百八人の刺客アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
うのじ
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
難しい
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報酬 |
1.3万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
02/27〜03/03
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●本文
「おはようございます!」
朝っぱらからハイテンションの挨拶をした彼の名は佐々木真之介。
本当は別の名前だったのだが、このたび時代劇の主役への大抜擢を受け、芸名を時代劇にあうように変更したのだ。
「ああ、おはよう」
スタッフの一人が答える。
「家光の控え室はあっちだよ」
「はい、ありがとうございます」
気合いが入りっぱなしの佐々木。
彼の手には『百八人の刺客』という台本が握られていた。
時は、元和6年。
江戸城は荒れていた。
次期将軍と言われる徳川家光を快く思わない人物がいた。
家光は、祖父である家康の寵愛を受けており、このまま行けば、確実に将軍の座は家光になってしまう。
それを望まない人物、それは、皮肉にも、父である、徳川秀忠であった。
秀忠の思いは、自らの子供ではない可能性がある家光ではなく、家光の弟である国松に将軍の座を継がせたい、と言うものだ。
その思いは日増しに強くなっていき、ある暴挙にでてしまった。
徳川家光の首に賞金をつけたのである。
その額にして、一万両。
賞金の話は闇の社会に一気に広まり、そのため、多くの刺客が、家光の首を目指し、江戸城に侵入するのであった。
この物語は、それら刺客たちの話である。
●リプレイ本文
●ドタバタな衣装合わせ
「えー、こんな派手な衣装着るんですか?」
横田新子(fa0402)が非難の声をあげた。
「‥‥わたくし、着物のままでもかまいませんよ?」
富垣 美恵利(fa1338)の、非難はしないものの、どこか乗り気ではないような発言。
彼女たちが観ているのは、クノイチ役に用意された衣装だった。
黒エナメルの丈の短いジャケット、超ミニスカート、そして網タイツ。
背中に背負うタイプのやや細身の刀。
「この素材って、江戸時代からあったのでしょうか?」
「え? ないよ。当たり前でしょ」
あっけらかんに答えるスタッフに、じゃあ、なぜこの忍びの服に使われているのか聞くのが躊躇われた。
そうこうしている間に、素直に着替えをしていた咲夜(fa2997)が衣装に着替えて帰ってくる。
「じゃーん。どう?」
とうとかけ声をかけたくなるしかたで登場したサクヤ。
サクヤ自身のイメージも手伝ってか、爽やかさすら感じられるその出で立ちに、美恵利と新子から拍手が送られる。
「お似合いですし、可愛いですよ」
「‥‥これなら、まぁ、着てみてもいいかな」
サクヤの姿に騙される二人。
「サクヤさんは、この紙を胸元にしまっておいて下さいね」
スタッフから一枚の紙が、サクヤに渡される。
紙を開くと、そこには男女とサクヤの三人の絵が描いてあった。
「これは?」
「今回の咲夜の育ての親の絵ということで」
「なるほどー。大事にしまっておきますね」
サクヤが忍び姿で動きと台詞の確認をしていると、美恵利と新子が着替えから帰ってくる。
「うーん‥‥思ったよりは動き難くないですけれど‥‥」
「最初は、着たとき小さすぎて、どうなるかと思いましたけどね」
「それは新子さんが、私の衣装と間違えて‥‥」
ぶうぅん。
鎖が巻かれた鉄甲を一振りする新子。
何かを感じ取った美恵利は台詞を言い直した。
「‥‥そうですね。衣装を観たときはどうなるかと思いました」
そこに着替えを終えた宵谷 香澄(fa0913)が入ってくる。
「どうした? 元気がいいみたいだけど何かあったのか? ‥‥忍び組は目の保養だな」
すこし嬉しそうな香澄の衣装は、男物の着流しに腰に差した一本の刀。
「え? なになに? 何かあったの?」
部屋の向こうから、家光役の佐々木真之介の声がする。
「目の保養だ。でも、ここは女性用の部屋だからな、男は入ってくるなよ」
香澄の非情な言葉に、佐々木が上げた不満の声は、先ほどの新子の非難にそっくりだった。
●バリバリな大立ち回り
壁から手がでていた。
そこからひびが入り、壁全体が割れる。
中から大きな槍を手にした人が転がりこんで来る。
桜・楼心(fa0333)が扮する刺客だ。
彼の立てた音により、兵が集まってくる。
何者かと槍を突きつけながら尋ねる声をまったく無視し、声を上げる楼。
「家光はどこだ! 貴様ら雑魚に用は無い! 家光を出せぃ!」
「己、不届き者め。斬れぃ、斬り捨てぃ」
その言葉を合図に、一斉に刀が抜かれ、大立ち回りが始まる。
楼の大きく振り回す槍にはじき飛ばされる者たち。
その横を二つの影が走った。
一人は、西洋の暗殺者であるアサシンのジーン(fa1137)だ。
ジーンはそのまま塀の屋根に登り、駆け抜けていく。
もう一人は男装をしている香澄。
「雑魚に構う暇など‥‥無いっ!」
目の前の兵を斬り捨てながら進んでいく香澄。
兵たちが、彼ら二人を追う暇がないほど、暴れ狂う楼。
近寄れずにいる兵たちは、弓を持ちだし、小さい傷をうけながらも、敵をなぎ倒していく楼に向かって、矢を放った。
「かーーーーーーっと! OKです」
さすがに本当に矢を放つわけではない。
ここで一旦カットが切られた。
「さすがに実戦とは違うな。少しやりにくい」
物騒な事を言い出す楼に少しびびりながらも、スタッフが言う。
「楼さん、衣装直しお願いします。矢が6本ほど刺さりますので」
「本当に刺さらないで済むのは悪くないけどな」
苦笑しながらも、素直に矢を身体につけていく。
「実戦と言えば、瓦屋根、あまり動きにくくないんだな」
先ほど、その上を走ったジーンが、言った台詞にスタッフが答えた。
「本当はどうかはわからないですけど、これは作り物ですからね。割れる心配もなく、気楽にアクションができますから、安心してください。」
「‥‥なるほど」
納得をし、動きの確認にもどっていくジーン。
「つぎは『斬られながらも善戦し、柳生の剣士に遭遇する刺客』のシーン行きます。準備大丈夫ですか?」
「ああ、血糊のセットもおわったし、私は大丈夫だ」
香澄が答えると、その他のスタッフからもOKの答えが返ってきた。
「じゃあ、スタンバイ、お願いしまーす」
しばらくして、カチンコが鳴らされる。
撮影はまだ始まったばかりだ。
●ハラハラな暗殺現場
「危ないっ!」
稲荷 華歌(fa2759)は、そう叫びながら、家光役の佐々木を思い切り押しのけた。
場面はちょうど、忍び装束の美恵利が放った吹き矢に向かって、身を投げだし、家光を護る場面。
「くっ」
計画が失敗した美恵利は屋根裏から飛び降り、家光に相対し、刀を抜く。
「家‥‥光さ、、、ま」
矢に塗られた毒のせいだろうか、傷は小さいものの、十分致命傷になったようで、崩れ落ちる。
崩れ落ちるハナカを横目に、家光に斬りかかろうとする美恵利。
しかし、倒れているハナカの腕が美恵利の足を掴む。
美恵利は足を掴んでいる腕をふりほどき、家光のほうに向き直るが、時すでに遅し。
体勢を整えた家光が美恵利の刀を叩き落とす。
負けを悟り、悔しそうな顔をした美恵利は胸元から竹の筒を取り出す。
それを観たハナカは、なんとか身体を起こし、美恵利に抱きつくようにして、動きを妨害した。
「家光様、どうか‥‥‥」
そして目の前で起きる爆発。
もうもうと煙が立ちこめる中、シーンがカットされた。
●百八人の刺客
徳川家光にかけられた賞金、一万両。
その首を狙いに、多くの闇がうごめいていた。
ある夜、いつも通りの警備の中、何もない壁から一本の手が付きでてくる。
中からでてきたのは、白い頭巾に大きく太い槍を手にした男。
家光の首を狙いに来たことを堂々と宣言し、手にした槍で群がる兵らを斬り捨て、吹き飛ばしていく。
男に向かって放たれる矢。
そのいくつかが命中し、動きが鈍ったところに、突き刺さる幾本もの槍。
それでも、一振り、二振りと大槍を振り回すが、さらに射られた弓によって男はついに動きを止め、地面に倒れた。
そのころ、屋根の上では別の戦いが進行していた。
西洋風のアサシンと日本のニンジャの戦いである。
片や直刀、片や曲刀と、違いはあれど、お互いに装備した二本の剣。
それぞれがお互いの斬撃を弾きあい、急所を狙った一撃を軽やかに避けあう。
ニンジャ投げた分銅を剣で受け止めたアサシンは、そのまま、短剣をニンジャの方へ投げ、相手の懐に飛び込む。
懐まで潜り、勝負あったかに思えたとき、ニンジャの蹴りが飛び、アサシンが大きな動作で後ろに回転しながら避けた。
刀が仕込まれていた蹴りを避けきれなかったのか、アサシンから一筋の血が流れる。
互いの腕が互角だとわかったとき、勝負がついた。
なんの小細工もなしで、互いに急所を狙いにいったのだ。
結果は、互角の腕、ゆえに、相打ちだった。
アサシンとニンジャは一言二言言葉を交わすと、ともに、闇に消える。
残ったのは、屋根瓦に残る、おびただしい血の後だった。
騒ぎに乗じて乗り込んで来たのは、アサシンだけではない。
一人の剣客も、共に乗り込み、家光を目指していた。
戦い、血にまみれた剣客は、一人の侍を目の前にしていた。
相手は家光ではないが、すでに自らの命が無いことを悟っていた剣客にとって、相手に不足はなかった。
「柳生殿か‥‥貴方に斬られるなら剣客として本望。‥‥いざ参るっ!」
交錯する二人。
くっと膝を落とす侍。
しかし、そのすぐ後、どおう、と倒れたのは剣客のほうだった。
「こんなところで忍びに会うなんて」
自らの不幸を呪ったのは、少女のようなニンジャだった。
目の前にいるのもニンジャ。
しかし、違いすぎた。
違うのは年齢、すなわち、技の熟練度が違いだ。
「‥‥それでも、我が主君、幸村の無念を今ここで果たすため、ここで墜つわけにはいかぬ」
背中の刀を抜き、構えた少女の姿がぶれ、二重に見える。
「分身?! ‥‥忍法など使わなくとも、お前は倒せるわ。‥‥喰らいなさい。忍法、鋼鉄粉砕の術! せいや、はっ!」
相手は、分身にまどわされず、分身本体どちらにも、鉄の拳を放ってくる。
少女は、受け止めきれず、鉄の拳を喰らう。
一撃一撃ごとに、ごきり、と言う嫌な音を立て、ついに吹き飛ばされる少女。
襖を、2枚、3枚と割りながら吹き飛ばされ、少女の口からは血が漏れ出す。
「‥‥ご免」
その血が、胸元にしまってあった紙に染みだし、全てを赤く染めていった。
鉄の拳のニンジャは、敵が息絶えるのと見届け、振り向くと、抜き身の刀を持った、一人の剣士。
「何事だ?」
「はっ。実は‥‥」
事態を説明するニンジャに頷く剣士。
「そうか、ごくろう。下がってよいぞ」
そう言われ、立ち去ろうとするニンジャの背に剣士の刀が突き刺さった。
「‥‥なぜ‥」
「すでにお前が秀忠から差し向けられた間者ということはわかっておるわ」
その台詞に悔しそうな顔をするニンジャ。
しかし、その傷はすでに致命傷であり、その場に倒れるしかなかった。
「ふむ、今宵は少々騒がしいな」
家光が、横にいる側室に言う。
「‥‥‥家光様」
「そう、心配いたすな。問題あるまい、すぐに静かになる」
「‥‥家光さま、お隠ししておりましたが‥‥この騒動は単なる暗殺ではございませぬ、私‥‥父」
「皆まで申すな、存じておる。お主がわしを殺したいなら好きなときに殺すがよい」
「そんな‥‥‥っ危ないっ!」
側室が家光を押しのけ、代わりに飛んできた吹き矢の犠牲になり、倒れる。
屋根裏から吹き矢を放ったニンジャが降りてくる。
刀を抜き斬りかかろうとするも、倒れている側室に邪魔され、ついには、家光に刀を叩き落とされたニンジャは、負けを悟り、その場で爆死した。
その夜、襲い掛かってきた刺客は、7人刺客。
そのうち死体が残っている者を確認していると、最初の大きな槍の男が立ち上がり、槍を振りかぶる。
執念でそこまで動くが、そのままの姿で動きを止め、横に倒れた。
そして、激動の夜が明けた。
朝日を浴びる家光。
大きく背伸びをし、庭の松を観ながら言う。
「今日も平和よのぉ、爺」
「は、さようでございますな」
この台詞を最後に、画面はエンディングに切り替わった。