三顧ノ礼アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 冬斗
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 07/25〜07/29

●本文

 ―――諸葛亮孔明。
 伏竜と呼ばれ、一説では妖術師とも噂された、希代の天才策略家である。
 後に蜀の王となる劉備玄徳は徐庶元直の薦めを受け、彼の庵を訪れた。
 だが、一度目も二度目も孔明は留守だという。
 そして三度目、孔明はいた。
 休んでいる孔明を起こしに行こうとする家人を止め、
 小さいとはいえ一軍の将である彼は、名も知られぬ一介の学者に過ぎない男を目が覚めるまで待ち続けた。
 その度量と真摯さに胸を打たれた孔明は劉備に味方し、かの赤壁の戦いを勝利に導いたという話はあまりにも有名だ。
 後に『三顧の礼』と呼ばれる、孔明の伝説の始まりである。


「でもこれって『見た』って奴、いないんだよな。
 劉備達と孔明の弟子とかだろ? そのくらい?」

 なにを当たり前のことを。

「ならどんな事が起きててもありじゃね?」

 間違ってはいないけれど‥‥、
 とりあえず先人達に謝っておきなさい。


○舞台演劇「三顧ノ礼」

 キャスト募集/
 諸葛亮孔明
 劉備玄徳
 関羽雲長
 張飛益徳

 他、自由。

 条件/
 性別、年齢不問。

 三国志、第二弾。
 今回は『三顧の礼』です。
 ルールは『劉備が三回孔明を訪ねて家臣にした』
 これさえ踏襲していれば構いません。
 徐庶も来たかもしれません。
 他にもついて来たかもしれません。
 もしくは曹操や孫権達はどうだったのでしょう?
 何があっても結構です。
 新しい人物、解釈の三国志を。

 ナレーションは希望者がいるなら前回同様やっていただきます。
 配役と二役の場合、『誰の』ナレーションかを明記ください。
(例:徐庶役とナレーション役か、徐庶役で徐庶の語りを入れるか)

●今回の参加者

 fa0225 烈飛龍(38歳・♂・虎)
 fa1234 月葉・Fuenfte(18歳・♀・蝙蝠)
 fa1448 梢・飛鈴(23歳・♀・猫)
 fa3678 片倉 神無(37歳・♂・鷹)
 fa3802 タブラ・ラサ(9歳・♂・狐)
 fa4371 雅楽川 陽向(15歳・♀・犬)
 fa4773 スラッジ(22歳・♂・蛇)
 fa5256 バッカス和木田(52歳・♂・蝙蝠)

●リプレイ本文

●CAST
 諸葛亮孔明‥‥梢・飛鈴(fa1448)
 劉備玄徳‥‥スラッジ(fa4773)
 関羽雲長‥‥烈飛龍(fa0225)
 張飛益徳‥‥雅楽川陽向(fa4371)
 黄忠漢升‥‥バッカス和木田(fa5256)
 曹操孟徳‥‥月葉・Fuenfte(fa1234)
 夏候惇元譲‥‥片倉神無(fa3678)
 諸葛均‥‥タブラ・ラサ(fa3802)


●竜は眠る
 私は諸葛、名は亮、字は孔明。
 片田舎の女学者である。
 巷では『伏竜』などとも呼ばれているらしいが、世に出ない竜に何の意味があろうや。
 そして私は世に出る気はない。
 よって、私は『無駄飯喰らい』の名を欲しいままに安眠を貪る訳だが――。

「頼もう、伏竜先生はおられるか」

 なにか、私の安眠を妨げるものがやってきたらしい。
 許せぬ、居留守でも使おうか。

●二人の英雄、尋ねる
 話を少し遡ろう。

「劉備! かの伏竜は私のものだ! 貴様等なぞに渡しはせ‥‥げぇっ関羽!?」
「久しいな孟徳殿。健勝そうで何よりだ」
 私の庵に向かう道中、曹孟徳様と劉玄徳様はお会いなされた。
 どうやら共に私の引き抜きに来たらしい。
 全く迷惑なことだ。
 それはそうと、曹操様が驚かれたのは劉備様に対してではなく、言葉のとおり、
「むう、久しいな、曹操殿、御健勝か?」
 隆々とした筋骨に美しい顎鬚を蓄えた『美髭公』、
 関羽雲長、その人である。
「‥‥べ、別にあの美脚が恋しいだなどと思ってはおらんぞ! 声まで変わってるからってそれが何だ!」
 何を言っておられるのか、この方は。
 人の外見がそう数年で変わるわけはない。
 関羽さ‥‥殿は昔からこのいでたちであるし、私も走って赤兎を追いかけた事など‥‥
 こほん、それはさておき、
「二哥って根性で髭を生やしたんだ。声もたくましくなって」
 いや、だからやめなさいって。
 はら、前回いらしていないお客様が引いてるじゃないの。
 関羽殿は昔からこうなの!
 史実にもあるでしょ、『美髭公』って。
「なに? 曹操、まだニ哥を狙っているの!?」
 鼻息荒く立ちふさがるのは劉備様達の義妹、張飛、字を益徳殿。
 サラシも露わに片袖をまくる元気一杯の女の子。
「ふん、劉備の元を離れぬ関羽になど興味はない。私の元を離れなければあのような逞しい脚になどさせぬものを――」
 曹操様、相変わらずのツンデレっぷりは世間にも知れ渡るところ。
 そして、張飛殿を眺め、残念そうに。
「貴様が男なら放ってはおかぬのに‥‥何故、そんなにちっちゃいのに貴様は女なのだ?」
 曹操様、今おかしなこと言った!!
「―――!!」
 必殺のみぞおちストレートを見舞おうとする張飛殿の蛇矛を、関羽殿の逞しい腕が押さえる。
「曹操殿、貴殿には世話になった。恩義も感じている。だが、私は兄者――劉備玄徳の臣だ。その話はもうなされるな」
「‥‥わかっておる」
 僅かな未練をしまい、曹操様。
「‥‥そういう訳だから貴殿も納得してはくれぬか。
 妹の未熟は詫びる。その殺気をしまえ、夏候惇」
 曹操様の右腕、夏候惇元譲はあっさりと殺気を収め、
「『ここで会ったがなんとやら』って思ったんだけどな、
 安心しな、戦う気のない奴にけしかけるほど飢えちゃいねえよ。
 俺は孟徳の付き添いだからな」
『あくまでも伏竜とやらに会いにきただけだ』と。
 全く迷惑な。
 いやいや、流石にここでやりあってくれれば面倒にはならないのに、とは思ってはいませんよ?

「大丈夫なのですか? 劉備殿」
 黄忠漢升、荊州の劉表様から劉備様の護衛をおおせつかった忠臣は不安な胸中を隠さず、劉備様に打ち明ける。
「大丈夫、彼らのはいつものことだから」
『だから心配なんだ』と、
 黄忠殿の顔にはそれがありありと浮かんでおりましたとか。

●じぇらしっく・ぱーく・諸葛均
「まずは猛将・呂布が使ってた方天画戟を持ってこいってよ」
 天下に名を馳せる劉備様と曹操様にあまりの態度をとる若者は、私の弟、諸葛均。
 均は私を訪ねてきた御二方に『こちらの望みの品を持ってきた者にのみ姿を見せる』との『私からの伝言』を伝えた。
 もちろん、私はそのようなことは言ってはいない。
 均は昔から、私が世に出ることを快く思っていないらしい。
 無理難題をふっかけて追い返そうという魂胆だ。

 実に素晴らしい弟だ。
 私の意図を何も言わずとも酌んでくれる。
 素晴らしいので、口出しをせずに弟に任せることにした。

●ウキウキ曹操
「何よ! せっかく鳳雛に会いに来てあげたっていうのに!!」
 いや、私伏竜。
 鳳雛は士元殿の方です。
 張飛殿、曹操様達にまで突っ込まれる始末。
「と、とにかく方天画戟ね、よっしゃ呂布から貰ってくる」
 止める皆の声も届かず、飛び出す張飛様。

「‥‥あー、方天画戟ね。文遠の奴に頼んでおくか」
 ですよねえ、夏候惇殿。
 処刑したの貴方達ですし。

「あいつの馬ならすぐだろうけれど‥‥どうするよ、孟徳」
 気だるげに曹操様に問いかける夏候惇殿。
 それもその筈。
「たかだか一介の学者の分際で門前で注文くらわすたぁ‥‥わざわざ付き合うこたあねえんじゃねえか?」
 もっともだ。
 こちらとてそうして欲しいんだし。
「‥‥孟徳?」
 だが、曹操様はなにやら期待に肩を震わせ、
「み、見たか? 惇! あやつが孔明の弟! 孔明はあれの兄らしいぞ?」
 言わずともわかります。
「惇! これは期待できるぞ!!」
 なにがでしょうか。
 なにかおかしな方に暴走しておられるようだ。
 夏候惇殿は呆れながら、
「ったくこの人材フェチが‥‥劉備から徐庶掻っ攫っただけじゃ足りねぇのかようちの大将は」

●苦労人、いち・夏候惇
「一騎当千、赤兎と並ぶ呂布の名槍、方天画戟だ。文句はあるまい」
 夏候惇殿の差し出す戟を驚きと共に見つめる均。
 全く詰めが甘い。
 曹操様ならば方天画戟を持ち出すことくらい造作もない。
 わざわざこのような山奥までいらしているのだ、それくらいの労は惜しまぬだろうに。
 面倒だが、私も動いておくか。均が粘っている間に。

「わ、わかった! 次の伝言だ。今度は矢を千本ばかり、大急ぎで用意しろってよ」
 だからそんなものもらって何をするのか。
 私、武人?

 本国にて、夏候惇殿の弟、夏候淵殿は不可解な主の手紙を受け取ることになる。
 『淵! 緊急事態だ! 至急矢を千本持って来い! 弓はいらん!』
 なんだか事情はわからないが、大切なことだというのは文面からわかったらしい。
 惇殿といい、この国の御仁は皆苦労されているようだ。

●そのに・関羽と隠れ天然・黄忠
 一方、こちらは劉備様。
 方天画戟を曹操様に譲ってもらおうとするも見事に断られてしょんぼり。
 だが、今度は負けぬと関羽、黄忠殿と千本の矢を用意していた。
 ――木を削って。

「本気で千本作る気なのですか? 劉備殿」
 一体自分は何をしているのかと、至極まっとうな疑問を持たれる黄忠殿。
「護衛に来てもらうだけではいざ知らず、このような事までさせてしまい、かたじけない」
 素直に詫びる劉備様。
 つまるところ監視役なのだが、純朴な劉備様は本当に護衛だと感謝しているご様子で。
「いえ、そうではなく――」
(矢千本。戦場で拾えば良い気がするが‥‥)
 そのとおりです。
 言っておやりなさい、黄忠殿。
(いや、実は主を見極める深い意図があるに違いない)
 はい?
(頼りない主君達と、ツッコミ所が激しい部下。
 彼らになにかを気づかせる為かもしれん)
 いや、そもそもまだお会いしてないんですけれど、私。
(はっ! 1本の矢は細く頼りなくとも、三本集まれば強くなる!
 天下を三つと分け、司法立法行政が三位一体で三種の神器となるのだな!)
 何その協力体制? 天下三分ってそういう意味じゃないんですけれど‥‥。
 駄目だ、この人もまっとうじゃないや。

「方天画戟もってきたよー!」
 そして空気の読めない娘帰還。
「呂布があんなに毛むくじゃらとは思わなかった」
 はあ?
 っていうか、会ったことあるでしょう、貴女。
「二哥の髭に負けないくらい立派だった」
「落ち着け、話を聞かせろ」
 言ってることのさっぱりわからない張飛殿を関羽殿が問いただす。
 話を聞いてみると、熊みたいな大男と戦ってそばに落ちていた方天画戟を持ってきたとの事。
 貴女、それは熊じゃないの?
 自信満々に差し出す『方天画戟』は‥‥、
 竹竿。
 おまえらええかげんにせえよ。

●困った面々〜後の蜀軍〜
「これで最後だ。呉にいる子瑜の兄貴からの紹介状をもらってきてくれってよ」
 結局、矢は劉備様達が一所懸命作っておられるも間に合わず、曹操様が用意されてしまいました。
 ‥‥この矢、お前がなんとかしなさいよ、均。
 そして最後に出した課題が謹の兄上からの文を貰って来い、と。
 迷惑この上ないな、兄上も。
 そろそろ音をあげてくれてもいいのに、御二方はお供を従え、呉へと向かうのだった。


 地雷:踏むと爆発して空の彼方へ。
 連弩:足元に張られたヒモを引っ掛けるとあちこちから矢が飛び出してくる。試作段階の上に鏃も付いてないので当たっても死にはしない。
 木像:妻の月英が作った像。道に立ちふさがり、問いかけに答えると通してくれるが、答えを間違うと殴りかかってくる。
 人形:私の姿を模した人形、ノコノコ近づくと落とし穴にはまる。
 饅頭:人の頭を模した食べ物。見た目に恐ろしく、食べると途轍もなくまずい。

「‥‥ふむ、こんなところだろうな」
 私は劉備様と曹操様を待ち受ける為の計略を用意していた。
 均の難題だけでは心許ないための配慮だ。
 なんと弟想いの姉だろう。
 だが、それらを配しようとしたところで、戻ってきた者達がいた。
「馬鹿な、早過ぎる!」
 まるでただまっすぐ往復してきただけのような。
 だが、あの二方が呉まで赴いて、そう簡単に目的を果たして戻ってこれるはずはない。
 一体どのような、
 この私も思いつかぬ奇策を?

 先に戻ってきたのは劉備様。
 その手には一頭のロバを引き。
「おお、子瑜の兄貴。昔からロバに似てたけど、ちょっと見ない間にすっかりロバになったな。
 ‥‥‥‥って、こりゃ本物のロバじゃねぇか!」
 額には『諸葛子瑜』の文字。
 聞いてみれば、呉を訪ね、孫権様に諸葛謹との面会を頼んだところ、連れてこられたとか。
 手紙が書けないようなので、御足労頂いたらしい。
 本物の阿呆かこの方々は‥‥。
 見れば関羽殿が頭を抱えてる。
 苦労するだろうに。

「さあ、劉備殿、これで条件は整えた!
 是非がとも孔明殿を起こして落とさねば!」
 黄忠殿もいつの間にかその気。
 ‥‥というか、『落とす』って?
「アレです。眠り姫は皇子様のキッスで目覚めるのが世の常。
 さぁ、劉備殿ブチュッと!
 お祝いの鉦を鳴らしますよ。ジャーンジャーン!」

「ちょ、待ちなさい!」

 あ、しまった。
 思わず出てきてしまいました。

「貴方が諸葛亮殿か。何度訪ねても眠っているから心配していた所だ。
 体に触りはないか?」
 こちらの身を気遣う劉備様。
 むぅ‥‥悪い方ではないようだ。
 ここまでしていただいた御仁にお話も聞かぬのは流石に気が咎めてきた。
 折角追い払ってくれようとしていた均には悪いが‥‥、
 話くらいは聞いてあげようか。

 ははは、均、どうしたの?
 そんなに心配しなくとも、私はもう平気だし。
 よく寝たから心配要らないよ。
 姉想いの弟を持って、本当に私は幸せ者だ。

●可愛いね、均ちゃん
「待たせたな、均殿。
 兄上からの手紙をしたためて‥‥‥‥均殿?」
 私の去った庵で均は寂しさに震える。
 可哀想に。
「孔明、孔明、孔明! どいつもこいつもみんな孔明の姉貴だ!」
「姉貴? 伏竜殿は女子であったか‥‥!」
 何故か愕然とする曹操様。
「なんで姉貴ばかり認めて、この俺を認めねぇんだ!?」 
 照れ隠しに叫ぶ均。
 そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに。
「‥‥つまり、今までのは全部てめえの狂言だったってえ訳か。
 覚悟は出来てるんだろうな、諸葛均さんよ」
 待ってくれ、均は悪くない。だって実際会いたくなかったんだし。
 そう庇ってやれる私はもういない。
 だが、
「よい、惇。天は劉備に孔明を与えたということだ。関羽の時といい、どこまでも憎らしい奴よ」
 均を許す曹操様、気のせいかあまり悔しそうに見えない。
「‥‥ときに、均よ」
 曹操様、お顔を赤らめ、咳払いを一つ。
「‥‥来い、私の下で働くが良い」
「‥‥え?」
 おやおや、均をお気に召されたようで。
 よかったね、均。
「‥‥べ、別に、あの孔明の弟なら才能はあるだろうと思っただけだ! 容姿が私好みとかそういうワケではないからな!」
 ああ、なるほど。そういうワケですか。
「‥‥ショタなら何でもいいのかよ」
 夏候惇殿は呆れながら呟くも、反対はしなかったとか。

●私が水で貴方は魚
「ロバにはお前が乗れ、益徳。お前の方がちっさくて軽いんだから」
 禁句を発する義兄の頭上に新技・蛇矛脳天撃!
 この兄妹は相変わらずのようで。

 私はというと、劉備様、黄忠殿の御二方と世間話に興じている。
 なかなか話せる御仁のようだ。
「孔明殿は饅頭にタレを漬ける派か?」
「タレというのは‥‥まさか孔明殿の饅頭にかかっていたあの赤いやつか? 劉備殿」
 なにか怖い話題も聞こえるが。

 これが大哥と孔明先生、水魚の交わりの始まりなのだったー!

 ちょ、張飛殿! 語り部、私!