魔法研修生オズま!アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 冬斗
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 07/25〜07/29

●本文

「僕はオズ! みんなの悩みをぱぱっと解決!」
 オズは今日も修行中。
 魔法のない世界での生活は色々大変だけれど、
 108人の困っている人を助けて立派な魔法使いになるのです。
「魔法で出来ることって少ないけれど、それでもみんなのお役に立てればって思ってます!」

 そんなある日のこと。
「あなたの近くに先輩が来ています」
 遠見の魔法で連絡してきた院長先生はそんなことを言いました。
 あいかわらずの若作り‥‥なんていったらとってもこわいめにあうのでやめましょう。
「こっちで修行しているのって僕だけじゃなかったの?」
 オズはちょっとびっくり。
 でもよく考えてみたら、オズが生まれる前から107人の魔法使いはいるのです。
 108人目を目指しているのはオズだけではないはずです。
「名前はドロシー。あなたより二年早くそちらに来ています。
 あなたと同じように108人の困っている人を助けるのが試験の内容です」
 二年も!
 さらにびっくり。
 二年たっても試験が終わらないなら、自分はいつまで修行すればいんだろう。
 この世界は嫌いじゃないですけれど、ちょっと不安になるオズでした。
「ただね」
 困ったように院長先生。
「ドロシーはとってもいたずら好きで、魔法で困っている人を助けることよりも、魔法で人を困らすほうが好きになっちゃったみたいなのです」
 人を困らす?
 そんな事をしていいんでしょうか?
「もちろんいけないわ。でもね、そっちの世界に行って何をするかは生徒しだい。『魔法でいたずらをしてはいけません』っていう決まりはこっちもそっちもないでしょう?」
 もちろん先生達は怒ります。
 でもいたずらくらいではドロシーをつかまえる、とまではいかないようです。
「昔はいい子だったんだけれどね‥‥」
 院長先生はため息をついています。
「僕がドロシーをつかまえましょうか?」
 先生達が来られないなら――。
「いいのよ。どうするかはあなたに任せるわ。
 でもドロシーは人を困らせるのが大好き。
 あなたの試験の邪魔をしたりもするかもしれないわ。気をつけて」
 院長先生は本当にオズが心配なだけで教えてくれたみたいです。

 魔法使いになるのは大事だけれど、
 オズは自分のことよりもドロシーのことが気になっていました。
「どうして人を困らせたりなんてするんだろう――」


○舞台演劇「魔法研修生オズま!」

 オズの魔法修行第二弾。
 ライバルの登場です。

・オズ/
 ここでない場所、魔法の国の108人目の魔法使いになるための最終試験を受けています。
 私たちのよく知る、ここ、魔法のない国で、108人の困っている人達を助けてあげることが試験内容です。
 頑張りやさんのオズは困っている人たちと一緒に悩みながら、時には魔法の力で、時には魔法なしで、悩みを解決してあげています。

・ドロシー/
 いたずら好きの魔法使い見習い。
 昔は真面目だったけれど、今は困っている人を助けるよりも困らせる方が好きなようです。
 当然、試験はまったく進んでいませんが、気にしてはいないようです。
(ちなみに名前は『ドロシー』ですが、男の子でも女の子でも構いません。
 ここではない、『魔法の国』ですから。
 ドロシー役の方は必ず性別や外見を明記してください。
 ない場合は役者さんの性別・年齢になります)

 他、困っている人、周りの人など配役自由。
 前作を知らないでも問題ありませんが、前作の役をもう一度やりたい方は出しても構いません。

●今回の参加者

 fa0074 大海 結(14歳・♂・兎)
 fa2573 結城ハニー(16歳・♀・虎)
 fa3354 藤拓人(11歳・♂・兎)
 fa3371 豊浦 あやね(15歳・♀・狸)
 fa4852 堕姫 ルキ(16歳・♀・鴉)
 fa5019 大河内・魁(23歳・♂・蝙蝠)
 fa5556 (21歳・♀・犬)
 fa5867 山南亮(9歳・♂・アライグマ)

●リプレイ本文

●CAST
 オズ‥‥藤拓人(fa3354)
 ドロシー‥‥豊浦あやね(fa3371)
 田中一(お巡りさん)‥‥虹(fa5556)
 煉(レン)‥‥大河内魁(fa5019)
 亮(とおる)‥‥大海結(fa0074)
 ヴィルヘルム‥‥山南亮(fa5867)
 謎の美少女‥‥結城ハニー(fa2573)
 院長先生‥‥堕姫ルキ(fa4852)


●「姉さん、事件です!」ね(by 謎の美少女)
 犯罪組織を追い詰める刑事・小津友也。
 マフィアの放つ銃弾に怯まずかいくぐる。
 懐に飛び込まれ、恐怖するマフィアの青年。
 そこに――、
「危ない!!」
 声に反応して友也は青年を蹴り飛ばす。
 大きな音を立て、照明器具の破片が床に飛び散る。
 ちょうど二人の間、先程まで彼らが交錯していた場所に。

「ストップストップ! 大丈夫!? 二人とも!」
「あ、ああ、俺は大丈夫だよ」
 尻餅をついているマフィア役の青年。
 蹴飛ばされたおかげで大事にはならなかったようです。
「煉君は!?」
「―――」
 友也を演じていた俳優、煉君は返事をせずにガラスのまかれている床をにらんでいます。
 とっさに相方の役者さんを気づかうやさしさがあるのですから、もうすこし愛想をよくすればみんなに好かれると思うのですが。
 それはさておき、舞台はざわついています。
 練習中ですのでお客さんはいないのに、落ちてきた照明を片付けようともしません。
 どうやらただの事故ではないようです。

●オトナの事情で歌詞は載せられないわ(by 謎の美少女)
「オ〜ズくーん!!!!」
 今日も困った人を助けるために散策中のオズ。
 大きな声で呼び止められて、なにやら事件の予感です。
 声とは裏腹に自転車は安全運転のお巡りさん。
 姪の美海ちゃんの悩みを解決してもらい、お巡りさん本人もすっかりオズとお友達です。
「お巡りさん? どうしたんですか? 困りごと?」
 不謹慎とは思いつつもお役に立とうと鼻息を荒げてしまいます。
「そう、そうなんだ。オズ君、煉君って知ってるよね?」
 忘れるわけがありません。
 こっちの国に来て、初めてオズが助けた相手です。
「実は――」
 その時です。
 何処からともなく現れたのは空飛ぶハリセン。
 持ち主のないハリセンはお巡りさんの頭をスパーンと叩き、
「わぅんっ!?」
 ぼわんと煙に包まれるといつの間にか犬耳に尻尾。
「お巡りさんっ!?」
 お巡りさん、頭をさすって大パニック。
「なんじゃこりゃー!!」
 まさに犬のお巡りさん。
 困ってしまったり、わんわんと吠えるしかなかったり‥‥。

「お似合いじゃない? まさに犬のお巡りさんよね?」
 あ、言われちゃった。
 箒で空を飛んでいるのは黒い服を着た女の子。
 片手には子犬のぬいぐるみを抱えています。
「君は‥‥!」
 魔法で空を飛ぶ女の子。
 この国には魔法使いはいません。
 とすると、院長先生の言っていた――
「貴方がオズね‥‥最近頑張ってるじゃない‥‥どうせ無駄なのに」
「ドロシー‥‥ですか」

●ライバルは魔法少女ね(by 謎の美少女)
 ここは魔法の国。
 魔法学院の院長室では院長先生が遠見の魔法でオズとドロシーを見守っています。
「ドロシー‥‥まだ、あの時の事を気にしているのでしょうか‥‥」


「君も魔法使いになるんじゃないんですか? ならこんなこと‥‥!」
「うるさいうるさい! 別にいいのよ、魔法使いなんて。魔法ならもう使えるんだし、困りゃしないわ!」
 たしかに最終試験までいった二人には一通りの魔法くらいはつかえます。
 けれど、それは立派な魔法使いになるためで、それでは順番があべこべで、
「とにかく‥‥貴方見てるとむかつくから‥‥邪魔したげる」
 言いたいことだけ言うとドロシーはいってしまいました。

「ドロシー‥‥」
「オズ君‥‥あの子は‥‥」
 ハッと気付くオズ、お巡りさんのことを忘れてました。
「あ、ごめんなさい! 待ってて、今治します!」
 お巡りさんにかけられた魔法を解こうとするオズ。
 ですが、どうしても解けません。
 ドロシー本人に解かせなければならないみたいです。
 泣いてばかりいるような猫さんもいないのに大変お困りのお巡りさん。
 いえ、いました、泣いてる子猫さん。
「そうだ! 自分のことよりオズ君、実は‥‥」

●南瓜はオズ君の魔法、前回参照かしら(by 謎の美少女)
「このまま本番でも同じ様な事があれば、南瓜‥‥、じゃなくて、客に怪我人が出るかも知れねェからな‥‥。正直、何だか知らねェが迷惑だ」
 お巡りさんの紹介で煉君と再会したオズ。
 聞けば、公演間近の舞台の練習中に物が勝手に飛び交うという事件が発生。
 先日、マネージャーの愛華さんが怪我をしてしまったようなのです。
「ごめんなさい、僕らのせいで‥‥」
「あ、いや、お前のせいじゃねえだろう」
 魔法のせいで傷ついた人がいると知って、オズはショックを受けます。
 愛華さんはもちろん、煉君のことも心配です。
 オズのお陰で少しずつ舞台度胸がついていき、久々の主役だったようです。
 煉君自身は口にしませんが、折角の主演が駄目になってしまいそうで落ち込んでいるようです。
「僕が‥‥なんとかしなきゃ‥‥」
 何でこんなことをするのか、オズはとっても気になりますが、とりあえずドロシーは止めなくてはなりません。

「ひーほー、こんなとこにいた、オズ〜!」
 と、そこに現れたのは火の精ジャック。
 オズが呼び出した亮君の友達です。
「ひーほー、助けてくれよ〜! 亮がピンチなんだよ〜」

●亮君、ちょっとカッコいいわね(by 謎の美少女)
「な、なんなんだよお前! オズの友達!? なんでこんなことするんだよ!」
 火が大嫌いな亮君、たくさんの炎に囲まれてます。
 もちろんドロシーの仕業です。
「なあんだ、火が怖いの全然直ってないじゃないの。やっぱりあいつも駄目駄目ね」
(私みたいに――)
「魔法で人を救うなんて出来ない‥‥夢なんて、叶わない物なのよ」
「――、なんだかわかんないけれど、あいつの悪口、言うなよ」
 亮君は震えながらもドロシーにくってかかります。
「なによ、怖いくせに。駄目なんでしょ、火」
 人魂みたいな炎を近づけられる亮君。
「ひゃあ!!
 ‥‥こ、怖いさ! そう簡単に怖いのがなくなるわけないじゃないか‥‥!」
「でも」と、追い詰められながら亮君、なけなしの勇気を振り絞り、
「オズに勇気をもらったんだ! だから、ちょっとずつ‥‥ちょっとずつだけど‥‥怖くなくなってきたんだ! あいつのお陰で!
 だから‥‥あいつの悪口言うなよ‥‥!」
「―――!」
 怒ったドロシー。
 いえ、怒ったというよりは――、
(何よ‥‥あいつは上手くできたって、そういうわけ‥‥!?)

●むかしむかしのおはなし(by 謎の美少女)
「ドロシーがそちらの国に行ってすぐに出来た友達がいたんです」
 亮君のピンチに駆けつけようとするオズに院長先生はドロシーの話を聞かせます。
「名前はヴィルヘルム、小さい子だけれど、お菓子を作るのが好きでパティシエを目指していたの」
 箒で亮君の元に向かいながらオズは院長先生のお話を聞いています。
「フランスの親戚のいるところに修行に行くところだったんだけれどね、ヴィルヘルムが空港についた頃、お母さんが倒れちゃったの」
 お母さんはヴィルヘルムを送りだしていて、本当はそのまま知らずに向こうに行くはずだったけれど、
「ドロシーはね、教えてあげたのよ。そしてお母さんの元へ送ってあげたの。魔法でね。
 それ自体はとてもいいこと。でもそのせいでヴィルヘルムはフランスへ行くのを諦めてしまった」
 魔法を使わなかったらヴィルヘルムはフランスで修行をしていたかもしれない。
「それからですね。ドロシーは魔法で人助けをしようとしなくなってしまいました」

●魔法ってとっても素敵なものだから(by 謎の美少女)
 炎に囲まれた亮君はもういっぱいいっぱい。
 それでもドロシーをにらむのをやめません。
「ほ、本当に火傷させるわよ!」
 さらに炎を近づけるドロシー。
 怖くてたまらない亮君は気付いてません。
 火ってとっても熱いんです。触らなくても近づくだけで火傷することもあるくらい。
 なのにこの火は全然熱くありません。
 だから本当はドロシーも火傷させる気なんて全然なくって――、

「もうやめてください、ドロシー!」
 幻の炎をかき消してオズが駆けつけます。
「ひーほー、大丈夫か? 亮」
 オズと一緒に心配そうなジャックに
「ジャック〜!」
「わ、ばか!」
 飛びつこうとする亮から慌てて逃げ出します。
「おいら、火なんだぞ! 抱きついたら危ないだろ、ひーほー!」
「あ‥‥」
 そうです。だから亮君、仲良くなってきてもおっかなびっくりだったのに。

「な、何よ‥‥怖くないっての? 貴方は上手く助けられたって、そういうわけ!?
 私と違って!」
 ドロシーはとても悔しそうにそう言います。
(私は上手くいかなかったのに‥‥! どうせ私は未熟だから‥‥!)
「違いますよ。亮君を助けてあげたのは、亮君自身と――あなたですよ、ドロシー」
 本心からの言葉。
 以前にきっかけを与えたのは自分。
 なら、今回亮君の背中を乱暴だけれど押したのは――。
「助けられたじゃないですか、魔法で」
「―――!」
 あきらめていた。
 自分の魔法では人助けなんかできないって。
「で、でも‥‥でも‥‥!」

「ドロシーさん」

 懐かしい声に振り向きます。
 この二年間忘れたことのなかった声。
 自分のせいで夢を台無しにしてしまったって後悔していた相手。
「ヴィル‥‥ヘルム‥‥」
「お久しぶりです、ドロシーさん」


(「この子を連れて行ってあげてください」)
(「この子は?」)
(「ドロシーがそちらの国に行ってすぐに出来た友達がいたんです」)
(「お願いします。ドロシーさんに会わせてください」)


「ごめんなさい。僕、自分のことでいっぱいで、ドロシーさんのことぜんぜん気付かなくって‥‥」
 ちょっと背が伸びたみたいですけれど、ドロシーよりは全然小さい男の子。
 二年前に友達になったヴィルヘルム。
 二年前に夢を諦めさせてしまった――。
「僕、今もお菓子を作っています」
「え――?」
「フランスにいくのはあきらめましたけれど、こっちでもお菓子は作れますから」
 でも、自分のせいで――。
「ドロシーさんがお母さんに会わせてくれたから、
 あのままフランスにいって、むこうで知らされていたらお菓子をつくるどころじゃなかったと思います」
 会わせたから? 自分が?
「本当はお礼を言わなきゃならなかったのに、自分のことばっかりで、気がついたらドロシーさんに会えなくなっちゃって‥‥。
 いままでごめんなさい。それと――」
 助けられなかった。
 そう思っていたのに。

「お母さんに会わせてくれてありがとう」

 いつのまにか、
 ドロシーはぽろぽろと泣き出していました。

●大団円、ね(by 謎の美少女)
「ふう、本当に犬のお巡りさんになるかと思った‥‥」
 お巡りさん、元に戻してもらって一安心。
「‥‥ごめんなさい、その‥‥」
 ぶっきらぼうな煉君、ドロシーの頭の上にぽんと手を置き、
「事故が起きないならもうみんな気にしねえよ。あとは愛華に見舞いに行ってくれるなら‥‥んと、助かる‥‥」
 愛華さんならきっと怒ったりしないでしょう。
 煉君のドロシーへの精一杯の優しさです。
 そして、

「ドロシーさんを許してあげてください。
 僕は全然困ってないし、他のことも僕のせいなら――」
「院長先生、僕からもお願いします!」
 ヴィルヘルムくんとオズは院長先生に必死にお願いします。
 けれど、
「いいわよ。私がみんなに迷惑かけたのは本当だもの。
 夢を諦めていたのは私だった。だから――」
「そうですね。貴女の言うとおりです。ドロシー」
 院長先生は厳しい声で、
「夢を諦めたのは貴女自身です。ヴィルヘルムくんは何も関係ありません。彼が夢を諦めずに頑張っていた時も、貴女はずっとふてくされていただけ。諦めなければ夢は叶うのに」
「院長さん!」
 ドロシーをかばおうとヴィルヘルム。
「だからね」
 院長先生は優しい声で、
「あなたは今まで、それを知る為に回り道をしてきた。それだけなのですよ」

 悪いことをしたのなら、
 反省すればいいんです。

 ようやくうつむくのをやめたドロシーに、
「困らせてきた人の分まで、ちゃんと幸せにしていらっしゃい」
 そう言って、『罰』をあたえました。
 前を向いて歩けるように、『罰』という名のプレゼントを。

●まだまだ続くわよ、いつかまた――(by 謎の美少女)
「‥‥これからはライバル同士‥‥言っとくけど手加減なんてしないんだからねっ」
 結局、ドロシーへの罰は『いままで困らせてきた人の数だけ人助け』ノルマの上乗せです。
 それでもオズのノルマより全然少ないようで、
 結構いいことしてたみたいです。ドロシー。
「どっちが先に魔法使いになれるか、競争ですね」
「あら、あんたは109人目よ。残念だけどね」
 憎まれ口を利きながらも、『魔法使いになれる』事は否定しません。
「いきましょう。ドロシーさん。僕のお菓子、また食べてください」
 ヴィルヘルムに連れられ、ドロシーは再び魔法使いの修行を始めます。

「‥‥ありがと」
 去り際に呟いた言葉がオズに聞こえたのかどうかは、
 内緒、ということで――。