野外ライブ演習アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 うのじ
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 1.1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 03/01〜03/05

●本文

 森の中にある不自然な空間がそこにあった。
 木々の間をくりぬかれた大きな公園。
 行政主導による、いわゆるハコ物と呼ばれる物の一つだ。
 作っては見たものの、採算があわず、運営を民間に丸投げしてしまっている公園。
 その公園には、小さめの野外ステージが備え付けてあった。

「と、いうわけで、野外ステージの練習はここです」
 普段は、音楽番組を担当している望月という青年は、高らかに宣言した。
「‥‥ここ、ですか?」
「はい、ここです。練習内容ですが、野外ステージには紙で出来たアーティスト、観客席には紙で出来た観客をセットして、暴徒から、野外ステージを護ってもらいます!」
「‥‥あの、撮影とかの練習じゃ?」
「いや、撮影とかは大丈夫だから」
「‥‥でも、偽のライブじゃ、暴徒も来ないですよ、観客もいないんですし」
「いや、来る。雇っておいたから」
「え?」
「いちおう、アクションドラマの撮影っていう名目で借りてるから、多少暴れても大丈夫になってるから」
「あ、そうですか」
「じゃあ、僕は、強襲側の人とお話してくるから、ここは任せたね」
 そう言い、ルール説明書をスタッフに手渡すと、スタコラサッサと、逃げていくように立ち去る望月。
 残されたスタッフは、警備練習と言って雇われた人たちに頭を下げるしかなかった。
「‥‥、と、言うわけだそうなので、よろしくお願いします」
 そう言ったあと、本人も初めて見たルールの説明をはじめるのであった。

●今回の参加者

 fa0640 湯ノ花 ゆくる(14歳・♀・蝙蝠)
 fa1730 守久龍樹(20歳・♂・竜)
 fa2582 名無しの演技者(19歳・♂・蝙蝠)
 fa2775 闇黒慈夜光(40歳・♂・鴉)
 fa2838 紗良緯(23歳・♂・鷹)
 fa2925 陽守 由良(24歳・♂・蝙蝠)
 fa3036 綾部・裕未(20歳・♀・鷹)
 fa3091 ラモン(40歳・♂・竜)

●リプレイ本文

●ステージと言う名の戦場
 望月が強襲側と連絡をとり、ステージに帰って来ると、そこは戦場だった。
「‥‥はんまー、重い‥です」
 カツーン、カツーンと、湯ノ花 ゆくる(fa0640)が杭を地面に打ち付けていると思えば、
「こんな感じで大丈夫か。よし、次だ」
 守久龍樹(fa1730)と名無しの演技者(fa2582)が釘を使ったスパイクをセッティングしていたりする。
「‥‥‥えーと、これは?」
 誰とはなしに尋ねる望月に、陽守 由良(fa2925)が、頭を軽くかきながら答えた。
「相手が乗り物を使うらしいからな、その対抗策だそうだ」
「‥‥‥そ、そうですか」
「お互いの情報が筒抜け状態なのは、ちょっと、残念だけどな」
「‥‥なるほど。状況は理解しました。こうなった以上、これはこれでいきましょう。がんばってくださいね」
 お互い少し気まずい雰囲気ではあったが、望月がぺこりと頭を下げると、それにあわせてユラも軽く頭を下げた。

 ‥‥結局、お互いがトランシーバーで連絡を取り合う精鋭部隊による防御壁をともなう最高の防備がほどこされたライブ会場になった。
 ライブ会場の防備は、ナイト姿のネームレスとラモン(fa3091)が前衛に立ち、後衛をメロンパンにかぶりついているゆくるが護る。
 森の中では、タッキーと紗良緯(fa2838)がトラップを現在はっており、ユラはそのフォローにたちあっている。
 さらに闇黒慈夜光(fa2775)と綾部・裕未(fa3036)が空から見守っていた。
 望月は5時間分の音楽が入ったミュージックプレイヤーの再生をオンにし、イヤホンをつけ、ステージの真ん中に座る。
 唯一の観客役だ。
 そして、開始の合図が鳴らされた。

●始まった戦
「オラオラ! どけよ邪魔くせぇ!」
 森の中から、鳴子を鳴らしながら、堂々と虎の獣人がでてくる。
 どうやらトラップは突破されたらしい。
「・・・・きたか・・・ここは通さん!!」
 前衛を張っているネームレスが、突撃してくる虎の獣人の頭部をめがけ、容赦なくナイフを投げつけるが、楽に回避される。
 おそらく、森の中のトラップもこのようによけられたのだろう。
 しかし、大勢が陣を整えているのをみた虎の獣人は、きびすを返し、森の中にさがっていく。
「‥‥ここは、あっしが」
 そういうと、空から夜魔がおりたり、虎の獣人を追いかける。
 森の中に消えていく二人。

 森の中に目を戻すと、中からでてきたのは、夜魔でもなく、虎の獣人でもない、シルクハットを被った狼の獣人だった。
 相手の素早い動きに反応するネームレスとラモン。
 こちらは2人で、相手は一人。
 しかし相手は完全獣化している。
 ネームレスの剣の一撃を避け、ラモンの拳を受け止めながら、歩みをとめない相手に苦戦する二人。
 相手はこの二人を倒すのではなく、間を抜けることに専念しているようで、場所を絶えず動きながら様子を伺っている。
「俺があいつを何とか捕まえる。その隙にお前が、相手を止めるんだ」
「‥‥捕まえられるのか? 相手の動きは‥‥」
「わかってるさ。‥‥だが、捕まえてみせる!」
 攻防をくりかえしたのち、ラモンが、なんとか相手を捕まえる。
 振り下ろされるネームレスの剣。
 シルクハットもろとも風船が割られ、抵抗を止める相手。
 勝利。
 しかし、相手は成し遂げた顔をしていた。
 なぜならば、今、三人がいるその場所はステージから遠く離れた場所だったからだ。
 相手は囮だったのだ。

 そのころ、ステージに瓶が降ってきた。
「危ない!」
 ユミが叫んだが、観客席に落ちたその瓶は、燃え上がり、紙でできた観客席とその中にいる望月を燃やしはじめる。
 必死に消火活動を始めるスタッフたち。
 鷹になっているユミは、瓶を落としたシルクハットを被った竜に向かっていく。
 本物の銃を撃ってくる竜の弾丸を、意にせずにかわしていくユミ。
 響きわたる本物の銃声に、消火の手を止め、思わず顔をしかめるスタッフたち。
「もったいない、銃が泣いてるわ。こっちにも銃があれば、よかったんだけど」
 そう言いながら、ナイフを投げるユミ。
 閃光のような鋭い一投は見事にシルクハットに命中し、中の風船を割る。
 空中爆撃機を一機撃墜したユミはステージの方へもどっていった。

 森の中を、タッキーとユラに任せてきたサラは、遠くの方の自転車に気が付く。
 慌てて、空から自転車の方に向かうサラ。
 そして、そこにユミも合流する。
 空から二人が迫ってくることに気が付いた自転車の主、パンダの獣人は急いでステージの後方に回る。
 大回りすることで、時間を稼ぐつもりなのか、しかし、放っておくわけにもいかない。
 二人は、追いかけていった。

 森の中で慎重に進んでくる三人組がいた。
 タッキーは彼らを発見したとき、相手はすでに自分を発見していたようだ
 数字的不利ではあったが、見逃すわけにはいかない。
 燃えさかるステージをみて、一端後退していった三人組。
 作戦会議だろうか?
 タッキーは森に戻った。
 しばらくして、遅れて、ラモンとネームレスが森の中に入っていった。

 燃えさかるステージ付近で鳴る携帯電話。
 一人残されたゆくるはその音に反応し、条件反射的に、音の方に釘をばらまく。
 しかし、反応はない。
「‥‥あれ?」
 ゆくるがきょろきょろしていると、帰ってきたサラが声をあげる。
「ちがう、逆の方から!」
 慌てて、振り返ると、そこには緑色の迷彩服を着ている狼の獣人がいた。
 見つかった事を知った相手は、急激に足を早めて燃えさかるステージに迫ってくる。
 ゆくるの手の平から黒い弾が放たれるも、相手は一瞬苦痛の表情を浮かべ足を僅かにゆるめただけで、完全に止めるには至らなかった。
 ‥が、その一瞬の間に、援軍が到着した。
 空から、鴉の獣人が止めにかかったのだ。
「御命頂戴‥‥と言った所でございやすか」
 空から襲い掛ったのは夜魔だった。
 割られる風船。
 その音と同時にユラが森からでてきた。
「‥‥ふぅ。まにあったか」


●終了したライブステージ?
 終了の合図が鳴らされる。
 ステージは燃え、周囲にはトラップの残骸、なんて言い訳しようか頭を抱えるスタッフがいるものの、ステージに暴徒が入ることはなく、最初のルールどおり、警備側の勝利となった。

 警備側、暴徒側どちらの陣営も一カ所に集められ、怪我の手当をうけていた。
「みなさん、おつかれさまでした」
 火傷で一番酷い怪我をしている気がする望月だったが、獣人の能力ですでに回復しており、皆に頭をさげた。
「‥‥でも、トラップとか、解除していかないといけないんで、設置した人、どこにあるか教えて下さい。ついでに、解除とお掃除、みなさん、てつだってくれると嬉しいんですけどー」

 激闘を終え、お互いに労をねぎらいながら、それぞれの作戦をばらしあい、罠を解除する。
 そんな一仕事を終え、野外ライブ訓練は終わるのであった。