人中に呂布ありアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 冬斗
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 1.3万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 09/14〜09/18

●本文

「人中に呂布あり、馬中に赤兎あり」
 後の世にそう称される猛将、呂布奉先。
 関羽や張飛、夏候惇など武勇を誇る将の少なくない三国志において、徹底的にその武勇のみを語られる呂布は三国志最強の人物であるとされている。
 反面、粗暴で短慮な性格は将としての器に欠け、裏切りを繰り返した呂布の末路は屈辱の死であったともされる。
 だが、これほどまでに愚者と描かれ続けなお、呂布奉先は三国志においてその名を人々に忘れられる事はない。
 それはこの将の愚直なまでの純粋な強さに心震える人々の憧れによるものではないだろうか――。


○舞台演劇『人中に呂布あり』

 キャスト募集/
 呂布奉先

 他、自由。
 性別、年齢不問。

 三国志演劇、第三弾。
 テーマと主役は呂布奉先。
 あとは自由です(オイ
 三国志最強武将に新しい彩りを。

 ナレーションは希望者がいるなら今まで同様やっていただきます。
 配役と二役の場合、『誰の』ナレーションかを明記ください。
(例:呂布役とナレーション役か、呂布役で『呂布』の語りを入れるか)

●今回の参加者

 fa0295 MAKOTO(17歳・♀・虎)
 fa0642 楊・玲花(19歳・♀・猫)
 fa1234 月葉・Fuenfte(18歳・♀・蝙蝠)
 fa1790 タケシ本郷(40歳・♂・虎)
 fa3802 タブラ・ラサ(9歳・♂・狐)
 fa4371 雅楽川 陽向(15歳・♀・犬)
 fa4905 森里碧(16歳・♀・一角獣)
 fa5003 角倉・雪恋(22歳・♀・豹)

●リプレイ本文

●CAST
 呂布奉先‥‥MAKOTO(fa0295)
 陳宮公台‥‥タブラ・ラサ(fa3802)
 劉備玄徳・貂蝉‥‥楊・玲花(fa0642)
 関羽雲長‥‥角倉雪恋(fa5003)
 張飛益徳‥‥雅楽川陽向(fa4371)
 袁術公路‥‥森里碧(fa4905)
 曹操孟徳‥‥月葉・Fuenfte(fa1234)

●ラブラブ曹×陳
 虎牢関。
 関を攻略せんと軍を率い攻め込む曹操。
 だが、当の本人は前線には出ず、後方から指揮するだけだった。
 将たる者、無闇に身を危険に晒す愚を犯す必要はない。
 だが、この場合、彼女は――、
「べ、別に陳宮の側にいたいからとかそういう訳ではないぞ! 君子危うきに近寄らず、という奴だ!」
 いわずもがな、である。
 ここに隻眼の将軍がいたならさぞ嘆いていたことであろう。
 対する陳宮も、
「そのようなことを言わずに――曹操様。
 ずっとこの場を動かないで下さいませ。
 これは軍師としての判断にございます」
「そ、そうか? 軍師として――か。
 な、ならば仕方がないなっ!」
 ベタベタと甘え放題の二人。
 だが――、
 前線が驚愕の声に震えたのは、まさにそんな時だった。

●みにまむ新技!
 前線で猛威を振るうのは天をも駆ける勢いの赤毛馬と、その背に乗り、戟をかざし吼える女丈夫。
 一日に千里を駆ける馬、赤兎。
 それを暴君・董卓より賜わりし、彼の右腕、呂布、字を奉先。
 人馬一対の彼女を止められるものなどこの虎牢関には存在せず。
 いや、獣の目で挑まんとする者がここに一人、
 いや二人――。
 その内の一人、張飛、字を益徳。
 蛇矛を手に噂の猛将を見やる。
「‥‥あ、なんか毛むくじゃらじゃない、武器も竹竿じゃない」
 これこれ、それは未来のお話。
 ボケたあげくに時空を越えてはいけません。(『三顧ノ礼』参照)
 ともあれ、目の前でこんな戦いを見せられては益徳ちゃん黙っていられず、
「我は燕人張飛! じんじょうに‥‥」
「こら、張飛ちゃん! 枝毛のまま敵の前に出ちゃいけませんっ!」
 止めるはもう一匹の獣、関羽、字は雲長。
 美髪公とすら言われた彼女には義妹の枝毛も許せません。
 ‥‥獣か?
 義姉には頭の上がらない張飛、ムスッとしながらも髪を整えます。
「ちゃんと毛抜きした!」
「あ、こら!」
 そんな嘘は美髪公には通じないのです。
 けれど、いてもたってもいられない張飛。
「いざじんじょうに‥‥参るッ!!」
 駆けながら蛇矛を地面に突き立てる。
 新技・蛇矛棒高跳び蹴り!
 宙を舞い、赤兎に乗る呂布を見下ろしながら――、
 ――その後ろ、遥か後方まで飛んでいった。

●わるいびょうき
「‥‥なんだったのだ‥‥あやつは‥‥」
 呆然と張飛の去った方向に呟く呂布。
 そして関羽は、
「――仕方ない。張飛ちゃんの代わりに戦うわ!」
 美髪公の髪を傷める事無く切り整える青龍偃月刀を手に、前へと出る。
「さすがは呂布ちゃんね‥‥けれど、そんな激しい戦い方では髪を痛めてしまうわよ!」

「なわぁぁぁぁッ!!?」
 勢い余り過ぎた張飛はそのまま曹操軍の真っ只中へ。
「貴様っ!? 張飛!?」
 陳宮の声に下敷きになっていた曹操が飛び起きる。
「張飛!? ということは関羽も来ておるのか!?」
「姐姐は‥‥大変! 今、多分呂布と戦ってるの!」
 起き上がり、再び戦場に向かう張飛。
「あ! ま、待て!
 ‥‥噂に聞きし美髪公の髪にもしものことがあっては大変だ!
 行くぞ、陳宮!」
「危険です! お待ちを、曹操様!!」
 陳宮の制止も聞かず、前線へと駆ける。

●竜虎相打つ
 曹操が辿り着いた時、そこには三匹の美しい獣が舞を舞っていた。
 蛇矛を流麗に使いこなすみにまむ燕人張飛。
 関羽はまさに噂に違わぬ美髪公だった。
「‥‥素晴らしい、素晴らしいぞあの娘達!」
 だがそれ以上に――、
「特にあの呂布!
 是非とも我が侍従にッ!」
 金色の髪をなびかせ戦うその女将軍は、まるで虎のようで。
「呂布ぅぅぅぅぅっ!」
 見ているのも飽き足らず、戦いに身を投じる曹操。
「劉備姉様に勝るとも劣らない、あの髪の持ち主はっ!?」
 突然の闖入者に、いや、闖入者の髪に驚く関羽。
「‥‥あの子が曹操なのね!」
 そのまま三人の中に割って入り、
「私のモノになるがいぶふぅっ!?」
「曹操様ッ!!?」
 打ち合う戟と矛と刀に叩きのめされた。
「ただものじゃなさそう!」
 たしかにただものではない。

「二人を敵に回してあれほどの無双ぶりを披露するとは、呂布、敵ながらあっぱれ!
 ではそろそろ、この私も混ぜて貰おうか」
 雌雄一対の剣を抜き、乱戦に加わる男装の麗人は姉妹の長姉、
 劉備、字を玄徳。
 義妹達を死なせてはならぬと、獣の群れに身を投じる。
「この私を忘れては困るぞ、呂布!」
 桃園の三姉妹が中華最強の虎と相まみえる。
「美髪三姉妹、勢揃いね!」
 そう言っているのは関羽だけだったが――。

 そして、
 崖の上から一人戦場を、
 いや、その中央で暴れる呂布を蜂蜜を啜りながら眺める人影。
「呂布、かわいいよ呂布。ハァハァ‥‥」
 不気味に呟く美少女。
 言動のせいでせっかくの美形が台無し。
 名門袁家の生まれ、
 袁術、字を公路といった。
「呂布たん。お持ち帰りしたいよぅ」
 いや、本当にやめれ。怖いから。

●ストーキング蜂蜜娘
 三人を相手にしても呂布にはまるで衰えがない。
 荒い息吹はまるで戦いを楽しむかのよう。
「やるな! 関羽とやら!」
 青龍刀を打ち返し、
「――そして、そこのちっこいのも!」
 ぷちん。
 どうやら張飛の禁句に触れたようだ。
「ちっさいって――」
 蛇矛が舞う。
「ゆーーーなあああああああ!!!」
 まさに乱れ打ち。
 呂布が初めて受けに回る。
「くっ!」
 戟で矛を弾き距離を取る。
「このまま戦っても負ける気はせんが‥‥
 貴様等が大将首なわけではあるまい」
 身を翻す。
 赤兎が相手では誰も彼女に追いつくことは出来ない。
「また相まみえる日があれば決着をつけてくれよう!!」
 言い残し、戦場から消えていく。
「此処でのがした事が後々の災いとならねば良いのだが‥‥」
 劉備がぽつりと呟いた。

「あのような者共がいるとはな、退屈せんわ」
 雑兵達を薙ぎ倒し、数里ほど離れた場所で息をつく呂布。
 その呂布に声をかける美少女。
「あ、そこの貴方。このミカン差し上げますから、うちで働きませんか?」
「――――」
 あまりの怪しさにさしもの呂布も対応できない。
 美少女、袁術はまくしたてる。
「さ、さ、この契約書に皇帝のハンコをポチっと」
 孫策から奪い取った伝国の玉璽が何故かある。
 後に語られるには手にするのはもう少し先なのだが、持っているものは仕方がない。
「あ、拇印で結構です。むしろ拇印のほうが嬉しいです。ボインのほうが」
 と、呂布の胸に触る袁術。
「――――!!」
 そうして袁術は本日呂布に飛ばされる二人目の武将となったわけで。

●末期の花
 下ヒ城。
「既に我が手には何も無しか‥‥‥冬の寒さが心地良い」
 曹操の水計により、呂布は最期の時を迎えようとしていた。
 どのような逆境も戟一本で潜り抜けてきた呂布。
 そんな彼女にも、いや、彼女だからこそわかる。
 今日という日が――自分の命運の尽きた日だという事が。
「一人で生まれ、一人で生き、今また一人‥‥‥いや赤兎、お前が居たな」
「一人ではありませぬ」
 呂布の背、女が声をかける。
 貂蝉。
 呂布の愛した花。
 董卓の元を離れ、二人共に過ごしてきた彼女も、この地での別れの時を感じていた。
「事ここに至っては致し方ありますまい。
 あなた様はご自身が信じた道をお進み下さいませ。
 あなた様と過ごした日々、楽しゅうございました。もし来世というものがあるのでございましたら、今一度あなた様と巡りあってみたいものでございます」
 義父、王允の為、董卓を、呂布を欺きつづけた貂蝉。
 その事に悔いはない。
 だが、董卓を滅ぼした後、自害を計画していた彼女がここまで生きてきたのは、
 偏にこの女将軍を堪らなく愛してしまったからに他はなく、
「――御武運を」
 そう言って、貂蝉は呂布の為に、初めて本心からの涙を流した。

 他の軍師達に目移りする曹操に『捨てられた』と感じた陳宮、かつての敵の下に就く事を選んだが、
「――やはりあの方は器ではなかったか‥‥」
 あまりに軽挙暴挙極まりない呂布に流石に愛想が尽きかけていた。
 だが、今更戻るわけにもいかない。
 これは自分で選んだ道なのだから。
 持てるだけの知恵智略を絞っているところ、
「往くぞ! 奴等全員に教えてやる! 此処にいるのが誰かという事を!!」
 智略を授ける為の将が敵陣に飛び出した。
「奉先様、突っ込みすぎです!」
 だが、止まらない。
 武に一生を費やしてきた者の最期の戦い。
 今更止まろう筈もない。

●持病・ツンデレ
 河の水を下ヒ城に流し込み、なおかつ自軍で城を取り囲み、
 もはや曹操の前に呂布は袋の鼠だった。
「今度こそ! 今度こそ貴様をモノにしてくれようぞ! 呂布ッ!
 そして陳宮! 貴様も取り戻すッ!」
 思わず口を突いた言葉に、
「‥‥べ、別に変な意味ではないぞ!? 私はただ、天下に並ぶものなきあの武勇と智謀をだな‥‥!」
 誰にともなく言い訳する。
 曹操の目的はいわずもがな。
「人材収拾も大いに結構。ですが――」
 曹操の元で戦う劉備が進言する。
「これまであやつが仕えて武将がどのような最後を辿ったのかお忘れではありますまい?」
 丁原、そして董卓。
「私をあやつらと一緒にする気か!?
 私なら呂布を活かしてみせる!」
 ため息をつく劉備。
 わかっている。
 曹操とて呂布の人格は承知の上だ。
 それでもなお、呂布を欲するのは、乗りこなせるという自信ではなく――。
(‥‥厄介なことだ‥‥)
 その標的に義妹もかかっているのだからなおのこと。

●最強の終わり
 どんなに強かろうと大軍を倒せる一将は存在しない。
 最強の金虎とてその例には洩れず――。

 手負いの虎は牙を振るう力すら残されてはおらず、
 そもそも振るうべき牙すら今は折れ――、
「いいだろう、お前の勝ちだ。城も赤兎も、何もかも貴様にくれてやる!」
 折れる事を知らなかった信念は敵将の前で負けを認める。
「そ、そうか! 観念したか!
 何、心配は要らぬぞ! お前は我が下で重用してやる。一族も厚遇しよう――」
「――だが!」
 悦びに満ちた曹操の言葉を遮り、
「だが俺は! 俺だけは渡さん!」
 呂布は腰に帯びた剣を抜き、
「ま、待て! 何をする気だ!?」
「俺は最後まで俺の物だ!!」
 剣を首筋に向け、
「城も馬も要らん! そんなモノは要らん!
 私が欲しいのは‥‥呂布、貴様自身なのだ!
 それが‥‥それが何故分からん!?」
 曹操の言葉を呂布が最後まで聞くことはなかった。

 城壁から一部始終を見ていた陳宮。
「最後までバカなことを‥‥ですが、将の意地、見せてもらいました」
 高い城壁から身を乗り出す。
 呂布が城から飛び出した為、真下には誰もいない。
 この高さなら――。
 ここにきて陳宮は悟った。
 己の選択は間違ってはいなかったのだ、と。
 ならば、
「やはりあなたには私が必要だ」
 最期まで呂布の忠臣として――。
「奉先様、今参ります」

「呂布‥‥陳宮‥‥この、大馬鹿者共が‥‥‥っ‥‥‥!
 貴様等のコトなど、一切覚えてなどやらんからな‥‥!」
 二人の想いが痛いほどに理解できる曹操は、
 だからこそ、それを受け入れることが出来ず、ただ、涙した。

「ふん! 呂布たんの馬鹿。一緒に蜂蜜なめようと思ったのに‥‥」
 そしてここにも呂布の死に涙する少女が。
「曹操許すマジ!
 もう、飴玉持ってても分けてあげないっ! 」
 この事件を恨みに思ってかそうでないかはわからないが、
 二人が戦う事となるのは後の話。

●そして関羽は千里を駆ける
「陳宮ちゃん、軍師なだけあって無駄のない整った素敵な髪。
 呂布ちゃんの金髪も‥‥」
 二人の武勇と髪(←?)を惜しみ、弔う関羽。
 裏切りの将の壮絶なる最期を彼女も認めざるを得ない。
「見事な最期だったわ‥‥
 けど、何がそんなに嫌だったのかしら」

「兄弟達と離れて行き場が無いのだろう?
 ならば私の下へ来るが良い!
 ‥‥言っておくが、変な意味ではないぞ?」
 美髪公が曹操の勧誘を受けるのはそれからしばらくして。

 しかし、更にその後、
 歴史が繰り返すのは必然か。
「実家に帰らせていただきますっ!」
「ああっ! 関羽! 待てっ! 関羽〜〜〜!!」