学苑七不思議・最初の夜アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
冬斗
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
1万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
07/18〜07/22
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●本文
後悔している。
ちょっとした冒険のつもりだった。
ノートを見せてもらう友達くらいいた。
けれど、ちょっとその日はケンカをして。
予習なんてしてないときもあった。
ただ、その日はお母さんに怒られてムキになってて。
守衛さんに取ってきて貰うのもよかった。
でも、たまたまそのノートには見せたくない落書きがあったから。
そんなつまらないこと、気にしなければよかった。
友達に謝って、新しいノートを使って、大体、守衛さんは中身を見ないだろうし。
なんでこんな目にあうんだろう。
あんな話、どこにでもあって、全部でたらめで。
明日になったら教室で
『すっげー怖かった』
って笑い話。
そう。
それですむ筈だった。
それですまなくちゃいけないんだ。
なのにどうしてこんな―――
●舞台演劇『学苑七不思議』前編
『ある学苑』(名前は明かせません)にまつわる七不思議のお話です。
前後編ですので、全部やる必要はありません。(推奨3〜4つ)
登場人物は前後編同じである訳ではありません。(両方出る方は同じでも構いません)
日付は変わります。よって、前編で一旦幕は閉じます。
繋がってはいますが、別々の話と考えて頂いても問題ありません。(例えばオムニバス怪談のような)
七不思議の内容はお任せいたしますが、舞台演劇ですので、可能かつ効果的な演出で。(舞台上可能でもあまり怖くないものはお勧めしません)
●リプレイ本文
●舞台裏で
「これ、コント? ホラー?」
演出担当の河田柾也(fa2340)が脚本担当の桐尾人志(fa2341)と打ち合わせの最中。
「いえ、きっちりホラーだと思いますけれど‥‥」
葉月珪(fa4909)がやや心配そうに口を挟む。
「ああ、失礼。おかしな意味じゃなくてね。
なるべく観客を『怖がらせた』方がいいと思うんだ。
どれだけ登場人物に自分(=観客)を同一視させられるかがコントとホラーの境目じゃないかな。
『他人の不幸は蜜の味』って言うでしょ。
お笑い芸人の後ろついてくるゾンビを指差して爆笑してた人は少なくないはずだよ?
あの芸人を「自分」に置き換えてみればいい」
「なるほど、確かに一理あるわな」
キリー君こと桐尾が頷き返し、
「ほんなら、そこら辺意識して脚本書いてみますか。
あ、役者のみんなも提案あったらお願いな」
●始めは好奇心
「‥‥っていうお話なんですよ」
郷崎リタ(ジュディス・アドゥーベ(fa4339))が語る、この学苑にまつわる昔の話。
おっとりとした雰囲気の彼女から語りだされる話はかえって凄みが増す。
「‥‥で、その生徒はどうなったんですか?」
怖い話を聞きたくて仲のいい先輩を集め怪談に興じた中等部の葉月文彦(七瀬七海(fa3599))が怖がりながらも興味津々といった感じで聞く。
「さあ‥‥私が知っているのはここまでです‥‥」
含みを持たせた沈黙で話を終える。
本来、人を怖がらせることが好きなわけではないが、期待には応えなければなるまい。
「な、なによ! その後どうなっちゃったかとかあるでしょ! 次の日から姿を消した、とか‥‥!」
僅かに震える声で鞠(姫乃唯(fa1463))が続きを促す、が、
「いいえ、わかりません。この話はここまでしか‥‥」
「‥‥‥」
震える声で詰め寄る鞠とは対照に無言で息を呑む夏川芹(各務聖(fa4614))。
そこに、
「そう言えば、私が通っていた頃から、そういった不思議なお話が多いんですよねェ」
静寂を破るように登場する実習生桐生香澄(葉月珪)
「せ、先生!」
驚いたような、どこかほっとしたような反応の鞠。
――暗かった舞台に照明が射し――
(ここで掴みはおしまい、っと)
演出のコウダ君こと河田が舞台裏でひとりごちる。
「先生、肝試ししませんか?」
言いだしっぺはやはり文彦だった。
「ちょ、葉月君‥‥!」
「肝試しですか? 面白そうですね。うふふ、私も参加しちゃおうかな?」
鞠は止めるも、香澄は楽しそうだ。
「まぁ、本当は、夜の学校に残るなんていけないんですけど、先生も一緒なら‥‥参加します」
黙って聞いていた芹も同意し、
「私も構いませんよ」
同じくやや怖がりながらもリタも続く。
「決まりですね!」
なし崩しで決定すると、鞠も参加しないわけにはいかない。
「ああ、もう! わかったわよ! 面白そうじゃない!」
●不思議な六人目
「肝試し! 面白そうやな、私も混ぜてぇな」
五人で残った夜の学校、さあいくぞという直前に少女は現れた。
若狭凪(雅楽川陽向(fa4371))、ミステリー研究部の部員らしい。
「‥‥あまりお見かけしませんね」
リタの疑問に、
「あー、見知らぬ顔なんは、皆とクラスちゃうし、ミス研や新聞なんて、そんなに表に出るような存在感ある部やないからね‥‥」
誤魔化すように笑う凪。
「‥‥うちの学校、ミス研なんてありましたっけ‥‥」
実習生とはいえ、教員である香澄は一応、全部活を知っている。
「研究会! 顧問の先生いないから部になれんのよ。先生なってくれへん?」
強引に話を逸らす凪。
「‥‥私は実習生ですから。応援はしてます」
「ほな、はよいこか!」
結局、皆が一番疑問に思っていたことは突っ込めないままだった。
(制服なんで違うんだ‥‥?)
「こりゃ、そこ! なにをしとるか、こんな時間に!」
まずはどこから行こうか。
この学苑には他にもいわくありげな話がある。
いわゆる『七不思議』というやつだ。
それを頼りに有名なところから、
そう話していた矢先に呼び止められた。
用務員(桐尾人志)らしい。
慌てて香澄が事情を説明する。
「おや、あんたは‥‥」
「あ、私の事覚えていてくださいました?」
香澄が以前、ここの生徒だった頃からの用務員らしい。
「学苑の生き字引って呼ばれているくらいなんです」
生徒達にも説明する。
「まあ‥責任者がおるならなんも言わんが‥‥」
それでも一つ、と付け加え、
「危ないからはよ帰りなされ。殺されるぞ」
悪趣味といえばあまりに悪趣味な忠告に一同は乾いた笑いで返すのみだった。
●芹
「昔、あの音楽室で病弱な生徒がな‥‥」
自称ミス研の凪が語りだす。
『凪ちゃんメモ』には108の怪談がつつられているとか。
「んで、ピアノが鳴るんやって。
ピアノが鳴り始めたら気をつけんとあかんよ?」
今、その音楽室に向かっている。
突如、照明が消える。
(よし、頑張って、セイちゃん)
「えっ? 何? 守衛さん、灯り落としてしまったんでしょうか?」
怯える芹に応えるものはいない。
「あれ? みんな‥‥どこ?‥‥明かり‥‥消え‥‥」
●『一つ目・音楽室で勝手に鳴るピアノ』
件の音楽室。
廊下を歩いていくと、曲が聞こえてきた。
ドビュッシーの『月光』。
「だ、だれか‥‥いるんですよね?」
流石に文彦も声が震える。
「べ、別に恐くなんかないんだから!」
言いつつも鞠は涙声。
「行ってみましょう」
意外と度胸のあるのはリタ。
音楽室に入ると窓から月明かりが射し込む。
まるで曲に合わせるかのように。
するとリタはそれに合わせて踊り出す。
「不思議は不思議ですけど、これだけならそんなに怖くありませんし」
その様子に怯えていた鞠や文彦も緊張を解く。
「一緒に踊りませんか?」
怯える鞠への気遣いも兼ねて、
だが、
曲は一変する。
「これは‥‥」
モーツァルトの『レクイレム』。
そして段々と音量は高まって‥‥。
「きゃああああああ!!!」
鞠は逃げ出し、それを追う形で四人も音楽室を後にした。
●『二つ目・美術室で動く彫像達』
「だから肝試しなんて来るの嫌だって言ったのよ!」
鞠をなだめながらも一行は次の怪談へ。
『もう止めましょう』そう言いかけるが、喉の奥で止まる鞠。
「次は美術室やな。
最初の一つは渾身の情熱を込めて作られたそうや」
凪ちゃんメモの二つ目は美術室で動く彫像。
「で、今ではこんなに沢山になったんやと」
あれ、なんや人数減っとらん?」
今、気付く。
芹がいない。
「気をつけんとあかんちゅうたのにな」
だが一向は美術室へと向かう。
芹を探すために中止を唱えるものはいなかった。
この時点で彼女らは何かおかしくなっていたのかもしれない――。
そして、美術室。
「きゃあああああああ!!」
入室と共に一斉に振り返る彫像たち。
今度は流石に皆が逃げ出した。
だって、彫像の目は怪しく光っていたのだから。
●『三つ目・廊下の太郎君』
「気配に振り返ると、迫る人影があるそうや
なんでも学苑が設立する前、敷地内に防空壕があったらしゅうてな。
そん中で肺病を患い寝ていた少年が亡くなって‥‥。
遺体が回収さないまま学校の地下深くに埋められているそうや。
自分が死んだ事が理解できないんやと‥‥!」
そして走りながらの凪ちゃんメモ。
そう、今、まさに一向は太郎君に追われていた。
「物事には何らか科学的な原因がある筈ですけど、これは一体‥‥!」
息せき切って呟く香澄。
「死亡した時間に名を呼ばれると姿を現すんやて、
誰か呼んでみる!?」
冗談ではない。
何とか気配を振り切り、空きの教室に非難する。
「芹ちゃん!?」
そこにははぐれた芹の姿。
駆け寄るリタ。
芹は焦点の合っていない目で呟く。
「‥‥ここ‥‥暗い‥‥お経‥‥出して‥‥芹‥誰‥‥聞こえる‥‥」
明らかに様子がおかしかった。
「もう嫌よ! 先生! 帰ろう!」
鞠の言葉に反対するものはいなかった。
●四つ目‥‥
廊下を走る一行に怪しい光が飛び交い、邪魔をする。
「うわわわ!!」
怯えながらも出口を目指す文彦。
怪談の四つ目、謎の光。
もう限界だった。
恐怖におかしくなりそうな一行。
そこに、
「どうしました!?」
懐中電灯に照らされる六人。
心配そうに駆けつけたのは太った青年(河田柾也)。
「何しているんです、あなたがた」
いつのまにか、光は消えていた。
責任者として事情を話す香澄。
聞けば男は用務員だという。
「あれ? でも今日の当番は――」
「何を言っているんですか? 今日は私一人ですが」
「え―――?」
「十数年前に学苑に入り込んだ強盗に殺され、
成仏できない用務員さん。
今も学苑を真面目に巡回しているの」
口を開いたのは芹だった。
「芹――ちゃん――?」
皆が振り返る中、凪は振り返らない。
小さな唇が横に引きつられる。
笑みをもって、
それに凪も口を揃え、
「「‥‥もう‥‥逃げられない‥‥」」