魔法使いオズま!アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 冬斗
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 2.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 10/17〜10/19

●本文

 魔法の国からやってきた魔法使い見習いオズ。
 108人の困っている人を助ければ魔法使いになれますよ、と。
 オズは時に魔法で、時に一緒に悩み、魔法のない国に住む人たちの手助けをしてきました。
 いつからでしょう。
 困っている人を助けるのがオズにとって試験じゃなくなってきたのは。
 でも始まりがあれば終わりがあって、
 出逢いがあれば別れがあります。
 オズの見習い試験も例外ではなく――。

『おめでとう、オズ』
 ひさしぶりの院長先生。
 向こうから連絡なんてさらにひさしぶり。
 なにかあったんでしょうか?
『あなたが助けた人たちの数が107人になりました』
 108人の困っている人を助ければ魔法使いになれますよ、と。
 試験を始めてもう二年。
 昔、罰でもらった追加分は?
『もちろん、それを差し引いた上で。
 結論を言うならあと一人助けてあげれば、あなたは108人目の魔法使いです』
 108人目の魔法使い。
 それは確かにオズの目指していたもの。
 けれど、
『最後の困っている人? ならもういますよ。
 わからないですか?
 ほら、あなたのすぐそばに――』

 始まりがあれば終わりがあって、
 出逢いがあれば別れがあります。

 オズの最後の試験がはじまります。


○舞台演劇『魔法使いオズま!』

 オズの最後の試験。
 困っている人はオズの友達。
 別れを哀しむこの国の友達。

・オズ/
 ここでない場所、魔法の国の108人目の魔法使いになるための最終試験を受けています。
 私たちのよく知る、ここ、魔法のない国で、108人の困っている人達を助けてあげることが試験内容です。
 頑張りやさんのオズは困っている人たちと一緒に悩みながら、時には魔法の力で、時には魔法なしで、悩みを解決してあげていました。
 それから二年。
 オズに別れの時がやってきました。
 哀しいのはオズも一緒でしょう。

・他の魔法使い見習い/
 登場される見習いたちもオズと一緒にノルマを達成しそうです。
 109人目、110人目の魔法使い。
 (一緒に魔法使いになれるなんて滅多にないことです。107人目の魔法使いが生まれたのは今から100年以上前だったとか)
 オズと一緒に最後の試験に挑んでください。

・オズの友達/
 オズ(もしくはオズたち)との別れを惜しむ友達。
 前作までに登場した人物でも新しく登場する人物でも構いません。
 新しく登場する人物も描かれなかっただけで昔、オズとかかわった人たちという扱いで。

 舞台演劇『魔法学生オズま!』、『魔法研修生オズま!』、『魔法院生オズま!』が前作となります。

●今回の参加者

 fa0074 大海 結(14歳・♂・兎)
 fa1013 都路帆乃香(24歳・♀・亀)
 fa2132 あずさ&お兄さん(14歳・♂・ハムスター)
 fa3354 藤拓人(11歳・♂・兎)
 fa3371 豊浦 あやね(15歳・♀・狸)
 fa3846 Rickey(20歳・♂・犬)
 fa4776 アルヴィン・ロクサーヌ(14歳・♂・パンダ)
 fa5556 (21歳・♀・犬)

●リプレイ本文

●CAST
 オズ‥‥藤拓人(fa3354)
 亮(とおる)‥‥大海結(fa0074)
 お巡りさん(田中一)‥‥虹(fa5556)
 モーゼル‥‥アルヴィン・ロクサーヌ(fa4776)
 ドロシー‥‥豊浦あやね(fa3371)
 プレシア‥‥あずさ&お兄さん(fa2132)
 ソル‥‥Rickey(fa3846)
 院長先生‥‥都路帆乃香(fa1013)

●最後の試験
「オ〜〜ズ〜〜く〜〜ん!!」
 亮くんの家に駆け込んできたのはモーゼルくん。
 心なしかいつもより興奮気味です。
「どうしたんだよ、モーゼル?
 オズに用?」
「あのねあのね、オズに108‥‥」
 最後まで喋らせる事なく、オズがモーゼルくんを抱えて家を出ます。
「ごめんなさい! モーゼルくんと約束あったんです!」
 一人、家に残された亮くん。
「どした? 亮。
 なんか寂しそうだな、ひーほー」
「――ん、なんでもないよ」
 火の精ジャックだけが亮くんの心に気付いていました。

「ご、ごめんね。
 亮くんにはまだ話していないんだ」
「あ、そうだったんだ。気をつけるよ」
 それにしてもモーゼルくん、よくオズのノルマを覚えていたものです。
 ペナルティも入ったせいで本人もわからなくなっていたのに。
 さすがはオズマニア。
「でさあ、108人目こそモーゼルを助けてよね!」
 無茶をいいます。
「あ、困ってなきゃダメだよね?
 ‥‥‥えいっ!!」
 モーゼルくん、いきなりご近所のおっかない番犬に飛び込みます。
「うわあ!」
 あわてて助けるオズ。
 もちろんノルマになんかなりません。

 院長先生は魔法の国から優しく見守り、
「さて、今回彼らはどんなやり方で新しい魔法使いへと成長するんでしょうね」
 108人目の困っている人、それはいったい誰なのでしょう?

●魔法使いのおともだち
 困っている人を108人助ければ魔法使いになれます。
 それは誰でもいいわけで、
 でもオズは院長先生の言葉が気になります。
(『最後の困っている人? ならもういますよ。
  わからないですか?
  ほら、あなたのすぐそばに――』 )
「わからないよ‥‥」
 一人悩むオズの元に
「オーズーー!!」
 お友達が声をかけます。
「ソル‥‥!」
 魔法使い見習いのソル。
 ついこのあいだからこっちの国に試験を受けにきました。
「聞いたぜー。後一人助ければ、魔法使いになれるんだって? すげーじゃん! 俺は後何人だったっけなぁ。忘れた!」
 相変わらずのハイテンションにオズも少しだけ元気が湧きます。
「でも、寂しくなるなー」
「え?」
「せっかくこっちの世界でもオズに会えたのになぁ。
 まっ、俺もそのうち魔法使いになれるだろうから、その時にまた会えるだろ。いつになるか分からないけどな!」
(せっかくこっちで――)
 ソルの言葉がオズにひっかかります。
 気持ちが顔に出てしまったのか、
「ん? 魔法使いになれるの、嬉しくないのかー?」
 嬉しいはずです。
 それなのに――、
 なんなのでしょう、この気持ちは。

●108人目は?
「お友達じゃないかな」
 ソルと話してるところに立ち寄ったのはお巡りさん。
「オズ君、お友達と別れるのは寂しいでしょ?
 むこうだってそう思っているはずだよ」
 108人目の困っている人。
 それは仲良くなったお友達。
「そっか、そんなに俺に会えなくなるのが哀しいか! オズは可愛いなぁ」
 そうじゃなくって。いや、そうなんだけれど、そうじゃなくって。
 お巡りさんはつっこみません。さすが大人。
「だからオズ君もその事言えなかったんだろう?
 でもお別れはしなくちゃね。美海にもよろしくね」
 オズが助けてあげたお巡りさんの姪っ子さん。
 そう、亮くんだけではありません。
 オズはこれまでたくさんの人たちを助けてあげて、
 その中にはお友達になれた人もたくさんいて、
「そっか‥‥魔法の国へ帰るんだね」
 もちろん、それはこのお巡りさんもおんなじで。
「僕もみんなもオズ君のことは大事な友達だと思ってるから」
 お巡りさんは目に涙を浮かべて、
「立派な魔法使いになるんだよ。困ったことがあったら僕らのことを思い出して‥‥!」
「お巡りさん‥‥!」
 お巡りさんの気持ちは素直にうれしい。
 でも、優しい言葉をかけてくれればかけてくれるほどオズにとってもみんなにとっても別れは哀しくなってしまい――、
「僕‥‥」
 オズは何か言おうとしました。
 でも言えませんでした。
 なぜならそこにすぱーんとハリセンが飛んできたからです。

 やってきたのはもちろんドロシー。
 痛いからか別の理由か、涙をためてるオズをじろりとにらんで、
「‥‥多分あんたの事だし、悩んでると思ったら‥‥案の定よね」
 でも放っておけないドロシー。
「山田の言うとおりよ、オズ!」
 誰それ?
 すみっこでちょっと怯えてるのは田中のお巡りさん。
「もしヴィルヘルムが私と別れたくないから夢を諦めるとか言ったら‥‥私多分怒るし‥‥
 ‥‥というか逆でも多分私が怒られるわよ。
 ‥‥というか私だってあんたがそんな理由で諦めたら怒るし‥‥あくまでライバルとしてねっ!」
 ちょっとまわりくどいドロシー。
 けれど気持ちは伝わります。
 オズを元気付けてあげたい、ソルやお巡りさんと同じ気持ち。
「離れたって友情は変わらない、寧ろ夢に向かって進むのが‥‥友情じゃない?」
 そういって、まっすぐに、オズを見つめて。
「でしょ? 山田」
 田中さんは怯えちゃってます。
 そういえば初めに会ったときは犬のお巡りさんに変えられてしまいましたっけ。
 さすがにドロシーも気が付いたのかばつが悪そう。
「何もしやしないわよ‥‥私も反省してるし」
 名前は覚えませんけれどね。
「ドロシー‥‥」
(僕はどうしよう)
 悩むオズに声をかけたのはソルでした。
「そういえばプレシア、こっちに来てるんだよな」
「「え?」」
 オズもドロシーもびっくり。
 はじめて聞きました。
「あいつももう試験終わるらしいぜ」

●哀しい決心
 ソルより早く、オズよりちょっと遅く、こっちの国にやってきたプレシア。
 わりと要領のいい優等生のプレシアはオズやドロシーにおいついて最後の試験。
 108人目の困っている人。
 プレシアの選んだ方法は――。
「私の夢のためなんだから、私は辛いことがあっても大丈夫。
 でも、私の勝手で、他の人にまで辛い思いをさせる権利はないから」
 『みんなが眠っている間に、密かに自分に関する記憶を消去して去る』
 それがプレシアの答え。
「みんなが私を忘れても、私はみんなを永遠に忘れない。
 それが勝手に帰る私の償いであり責任だと思ってる」
 誰にともなく、寂しそうに、でもはっきりとプレシアは決めました。
 だけど、それが納得できない人も。
「なによそれ、本当に勝手ね」
「ドロシー!?」
「辛いのが自分だけでいいとか、ただの自己満足じゃない」
「誰も傷つけないで解決できることばかりじゃないけど、誰かを傷つけていいことにはならない!
 だから私が全部背負っていく‥‥私にはそれだけの覚悟があるから‥‥!」

●108人目は――
 一方、オズはドロシーを追っかけ中。
「もう‥‥飛んで行っちゃうんだから‥‥!」
「悪ぃな、俺もまさかドロシーがあんな反応しちまうとは‥‥言わなきゃ良かった?」
 だけどオズにはドロシーの気持ちもわかります。
 友達の記憶だけ消してなにもなかった事にはしたくない。
 でも、ならどうやって?
 どうすれば今まで出会った友達たちを哀しませずにすむのでしょうか?
「そんなに深刻に考えずに、気楽にしてりゃいいんだって! そりゃあ、オズも友達も今は寂しいかもしれないけど。
 オズとの思い出は、一生心に残っている筈だから」
「――――」
 その時でした。
 視界に入ったのはモーゼルくん。
 大通りの車道を自転車で逆走中!(絶対マネしないでくださいね)
 もちろん目的は――、
「モーゼルくん!!」
 空から間一髪モーゼルくんを助け出します。
「あ、オズくん、ありが‥‥」
 さすがにモーゼルくんもびっくり。
 オズは目に涙をうかべてます。
「どうして‥‥どうして‥‥!!」
 モーゼルくんの気持ちもわかるけれど、
 でもこんなことされたんじゃ‥‥、
「これじゃあ僕、108人助けたって、魔法使いになったって、向こうの国には――」
 泣きながら口をついた言葉。
 それで気が付いてしまいました。
 本当に困っているのはオズの助けてきた友達ではなく――。

●さよならは言わない
「覚悟って何よ! 相手の気持ちも無視して、それが勝手だっていうのよ!」
「あーら、さすがにズルズルと! 4年も! かかってる人の言葉は違うわねー?」
「か、関係ないでしょ! 早く終われば偉いわけ!?」
「関係あるわよ! そういう甘い考えだから、いつになっても終わらなかったんじゃないの?」
「なによ! じゃあお早い誰かさんはさっさと終わらせて友達も出来ずに向こうで一人寂しく魔法使いやってりゃいいでしょ!!」
「ええ、今そうするところだったんじゃない! 誰かさんが邪魔しなけりゃね!!」
 ドロシーとプレシアの言い合いはただの口げんかに。
 結局、ドロシーもプレシアのことが心配なわけで。
 だからこんな寂しい終わらせかたはしてほしくなくって。

「オズ‥‥」
 オズは亮くんと会います。
 けじめをつけるために。
 亮くんのため?
 いえ、違います。
 オズは――、
「亮くん、僕――」
「行ってこいよ」
 亮くんにはもうわかっていました。
 でも言えませんでした。
 心配をかけたくなくって。
 これ以上オズを困らせたくなくって。
「きっかけは突然だったけどさ、オズと友達になれたことは嬉しいよ。
 お陰で嫌いな火だってだいぶ克服できたし。
 友達とは一緒にいたいけどさ‥‥でもだからこそ応援しなきゃ」
 亮くんの本心からの言葉。
 祝福したくって、でも言えなくって、やっと出せた言葉。
「魔法使いになることが夢なんだったらそれをちゃんと叶えないと。
 別に二度と会えないってわけじゃないんだろ。
 だから‥‥これで俺の悩みはないから‥‥さっさと‥‥行って‥‥」
 悩みがないなんて嘘。
 意地っ張りな亮くんは必死で弱さを隠します。

「忘れないよ」
 オズは一言だけ、
(「オズも絶対忘れんなよな」)
 そう言って元気づけてくれた友達の魔法使い見習い。
(「出会った人達の事を忘れずにいれば、いつかきっと、また会えるから」)
 だから、
「亮くんのこと、この国のみんなのこと、絶対に忘れない」
 それは亮くんのためではなく、
 108人目に助けようと思った、自分自身の――。

●魔法使いオズま!
「おめでとうございます、これで貴方達は栄光ある魔法使いとして選ばれました」
 院長先生から108人目の魔法使いが選ばれました。
 名前はオズ。
 そして109人目にドロシー、110人目にプレシア。
「これからも魔法使い候補生達の規範になるように気を引き締めて下さいね」
 いつも笑顔で怖い院長先生、今日だけは本当に優しげです。
「結局108人目って誰だったんですか?」
 と、ソル。
 108人目が自分なら、ドロシーとプレシアは――。
「自分を助けるということは、納得いく答えを出すという事です。
 それに、
 そもそも108人目に自分を助けなければいけないとは言ってませんよ?」
 自分にしろ、他人にしろ、
 人を救うということは、どう気持ちに決着をつけるかという事で。

「絶対に後悔するわよ。あんなの私は認めない!」
「ドロシーこそ! 私は満足なの! 余計な口出ししないで!」
 この二人は結局けんかのまま。
 でもお互いが心配で放っておけなくて、
 案外、仲いいのかもしれません。
 だから合格。
 プレシアは彼女自身のやりかたでみんなを想って、
 ドロシーはそんな彼女の寂しさに気遣って。
「じゃあ、またなー」
 残されたソルは一人元気。
「世話になるぜ、山田さん!」
 田中さんと一緒に帰りながら、
「ねーねー、108人目はモーゼルを助けてよー、ソルくーん!」
 モーゼルくんは相変わらずこりてません。
「俺も頑張ろーっと!」
 ソルの修行は始まったばかり。

 そして、

「さて、早速ですが魔法使いとなった貴方達の最初の仕事は‥‥」

 オズたちの修行も始まったばかりです。