には一着目に袖を通した二人が、カメラマンの到着前に気になったドレスの着る順番を決めていたところだ。
挙げ句に、ユリはメイクセット一式持ち込んで、自分と初美のメイクに手直しをしている。
「ドレスによってメイクも変えなきゃ、似合うかどうか分からないでしょ。あ、撮影は正面と側面と背面、それからヘッドと背面のアップね。さて、綺麗系から行ってみましょうか」
あまりの勢いに、会場の他のカップルはドレスエリアを遠巻きにしている。何かの撮影会かと勘違いされているので、ヒサがそうじゃないんだと言おうとしたら、マイヤーが。
「彼は本職なので、練習を兼ねているだけだ。カメラがあれば、撮ってくれるだろう」
と勝手なことをほざいていた。ヒサ自身は結構慣れたが、またもや一般客の分までカメラマンである。従業員が慌てて手伝ってくれた。
「おぉい、こっちも頼むよ」
そしてマイヤーは、いつの間にか新郎用の礼装を選んで、ちゃっかりと初美と写真に収まっていた。その位しておかないとカップルらしくないと嘯いているが、彼のおかげでヒサは『らしくない筆頭』だ。
「俺はセッティングも勉強しておきたいんだがね。あと、一枚くらい試着も」
「あら、そうよ。こんなに背が高いんだもの。タキシードが映えるわよ」
何枚目だか、可愛い系のドレスに移行していたユリに背中を押されて、新郎用衣装のコーナーに連れ込まれたヒサは随分と長いこと、あれもこれもと『ユリが選んだ衣装』をとっかえ引っ返していたが。
「全身写真なら俺が撮ってやろう」
「意地悪ねー。多分ズボン丈が短いのよ。マイヤーさんでぎりぎりなんだから」
その間にチャペルから披露宴会場まで一式、借りた衣装のままで見物してきたマイヤーと初美は、試着室で起きている事を冷静に予測していた。マイヤーが百八十三センチ、ヒサはそれより更に五センチ高い。挙げ句に二人とも体格がよいので、着られる衣装が限られるのだ。
結局、ズボン丈が大分不足した状態で登場して、
「こんな姿を残すのはありがたくない。膝下は外してくれ」
という要求をしたが、撮影者はマイヤーだった。
ユリは新郎用衣装の持ち込み料金をチェックしているが、彼女自身の結婚式予定はヒサも聞いた事がないようだ。ヒサの予定も、多分ユリは知らない。
そうして、衣装のタイプ別では全種類を制覇したユリと初美は、化粧もさっぱりしたものに戻して、先に宴会料理ブッフェを楽しんでいたヒサと合流した。もちろんこちらの料理も、出てきた時に撮影済みだ。このまま式場のパンフレットでも作ろうかという勢いである。
ところで、一人足りないのは。
「あそこ。披露宴相談にBGMの相談があるとかで、営業してる」
披露宴会場ではピアノをはじめ、生演奏が選べますとかそういう説明を受けたマイヤーが、会場の構造から使用に適した楽器は云々とやり始めたので、従業員が気圧されている。とうとう責任者が出てきて話を引き取り。
「お連れ様が、事務所の責任者だとお伺いしましたが」
「正確には父です」
『ぱぱんだん』営業に発展している。マイヤーも自分のプロダクションの名刺は出したらしい。
この四人、これだけやりたい放題をした挙げ句に、『お世話さま』の一言で会場を後にしていた。
「カンナと葉月をよろしくお願いしますぅ」
「あ、あぁあ、はい、頑張ります。気を付けます」
「団長、鼻水たれてる。ほらほら、拭かなきゃ」
ジスと三つ指付いての挨拶を繰り広げ、小紅に世話を焼かれている恵一郎を放っておいて、葉月とカンナはいざ出陣だ。それでも葉月は小紅の手を取るのを忘れないが、カンナは十メートルほど行き過ぎてからジスがいないことに気付いたらしい。
そうして、ブライダルフェア会場では。
「姉御がこのドレスがいいわよって言ってくれたんだけどー」
「‥‥白は着膨れる」
前日の戦果をきっちりと教えてもらった小紅とカンナが、まずはうろうろとドレス試着コーナーを覗いている。この二人だから当然、最初にいただいたケーキは紅茶をお代わりしてぺろりと平らげた。
「俺のサイズはあんまりないって言われた‥‥」
「和装にすれば?」
こちらも写真を撮ってから、同様にケーキを平らげ、パンフレットは片端から貰いまくったジスと葉月は、二人の他にもいる女性達の邪魔にならないように気遣いつつ、周辺をうろうろだ。気になるのは衣装より、ジスだと会場のセッティング、葉月は料理の見本写真のほう。
それでも試着予定のドレスを抱えてきた小紅に対して、葉月は選ぶ助言など一応している。ただしものすごく主観が入っているようで、
「これ、襟が開いてるのがちょっと色っぽくない?」
「だから駄目」
端から聞いていると、結構色々なところが駄目っぽい。または本人達が楽しければいいという基本は、きちんと押さえていると言うべきか。ジスには近寄りがたい空気をかもし出している。
だが、彼らのほうもしばらくすると。
「料理が美味しくなきゃ、結婚式しない」
「やっぱり食べ物は大事だよな。あ、それは俺が食べるから。中華より洋食がいいね」
試食ブッフェの料理を全制覇する勢いで、片端から食べまくっていた。これはこれで近寄りがたい。でもカンナが炒め物の皿から目敏く見付けた筍は、ジスが速やかに引き取っていた。ただ食べるだけの食欲魔人二人連れではない。仲良し食欲魔人二人連れ。
途中から、『ドレス姿でちゃんと食べられるか知りたかった』と小紅が残念がりつつ、試食に加わった。こちらは葉月とコース内容をどこまで変更できるか、従業員に確認しながらの試食である。
「こんなに安いと、このまま予約したい〜。でも葉月が相手だからよ?」
「他の奴と予約はさせません。でもなー、家借りるのは普通に金かかるしなー」
こちらの二人がそんなかなり込み入った話をしている横で、『エンゲル係数高そう』と将来の心配をしていたジスは。
「葉月の結婚式、振袖着て平気かなー」
あっけらかんとしたカンナの一言に、悔し涙にくれていた。エンゲル係数の心配などするものかと思ったのか、その後はより熱心にあれこれ見て回っていたりする。
でもこの四人、『また来ます』と挨拶した後に、声高に料理のことを喋りつつ、仲良く帰っていた。
さて、その頃のこと。
ブライダルフェアに興味はあるが、あいにくと相手方の都合が付かず、留守番アルバイトに勤しんでいたダミアンは、姉御とヒサが仕入れてきた大量の資料を眺めていた。初美からは、本州の結婚式サイトも紹介されている。その落差にはしばし呆然。
ちなみに彼も行きたかったとはいえ、今のところ結婚式の予定はない。双方両親も交際相手がいることは知っているのだが、ダミアンはアルゼンチン出身で、親戚などもあちらにいる。いわゆる地球の裏側だから、色々と二の足を踏む要素があるのだ。
そんな訳で、恵一郎に有益な助言でもと相談してみたが。
「団長、僕、何かおかしなこと言いましたか?」
固まってしまったので、仕方なく文子に意見を仰いでみる。どうも恵一郎はこういう相談には向いていないらしい。言われてみると、ダミアンも納得しなくもないけれど。
「遠距離の国際結婚ねぇ。まあ少なくとも、何かの折に自分達かご家族が移動できるくらいのお金は常に用意しておけないと大変じゃないかしら」
それを苦労するようじゃ心配されると言われて、なるほどそういうものかと自分の預金通帳の金額など思い浮かべてみる。
だが、そんな思案を邪魔するのが我に返った恵一郎だ。
「け、結婚式はいつになるのかなぁ。そぉの時はお祝いしなぁきゃぁね。道内だったらねぇ、親戚の人達の送り迎えもしちゃうよぉ」
言われて、日本とアルゼンチンの両方で披露宴をしなきゃいけないのかもと、いささか気の早いことを思うダミアンだった。その前に相手の了解を取り付ける必要がある。
と、この騒ぎが繰り広げられていた時のコンビニエンスストアの事務室では、タマが睦月に尋ねていた。皆が行け行けと言うので、翌日に二人でブライダルフェアに行く予定なのだが、睦月が本当に乗り気かどうかの確認である。実は行きたくなかったのなら、無理に付き合ってもらうのも悪いと、タマは遠慮気味だ。
なにしろブライダルフェアだ。結婚式の予約受付である。行ったら、そのうちに実際に結婚式かもと期待するが、実は睦月にそれほどの気持ちがなかったら困る。当初は弟の睦月より年下で、異性としては意識し難いと言われたことも思い出したりして。
乗り気でなければ、自分が風邪を引いたことにしてもいいんだけどとタマが口にしたところ、頭を撫でられた。
「親御さんに挨拶もしてなくて順番逆だけど、それでもご一緒してくれる?」
ついでに今度、親御さんとおじいさん達に話を通しておいてと続いたので、タマは睦月の首に抱きついた。勢い余って、半ばぶら下がっている。
その後。
「団長〜、今度睦月さんが、うちにご挨拶に行きますって行ってくれたの〜。その後によければ実家に来てくださいねぇ」
仕事を終えて、葉月が皆に提案されて料理を色々と作って並べていたところに乗り込んだタマの爆弾発言だった。
翌日のブライダルフェア会場で、従業員に『笹村様ですか』と言われるのだが‥‥タマも睦月もその程度はもはや痛くも痒くもなかったようだ。