オズ×ゼロアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 冬斗
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 やや難
報酬 1.2万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 09/07〜09/11

●本文

 僕らの住んでる魔法のない国。
 オズは今日も人助け。
「お役に立ててうれしいです。
 いえいえ、お礼なんていいですよ」
 その笑顔がなによりのごほうび。
 そろそろこの国にもなれてきました。

「魔法がない国なんてどんなところかと思ってたけど――」
 結局おんなじ。
 ここもあそこも、みんな夢に向かってがんばっています。
「もうすぐ、この国に来て一年か――」
 おやおや、オズ、ちょっとホームシック気味でしょうか?
「みんなを助けるのはとってもやりがいがあるけれど、最近魔法をあまり使ってないかなあ‥‥」
 目を閉じて思い出すのは昔の記憶。
 違うところもあるけれど、
 ほんとのところはこことおんなじ、
 みんなが夢に向かってがんばってます。
 彼らの住んでる魔法の国。


 一年前。
 その日は魔法学院の運動会。
 みんなが覚えたとくいな魔法、それぞれのお披露目日。
 期待と緊張に胸は高鳴ります。
「みなさん、この日のために準備はしてきましたね?」
 美人の院長先生のおでましです。
 みんなのあこがれ――ではありません。だってこわいから。
「初めての人や忘れてしまった人のためにルールを説明します。
 まずはくじびきで4人1組のチームを作ります」
 もちろんくじは先生が作っているのでズルはできません。
「チームが決まりましたらそれぞれのチームごとに同じ色の指輪を配ります」
 4個ずつ。赤チーム、青チーム‥‥と分かれる訳です。
「それぞれのチームはそれぞれの方向から裏山の中に入ってもらいます」
 学院の裏山。
 この日だけ立ち入り禁止から解放される不思議山。
 魔法を使って暴れるにはもってこいの場所です。
「みなさんは他のチームを探し出してください。
 指輪をとられたり壊された人は失格です。4人全員失格になったチームは脱落です。
 最後に残った1チームが優勝です。
 失格になったら他の人に手を出してはいけませんが、優勝したチームの4人は失格になった人も含めて優勝になります」
 それ以外はなんでもあり。
 みんなが修行してきたとくいな魔法が今、ためされるのです。
「ではみなさん、悔いのないよう頑張って下さい!」
 
 選ばれた魔法使いの試験の最後の一つを前にしたオズ。
 運動会の成績は試験には関係ないけれど、みんなの中から選ばれたからには負けられません。
 優勝して試験にはずみをつけたいところ。

 さあ、魔法の国の魔法使い見習い最後の運動会がはじまります――!


○キャスト募集/
 特撮番組『オズ×ゼロ』
 舞台演劇で好評を得た『オズま!』の番外編です。
 本編とはうってかわって魔法バトルになっています。
 魔法使い見習い達の運動会。
 戦う生徒役を募集です。

 オズの活躍はLIVE『魔法学生オズま!』『魔法研修生オズま!』で。
 特に今回に当たって重要な設定などはありませんが。

●今回の参加者

 fa0142 氷咲 華唯(15歳・♂・猫)
 fa0164 篠森 露斗(19歳・♂・鴉)
 fa0634 姫乃 舞(15歳・♀・小鳥)
 fa2132 あずさ&お兄さん(14歳・♂・ハムスター)
 fa3354 藤拓人(11歳・♂・兎)
 fa3846 Rickey(20歳・♂・犬)
 fa4584 ノエル・ロシナン(14歳・♂・狸)
 fa5003 角倉・雪恋(22歳・♀・豹)

●リプレイ本文

●特別番組『オズ×ゼロ』
 プレシア(あずさ&お兄さん(fa2132))の操る木々の攻撃は少年にはかすりもしない。
「木々にも意思がありますから」
「‥‥‥!!
 木々たち自体を幻に‥‥?」
 戦闘時に幻術を対応させるなど、並の業ではない。
 それもその筈。
 彼は並の幻術使いではないのだから。
 少年の名はオズ(ノエル・ロシナン(fa4584))。
 魔法の国の長い長い歴史において107人しか存在しない『魔法使い』。
 その108人目の候補生。
 一足先を越されているオズがプレシアには許せない。
「負けない‥‥アンタなんかには――!!」
 呪文を唱える。
 プレシアの周囲に精霊が召喚される。
 大地。
 炎。
 水。
 風。
 四大精霊の同時召喚などが出来るのは学院生でもプレシアのみ。
 『万能型』という意味ならば、間違いなく現在の院生で最強の術者といえる。
 だからこそ――。
「本当はどっちが上か、決着をつけてあげる!」
 世界を構築する最高位の四霊がオズを襲う。
「‥‥すごいや、ここまでとは‥‥!」
 オズは驚きながらもどこか余裕を残し、
「‥‥でも、四体も召喚したら、もういっぱいいっぱいですよね?」
 オズの姿が消える。
 術は既にかかっていた。
「術への抵抗なんか出来ないくらいに」
「――――!?」
 幻術は精神に作用する。
 たとえば術の制御をわずかに乱すなんていうことも――。
「あ――」
 ギリギリの制御下にあった四大精霊が解き放たれる。
 術の暴走。
「きゃあああああああ!!!」

「これで青チーム、残りあと――」

●魔法学院・大運動会開催!
 二年に一度の大運動会。
 皆がいい意味での緊張感を持っている中、
「わたくし、こういった行事は苦手ですわ‥‥」
 戦闘が苦手な瑠璃(姫乃舞(fa0634))とて、ぼやきつつもその表情に諦めの色はない。
「まぁ、出るからにはそう簡単に失格になるつもりはございませんけれど。わたくしの事は、ソルが守って下さいますのよね?」
 隣のチームメイトをちらりと見やる。
 そのソル(Rickey(fa3846))は――、
「瑠璃と一緒のチームになれるなんてラッキー♪ 俺達の最高コンビで他チームの奴等をぎゃふんと言わせてやろうぜっ!」
 やる気はある。緊張感もないとはいえない。
 だが、
「なんせ裏山にはこの日しか入れないんだからな! この山、院長先生が密かに恋人とデートしてるとか、絶対何かあるんだぜ!」
 明らかにテンションが悪い方向に向かっているソルに瑠璃は眩暈を覚える。
「魔法を思いっ切りぶっ放せるのも良いよな〜。派手にドカーンバキーンって、俺の魔法を見せ付けてやろう。
 なんせこの日の為に準備を‥‥
 じゃーん、杖をアクセサリーで飾り付けたんだからな。ほら、格好良いだろっ?」
「その杖、全くもって無意味かと存じますわ。‥‥あまり浮かれていらっしゃると、足下を掬われますわよ」
 とは言うものの、瑠璃はあまり心配はしていない。
「ちゃんとやるから大丈夫だって。こう言うのは待ち伏せして、相手に来て貰った方が有利だよな」
 隠れ場所を確保しつつ、得意の光魔法を放つソル。
「プレシア、芳次、索敵は任せたぜ!」
「任せて!
 森の木々たち、敵の居場所を教えて」
 木々の精霊を味方につけるプレシア。
 一方、狩衣姿の橘芳次(たちばな・よしつぐ)(藤拓人(fa3354))は呪符を取り出すと、周囲の風が舞い上がる。
「攻撃力はソルさんとプレシアさんで。僕は索敵・補助を――」
「わたくしはみなさんの支援をさせていただきますわ」
「――では準備を、二チームがこちらに向かっています!」
「よっしゃ! 瑠璃、援護宜しく!
 俺達の愛を見せ付けてやろうぜぃ!!」

●優勝候補・赤チーム
「――派手に光らせてやがる。多分ソルだな。行かなくていいのか?」
 促すのはチーム最年長の術師、リート(篠森露斗(fa0164))。
「敵の誘いに乗ってやる必要はないよ。先は長い、疲れると損だぜ?」
 蓮(れん)(氷咲華唯(fa0142))の言う事は尤もだ。
 アレが罠なんて事はリートとて承知の上だ。
 罠を正面から打ち破る自信と実力を持つリート。
 あくまで冷静に慎重に作戦を練る蓮。
 どちらも合理的には違いない。
「リート先輩、頼りにしてますよ。僕と蓮で戦況を作りますから」
 そして、院生一番の注目株、オズ。
 赤い指輪のこのチームは間違いなく優勝候補の筆頭と目されていた。
「この辺りは水溜りで結界を張った。俺達は霧で隠れて誘き寄せよう」
 蓮、得意の水魔法。

「仕方ねえな、可愛い後輩達に協力してやる――よっ!」
 リートが両手を合わせると、掌の中に雷球が生まれる。
 それを左右に引き、弓を構えるような姿勢に。
 すると、雷球もその形状を雷の弓矢へと変化させる。
「お前らは下がってろよ。俺があっという間に片付けてやるから」
 つがえる矢は三本。
 同時に目下の敵へ解き放つ。
「サンダーーアローーーッ!!」
 迅く、そして正確に、三本の雷は対戦相手の指輪を打ち砕く。
 いや、反応できた者が一人。
「いいカンしてるじゃねえか!
 けどよ――」
 生まれた雷球を、今度は伸ばして両手で握る。
 そこにあるのは一振りの長剣。
「サンダーーー!」
 敵が攻撃態勢に入るよりも早く、肉薄する。
「ブレーーード!!!」
 物理的防御の効かない雷の刃が敵を両断。
 同時に指輪も破壊する。
「――ま、死んじゃいねえだろ。大会が終わるまで大人しくしてな」

 蓮の支援があったとはいえ、1チームをたった一人で撃破。
 院生トップクラスの破壊力を誇る戦闘のエキスパート、リート。

 だが、
 この大会における1チームの人数は――、
「危ない! リート先輩!」
 蓮の声も間に合わない。
 緑チームの最後の一人がリートを狙う。
「ナパーム・フレア!」
 一撃必殺の火炎魔法を放ったのは、緑チームの生徒ではなく――、
「フレア先輩!」
「油断大敵よねっ!」
 赤チーム最後の一人、フレア(角倉雪恋(fa5003))。
 我呼んで(←?)灼炎のフレア。
 リートと双璧を成す攻撃魔法の使い手である。
「あたしがいる限り負けるわけないんだからね! 怖かったら、オズは見てるだけでいいんだから‥‥」

●接触
『‥‥そろそろ相手チームが見えていいはずなんだが‥‥』
『もうすぐよ。ほら、戦闘音が聞こえるじゃない』
『さっきから聞こえてますけど‥‥』
『山ン中だと距離感狂うなあ‥‥』
 オレンジチームは同じ場所をぐるぐると回らされていた。
 オズの得意手、幻術。
「大丈夫です。ネタがばれようがありませんよ、ここは禁足地ですから」
 蓮が結界で先に相手チームを感知し、オズが森の中を迷わせ、疲労したところをリートとフレアで叩く。
 この作戦で3つのチームを順当に撃破していた。
「そろそろラクにしてやるかぁ」
 リートが再び雷球を刃に変える。
 サンダーブレードの魔法。
 ただし、今度は刃渡りが二回り以上大きい。
 振り回すことなど不可能の極大の雷刃。
 それはただ、相手に放り投げるだけ。
 だが威力は群を抜くリート最強の術。
「あばよ――」
 敵チーム全体を押しつぶそうと雷刃を放つ直前、
 幻術に集中するオズに無数の光弾が――。
「オズッ!!」
 反応の遅れたオズと襲いかかる光弾、その間にリートはとっさに雷刃を投げる。
 激しく火花が散り、幅広の雷刃がオズの身を守る。
 瞬間、隙が出来たのは庇ったリートの方で、
「いただきっ!!」
 少女の声と共に地面から無数の杭がリートを貫く。
 とっさに致命傷だけは避ける。
 だが、指輪まで守る事は出来なかった。
「リート先輩!」
「ったく、世話が焼けるぜ。‥‥勝てよ。勝たなきゃ承知しねぇからな」

●対抗馬・青チーム
「直接戦闘になれば、雷術のリートが一番厄介ですからね」
 赤チームに対する唯一の対抗馬、青チームとの対決は3対4の状況から始まりを告げた。
「瑠璃っ!」
「芳次」
 ソルの呼びかけを華麗に流し、瑠璃は芳次に援護を頼む。
 瑠璃色の着物を着た黒髪の少女はまさしく人形のようで、
 その歌声に聞き惚れぬ者はいない程。
 しかしそれは魔性の歌声。
 芳次の風に乗せた歌声はオズら3人の魔力を束縛する。
「いいぞ、瑠璃!」
 無視されてもめげないソル。
 チーム戦において彼女の歌声は無敵の威力を発揮した。
 芳次が索敵し、瑠璃の歌声を風に乗せ、
 弱ったところを戦闘担当のソルとプレシアが仕留める。
 赤チームにも劣らぬチームプレイ。
 いや、瑠璃の歌の威力は総合力として赤チームのそれを凌ぐ。
 歌っている間は無防備になってしまうが、
「瑠璃には手を出させねえぜ!」
 だからこそのチーム戦。
「オズ! 蓮! 下がって!!」
 フレアが前線でソルとプレシアの攻撃を食い止める。
 戦闘役が一人欠け、窮地の赤チーム。
 一方、瑠璃は一心に歌いつづける。
 そこには無垢なる信頼があった。
(「わたくしの事は、ソルが守って下さいますのよね?」)
 だが、
「きゃあっ!!?」
 瑠璃の指輪が破壊される。
 攻撃は背後から。
「いたぞ、青チームだ!」
 そこにはオレンジの指輪の四人組。
 オズの幻術に惑わされていた連中。
「そろそろ、同じパターンでは飽きてきたかと思いまして、ここで一変化」

「瑠璃! 俺を残して逝くなぁっ!」
「‥‥まだ逝ってはおりませんわっ! 指輪が壊されただけですっ!」
 頭の冷却の追いつかないソル。
「もう喋るな。俺が敵をとるから‥‥安心して眠ってくれ」
 どうしても死んだことにしたいのかな。

●決勝戦
「ナパーム・フレアッ!!」
 フレアの得意技はリートのサンダーブレードにも見劣りしない。
 最強の二人を抱えてこその優勝候補。
 だがその炎は水の精霊の前にあえなく中和され――。
「フレアセンパイみたいな属性のわかりやすい相手は得意なのよ、私」
 だからこそ、『万能型最強』の自負が彼女にはあった。


 無数の光弾を氷の剣で弾く蓮。
「このまま押し切ってやるよ、蓮!!」
 蓮の能力はバランス型だ。
 個人戦なら蓮やプレシアが優勝候補だったろう。
 索敵した相手を確実に仕留めていけばいい。
 リート達のような戦闘型は不意打ちに弱く、
 芳次のような感知系では戦闘面が頼りない。
 だが、これはチーム戦。
 見つけてしまえば、戦闘力に秀でた者が勝つ。
「吹雪か? 氷の槍か? どっちにしろ俺は止められねえぜ!」
 とどめとばかりにありったけの光弾を放つソル。
「――それを待ってたよ」
 蓮が出したのは吹雪でも津波でも氷の槍でもなく――、
「――な!?」
 分厚い氷の盾。
 それも無数。
 鏡のように磨かれた氷の盾は光弾を乱反射させる。
 跳ね返った光弾は、そのまま術者の下に返り――。
「うわあああああ!!!」


「うそ、このあたしがやられるなんてっ‥‥?」
 プレシアに夢中になったフレアはその隙を突かれる。
 敵の虚を突くのが芳次の風呪。
「これで戦闘役二人が消えました。あとは――」
「あとは‥‥あんたがやるしかないんだからね‥‥」

●ラストバウト
「卑怯でも、頭脳プレーでも、あなたの好きな語彙で言って下さい」
 オズの幻術がプレシアを自滅に追い込む。
「これで青チーム、残りあと――」

 警戒はしていた。
 それでも、かわせたのは奇跡に近かった。
「ソルさんと蓮君の決着がつく前にこちらを終わらせてもらいます」
 芳次が風を展開する。
 オズは回避をする以外に選択肢がない。
「無駄ですよ。風を操り視覚に頼らない知覚が可能な僕に幻術は効きません!」
 芳次の戦闘力はオズのそれを上回る。
 勝利を確信し、
「!!?」
 同時に背後からは炎の攻撃が。
 フレアな筈はない、彼女の指輪は確かに壊した。
 手を出したのなら反則負けだ。
 だが、この炎は、
「――捕まえた」
「プレシアさん!?」
 炎の精霊。
 プレシアの瞳には敵に対する闘志が。
「今度こそ終わりね、オズ」
「―――!!」
 幻術。
 自分をオズと間違えている。
 けれど、それでも―――プレシアは失格の筈。
 間違えようがなんだろうが、そもそも手を出せる筈が――、

「とどめをささなかったのがアンタの敗因よ――!」

 そう、オズが幻術の使い手なら、
 壊した指輪を壊れていないように見せることも――。
「!!!」

「それではここで一変化――」

●夢は過ぎて
「おめでとうございます、ですわ」
 瑠璃は素直に祝福を送る。
「な、何よ心配しなくたって平気っ‥‥」
 オズに強がるフレア。
「あんたが本気で戦えるように、わざとやられたんだからね!」
「‥‥確かに、フレアさんを倒して油断してしまいましたね」
 フォローしてるのかしていないのか、芳次。
 それをリートが、
「オイシイところを後輩達に持ってかれちまったぜ」
 ソルは敗れはしたものの表情は満足げで、
「あー楽しかった。俺の魔法どうだった?」
「凄かったよ。とても強くて速くて――、」
 答える相手は当然蓮。
「――単純だった。お陰で勝てた」
 冷静に容赦のない毒舌を放つ優等生。
 そして、プレシアが――、
「最後の試験もせいぜい頑張んなさいよ?
 アンタがそこでコケるようなら、今度こそ私が追い抜いてやるんだから」
「ちょっと、オズを優勝させたのは私達なんだからね!」
 大人気なく絡むフレア。
 こうして魔法学院の大運動会は幕を閉じ――。


「なつかしいなあ」
 夢をみていたようです。
 昔のたいせつな友達たちの夢。
「あのころは魔法なら何でも出来るって思ってたっけ――」
 いつかはみんなもこっちの国に来たりするんでしょうか?

 そのときは教えてあげたい。
 魔法のない国も、
 魔法の国とおなじくらい楽しい場所だってことを――。