野外ライブ強襲アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 うのじ
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 03/01〜03/05

●本文

 森の中にある不自然な空間がそこにあった。
 木々の間をくりぬかれた大きな公園。
 行政主導による、いわゆるハコ物と呼ばれる物の一つだ。
 作っては見たものの、採算があわず、運営を民間に丸投げしてしまっている公園。
 その公園には、小さめの野外ステージが備え付けてあった。

「と、いうわけで、野外ステージの練習はあそこで行われるわけです」
 普段は音楽番組を担当しているプロディーサーの望月という青年は、ステージの方から走ってくるなら、周囲に、こっそりと語りかける。
 ここは、公園から5kmほど離れた森の中、少数のスタッフのみ、待機していた。
「‥‥あそこ、ですか?」
「はい、あそこです。練習内容ですが、野外ステージには紙で出来たアーティスト、観客席には紙でできた観客をセットしましたから、皆さんには、暴徒となって、野外ステージに乱入してもらいます。いちおう、アクションドラマの撮影っていう名目で借りてるので、多少暴れても大丈夫になってますから」
 後ろに控えている、暴徒役の人たちに、ぺこりと頭をさげる望月。
「暴徒が強くないと意味がないので、獣化しておいてください。今は、一般人は出入り禁止になっているので、獣化しても大丈夫ですから」
 そう言ったあと、ルールの説明をしだす望月。

「何か質問はありますか?」
 最後に質問を聞く。
 全ての質問に真っ正直に答える望月。
 そして、最後にと、あるスタッフが指された。
「はい、質問をどうぞ」
「望月さん、そういえば、番組の方はいいんですか?」
「‥‥‥、編集はスタッフにまかせてあるから、大丈夫!」
 望月は、その質問にのみ、少し目をそらしながら、答えた。

●今回の参加者

 fa1206 緑川安則(25歳・♂・竜)
 fa1346 天羽 波留斗(17歳・♂・パンダ)
 fa2577 T3(28歳・♂・狼)
 fa2830 七枷・伏姫(18歳・♀・狼)
 fa2860 静琉(16歳・♂・兎)
 fa2870 UN(36歳・♂・竜)
 fa2993 冬織(22歳・♀・狼)
 fa3096 ジョニー・ジョーカー(30歳・♂・虎)

●リプレイ本文

●戦場へ向かう
 それぞれが戦場へ向けて準備をしていた。
「暴徒鎮圧部隊のアグレッサーか‥‥‥だったらこれぐらい作らないとなあ」
 と言いながら、火炎瓶を作っているのは、シルクハットをかぶっている竜、緑川安則(fa1206)だ。
 それを見ているジョニー・ジョーカー(fa3096)が苦笑する。
「はは‥‥! まるでマフィアの抗争かテロリストだな、おい?」
「ふむ。‥‥されど、普段、ステージに立つ儂としても、儂如きを阻めぬ様では安心してステージには立てぬ。精々気張って貰わねばの」
 ジョニーの苦笑に頷きながらも、はっきりと言った冬織(fa2993)は、そのままのんびりと煎餅をぱくつく。
 遠くをみていたUN(fa2870)が言う。
「相手もやる気満々みたいだ。ステージ周辺に罠を作っているようだったぞ」
「まったく‥‥まぁ、いいか。面白そうだしな! 作戦を決めておこう。まず、俺がつっこむ。おまえたちはあとからきてくれ」
「俺も陽動をするつもりだ。ジョニーが囮、俺が本命、と思わせ、かつ防衛側が分散したところに、本物の本命が予定通りに攻め込む」
 ジョニーの言葉をうけるT3(fa2577)。
「僕はマウンテンバイクをつかって、迂回しながら目指すことにするよ。裏からじゃだめって言われてないよね?」
「ああ、問題ないだろう」
 天羽 波留斗(fa1346)の言葉に答えたのは、先ほどまで火炎瓶を作っていたやーくん。
「拙者はしばらく相手の布陣などを確認したうえで、天羽殿と逆のルートで迂回しながら行こうとおもうでござるが」
 七枷・伏姫(fa2830)の言葉に、頷く静琉(fa2860)。
「わかった。じゃあ、僕はUNと冬織さんと一緒に行動するね。足手まといにならないように頑張るね!」
「僕もがんばって、ステージまで辿り着くぞぉ」
 イルのがんばりが伝染し、ハルトも気合いを入れ直した。

●始まった戦
 開始の合図が鳴る。
「作戦内容は頭に叩き込んだな? 頭に風船という間抜けなスタイルだが、真剣にやるぞ!」
 やーくんの号令に、おー! と盛り上がる獣人たち。
 ここにいる全員が完全に獣人になっているのだ。
「では、解散! 突撃だ。GOGOGO!」
 それぞれが持ち場に散っていく。
「‥‥じゃあ、行ってくるぜ」
 ジョニーが森からでていき、しばらくして、タクマがそれに続いた。

 ジョニーが森の中に帰ってくる。
 それを追いかけて来る刀をもった鴉の翼を生やした男。
「くくく‥‥さぁて。何処までやれるか試してみるとしやすか‥‥」
 チャキっと刀を峰打ちの状態にし、斬りかかってくる。
 ジョニーは木刀でそれを払い、やや後ろにさがる。
「恐ぇ恐ぇ」
 軽口を叩きながらも、気を抜かず相手をみる。
 今の一撃で理解できた。
 目の前の相手は、完全獣化状態でなければ、やっかいな相手だったであろう。
 そう思うと、自然に笑みがもれる。
 その笑みに反応してか、鋭い太刀筋で攻撃してくる相手を斬撃を、避け、受け止め、しのいでいく。
 しのぎきれず、攻撃を受けてしまい、数歩下がる。
 追い打ちをかけてくる相手の攻撃は木刀で払い受ける。
「‥‥‥仕掛けてこねぇんですかい?」
 しばらく繰り返してるうちに、相手が言った。
 実力でいけば、完全獣化している分、ジョニーが上。
 そのため、防戦をしているジョニーの行動に違和感をもたれてしまったのだ。
「‥‥‥」
 無言で答えるジョニー。
「‥‥なるほど。囮ですかい」
「だとしたら?」
「‥‥本陣に援護に行くのを黙って逃がしてくれるつもりなんざ、ねぇのでございましょう?」
「‥‥残念ながらな」
「‥‥‥なら、やるしかねぇでございやしょう」
「やれるもんならな!」
 相対する二人。
 空気が冷たく静かになる。
 そこに飛んでくる、木製の矢。
「!!」
 狙いは明らかにジョニー。
 それを避けると、飛び込んで来たのは、コウモリの翼をつけた男の拳。
 不意を打たれながらも、男の拳を受け止めると、そこに、先ほどから闘っている男の斬撃が降ってきた。
 不意を打たれての二人相手のため、ついに割られるジョニーの風船。
「ふぅ。助太刀、助かりやした」
「いや、気にしなくていいぜ。それより早くもどらないとやばいぜ。ステージのほう、襲われてるらしい」
 そこに、一匹の鴉が降りてくると、刀をもった男のほうをみる。
「‥‥なるほど。どうやら、特急でいかねぇと不味いことになりそうでさぁ」
「わかった、急ごう」
 森の中を帰っていくふたり。
「‥‥‥‥っと、さすがにここでじっと倒れて無くてもいいよな?」
 立ち上がり、苦笑するジョニー。
「さて、俺は負けちまったが、みんなは大丈夫か?」

「じゃあ、僕はそろそろ行くね」
 言ったのは、ウィンドブレーカーのフードをかぶり、風船を隠したパンダ獣人、ハルト。
 ジョニーとタクマ、そしてやーくんが外に行っており、陽動は十分なはずだった。
「そろそろ拙者も、参ろう。‥‥時には逆の立場になってみるのも、ボディガードの道を極める為には必要でござる」
 緑の迷彩服を着ている伏姫が行くと、ハルトは、自転車に乗って森から抜ける。
 しばらく進むと、嫌な予感がした。
 予感は的中し、上の方をみると、相手が空から二人もこちらめがけて飛んできている。
 慌てて自転車を漕ぐハルト。
 追いつかれる事がわかると、自転車を捨て、身軽になり影に隠れる。
 しばらく時間を稼ぐものの、射撃のうまい二人の鳥系の獣人の攻撃を避けきれることも出来ず、木製の矢の一撃で風船が割られてしまう。
「うーん、ざんねん。もっと暴れたかったなぁ」
 ハルトは悔しそうに呟いた。

「‥‥そろそろ参るかの」
 まったりと茶を飲んでいたとおるが言った。
「ああ、森の外が騒がしいからな、陽動がうまくいってるんだろう」
 アンも頷きながら、立ち上がり、変わった形をした刀を一振りした。
「戦闘はあくまで手段だ。足を止めずに、ステージに乗り込むぞ」
「承知」
「わかってる」
 頷くとおるとイル。
「いざとなったら、イル。おまえだけでも、全速力で先に行くんだぞ」
「‥‥大丈夫」
 今度は、深く頷いくイル。
「さて、皆、これをかぶるのじゃ」
 とおるが差し出したのは、先ほどまで煎餅が入っていた、一斗缶。
「被り紐でも縛っておけば、風船は隠れ多少の物も弾こうぞ。此れで風船を割るには動きを押さえねばならぬで‥‥真の演習となるじゃろうて」
 慎重に進む三人。
 森の外に一人、敵がいることが分かったが、一人ならなんとかなるだろう、と歩みは止めなかった。
 が、しかし、森からでた三人が目にしたのは、衝撃的な光景だった。
 目的地のライブ会場が燃えているのだ。
 このまま、がむしゃらにステージを目指せば、大火傷必死である。
 作戦相談に戻るため、森に戻る三人。
 すると、先ほど森の外にいた敵が追いかけてきた。
 アンの作戦通り、遠くに投げ飛ばしても良かったが、この相手を退けたとしても、行き着く先は燃えさかるステージである。
 その迷いが勝敗を決した。
 敵の増援が二人、到着したのだ。
 追い抜こうとするも、この森はトラップだらけのため、思うように動けない。
 三人と三人の戦いは、アンたちが有利に進めるも、決定打を撃てず、あえなくタイムアップになってしまった。


●終了したライブステージ?
 終了の合図が鳴らされる。
 ステージは燃え、周囲にはトラップの残骸、なんて言い訳しようか頭を抱えるスタッフがいるものの、ステージに暴徒が入ることはなく、最初のルールどおり、警備側の勝利となった。

 警備側、暴徒側どちらの陣営も一カ所に集められ、怪我の手当をうけていた。
「みなさん、おつかれさまでした」
 火傷で一番酷い怪我をしている気がする望月だったが、獣人の能力ですでに回復しており、皆に頭をさげた。
「‥‥でも、トラップとか、解除していかないといけないんで、設置した人、どこにあるか教えて下さい。ついでに、解除とお掃除、みなさん、てつだってくれると嬉しいんですけどー」

 激闘を終え、お互いに労をねぎらいながら、それぞれの作戦をばらしあい、罠を解除する。
 そんな一仕事を終え、野外ライブ訓練は終わるのであった。