Princess Report南北アメリカ
種類 |
ショート
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担当 |
津田茜
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
3万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
12/10〜12/14
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●本文
感謝祭が終われば、クリスマスはすぐそこに――
最も華やかに盛り上がるふたつの祝日に挟まれた約1ヶ月間は、誰もが皆、うきうきわくわく。
財布の口も自然と弛むこの時期は、店にとっても最大の掻きいれ時。
ショウウィンドウはクリスマスカラーに飾り付けられ、メーカー、ブランドが揃って新作、新モデルを発表し購買意欲を刺激する。
ちょっぴりセレブな高校生たちの日常を刺激的に描き、流行の発信源としてティーンエイジャーの間で注目のドラマ『Princess Report』でも、感謝祭のエピソードが終わり主人公とその仲良したちは来るべきクリスマスとニューイヤーに向けての準備を始めた。
恋人に贈るプレゼント。
遠くの知人、友達へのグリーティング・カード。
クリスマス・パーティのドレスに、アクセサリー、流行のメイク。――全米‥‥否、世界中の若者たちが憧れるとびきりホットで素敵にクールな流行の最先端。
理想と虚構を織り交ぜて‥‥
届けるのは、夢。そして、光り輝く青春へのエッセンス。
■□
高級ブティックで値札を気にせずお買い物。
普通の高校生にはまずありえないシチュエーションが成立してしまうのは、ドラマだからこそ。
セッティングするスタッフも出演する俳優たちも、苦笑して首をすくめる。
「やってらんないわよねぇ」
台本を読みながら、そんな感想を囁きあったり。
それでも楽しそうなのは、ショッピングの楽しみは現実のものだから。――お洒落で高級な最新の流行に囲まれるのは、それはそれで幸せだ。
「ロケは来週だから、手配よろしく♪」
場所と‥‥それから、人も‥ね。
気軽に投げられた注文に、セッティングマネージャはただ笑って肩をすくめた。
◆募集◆
ドラマの主人公と友人が出かけるショッピング街(Rodeo・Drive)で買い物をする客、店員。
●リプレイ本文
ロデオ・ドライブ(Rodeo Drive)――
1914年、ビバリーヒルズのファッション地区として創設されて以来、世界中のセレブを初め多くの人を魅了し続ける場所。
「あぁ、憧れのロデオドライブ!」
女の子なら1度は立つことを夢見る街の中心で、真紅(fa2153)はうっとりと濡れた瞳で賑やかな通りを見つめる。
高級店のショウウィンドウにその風合いは希薄だが、洗練された街並みにはクリスマスを思わせるオーナメントが飾られ、流れるBGMにもその色が漂う。――もちろん、ショップによっては、お買い上げ金額に応じた特典を付けてくれる店もちゃんとある。
「いつかはここで‥‥ブラックカードでお買い物‥‥」
そう、今日はお仕事なのだけれども。
きっといつかは――
●ステレオタイプでいいんだよ?
祖国の文化に誇りを持つのは良いコトだ。
ただ、行過ぎたナショナリズムは時と場所を選ばなければ、お互いに不愉快な思いをしなければいけないので注意したい。――特に海外で仕事をする以上、その辺りの匙加減はしっかり押さえておく必要がある。
例えば、ティーンエイジャーの視聴者をターゲットにした番組で、クリスマスに天下のロデオ・ドライブでジャパネスクなプレゼントを求める客というのは、少しばかり際物すぎやしないだろうか。
弥栄三十朗(fa1323)の自己演出に、撮影スタッフはなんとも気まずい顔をした。
羽織袴の普段着(?)に職人気質の店主――は、東洋人らしい演出として、それほど悪くないのだが。
高校生の身で高い買い物をする主人公たちに反発しているようなそぶりさえ態度の端々に滲ませるのはどうだろう。視聴者は主人公に感情移入していることが多いから、思わずカチンとくるかもしれない。
「こちらの品は日本の最高の職人が手掛けてもので、少々お高くなっておりますが‥‥品質に関しましては太鼓判を押させて頂きますが。‥‥やはり何といいましょうか、持つ者を選ぶと云いましょうか‥‥」
ぅわあ、サムライ?!
と、思いきや、日本人の客、又常連に対してはごく普通に丁寧に対応する。――別に日本人の全てが日本文化の真髄を究めているワケでもないのだけれど。
いや、それよりも。こんな性格の悪い(というか、むしろ卑屈な)日本人像を全米に流すのはどんなものかと‥‥。「まあ、カリカチュアされた日本人像に沿う必要はないと思うんだけどね」
ブランドイメージで飾られたショウウィンドウを覗き込みつつ、のんびりとショッピングを愉しむ買い物客や観光客にとおい視線を向けて三条院真尋(fa1081)は、苦笑を零した。
とは、言うものの‥‥
弥栄がいかに祖国の文化を声高に誇ってみても。ブランド物に群がる日本人が多いのも、悲しいかな事実。
特に日本で人気の高いブランドなどはこの店にしか置いていない限定物などもあって、客の7割が日本人だったりもする。――無性に日本語が恋しくなった時には、是非、足を運んでみて欲しい。
「ようこそ、こんにちは。本日は何をお探しですか?」
新作のスーツをきっちりと着こなし販売員のIDを首から下げたダグラス・ウォード(fa2487)に三条院は笑顔で会釈し、その隣で緊張を浮かべきょろきょろと落ち着かなげに店内を見回しているステラ・ディスティニー(fa2443)の肩を押した。
ふたりは同じツアーに参加した観光客。――旅にもショッピングにも物慣れた三条院が、初めての海外旅行でガイドブックの定番コースを訪れたいステラを案内してきたという設定で。
こざっぱりと金持ちの息子を意識する三条院に対し、ステラはというとやや野暮ったい田舎のおばさん‥‥「あら、もしかして場違いかしら?」な雰囲気を漂わせている。
「そうねぇ。あのバックを見せて欲しいのだけど‥‥ええ、あの左のね」
「はい。あちらは今年発表されたモノですら。まだ、日本には入荷されていない形になりますね」
買い物の基本は、インスピレーション。
新作でも、定番品でも、ピピピと胸のレーダーに引っかかるものを選びたい。――もちろん、予算と値段が折り合うかどうかも重要なのだけれども。
「××ちゃんにバックを頼まれていたのだけど‥‥確か、A4サイズの書類が入る形が欲しいって言われたのよねぇ」 うーん、ちょっと小さいかしら。
手元に運ばれたバックを前に思案げに気持ち首をかしげて頬に手を当てた三条院に、ウォードも穏やかな笑みを浮かべたまま言葉を向ける。
「よろしければ、カタログをお持ち致しましょうか?」
「ええ、お願い」
慣れた客が相手だと、販売員も仕事が楽だ。
そのふたりの後ろで、きょろきょろ、もじもじ。――本当は革製品より、あちらのプレタボルテが気になるのだけれど。
クリスマス・シーズンという事もあり、ネクタイやハンカチ、スカーフといった手頃な小物も充実している。
アレもコレも気になって、何から見ていいのやら‥‥
そろそろ居心地の悪くなる頃合をはかり、ウォード同様、IDを下げた真紅扮する販売員がタイミングよく言葉をかけた。
この日のために、数日前からこの店で研修を受けたのだ。ベテランの販売員について声のかけ方、品物の奨め方からセールストークまで。‥‥もちろん、たった数日で習得できるものではないが、こういうモノだというニュアンスは出せると思う。
「え、ええ。あの、実は‥‥」
素敵なモノが多すぎて。
どうやって選べばいいのか。何が自分に似合うのかが、分からなくて。――色の合わせ方や、選び方など。この先、公私にわたって役に立つ秘訣もきっと多いはず。
●お嬢様のお買い物
ぶらぶらと通りを歩いてお気に入りを探すのも楽しいが、予め店に予約を入れてVIPルームで優雅に選ぶのもまたお買い物。
自分だけのオリジナル・アレンジを発注したり、例えばパーティや公の席で知り合いとドレスやアクセサリーがバッティングしないようスケジュールに併せたアドバイスを受ける事ができるのが大きな魅力。
父親へのプレゼントを選ぶため、ミハイル・チーグルスキ(fa1819)扮する執事を伴って店を訪れたお嬢様‥‥滝川・水那(fa0836)は、通された部屋のさりげない豪華さに目を丸くした。
お嬢様には当たり前でも、水那やチーグルスキには驚きの空間なのだから仕方がない。
水那が自然に演技できるようエスコートすると胸を張ったチーグルスキだったが、たまにはこういうこともある。――監督のダメ出しに、顔を見合わせて苦笑したふたりであった。
「お嬢様‥‥何もこの時期にこんなに買わなくても。旦那様に言えば自宅にいながら品物が手にはいりますよ」
「でも、せっかくのクリスマスだし‥‥」
街に出て、自分の足で探すのも一興だ。
と、言いながら高級車で乗り付けるのは、自分の足で探したうちに入るのだろうか。――演じている者がツッコミを入れたくなるような科白もお約束。
普段は明るく活発なお嬢様ではあるが、水那だって年頃の女の子。――綺麗な服や、アクセサリーに囲まれれば気持ちが弾む。
プレゼント選びは早々に、あの服が見たい、この靴が欲しい、と。次々に品物を積み上げて、チーグルスキを困らせる演技は完璧に決まった。
●オチだってあるんだよ。
高級品に囲まれるのは、もちろん気分が良い。
自分もセレブの仲間入りをしたような気になれるから?
「いかがですか?」
真紅の言葉に、姿見の中でステラはすっかり変わってしまった自分に感嘆を落とした。
「なんだか、私じゃないみたい」
たとえば、スカーフの使い方、アクセサリーひとつで驚くほど印象が変わる。野暮ったいおばさんから、ビバリーヒルズに暮らすセレブの仲間入りをした気分だ。
「‥‥自分の見せ方さえ知っていれば、ブランドはあまり関係ないんですよね。まぁ、質の良い物が多いのは事実ですけど」
そう言って、真紅はぺろりと悪戯っぽく舌を出す。
「ロゴ入りのショッピングバックを持って歩くのも、ロデオの楽しみのひとつではあるがな」
お洒落な街を行き交う人を眺めて、ウォードも小さく苦笑を零した。
他と比べて治安は良い方だと言っても、ここは合衆国。――置き引きの発生率はそれなりに高いし、ブランドショップで買い物のできる身分だと誤解されれば、当然、狙われる確立も高くなる。
それ以前に、やはり高校生という身分で分不相応に高級なものを身につけるのはいかがなものか‥‥。
弥栄ほど露骨にではないが、不自然さを感じてしまう。
ブルーバードやビバリー・ドライブに足を伸ばせば、その年齢でしか着こなせないカジュアルな服や小物を扱う店がいくつもあるのに。
たまには夢を見るのもいいけれど‥‥。
札びら切って世間を渡る『Princess Report』の主人公たちだって、毎回、世の中にはお金では買えないモノが価値のあるモノである事も多いのだと、気がつくのだから。