二回目のこすぷれーやーアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 冬斗
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 1.3万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 09/12〜09/16

●本文

 コスチューム専門店、コスメイト日本橋店。
 夏の熱気も冷めやらぬこの地に、今、ヒーロー・ヒロイン達が集結しようとしていた。

 秋葉原店で行われた路上ライヴ『コスメイト主催・第零回 KOC』。
 従来のコスプレファンにもゲームファンからの新規開拓にも功を奏したこの企画が、再び日本橋店にて開催される。
 題して『コスメイト主催・第壱回 KOC』

 ‥‥そのまんまなのは突っ込まないように。

「ゆうかちゃんとはまだ連絡がつかないんですか?」
 スタッフの一人が問いかける。
 広報主任の天爪は苦い顔と共に首を振る。
 本音を言えば、天爪はゆうかのライヴ参加を諦めていた。
 個人的に獣人達に依頼したゆうかの捜索にすらその件は含めていない。
 彼の望んでいるのは幼馴染の安全。
 彼女がコスプレアイドルを始めるより遥か昔、親戚同士の付き合いだった女の子が、あの時と同じ笑顔で戻ってきてくることだけを願っていた。
 だが、その想いはスタッフ達には知らぬところ。
 ましてや、企画の責任者として、天爪は責務を果たさなければならない。
「レイヤーは揃えてある! ゆうか無しのつもりでいけ!」
 仕事に私情を挟んでいる。
 だからこそ、問題のないようこの企画は絶対に成功させなければならない。
 彼女の責任を減らすためにも。

 果たしてゆうかはライヴに間に合うのか。
 KOCは成功するのだろうか――。

 そして――、
「じゅウじンノにオい‥‥らいヴ‥‥あつまル‥‥」
 不気味に呟くスタッフ。
 忙しい彼らは――ゆうかの身を案ずる天爪も含め――気がつかなかった。
 企画スタッフの先週からの変調に。

○募集
 『コスメイト主催・第壱回 KOC』
 コスプレイヤー募集。
 格闘ゲームの全ジャンル。(オーダーメイド可ですのでマニアックなキャラなどにも対応)
 長物可。(鍔迫り合いに耐えるなどの為、硬くて構いません。ただし、商品にはなりません。あくまで演出として)
 殺陣と演技でキャラクターのコスチュームを魅力的に表現していただきます。

○補足情報
 依頼内容は『路上格闘コスライヴ』の出演ですが、戦闘が入ります。
 スタッフにNWが混じっています。
 獣人が集まった為か、白昼堂々と実体化して暴れます。
 もちろん、観衆の前で獣人化をするわけにはいきません。
 ですが、幸いにもみなさんは『格闘ゲームのキャラ』です。
 『演出』として対処してください。

●今回の参加者

 fa0378 九条・運(17歳・♂・竜)
 fa1406 麻倉 千尋(15歳・♀・狸)
 fa2002 森里時雨(18歳・♂・狼)
 fa2640 角倉・雨神名(15歳・♀・一角獣)
 fa2944 モヒカン(55歳・♂・熊)
 fa2993 冬織(22歳・♀・狼)
 fa5055 鳳雛(19歳・♂・鷹)
 fa5412 姫川ミュウ(16歳・♀・猫)

●リプレイ本文

●『企画者ノ彼女』より
 関西空港からレンタカーを飛ばす若い男女グループ。
「危ねえ危ねえ、ギリギリになっちまったな!」
 運転をしているのは九条運(fa0378)。
 コスメイト広報主任・天爪の依頼でNW騒動に巻き込まれた企画兼専属モデルの少女の救出を成功させてきたところだ。
 9日に無事保護した少女だが、度重なる疲労に倒れ、一時は出演を断念しかけた。
 無論、天爪も納得していた。
 というより元から万全でない彼女に無理をさせる気はない。
 だが、目覚めた彼女は、
「向かって! 大阪に!」
 事態を把握した後、開口一番にそう言った。
「九条クン、役者でしょ!? お客さんが待っているのに行かないなんてプロ失格よ!」
 これには流石の運も面食らった。
「――いいぜ、やるからには半端ナシだ! 飛ばすぜ、お嬢様!!」

 そして現在、ワゴン車の後部座席で着替え中のゆうか。
「運クンは紅葉やるの? いいよいいよ、金髪だし、似合い過ぎ!
 秋葉原のリックもビデオ観たよ! すっごいアクション上手いのね! お芝居はともかく――」
 最後の言葉が何気にぐさっと心に刺さりつつ、一行は日本橋へと――。

●集う格闘家達
「おっ、お疲れ! アイツらは間に合ったみてえだな!?」
 日本橋で待ち受けてるスタッフの一人、レイヤー森里時雨(fa2002)。
 後輩が運と共に救出依頼を受けていた為、事情は把握していた。
「先輩っ! 間に合いましたっ! ゆうかさんをよろしくっ!」
 兎獣人の後輩からバトンを受け取る。
「よくやったあ! いくぜぇ! 俺様参戦ンッ!!」
「ノってますね〜、それでこそレイヤーの鑑です‥‥!」
 ゆうかがワゴン車から姿を現す。
 心なしかビデオで観たより雰囲気が大人しい。
「樽羽丈、似合ってます。素敵です」
「そういうゆうかちゃんは‥‥!」
 時雨が『南無魂ブロンクス』の『樽羽丈』。
 彼女は―、
「レィズィーか! すげぇなあ! 似合ってるぜ! 俺様公認!」
 A社の2D対戦ゲーム『グラビティ・ギガ』のボス兼ヒロイン、レィズィー。
「綺麗〜、あれ? 尻尾が――」
 そう、動いている。
 気付いたのはうかなこと角倉雨神名(fa2640)。
 もちろん、事前情報によれば彼女は獣人ではない。
「あ? これ? ワイヤー入れてて、レオタードの腰部分の動きに反応するんです」
「あ、あはは、そ、そうですよね‥‥」
 うかながつい『竜の獣人?』とか聞いてしまいそうになったのはナイショである。

●俺様、無惨!
「アリア、今日もいっきま〜す!」
 秋葉原でも大人気の『麻倉アリア』を演じるのはもちろん『まくらん』麻倉千尋(fa1406)。
 モスグリーンベストにチェックスカートのMAX−IMPACT版コスチュームに身を包み、
「アリアの新曲、聞いてくださ〜い!」
 この曲が後にまくらんのベストアルバムに入る事になるのだが、それはまた別の話。

「いくっチ! さくやちゃん!」
「オッケー、ユミちゃん!」
 再びユミ・ハカザキを演じるうかなとチームを組むのは『ストレートファイヤーZEROS』の女子高生格闘家・春日部さくや。
 ディフォルメキャラによる同社ゲーム『ポケットファイティング』の仕様なのだが、コミカルな筈のさくやはどこか艶っぽい。
 役者の姫川ミュウ(fa5412)が醸し出す、雰囲気からか。
 もっともさくやファンは元々男性が多いため、その辺は全く問題なかった。
 二人の女の子の可愛いアッパーに見舞われまくるのは時雨演じる丈。
「げぶぁ!!」
 派手なリアクションは殺陣を数倍にも引き立てる。
 とどめの『ユミちょうアッパー』で丈を飛ばすと、
「さあ、アリアちゃん! そこでフェニックスシュートだっチ!」
「無理です!!」
 そりゃあ、空中三回転(本来はもっと)からの逆蹴りなんて、このメンツで出来るのは運くらいだろう。
 時雨でもキツい。
「ええ〜い! こうなったら――!」
 ステージ上でコスチュームを脱ぎ捨てるアリア。
 歓声が響く。
 下からは赤いビキニを着た女剣士の姿が――。
「うわぁ、初代アリア姫!」
 ミュウが叫ぶ。
 ちなみに昔、仕事で着たことがあるらしい。
 アッパーに舞い上がる丈に容赦なく剣を叩き込み、三人のスリープラトンが完成した。
「やられたぜ、オヤジィ〜〜!!」

●『羅刹の花吹雪』
「いくよっ! だあああああっ!!!」
 さくやのコスプレコンボが炸裂する。
 裏方から見れば大変そうな早着替え。
 相手は『鋼拳』のKUMAH!(クマ)。
 中身はモヒカンヅラ愛用の悪役俳優・モヒカン(fa2944)。
 だが、着ぐるみなのでもう誰だかなんてわからない。
 これってコスプレ?

「さあ! 次は誰っチ!?」
 ユミの呼びかけと共にステージ曲が変わる。
 舞台奥から登場するのは紅の振袖に身を包む花魁風美女。
 『SOUL ROAR3』から白狼の獣人・霧華の登場だ。
 演じるのはハーフの歌姫・とおること冬織(fa2993)。
 番傘で顔を隠し、ユミ達と対峙する。
「お前さん達‥‥強いようね。師の仇へ繋がる『悪夢』と呼ばれし男の行方、教えておくれ」
「あくむ? なにそれ、知らないっチ。ユミ3Dは苦手だっチ」
 こらこら。
「‥‥答えぬなら聞き出すまで!」

「せやぁぁぁぁ!!」
 霧華の番傘から仕込み刀が放たれる。
 大技『荒魂ノ影薙ギ』。
「きゃあああああ!!」
 喰らったユミが倒される。
 居合いに道着が切り裂かれ、下着が露出する。
『おおおおおっ!!』
 思わぬハプニングに観客が歓声を上げる。
「ああっ! ユミちゃん! あれは虎龍の拳時代の伝説のオプション、脱衣KO!
 必殺技を喰らったばっかりに!!」
 ステージ脇で解説するさくや。
「ああっ‥‥お父さん、ごめんなさいっ!!」
 ユミはそのまま胸を隠し退場。
(おいしいなあ、うかなさん。ボクもやればよかったかな‥‥)

●獣人・覚醒
「まだまだ俺の知らない『強くていい女』がいるもんだな。わざわざ来た甲斐があったぜ」
 総合格闘家・鳳雛(fa5055)が演じるのは『バーチャルウォリアー5』のキックボクサー、ブレード・バニング。
 本職の格闘家だけあって、たたずまいからサマになっている。
 そして、女好きなキャラクターどおりアリアとさくやにコナをかけている。
 あるいはこれが地なのか。
 男性ファン達からのブーイングもものともしない。
 声をかけられていないのは、退場中のユミと、
 紅葉と戦闘中の霧華だった。
「‥‥もう終わりかい?」
 金髪の紅葉は既に覚醒の第一段階を過ぎている。
 対する霧華の方は刀の重みにやや振り回され気味。
 運と違い、アクションの得意でないとおるに日本刀の重量はややきつい。
 人間の姿では。
「くっ‥‥『忌ミ月』!」
 負けじと霧華も『覚醒』する。
 『SOUL ROAR』シリーズのキャラクターには獣人へと変身する『覚醒』モードが全員についているのだ。
 なんと獣人達に都合のいいコスプレだろう。
 番傘の陰に姿を隠した一瞬で、霧華は半獣スタイルに変貌を遂げた。

●これは演出です
 第壱回KOCも最高潮に達した頃、それは起こった。

 突如響く悲鳴は、興奮した観客のそれではなく、
 逃げ惑う彼らの中から現れたものは昆虫を思わせるフォルムをした巨大な化け物だった。

「NW!? よりにもよってこんな街中にかよ!」
 時雨が舌打ちをしながらも仲間に目配せをする。
 飛び出したのはまくらんだった。

(そういやゆうかさん、間に合ったのかな‥‥?)
 本番前、ゆうかの到着を心配し、鋭敏聴覚を使用した時、
(あれ‥‥? 何‥‥この声‥‥?)

 万一を警戒し、スタッフに頼んでおいたものを手に、NWの懐に飛び込む。
 全身が隠れるような巨大な盾を思わせる仮面。
 『ワールドファイターズ』のマッドシャーマンのマスク。
 それをNWに被せ、叫ぶ。
「乱入ね!」
 指示どおり、スタッフは電光掲示板を光らせる。

 『HERE COMES A NEW CHALLENGER!!』

●HERO見参!
 次に動いたのは鳳雛。
 まくらんを守るように客席に飛び込み、NWを蹴り飛ばす。
 ブレードばりのキックの連撃で、敵をステージに押し込んだ。
「怪我ないかい? お嬢さん」
「あ、はい」
 決まりすぎてて思わず素で答えてしまうまくらんだった。

 その間、各レイヤー達が『戦闘態勢』に入る。
 場馴れしている獣人たちだけあって、その対応も早かった。
 運は『紅葉の第二段階覚醒』を果たす。
 龍の翼と角と尻尾を生やし、鱗に身を固める。
「俺を起こした、てめえを呪いな!」
 時雨も狼の姿に半獣化、『魑魅に目覚めた丈』となる。
 前回同様、高らかに遠吠えを響かせる丈。
 だが、それ以上に観客の度肝を抜いたのがモヒカンだった。
 倒れたKUMAH! の背に裂け目ができる。
 破れた着ぐるみから姿を現したのは『鋼拳3』から登場の2代目KUMAH!。
 完全獣化の姿にメイクを施した、まさに本物の熊顔負けのKUMAH!。

「その仮面‥‥師の仇に繋がる者‥‥逃しはしない‥‥!」
(やれやれ‥‥)
 胸を撫で下ろす天爪。
 まくらんの機転からの一連の演出は、NWを『イベントの一環』と誤魔化すには充分だったようだ。
 あとは彼ら次第。

 発光ヌンチャクでNWを乱打する丈。
 覚醒した霧華は軽やかな動きで刀を振るう。
 さしものNWもこの面子の前では鎮圧されるより他はなかった。
 モヒカンなどは完全獣化をしている為、素手とはいえその威力は計り知れない。
 さらにうかななどは、
「帝王しょうこうけーん!」
 必殺技と称し、一角獣の特殊能力・淡光神弾を叩き込む。
「幕を引くぜ! 最終奥義! 応龍!!」
 歴戦の獣人、運の全力の斬撃がNWにとどめをさす。

「いくよっ!」
 さくやがバニーガールの格好でスタッフを呼び出す。
 さくやのファイナルコンボ『春乱満』。
 NWを倒しても死体は残る。
 観客の目に触れさせないミュウの機転だった。

●夢のマーブルファイティング
「え? 胸元‥‥? きゃあっ! ‥‥to be continuedっチ!」
 戦闘中、ずっと半裸だったユミが慌てて舞台裏に引っ込む。
 同時にアリアと、ゆうかの演じるレイズィーが姿を現す。
「いろいろハプニングもありましたけれど、最後までありがとうございました」
 普段は高めのテンションのゆうかも役になりきり、大人しい。
「私達の新曲、聞いてください」
 二人の歌声をバックにラストバトルが幕を開ける。

 ブレードVS紅葉。

 正統派のガチバトルが始まる。
「今回は俺様、譲ってやるぜ!」
 丈のマイクパフォーマンス。
「いくぜっ!」
「まずは野郎かよ。まあいい、It’s go time!」

 日本橋開催、第壱回 KOC。
 熱気溢れる戦いは誰一人怪我人を出すことなく、無事最後の宴を迎えた――。