魔法学生オズま!アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 冬斗
芸能 1Lv以上
獣人 フリー
難度 やや難
報酬 1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 06/24〜06/28

●本文

 ここではないどこか、遠い遠い、地図にものっていない魔法の国。
 ここではみんなが一人前の魔法使いを目指して頑張っています。

「おめでとう、オズ。後は最終試験を残すだけです」
 眼鏡をかけた温和そうな女性は魔法学院の院長先生。
 若く見えますが、オズがこの学院に入ったときから変わりません。
 というか、オズが生まれたときからこんなだった気がします。
 でもその辺を突っつくとどんな罰がまっているかわかりません。
 特に試験中の今はせっかくの最終選考に落とされかねないのでやめておきましょう。
「あなたはとても優秀な生徒です。この最終試験に合格すればあなたは晴れて108人目の魔法使いになれるでしょう」
 108人目の魔法使い。
 多いのか少ないのかわかりません。
 大体オズ達魔法使い見習いは院長先生をはじめ、ごくわずかしか魔法使いを見たことはありませんから魔法使いというものがピンとこないのです。
 それでも、みんな魔法使いになることを目指し、魔法の腕をみがいてきました。
 それはオズも同じ、期待に胸は高鳴ります。
 『どんな魔法を使えばいいのか』、『それとも新しい魔法を覚えるのか』、試験の内容に緊張するオズに、
「最終試験は外の国に行ってもらいます」
 と、院長先生は聞いたこともない言葉を口にしました。
 『外の国』とはなんでしょう。
 外は外です、この国の外にある国なのでしょう。
 ですが、そんなものがあるなんてオズは聞いたこともありません。
 戸惑うオズに、院長先生はもっと聞いたこともない言葉を続けました。
「外の国は魔法のない国です。
そこに住んでいる人間達は魔法が使えません」
 ――魔法が使えない。
 大変です。
 それじゃあ彼らは困ったときにどうやって問題を解決するのでしょうか。
 魔法もなしでは火をおこすのもごはんを食べるのも学校にいくのも大変です。
「あなたはそこにいって困っている人を助けてあげなさい。
108人の人間を助けたら、あなたは魔法使いになれます」
 それがオズが魔法使いになる最終試験。
 遠く遠く離れた魔法の国からやってきたオズは、一人前の魔法使いになるために魔法の使えない人たちの悩みを助けます。
 それによって救われるのが人間達かオズなのか、それはこれからのお楽しみ。
 ―――ですが、それにしても院長先生、
 助ける人数が108人っていうのはちょっと適当すぎやしませんか?


○舞台演劇
「魔法学生オズま!」

キャスト募集/
・オズ
(性別不問・男でも女でも構いません)
・悩める人々
(役柄と『欠けているもの』を設定してください。
 『勇気のないライオン』とかいうやつです。
 例:甘いものが嫌いなパティシエ、血の怖い医者など)
・その周りの人物
(見守る人、邪魔する人、困らせられてる人など、悩める人の周囲の人物を)

 オズが知恵と魔法で悩める人々を救います。
 けれど、悩みは人それぞれで魔法で簡単には救えません。
 一緒に悩むうちに何かが見えてくるかもしれません。

 なお、舞台であるため、あまり派手な魔法は使えません。
 演出可能な領域でお願いします(アイディアさえあれば構いませんが)

●今回の参加者

 fa0074 大海 結(14歳・♂・兎)
 fa3072 草壁 蛍(25歳・♀・狐)
 fa3599 七瀬七海(11歳・♂・猫)
 fa3742 倉橋 羊(15歳・♂・ハムスター)
 fa4047 ミミ・フォルネウス(10歳・♀・猫)
 fa4909 葉月 珪(22歳・♀・猫)
 fa5019 大河内・魁(23歳・♂・蝙蝠)
 fa5556 (21歳・♀・犬)

●リプレイ本文

●CAST
 オズ‥‥倉橋 羊(fa3742)
 煉(レン)‥‥大河内・魁(fa5019)
 亮‥‥大海 結(fa0074)
 蓮也(はすや)‥‥七瀬七海(fa3599)
 愛華(あいか)‥‥葉月 珪(fa4909)
 田中 一(お廻りさん)‥‥虹(fa5556)
 美海(みうみ)‥‥ミミ・フォルネウス(fa4047)


●やってきた魔法使い
「‥‥‥‥」
 オズは困惑していました。
 『魔法のない国』
 そう聞いてやってきた世界はオズの想像していたものとは全然違っていたからです。
 そう、変です。
 どうして魔法もないのにこんな立派なお屋敷やお城があるのでしょう?
 どうしてあんな速い乗り物があるのでしょう?
 魔法がないのではないのでしょうか?
「ここはどこ〜僕はオズ〜!」
 仰天のあまりわけのわからないことまで叫びます。
 そうそう、あんなにいっぱいいるのに乗り物一つも空を飛ばないのも信じられません。
 だって危ないじゃないですか。あんなに速いのに。
 そんな無益なことを考えていると、
「あら? どうしたの? もしかして、道に迷ったのかな?」
 優しそうな綺麗な金髪のお姉さん。
「どこにいくの? お姉さんが案内してあげる」

「僕、オズ! 魔法の国から試験にきたの!」
 行き先もない、待ち人もない、そんなオズを仕方ないので自分のマンションにまで連れて行ってあげた愛華さん。
 聞けばこんなことを言い出しました。
(「子供は夢が有って良いですね」)
 愛華さんはオズの話を馬鹿にはせずに、優しく聞いてあげるのでした。
 魔法は一人前でも心は半人前、オズも寂しかったのでしょう。
 嬉しそうに魔法のこと、学院のこと、友達のこと、矢のように話すオズを見て、なぜか愛華さん、溜息。
「どうしたの?」
「うーん、実はね、私の知人に凄く人見知りの激しい人が居て、貴方の半分でもいいから、もっと上手に人付合いが出来たら良いのに‥って思ったの」
 ――あなたはそこにいって困っている人を助けてあげなさい――
 院長先生のお言葉が思い出されます。
「悩み! 悩み! まっかせてー! 僕、魔法使いになるための試験にきましたっ! 皆さんのお悩みを魔法でずばーっと解決です!!」
 はてさて、上手くいくのでしょうか?

●人見知りな俳優さん
「おつかれー、煉君」
「‥‥‥」
(「もっと共演者の方々と仲良くしないと駄目ですよ」)
「煉君、今日ちょっとNG多かったよ。台本読んできてね」
「‥‥‥」
(「そのぶっきらぼうな所、何とかならないんですか?」)

「くそっ!」
 家に帰った煉君は一人、怒っていました。
 みんなに、ではなく、自分にです。
 煉君は俳優さんです。
 顔は悪くありません、‥ていうか、いい方です。
 勉強熱心で一度覚えたセリフは忘れません。
 でもすっごい人見知り。
 舞台に立つと、とにかくあがってしまうのです。
 それが悪いとは思っても、人見知りの激しい煉君はみんなに謝ることもできません。
 誤解をうけて煉君は余計にあがってしまうのでした。

「僕はオズ! 皆さんのお悩みを魔法でずばーっと解決です!!」
「‥‥‥」
 その日、マネージャーの愛華さんは煉君のところにヘンな男の子を連れてきました。
 オズは自分が魔法使いだと言っています。
「愛華サン‥‥」
「ごめんなさいね、この子、どうしても君に会いたいって」
 『だから話し相手になってやってくれ』と。
「それにね、煉君にとっても悪いことじゃないと思いますよ」
「―――!」
 悩みは話しちゃうのが一番。
 溜め込むのはよくないです。
「それに――知らない人のほうが話しやすいこともありますよ」
 はたしてその効果はあったのか、
 煉君、ちょっと気分が軽くなりました。
 屈託ないオズが話しやすかったこともあります。
 けれど、それ以上に愛華さんの気遣いが嬉しかったのです。
 『こんなに心配してくれてる人がいるんだ』
 明日からはもう少しだけ頑張れる気がしました。

 でもオズはまだ納得しません。
「だいじょーぶ! 僕の魔法で一発です!!」
 そして――

「なんだよ、これ! すげェ! 客が皆、南瓜に見える!」
 みなさん、気を悪くしないでくださいね。
 これは魔法ですから、オズの魔法。

●火が苦手な料理部員さん
「別に火が扱えなくたって困ることなんて現代じゃほとんどないんだし。
 ‥‥まあ学校では困るけどさ。
 でもそれ以外で使うことないし近付かなきゃいいんだし」
 バツが悪そうに亮君。
 彼は小さい頃に身体に火傷をしてしまいました。
 おかげで料理は上手いのに火が使えません。
 お家ではIH。なるほど、現代は便利です。
 IHでも熱いんですけどね。どうやら苦手なのは熱いのではなくて『火』そのものみたいです。
「困ってるんだよね? 直したくないの?」
 IHってよくわからないけど話の腰は折らないオズ。
 わりと向いてるのかもしれません、この試験。
「そりゃ直ったらいいな、とは思うけどさ。
 そんなのかっこ悪くて他の誰にも言えないじゃん」
「だいじょーぶ! 僕にまっかせてー!」
「‥‥いや直してくれようとしてくれるのはいいんだけどさ。
 どうやってやるわけ?」
 魔法だろうとなんだろうと怖いものは怖い。
 熱くなくなって、火傷をしなくなっても、火は怖いのです。
 そもそも亮君、魔法信じてませんし。

「こうやってやるのですー!!」
 オズは魔法でぱあっと炎を呼び出します。
「ひえっ!?」
 台所でもないのにこんな大きな炎、亮君じゃなくても怖いです。
 え? 炎じゃない?
 炎ですよ、炎! 南瓜の顔した炎!
 だいたい、舞台で炎使ったら危ないじゃないですか。ここの火事はオズの魔法じゃ消せませんよ。
「オイオイ、ひどい反応だなぁ、傷つくなぁ、ひーほー」
「炎が‥しゃべってる!?」
「おいら火の精ジャック、よろしくな、ひーほー」
「これでどうですかー? これなら怖くないよ」
「ダ、ダ、ダ、ダメダメ!!
 い、い、いくらしゃべってたってダメなモンはダメだって!!」
「そりゃないぜ、おいら人間に火傷なんかさせねえってばよ、ひーほー」
 南瓜の顔した炎はしょんぼりとうなだれます。
 なんだかかわいそうです。
「‥‥まあ確かにしゃべれたら少しは恐さがないけどそんなにすぐには無理だって‥‥」
 亮君ちょっと気の毒になりました。
 それにけっこういいやつかもしれません。
「『すぐには』? じゃあおいら‥‥」
「ちょっとずつ‥‥だからな」

 めでたしめでたしですね。
 でもオズ、なんでまた南瓜なのでしょう?
 ひーほー。

●好きな子に好きと言えない蓮也くん
「本当にそんなので上手く行くの?」
「だいじょーぶ! まっかせてー!」
 初めは試験のためでした。
 けれど、いつのまにか誰かの力になることがすごくうれしくなってきていました。
 今度のお相手は蓮也くん。
 片思いの美海ちゃんに告白できないみたいです。
「勇気の出る魔法ー!」
 ちゃらりーん!
 これで解決! 蓮也くん、がんばれー!
「よーし、力が漲ってきたー、お前が好きだ! お前が欲しい!!」
 叫びながら、愛しの美海ちゃんの下へと――。
「‥‥あれ?」
 なんとなく、大きな間違いをしてしまった気がするオズでした。

「お前が好きだ!」
「え‥? あ‥‥」
 突然の告白に美海ちゃんはびっくり。
「お前が欲しい!!」
 いや、蓮也くん、それはいきすぎ。
「‥‥‥‥!!」
 美海ちゃん、真っ赤になって一目散に逃げ出します。
 あとに残されたのは寂しくたたずむ蓮也くんと、
「‥‥なんで?」
 それを見ていたオズでした‥‥。

 オズはしょんぼりしています。
 試験に失敗したからではありません。
 蓮也くんの力になってあげたかったのです。
「なにがいけなかったんだろう‥‥」
 魔法を間違えたのでしょうか?
 なら美海ちゃんにも魔法を――
 違う気がしました。
 ――ひょっとしたら、これが院長先生のおっしゃった試験の『本当の』意味なのでしょうか?

「君々、其処で何をやっているんだい?」
 しょんぼりオズに声をかけたのはお巡りさん。
「この辺りでは見かけない子だな?」
 心配そうに覗き込むお巡りさんにオズはホロリときてしまいます。
「ど、どうしたんだい!?」
 泣き出すオズにお人好しなお巡りさんはびっくりしながら自転車を降ります。
「自分‥‥いや、僕で良かったら話してごらん?」
 かがんで視線を合わせ、オズに話を聞きました。
「なるほど、そうか。でも君のやったことは間違いじゃないと思うよ」
 オズの頭をなでながら、
「君はその子達のために、魔法をつかったんだろう?」
 わかっているのです。
 でも失敗してしまいました。
「オズ君、うちの姪っ子が口下手で友達ができないんだ」
 優しくなでながら、
「君の‥その、魔法でなんとかしてくれないか?」
 この子が友達になってくれればいいな
 そう期待して、お巡りさんはオズに姪っ子さん――美海ちゃんを紹介してあげました。

●引っ込み思案な美海ちゃん
 オドオドしてて友達の出来ない美海ちゃんに、お巡りさんの叔父さんがお友達を連れてきてくれました。
 オズ君、――でもオズは魔法使いとは言いません。
「美海ちゃん、僕ね、蓮也のお友達なんだ」
 美海ちゃん、驚きます。だってさっきびっくりして逃げちゃったばかりです。
「蓮也のお話、聞いてあげてくれないかな‥‥
 キミが怯えて塞ぎ込む度にね、キミとお話したい蓮也の勇気がしぼんでっちゃうんだよ‥‥」
 美海ちゃんだって同じです。
 でも怖くて、
「僕もキミとお話して、仲良くなりたいよ‥‥」
 仲良くなってくれるのでしょうか? この子も? 蓮也くんも?
「私も‥‥」
 仲良くなりたい。
 なけなしの勇気を振り絞って。

●オズの魔法使い
「さっきはごめん!
 その美海ちゃん、お付き合いしたいんだけど、グループ交際とかからでも良いけど始めない?
 まずはお試し期間という事で‥‥」
(こく! こくこく!)
 恥ずかしくて言葉の出ない美海ちゃん。
 それでも必死にうなずきます。
 蓮也くんぱあっと笑顔。
「蓮也笑ってる。すごいね、美海のほうが魔法使いみたいだ」
 オズも笑顔。
 試験より、二人の笑顔がたまりません。
「ううん」
 美海ちゃん、口を開きます。
「オズくんは魔法使いなの」
 だって、
 私に勇気をくれたから――。


 魔法は全能じゃない。
 それでも、魔法で助けられる人がいるのなら――。
 試験の意味が分かった気がしました。
 (よく気がつきましたね、オズ)
 院長先生の声がします。
 (そう、それがこの試験の答えです)
 教え子の成長に暖かく褒める院長先生。
 これでオズも立派な魔法使い――、
 (甘ったれるんじゃありません! まだ気付いただけでしょう!?
  これからもっと多くの人を助けるのです!
  たった何人かで悟った気になるのは早過ぎます!)
 あくまで厳しい院長先生。


 それからしばらく――。
 お巡りさん、オズを見かけて声をかけます。
「オズ君、この間はありがとうね!」
「いいえ! お世話になったのは僕のほうです!」
 とっても元気なオズ、この間とは違います。
「元気が出たようだね、自分も嬉しいよ」
「まだまだ――やることはいっぱいありますから!!」

 オズの旅は始まったばかりです。