銀河海賊レボルトアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 冬斗
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 やや難
報酬 1.2万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 07/17〜07/21

●本文

 ――現在、銀河系には200を超える知的生命体を有する惑星が存在する。
 彼らの多くは互いの存在を認知し、不利益を被らないように盟約を結んでいる。
 ――銀河連盟――。
 だが、文明の未発達、近隣の生命を有する惑星の不在などの不運により、他惑星の生命―異星人―の存在を知らぬままの惑星も多々存在する。
 地球。
 この星は異星人の存在を知らぬまま、銀河連盟によって守られている惑星の一つ。
 連盟は地球という未開の星を守るため、『大局的保護』という立場と行動をとっている。
 時に誘拐。
 時に侵略行為。
 地球人に知られず行われ、地球上では犯罪とされるそれらの行為は、連盟の協定上は『保護』という分類に属され正当化される。
 銀河連盟、それが現在、地球の命運を握っている組織の実態である。

 だが、どこの世界にもあぶれ者は存在する。
 連盟の協定に従わない星、協定における義務に従う国力のない星は『平和維持の為の積極的自衛』の元、『適切たる処置』が施される。
 それにより故郷を失った者。
 たったひとりで銀河連盟に立ち向かう反逆の士。
 彼はこう呼ばれた。
 銀河海賊レボルト。



「‥‥本当にやるんですか? これ。子供ドン引きですよ?」
「大丈夫、深夜二時間枠だから」
「‥‥開き直ってますね。しかも無駄に贅沢だし、なんすか二時間って」


●二時間特別番組「銀河海賊レボルト」
 保護の名の下、地球から搾取を続ける銀河連盟と、故郷を奪われ反逆を続ける銀河海賊の戦い。

 主人公‥‥レボルト、地球上での名前・職業・性別・年齢・変身時のセリフ・武器・必殺技等はお任せします。
 変身時は強化スーツに身を包みます。
 レボルトにはサポート役もいる予定、孤独な戦士を支えます。
 他、配役自由。
(敵組織、被害に遭う地球人、地球でのレボルトの友人等)
 連盟は『保護』した対象を研究・改造しています。
 時にはサンプルを取るために作戦に組み入れます。(早い話が怪人です)
 普段は人間として生活しているサンプルもいます。
 連盟の兵士(幹部)は強化スーツを着ていてイメージはレボルトに近いです。

 一話完結の特別番組ですが、決着をつける必要はありません。
 オチがつけばOKです。

●今回の参加者

 fa0422 志羽翔流(18歳・♂・猫)
 fa0588 ディノ・ストラーダ(21歳・♂・狼)
 fa1521 美森翡翠(11歳・♀・ハムスター)
 fa1889 青雷(17歳・♂・竜)
 fa3831 水沢 鷹弘(35歳・♂・獅子)
 fa4300 因幡 眠兎(18歳・♀・兎)
 fa5394 高柳 徹平(20歳・♂・犬)
 fa5416 長瀬 匠(36歳・♂・獅子)

●リプレイ本文

●銀河連盟
 銀河連盟・地球支部。
 連盟の一支部に過ぎないこの組織は、しかし、この未開の惑星を統治するのに充分な力を所持していた。
 既に国連の七割は傘下に収め、事実上この星はこの組織が支配しているといっていい。
 だが、それでも地球支部はその活動に大きな弊害をもたらされていた。
「二十二体、ここ二年の地球支部における素体の被害数だ」
 鷹栖参謀(水沢鷹弘(fa3831))。
 地球支部において、東アジア方面を任されている幹部は苦々しくその数字を読み上げる。
「内、十四体が『ヤツ』によるものだ。今年に入っただけで六体に及んでいる」
 そして彼の担当する地域の被害は十六体。
 要するに殆どの被害が彼の言う『ヤツ』によるものだということだ。
「本部には調整ミスと伝えてある。だが、本来この星の人間は『調整』によく馴染む。
 これ以上誤魔化すのにも限界があるし――」
 『結果』は出さなければならない。
 それが連盟の掟であり、末端とはいえ将来を嘱望されている自らの役目だ。
「運動データから身体能力は優れているものの、技術的には未熟と出ている。
 二代目は若者と見て間違いない。となれば、我々は一刻も早く、伸びる前にその芽を――」
「あ、定時なんで上がるね〜〜」
「ラビ!!貴様ァ!!」
 場の緊張を解きほぐす、いや、踏み潰すかのようなおきらくボイスを発したのは東アジア担当の紅一点幹部ラビ(因幡眠兎(fa4300))。
「だってぇ、私、昨日作戦で徹夜明けだよぉ? それでも定時まで頑張ったんだけどもう限界」
「戦闘担当は貴様の役目だろうが!」
 扱いにくい部下に辟易する鷹栖。実力は確かなのだが。
「それって、私がレボルトと戦うっていうこと?」
「――そうなるかもしれん」
「ならなおさら。睡眠不足で機能40%ダウンしてま〜す。
 ラビは作戦準備のために睡眠行動に入るよ!」
「まてというに! 貴様ァァ!!」
 示しもなにもあったものではない。
 止める鷹栖を振り切り、会議室を出るラビ。
「一番大事な事を聞かずに‥‥」

 焦るのには訳があった。
 近日、本部から監査官が来るらしい。
 その前に『ヤツ』を始末せねばならない。
 連盟の宿敵。
 惑星ごと滅ぼしたはずの男の遺志を継ぐ者。

 銀河海賊――レボルトを。

●装着
 ショッピングモールに悲鳴が響く。
 街は白銀の獣人(志羽翔流(fa0422))によってその色を恐怖に塗り替えられていた。
 俊敏な疾駆と鉄をも切り裂く爪で周囲に破壊をもたらす。
 逃げ惑う人々とは別に、静かに獣に向き直る少年がいた。
「罠‥‥だろうな」
 破壊活動に作為的なものを感じる。
 暴れるために暴れたような。
 だが、
「見逃すわけにはいかねえよな‥‥!」
「お兄様、気をつけて」
 耳元で声がする。
 妹、星野綺羅(美森翡翠(fa1521))の通信を受け、星野刃(青雷(fa1889))は笑みで応える。
「バックアップは頼んだぜ!」
 顔付きは戦士のそれとなり、叫ぶ。

「装着」

 僅か0.002秒で強化スーツが身に着けられる。
 父親の遺産。
 黒一色の胸に刻まれた白い髑髏は反逆の証。
 理不尽なる法を打ち砕く憤怒の叫び。
 人は彼をこう呼ぶ。

「銀河海賊、レボルト!!」

●魔人が生まれた日
 豹の如き体躯。
 だが、大型獣に似合わぬ高い声がそれを猫だと伝えていた。
 この大きさの猫は豹や虎にも勝るだろう。
 油断は禁物だ。
「フリーザー!」
 冷凍銃を放つ。
 それを獣の速度でかわされた。
「速い!?」
「お兄様! 右です!」
 妹の声に、振り返らずに身をかわす。
「サンキュー、キタラ」
 レボルトが妹を慣れ親しんだ名、キタラで呼ぶ。
 連盟の『積極的自衛行為』により滅ぼされた故郷、海賊惑星リベルタ。
 連盟に属さない独立国家は彼らにとって邪魔でしかなかったのだろう。
 父の遺した海賊船『アヴァロン号』によって、自分とキタラ、そして母、冥夜だけが生き残った。
 故郷を失った三人が唯一帰ることができたのは、ここ、地球以外に無かった。
 連盟に『保護』される前の母の故郷。
 たとえ、その星が連盟の支配下にあったとしても。
「俺達と、そして母さんが安らかに暮らす為に――」
 懐に潜り、心の臓を狙う白銀の獣の爪を、もう一つの武器、レーザーカトラスで受ける。
「お前ら連盟にこの星は渡せねえんだよ!!」
 返す刀で獣人を切りつける。
「とどめ!」
「待ってくれ!」
 剣を振り上げるレボルトに縋る声。
「待ってくれ、それは、そいつは――」
 年の頃は大学生くらいだろうか、茶髪の若者が声を荒げる。
「俺の友達なんだ!!」
(小十郎――!?)

●せめて哀しみと共に
「ありゃりゃ、なんか面白いことになってきたわね」
 猫型素体、サンプルB203を任されたラビは一部始終を覗きながらひとりごちた。

「そいつ、さっきまで俺と同じ店でバイトしてたんだ。
 そうしたら突然様子がおかしくなって‥‥だからそいつ人間なんだよ!!」
 知っている。
 こいつらは『そういうもの』だ。
 それよりもレボルト、いや、星野刃が驚いたのは、
(小十郎――なんでお前が!?)
 大柴小十郎(高柳徹平(fa5394))。
 刃のアルバイト先の友人。
 確かにここは地元の街だが、それでもレボルトとして彼に会ったのは初めてだ。
 彼はフリーターでいくつかバイトを掛け持ちしている。
 その店がたまたま近くだったらしい。
 そして、
「だから待ってくれよ! あいつを殺さないでくれ! なんとか元に‥‥」

 不可能だ。
 連盟の生体実験素体。
 彼らは『調整』を受けた時点で連盟に自我を握られる。
 さらにあの姿は『最終変形』を終えている。
 あれはまだ制御が出来ていない。
 変身により、彼は制御不可能の戦闘能力を得て、代わりに人の姿を失った。
 もう、戻れない。

「今日これからあいつとダチの家に遊びに行く予定だったんだよ!!」
(「刃、今晩空いてるか? バイト仲間呼んでいいかな? 割と気が合うヤツなんだ」)

(―――!!)
 無言で小十郎を突き飛ばす。
 わかっている。
 自分は正義の味方なんかじゃない。
 法に逆らう、海賊だ。
 
 胸の髑髏が金に輝く。
「ダンス――」
 それを意味するものは見たことの無い小十郎も察することが出来た。
「やめろおおおおお!!!」
「――マカブル!!」
 父譲りの、踊るような剣戟は、白銀の獣人――哀れな犠牲者を華麗に切り裂いた。
 哀しみを隠すかのような美しさで。

●宇宙からの来訪者
「おのれ、レボルトめ‥‥!」
 モニターを通し、一部始終を見ていた鷹栖は苦渋を露にするも決断は早かった。
「これで終わりだと思うな! ラビ! いけ! お前ならヤツを倒せる! 消耗している今がチャンスだ!」
「え〜? 今晩観たい番組あるんだけど〜」
「命令だ!」
 なんとしてもここで倒さねばならない。
 でなければ――。
「その必要はありません」
 低く通る声が鷹栖を遮った。
「誰だ!?
 ――!!ま、まさか‥‥!」
 思うところに至った鷹栖に彼は肯定で返す。
「アーマスと申します。本部よりやってきた保護監査官です」
 男、アーマス(長瀬匠(fa5416))は慇懃な笑みを浮かべる。
「‥‥‥‥!!」
「なるほど、東アジアの素体の破棄件数が多かったのは概ね彼の仕業だったというわけですか」
 知られた。本部の人間に。
 そもそもこの二年間の破棄件数が多すぎた。
 それでも『新プロジェクトの実験段階』との言い訳をしてきたが、本部の監査官が来たことでそれも無駄に終わった。
「やはり紙の上での仕事は良くないですね。素体破棄の急増化を二年も放っておいているのですから。私が気づかなければ後一年はこのままだったでしょう」
「‥‥隠蔽の責任は取りましょう。しかし、今はヤツを‥‥」
「銀河海賊レボルトですか。十年前、惑星ごと滅ぼしたはずですが‥‥問題ありません。『彼』に任せてください」
「『彼』‥‥?」

●『赤い牙』ブライ
「ここは‥‥?」
 気がつけばそこはショッピングモールとは違う場所にいた。
 小十郎も傍にはいなかった。
 乾いた拍手が聞こえる。
「少しはやるようだね」
 若い、男の声。
「友人の目の前で敵を切り伏せる非情さ。それでこそ名に知れた銀河海賊だ」
 耳障りなテノールがレボルトの神経を逆撫でする。
「我が名は『ブライ』、人呼んで『赤い牙』」
 薔薇の花吹雪に包まれ、真紅の戦闘スーツ姿となる。
「『赤い牙』のブライ(ディノ・ストラーダ(fa0588))‥‥! 銀河連盟独立遊撃隊司令官‥‥!!」
 アヴァロン号にいるキタラの声が届く。
 キタラのナノマシンは生きているようだ。
 その証拠にレボルトのスーツは自動修復される。
 同じ素材を使用している、キタラのナノマシンの効果だ。
「気をつけてください! お兄様、彼は本部の人間です!」
 銀河連盟を統括する本部。
 そこの戦闘員はリミッターを外した素体などとは比べ物にならない。
「これは必要ないかも知れないな」
 警戒を強める二人の前で、ブライはレーザー剣を収納し、
「来るがいい。先程の青年の為、仇を討ってやろう」
 今、最も言ってはならない言葉でレボルトを挑発した。

「ダンス――」
 手加減はしない。
 様子見を行う為の実力的余裕も精神的余裕もない。
 殺意さえ滾らせ、赤い戦士にカトラスを振るう。
「――マカブル!!」

 だが、かわした者などいなかった必殺の剣舞を、ブライは紙一重でかわし、カウンターに右のストレートを叩き込む。
 特殊合金のヘルメットが歪む。
 続く、左フックがレボルトの変身回路を的確に打ち砕く。
「ふん、脆いな」
 変身が解け、苦悶を浮かべ蹲る星野刃に冷笑を投げかけるブライ。
「少年よ、悔しいか?しかし、これが現実なのだよ」
 年としては五つと違わないだろう。
 しかし、『赤い牙』は年齢ではなく、実力で刃を『少年』と言った。
 死をもって償わせたい侮辱も晴らすことが出来ない。
 ダメージは抜けず、動くことも出来ない刃に『赤い牙』は薔薇を一輪放る。
「銀河は広い、強くなって私の前にやってくるがいい」
(『何故トドメを刺さない』)
 そんな負け惜しみすら口に出来ない。
 完全な敗北だった。

●戦いは終わらない
「逃げられましたよ。逃げ足だけは一流だったようだ」
 本部でブライはアーマス監査官にそう報告した。
「何故、通信機を携帯していなかったのですか?」
 戦闘用異空間での出来事は記録に残っていない。
 当然、レボルトの正体も。
「すぐに出向くよう言ったのは貴方でしょう? 御陰で私も準備が調わなかった」
「―――」
 疑わしい言い分ではあるが、不問にした。
 遊撃隊司令官である彼と自分の立場はあくまで対等であったし、
 それに、どうせ地球にはもう少し留まる予定だ。
「鷹栖参謀、ラビさん。そういうわけで、今回の隠蔽は本部には伝えないことにします。これ以上地球に割ける人員もないでしょうし。
 ただ、我々も協力をさせていただきます。共にレボルトを倒しましょう」
「めんどくさくないなら、それでいいよ」
 でも、めんどくさいことになるんだろうな。
 そう、ラビは予感していた。

●現在(いま)を生きるため
「ごめんな、刃。ダチ‥‥来れなくなっちまった」
 小十郎が無理に浮かべる笑顔に心が軋む。
(「俺が殺したんだ。お前のダチを」)
 そう言って謝罪したかった。
 だが、それは小十郎に全てを話すことになる。
 巻き込むわけにはいかない。
 彼の為にも、自分の為にも、せめてこの友人だけは平和な日常にいて欲しかった。

「ちくしょう‥‥俺は‥‥弱いなあ‥‥」
 アヴァロン号に戻り、スーツを修理しながらこみ上げてくるのはひたすらな懺悔の念。
「お兄様、お兄様は一人ではありません」
 キタラが傷心の兄を慰める。
「キタラも本当は、お兄様と同じ場所で戦って、共に誇り高き理想を求めたいのです。手を血で染める覚悟もあります。けれど今の私が戦場に出てもご迷惑をお掛けするだけですから‥‥」
 力及ばない痛みは自分が良く知っている。
 だから彼女にはそれしか言えなかった。
「せめて、共にいさせて下さい。連盟に反逆する仲間として」