winter sceneryアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 うのじ
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 0.3万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 02/24〜02/28

●本文

 古びた倉庫街から切り出されたかのような舞台。
 その上に、望月という青年が一人、立っていた。
 誰も人が入っていない観客席を前にして、ただ、なんとなく一礼をする。
「これからもよろしく」
 そして、顔を上げると、袖で作業しているスタッフたちのほうに走っていった。

「準備は大丈夫?」
 望月が尋ねると、問題ないとの返事が帰ってきた。
「今回は、『冬の風景』ってことで、冬スポーツとか、国際スポーツ大会とか、雪合戦でもいいし、ああ、もちろんスポーツ関係ない他のでもいいんだけど。まぁ、そういう予定だから、雪を降らせる装置、手配したんだけど、ある?」
 また、問題ないとの返事が帰ってくる。
 スタッフも慣れたもので、段取りは問題ないようだった。
「次回はどうしましょう? 『星』ですけど、さすがにメテオはできないですが」
 と、これは、あるスタッフの冗談。
「まぁ、それは後で考えよう。次回よりも、まだトラック来てないけど、野外ロケの練習を近々するから、そっちのほうを考えておいて」
 冗談をまともに返され、苦笑するスタッフ。
 望月のほうは再度状況を確認すると、大きく息を吸った。
「‥‥さて‥準備OKみたいだね。じゃあ、これより、『Battle the Rock』2ndステージ、スタート!」

 画面の真ん中にあるギターにむかって左右の上から二振りの剣が降ってくる。
 交差する剣の真ん中にギター、そこに「魂を響かせろ! Battle the Rock」の文字が踊る。
 続いて「the sound of winter scenery」と今回の主題が入った。
 アーティストの新たなるバトルが、始まった。

●今回の参加者

 fa0336 旺天(21歳・♂・鴉)
 fa1362 緋桜 美影(25歳・♀・竜)
 fa1405 滝月・玲(22歳・♂・竜)
 fa1555 シード・エルミナール(17歳・♂・蝙蝠)
 fa2492 アマラ・クラフト(16歳・♀・蝙蝠)
 fa2837 明石 丹(26歳・♂・狼)
 fa2870 UN(36歳・♂・竜)
 fa2993 冬織(22歳・♀・狼)

●リプレイ本文

●オープニング
 倉庫街の一角から切り出された風景。
 そこにはステージがあり、新たに作られたシンボルが、薄い明かりに照らされて、鈍く光っていた。
 ステージを照らす明かりが、光りを増す。
 今まで静かだった客席に人がなだれ込む。
 カメラが切り出した映像を背景に、現れる一本のギター。
 そこにむかって左右の上から二振りの剣が降ってくる。
 「魂を響かせろ! Battle the Rock」の文字が踊り、「the sound of winter scenery」と書かれた文字が続く。
 開かれる倉庫。
 めまぐるしく動き回る照明。
 響きわたる歓声。
 番組が始まる。

 最初にステージに登場した二人組の男は、今までと変わらない様子だ。
 ロッカー風の衣装に身を包んだ二人が、マイクをもつ。
「‥‥‥コンクリートジャングルの中で始まるアーティストによる新たなるミュージックバトル」
「今回のテーマは、『冬の風景』‥‥。寒い冬を熱くする歌が響かせるのはこの4組」
 二人のお決まりの台詞が終わると、画面が切り替わった

 まず画面に映し出されたのは、旺天(fa0336)。
「叩いて、歌って、また叩く。限界に挑戦し続ける爆走ドラマー、旺天!」
 紹介をうけると、今日もがんばるさーと、軽く手をあげるテン。
 ステージに向けてなのか、いつもより、すこし、激しさがない。

 次に映されたのは、三人組。
「ロックと和の異色の融合。しんしんと雪が降りつもる日本の風景を、ロックで描写するのは、彩−Psy−だ!」
 画面には、純白の和洋折衷の衣装に身を包んだ冬織(fa2993)、白と赤のきわどい衣装のアマラ・クラフト(fa2492)と、やや黒めの着崩した和服のシード・エルミナール(fa1555)と、和を意識した服装の三人が並んでいた。
 きわどい衣装のアマラをカメラが下から上へ流れるように捉えると、慌てて、シードの後ろにかくれるアマラ。
 照れるアマラの前にでたシードは笑いながら、カメラに向かって指を弾く。
 最後に、弾かれたカメラに向かってとおるが目を閉じ手を合わせた。

「ZERO、再び! 美影と玲のコンビが帰ってきた。零から一歩、二歩と進み出す彼らの新たなるステージ!」
 コールされたのは、白でコーディネイトされた緋桜 美影(fa1362)と滝月・玲(fa1405)の二人。
 まず、画面に映ったレイが、手にしたエレキギターをギャイーンと、軽く弾いてみせる。
 続いて映った美影が、カメラをおもいっきり睨み付けた。
 そして、二人して、指を二本たてて『V』のサインをした。
 サインの意味は、2回目。
 今回の動きは、初回と同じで、2回目なのだった。

 UN(fa2870)と明石 丹(fa2837)が画面に映る。
 すこし着崩した黒いスーツの二人は、画面に、軽く頭を下げた。
 その向こうにあるのは、観客だけではなく、新たなるステージと、それに携わったスタッフだ。
 敬意を示し、全力で楽しむことの決意だった。
「Un−titlE! 名前のないユニット。名前という枠に囚われず、全てに挑戦する二人が、新たなるテーマに挑戦する!」

 全ての紹介が終わると、カメラが最後に、大きくぶれるように動いて、司会の二人を映す。
「それでは、『Battle the Rock』。スタート!」


●旺天
「旺天。『Silver Snow Stage』」
 コールされ、登場するテンは最初からトップギアだった。
 中央に配置されたドラムセット。
 左右にはギターとベースが控えているが、メインとなるのはドラムだ。
 中央に座するテンは、ダダダダダダとドラムの鳴り響かせ、勢いが乗ったところでクラッシュを鳴す。
 それに合わせて、曲がスタートする。

限界 全解放 hurry up
爆走 滑走路 最速で跳びだせ
誰よりも遠く!

超絶的 triple axel
Let’s step and dance もっと強く輝けるさ
何よりも ほら!

白銀の世界で don’t stop,don’t back
進む以外ないんだ dont’ back

 そのままのペースで進んでいた曲が不意に音が止まる。
 一瞬の間の後、一気にさらにテンションを上げたドラムが鳴り響いた。

最高潮の会場で何を迷ってる
単純明快目の前の道は一つだろ
今更尻込みしてみたってもうどうしようもないさ
Expectation of public men お前に掛かってる

 その後の間奏から続く部分も駆け抜けるように走っていくテンの歌とビート。
 最後までハイテンションでつっぱしったテンは、Yeah! のかけ声と共に、スティックを観客席へ投げ込む。
 落ちてくるスティックにも歓声があがった。
 スティックが落ちきったとき、舞台が歓声が包まれた。


●彩−Psy−
 控え室は、どこか安心するような、少し甘酸っぱい香りに包まれていた。
 とおるが煎れたお茶の香りだ。
 梅の香りがするそのお茶を軽くすするとおる。
 落ち着いた雰囲気のとおるとは対照的に、目を閉じてはいるモノのどこかそわそわしているのはアマラだった。
「どうした?」
 シードが声をかける。
「‥‥‥いや、少し嬉しくて緊張していた。これから舞台にでる私は一体何者なのだろう?」
「何者って‥‥‥アマラはアマラだろう? ボーカル兼ギターのアマラだ」
「ボーカル兼ギター‥‥ありがとう、シードさん」
 微笑むアマラ。
「‥‥さて、皆にも、この茶、振る舞うつもりだったが、出番が来たようじゃな。茶は終わった後にしようかの。‥‥さて、参ろう…二人共よしなにのう」
 飲んだ湯飲みをテーブルの上に置きながらとおるが言う。
「ああ、そうだな。まぁ、気楽に行こうぜ。俺がきっちり叩いてやるから、安心して歌ってくれ」
 シードも立ち上がりながら言うと、見計らったかのようにタイミングで扉が叩かれた。
「‥‥今、叩いたのは、俺じゃないぜ?」
 シードの冗談に、とおるとアマラが苦笑する。
 扉を開けるとスタッフが待っていた。
 出番が来たようだ。

「彩−Psy−。『天華−椿舞い−』」
 ステージに、コールが鳴り響く。
「さぁ、楽しもうぜ」
 小さくシードはそう言うと、ドラムを軽く叩きリズムを整える。
 ギターが入り、前奏が始まる。
 とおるにスポットがあたると、今まで小さかったドラムの音が消え、ギターだけになった。
 そこへ、トオルのソロの歌声が重なる。

万華鏡の白い花弁 天空の彼方からはらりはらり

 ゆっくりと舞い落ちる雪と同じようにスローテンポで始まった歌が、瞬間スピードを上げ、ギター、ドラムともに、鳴り響き始める。

急ぎ足の人波に 冬女神からの贈り物
哀しみも憂いも怒りも 戸惑いも喜びも愛しさも
全てを包み込みながら 世界を白へと染めていく

 白かった舞台に、朱がまざり、トオルだけでなくアマラの歌声も混ざり合いながら、クライマックスに向かっていく。

白き大地に居並ぶは 紅き春の名持つ淑女
天空に手を揚げて 華麗に踊り
確かな鼓動 羽ばたく時を待ちわびている

舞い踊れ 白き花狂おしく
舞い踊れ 人の子ら艶やかに
吐息に花が溶ける頃 彩に色なす季節が廻り来る

たとえ短き命だとしても
踊り明かせば 後は大地に還るだけ
再び咲き誇るその時まで

 最後にとおるが持つ椿が客席へ投げ込まれる
 ひらひらと舞落ちる椿のように、ゆっくりと歌声の余韻が残っていく。
 舞台は、雪が降っているにも関わらず暖かな空気に満たされ、その雰囲気に客は酔い、歓声を上げ続けた。


●ZERO
 普段以上に、集中している美影。
 どれほど集中しているのかと言えば、テーブルの上に置いておいたジュースの缶を手に取り、始めてその中身が空になっていることに気がついたほどだ。
「‥だいじょうぶ?」
 レイが心配そうに尋ねた。
「ああ、大丈夫。あんまり炭酸を飲み過ぎるとステージで大変だからね、乾きを潤す程度がちょうどいいわけよ。歌いながらゲップがでたら洒落にならないでしょ?」
 にししと笑う美影に、違うと首をふるレイ。
「そうじゃなくて、美影さん、気合い、入りすぎてない?」
「え? だってそりゃ、今日は、玲ちんが作詞作曲してくれた曲で参加するわけだし、気合い入れていかないとね」
「いや、そんな風に言われると、こっちが緊張しちゃうな」
 今度はレイが苦笑した。
「でも、俺もやる気は満々なわけで、じゃあ、がんばって来ますか」
「おー」

「ZERO。『Snow Attack』」
 白い舞台におり立った、二人は、静かにそれぞれの位置についた。
 そして、静かにギターが鳴り、静かに歌声が響きわたる。

ボードと想いを背負い歩き出す
この先にある未来をイメージして
もし生れ変ったら そんな言葉で折れかけた心も
白い吐息と一緒に消えていく

 バラード調と思われた歌が、いきなり曲調を速め、美影の歌声に、所々、レイの歌声が加わる。
 一人ではなく二人であることの励ましのように、重なりあう、二人の歌声。
 フェンスがなくなり、客席にやや飛び出した舞台を 美影は舞台を狭しと動き回り、客に手拍子をもとめる。
 その場にいる全ての人が一人ではないことの証明のように、重なり合う、会場の手拍子。

夢があるなら 叶える力を手に入れろ
リスクのない成功なんてないんだから
プライドを捨ててごらん 君は1人じゃないんだ
流れゆく時間は 戻る事はないけれど

想いはいつしか勇気に変わり 雪混じりの風を切り裂き進む
雪の輝きが僕を空へと誘う 君への想いと一緒に

パイプを抜ければ君が待ってる 愛してるの言葉伝えるよ

 サビが終わると最初のバラード調に戻り、静かに終わる。
 最後の一音が聞こえなくなるまで待った観客の歓声に包まれて、ZEROの二人がハイタッチをする。
 その姿に、歓声がまた大きくなった。


●Un−titlE
「一ヶ月ぶりぐらいか? 一緒に仕事するの」
「半月ぶりぐらいでしょう」
 控え室でのあんとマコト。
 同じ事務所に所属している二人は、のんびりと自分たちの出番が来るまで待っていた。
 そして、自分たちの出番だとコールされる。
「出番みたいですね。みんなに応援してるって言っちゃったから、勝ってこなきゃだめだよね」
 苦笑するマコト。
「だな。全力でいくか」
「うん、頑張るよ。そして、勿論勝ちにいく」

「Un−titlE。『My only』」
 最初はマコトの独白のような歌詞から始まった。

冬はよく試練のように言われるね。
確かに裸の木々は寂しいし冷たい空気は時に痛い程‥‥。
でも辛いからこそ判るものがあるかもしれない。
苦しいけれど、それだけじゃない事に気付けるかもしれない。
恋や夢、何かが始まる時逃げてばかりはいられない。
自分に嘘はつけない。スタートを怖がらないで。大丈夫輝ける。
頑張る人も、これからの人も、皆への励ましになりますように
そんな気持ちを込めて。

 そして、ゆったりとしたスローペースの曲が流れる。
 マコトとあんの二人がハモリをきかせながら切々と歌い上げる。

遠く君の声が聞こえた気がして振り返る
サラサラと耳元を撫でる雪のいたずら
まさか届きやしないさ 諦めたふりが上手になっていく

 静かな歌が続くが、スローだった曲が、一言を境に加速しはじめ、あんとマコト、共に前をしっかり見据え、歌い出す。
 マコトが主旋律を歌い、背中を押すように少し遅れてあんの歌が輪唱する。

いつだって僕を呼ぶ

空っぽの僕の中、何とか隠したガラクタが燻る
違う本当は何より眩しくて目を覆ったけど
かじかんだ指の隙間からだってキラキラしてる

いつだって僕は手をのばす
冷たい指先が熱いくらいの僕の気持ちに

転んだっていい不様でもいい何もかも始まりの中にある
夢のまま憧れて Ah! 白銀のステージへ!

 ザン、と二人の歌声と伴奏、ともに、切れるように歌いあげた。
 舞台には余韻は残ってはいない、歌も曲も流れていない。
 しかし、鳴り止まなかった音があった、歓声という音が。

●エンディング
 6組すべての演奏がおわり、後は勝敗を決するだけになると。再度登場した司会者の二人組。
 彼らが、観客に投票を促す。
「それでは、『judge』。スタート!」
 観客達の手に握られているのは、10枚のコイン。
 観客達は、そのコインを自らが思うように分配し、舞台の各ミュージシャンのハコに向かって投げ入れる。
 コインの玉入れの要領なのは変わっていない。
 しかし、投票が終了した時から、以前とは違っていた。
 倉庫の中にあるような無骨なエレベーターが降りてくる。
 そこに乗っているのが、勝者だった。

 エレベーターから降りてきたのは、テン。
 歓声をうけながら、席に着くテン。
 しかし、手元には、先ほど投げてしまったため、スティックがなかった。
 2秒ほど迷った末、手で叩こうかと決意をした時、とっさの機転を利かせたスタッフが観客席からスティックを投げ込んだ。
 投げ込まれたスティックを空中で器用に受け止めたテンは、そのまま、ドラムを連打した。
 それに合わせて大きくなる歓声。
 クラッシュが鳴り響き、曲が始まった。
 『旺天』の『Silver Snow Stage』に合わせて、エンディングテロップが流れる。

世界中から集まったライバル達を
片っ端から蹴散らして
震えている場合じゃないぜ 今までのことを思い出せ
さぁ次はお前の番だ やれるだけやってみようぜ Yeah!

最高潮の会場で何を迷ってる
単純明快目の前の道は一つだろ
今更尻込みしてみたってもうどうしようもないさ
Expectation of public men お前に掛かってる

Ah Yeah Yeah

 歌が終わったあと、もう一度投げ込まれたスティックが観客席に届く頃、エンディングが終了した。