東北演劇祭・ラブきすアジア・オセアニア
| 種類 | ショート |
|---|---|
| 担当 | 冬斗 |
| 芸能 | 1Lv以上 |
| 獣人 | 1Lv以上 |
| 難度 | 難しい |
| 報酬 | 1.1万円 |
| 参加人数 | 8人 |
| サポート | 0人 |
| 期間 | 08/12〜08/16 |
●本文
本格的な夏の暑さがやっとやって来た東北の地。そこで行われる一大イベント。『夏の大演劇祭in東北』
毎年、東北の都市を順番に会場とし行われてきたそのイベント。その地域のアマチュア劇団から、幾つかのプロの劇団まで参加する舞台演劇のいわば祭典。数多くの参加団体に、大きな劇場、広い会場。その開催が近づいてくると、いやでも街は活気づいてくる。
「仙台店を計画中なんですよ」
コスチューム専門店『コスメイト』の広報・天爪氏。
「といっても八割決まってるんですけどね。それでこの演劇祭で宣伝とリサーチをさせていただこうかと」
現在、コスメイトは秋葉原、池袋、日本橋等を中心に続々ＯＰＥＮ。
一気に広げて知名度を上げていく戦略のようだ。
「以前の秋葉原ライヴが好評でしたので、またああいうノリでやらせていただきます。
格闘ゲーム？ いやいや、今度は違うジャンルでいきます。『広く、深く』をモットーとしていますので」
天爪氏、事前に読んだ演劇祭資料を広げつつ、
「最後まで楽しめるイベントを企画します。役者さんたちに一働きしていただきましょう」
企画書を提出する。
「恋愛ゲームで」
キャスト募集／
・東北演劇祭・演目一本目『ラブきす』
・内容：恋愛ゲームキャラでのトークショー。終了後、二本目以降からはサービス作業（ドリンク販売、案内員等）。演劇祭終了までいわゆる「売り子作業」をやっていただきます。もちろんそのキャラクターとして。
・衣装はコスメイト製品を使用。
・オーダーメイドも扱っています。
・男女問わず。
トークショーは自己紹介の場。むしろメインは売り子作業と考えてください。美少女・美男子キャラでのいわゆる「メイド喫茶」に近いものと考えていただければ。演劇祭を盛り上げつつ、コスメイトの宣伝業務という趣旨で。
キャラクター衣装は選択自由。ウィッグ（かつら）も含め、小物は多様に扱っております。
武器類・長物等は始めのトークショー（舞台上）でのみ、使用可能です。サービス員作業時は取り外してください。
ゲームキャラクターは１８禁ゲーム、ＢＬ等でも問題ありませんが、舞台自体は健全なものです。
コメディ要素もＯＫですので、男装女装も構いません。（むしろコスプレっぽさが出るかも？）
●リプレイ本文
●開催三日前「了解しました。オーダーメイドは大至急用意します。
ええ、予測はついていました。前回も好評でしたから。
しかし‥‥」
広報の天爪氏、役名に一通り目を通して、
「なんていうか‥‥見事にメインというか、主役級がいないですね‥‥ありすだけですか」
いや、それでいいのだ。
マニアックなニーズにもお応えがコスメイトのウリ。
むしろ上手い具合にバラけたというべきであろう。
「ああ、まあアリアもメインヒロインといえばそうですかね。え？ 花菜？ まあ、１２人全部メインといえばそうですが‥‥」
役者達の妙なこだわりを聞きながらも、内心意外な面子に手応えを感じる天爪氏。
●恋の嵐、開演
「皆様おはようございます。今回はこみスタに来ていただいて‥‥って違いますね！【夏の大演劇祭in東北】に来て頂きありがとうございます」
ＰＣゲーム『こみっくフェスタ』の作業スタッフのお姉さん舞浜美那（マイハマ・ミナ）を演じているのは、アイドル声優の槇島色（fa0868）。
「演目一本目のラブきすでは軽いトークショーを兼ねた私達案内員及び販売員の自己紹介をしたいと思います」
そう、彼女らにはこの後、会場スタッフとして働いてもらう予定になっている。
なるほど、スタッフとしてこれ以上のハマリ役はないかもしれない。
「私は今回の案内員を勤めさせていただきます槇島色です。宜しくお願いします」
きちんと演じ切れていれば。
（ちょ、困るって！ 色さん、色さん！ 美那です！ 舞浜美那！！）
「あ、ごめんなさい！ 改めて舞浜美那で〜す！」
どっ、と会場が笑いに包まれる。
災い転じて福となす。
声優として知名度の高い彼女だからこそかえってウケを取れたようだ。
もちろん秋葉原でのライヴのようにこの演劇祭はゲームやアニメのコスプレに興味のある客ばかりとは限らない。
だが、その辺は広報、既に宣伝を済ませ、固定客を誘導済み。
後半の演目と客層が分かれないかと心配もしたが、杞憂に終わりそうだ。
「今回の衣装はコスメイトの製品、オーダーメードです。現在、仙台店を計画中ですのでお楽しみに。それでは【夏の大演劇祭in東北】をお楽しみ下さい」
気を取り直し、司会進行。
「さて、それではスタッフの紹介です。まずはＤａｙｓ Ｏｆ Ｉｎｎｏｃｅｎｔから麻倉アリアさん！」
「みんな、おはよう！ 今日もアリア、いっきま〜す！！」
色に続くのは秋葉原のコスメイトライヴでも『麻倉アリア』で活躍したまくらんこと麻倉千尋（fa1406）。
（しかし‥‥）
（天爪さん、今回もアリアでお願いします。「Ｄａｙｓ Ｏｆ Ｉｎｎｏｃｅｎｔ」バージョンで）
（‥‥どれ？）
そう、衣装あり過ぎのアリア。携帯アプリ「Ｄａｙｓ Ｏｆ Ｉｎｎｏｃｅｎｔ」だけでも制服やアイドルパターンがある。
今回はやはり舞台だからアイドルバージョンか、と髪をおだんごに結い、ミニスカートの衣装を用意した。
反応は上々のようだ。
秋葉原ライヴで発表したＣＤも反響、販売元のＳ社からも合同企画が出ているようで。
（また格闘ゲームとかもいいかもしれないな）
天爪氏、次の企画を構想中であった。
●美しきケモノ達
二連続の美少女。
ここいらへんで女性客へのアピールも必要である。
「次は男性キャラのご登場です。『久遠なる刻の間で２』から藍玉（らんぎょく）様です」
とたんに黄色い歓声。
コンシューマーの人気ゲーム『久遠なる刻の間で２』の地の白竜、藍玉。
演じているのは有名アーティスト笙（fa4559）。
「よく来たね、私の姫君達。
名乗る程の者でもないが、藍玉という名‥‥姫君の心の片隅にでも住まわせてくれると嬉しいね」
名乗ってるし。
あと胸元開き過ぎです。
だがそれがいい。
そう言わんばかりに女性客は熱狂していた。
人気アーティストの笙が藍玉を演じている。
これに反応しないはずはない。
「可憐な私の白雪。この夏の暑さに融けて消えてしまいそうで‥‥瞬く刻さえ惜しいよ」
やりすぎなのではないか、と思える演出も美形がやれば様になる。
それは次の役者も体現していた。
「続いて『Happening Hospital Harmony』、氷室柊耶（ひむろ・しゅうや）さん」
女性客の反応、ここに極まる。
役人気もさることながら、役者がまた凄かった。
世界的モデルの椿（fa2495）。
（よくこんな仕事引き受けてくれたな‥‥）
募集形式であった為、出演料は一律。
のわりには、相当豪華な顔ぶれが揃った訳だが、とりわけ彼は格別だった。
天爪氏からすれば朗報以外の何物でもない。
「整形外科医の氷室です。今日の来院者の数は何事です？」
上手い。
ウィットに富んだ語りで女性客を惹きこむ。
「本日はどうぞ楽しまれて下さい。
‥‥ぶっ倒れて俺の所に担ぎこまれても、人工呼吸の安売りはせんぞ？」
再び黄色い歓声。
ああ、本当に美形は何やっても様になるんだなあ‥‥。
正直、天爪氏にとってこれは嬉しい誤算だった。
当初はここまで男性役者の起用予定はなかった。
だが、コスプレというジャンルは、他のゲーム・アニメ層に比べ、女性客が多い。
ならばこそ女性受けのするキャラクターは必要不可欠だったというのに。
（三人には感謝をしなければな）
そう、特に最後の一人には。
「こんにちは！ 僕はアルシェス。キミの名前、教えてくれるかな？」
新人女性俳優、芳こと芳稀（fa5810）が演じるのは、『久遠なる刻の間で』シリーズの同社製作、『聖天』こと『セイント・エンジェル』のアルシェス。
別名『エメラルドの守護天』。そして――、
「‥‥と思ったけど、多すぎて聞こえないし覚えられないからいいや」
素直で無邪気でガラスのように繊細な我侭エンジェル。
「皆、暑いのに元気だね。僕、もうダメ‥‥」
へたりこむ芳、いやアルシェス。仕事しなさい。
「そこのお医者さん、診察してくれない？ え、専門外？‥‥けち！」
椿演じる柊耶に絡むアルシェス。
いやはや、本当に我侭で。
ショタ系美少年人気を獲得する芳。
だが、彼女に本当に助けられたのはその性別。
この企画が『コスチューム専門店』の宣伝にある以上、やはり『着てみたい』と思わせなければ意味がない。
無論、集客という意味で笙と椿にはとてつもない功がある。
だが、二人にない『親近感』。
女性客に『自分もやってみたい』と思わせる身近さを芳はフォローしていた。
●ヤンデレＶＳデレデレ
６人目と７人目は同時出場。
１２人の妹キャラが出てくる妹ゲー、『妹姫』（英語で読んではいけないぞ）の花菜（かな）と、
ＰＣゲーム『陽だまりの中で』の主人公の義理の妹、皆川霧子（みながわ・きりこ）。
先制は霧子役、堕姫ルキ（fa4852）からだった。
「‥‥やっと、お話するコトができたね‥‥お兄ちゃん」
妹キャラの強みとでも言おうか、
会場の男子全員を『お兄ちゃん』呼ばわりである。
「皆川霧子、お兄ちゃんの妹だよ。血は繋がってないけど」
いや、もうそういう問題ですらない。
当初から霧子と絡む予定の花菜役、うかなこと角倉雨神名（fa2640）。
これには負けてられないとばかりに対抗する。
「花菜はお兄ちゃまを応援します！」
（うぅ、すごく恥ずかしい‥‥）
見えそうで見えないスカートの中身が人気の一つらしい花菜。
まくらんに続くようにうかなオリジナル、『お兄ちゃま応援マーチ』を熱演する。
「いつも大変なお兄ちゃまを見ると――花菜はそっと心を痛めるの」
足を上げて中が見えそうなパフォーマンス。
「応援してるから‥‥負けないでね、お兄ちゃま！」
（やはり彼女はお色気が似合うかな）
とは天爪氏。
目線は怪しくありません。あしからず。
「‥‥君、足首捻らないようにな」
柊耶が無愛想に花菜を気遣う。
「あ、はい。ありがとうございます」
二人のやり取りに穏やかでないのは両ファン。
だが、まあ、その嫉妬心も程がよければ興奮のスパイスになろうというもの。
もちろん本人達も計算済み‥‥
あ、いや、うかなはわかってないかもしれないが、椿は計算済みだ。
「見てくれてありがとう‥‥お兄ちゃま、これからも頑張ってね♪」
何を頑張るのか。
「‥‥お兄ちゃん、他の子のコトばっかり見てたでしょ？ 私だってそれくらい分かるんだから」
その後ろで殺意を漲らせる霧子。
「‥‥私のコトしか見れないように、お目々抉り取っちゃおうかな‥‥」
演技なのか疑いたくなってしまう迫力。
確かにヤンデレで有名な霧子。
このゲームが１８禁なのはアレな描写ではなく彼女の殺戮シーンにあるという話も‥‥。
（ルキちゃんは本当にこういうの得意みたいだなあ）
『ヤンデレ専門で契約しちまおうか』
「花菜ちゃん‥‥だっけ。私からお兄ちゃんを取るなんて、許さないんだから‥‥」
ナイフをちらつかせる霧子を眺めながら思わず呟いてしまう天爪だった。
「ではスタッフ紹介も最後になります。『はーとふる☆ぼいす』より、綾織ありすちゃんです」
美那のアナウンスに最後の一人が姿を現す。
●第一幕、閉演
「おっはよー☆ 『はーとふる☆ぼいす』の綾織ありすだよっ」
高めのゲームボイスと大げさな演技でトリを演じるユイこと姫乃唯（fa1463）。
綾織ありすはコンシューマーの恋愛ＳＬＧ『はーとふる☆ぼいす』のメインヒロイン。
明るく元気、健気な性格の典型的幼なじみキャラである。
彼女がトリを請け負ったのは役柄上のものが大きい。
メインヒロイン系として、綺麗に最後を締めくくるのが適役だ、と。
だが、
「今日は東北演劇祭に来てくれて有り難うー！ 朝寝坊して慌てて来た人なんていなかったかなー？ 舞台を見ないで寝ちゃったりしたら、お・し・お・きだぞっ☆ それじゃ、『夏の大演劇祭in東北』、楽しんで行ってねー☆」
これだけの演技力ならどちらにしろ任せた事は間違いではなかったろう。
そして無事トークショーを終え、舞台を去るキャスト達。
名残惜しむ観客達に笙演じる藍玉が、
「別れは淋しいが暫しの間だと信じているよ？‥‥来てくれるだろう？ 私のもとへ‥‥コスメイトへ」
（いや、笙君。それは露骨過ぎ――）
一応、『演劇祭』なのだし。
だが、天爪の予想に反して、観客のウケは好評。
（――まあ、いいか）
終わり良ければ全てよし、というやつであった。
●お楽しみはこれからだ――
「いらっしゃいませー！ わぁ、来てくれたんだ。
トークの時にちゃんと僕、気づいてたよ？ キミの事」
したたかに芳。
飽きっぽい彼女がそんなマメさを持っているはずもないが、
というか、『覚えられない』と自分で言っていた気もするが、客はすっかりその気である。
「お待たせしました〜！ はい、ミックスフルーツジュース。最近暑いし、夏バテしない様にビタミンいっぱいとってね☆ たかゆきちゃんに元気がないと、あたしも哀しくなっちゃうもん」
一方こっちは本当にマメなユイ。
客同士のさりげない会話から名前を覚えることを欠かさない。
「もう〜、手が早いんだからッ！ そんな事する子はデコピンのおしおきだぞっ☆」
馴れ馴れしい客への対処にもソツがない。
「キミの愛らしい姿には、此方の色も似合うと思うのだけれど‥‥如何かな？」
売り上げを伸ばそうと商魂たくましいのは笙。
「可愛い私の姫君。また会える時を楽しみにしているよ」
手甲に口づけをうけ、サービスを忘れない。
「お待たせ♪じっくり味わって飲んでね」
（とっておきのおクスリをね）
「――――」
一方でこちらは客が引きまくり。
「行ってらっしゃい、お兄ちゃん♪ 早く帰ってきてねー♪ ‥‥じゃないと、私、‥‥しちゃうから」
が、それがいいと固定ファンのみならず怖いものみたさの客もルキの列に並んでいた。
そして出回り組も精を出していた。
「熱中症には気をつけて。水分補給はコスメイトへどうぞ」
椿は会場案内をしながらの宣伝活動。
「医者と患者の関係、壊したいなら‥‥飲めよ」
女性陣からも一人。
「見てくれてありがとう‥‥お兄ちゃま、これからも頑張ってね♪」
ドリンクの出張販売はうかな。
「きゃあっ！」
客にドリンクを渡そうとして転ぶ。
「花菜のこと‥‥見捨てないでね」
原作通りの演出。
『芸が細かいな』と感心する観客達だが、実はまるごと地でやっているうかなだった。
（概ね好評か。
この調子なら本当に第三回、やってみるか）
