the season of destinyアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 うのじ
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 1.3万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 03/24〜03/28

●本文

「じゃじゃじゃじゃーん♪」
 廊下を軽い鼻歌混じりで歩く男がいた。
 『Battle the Rock』という音楽番組のプロデューサーの望月という男だ。
 彼が口ずさんでいるのは、ベートーベンの『運命』。
 なぜならば、それが今回のテーマだったからである。

 時は、数時間前にさかのぼる。
「『出会い』と『別れ』って、英単語一つで表現できないのかな?」
 番組会議中のこの一言によって、スタッフは頭を悩ませた。
 たしかに、一言でまとめれるならば、番組のテロップ的にも嬉しい限りだ。
 第一の案は初恋だった。
「出会いも別れも、なにか運命的なものを感じますし、初恋、ふぁーすとらぶはどうでしょう?」
「あー、いいねぇ、ファーストラブ!」
「うんうん、アーティストのみなさんの初恋って気になるし」
 と、出会いでも、別れでもなく、初恋になろうとしていたとき、あるスタッフから意見がでた。
「‥‥‥っていうか、素直に『運命』じゃだめなんですか? でぃすてにー、一言ですけど」
「‥‥それだー!!」
 満場一致で決定した。

 というわけで、会議も終わり、憂いも取れ、『運命』を鼻歌で歌いながら、スキップで踊りだしそうなほど軽い足取りの男が誕生したわけである。
「あ、望月さん」
「おつかれさま。準備は順調?」
「え? ええ、順調ですけど、望月さんこそ、身体のほうは大丈夫ですか? 火傷とか」
「身体? うん、大丈夫だよ。もう治ったから」
「そうですか、それはよかったですけど‥‥じゃあ、仕事の話しなんですけど、次回は『お花見』なんですよね?」
「うん、『桜』と迷ってるけど、それ系にしようと思ってるけど?」
 問題ある? と首を傾げる望月。
「わかりました。じゃあ、その次なんですけど、スペシャルでいいんですか? テーマフリーの」
「え? スペシャルは5回事に‥‥」
「次の次は第10回目ですよ?」
「え? まじで? 早くない?」
「まじです」
「ががががーん」
 思わず、先ほど鼻歌を歌っていた同じリズムで、ショックを表現してしまった望月。
「ど、ど、どうしよう、まだ何も準備をしてないよ!」
「大丈夫です、まだ先ですから」
「あー、そうか、まだ先か。でも、そろそろ準備をしておかないとね」
「はい、よろしくおねがいしますね」
 スタッフと別れたあとの望月の足取りは、先ほどより、やや重かった。


 多くの人の手によって作られ、多くの人がその上で歌ったステージ。
 今は、その上に誰もいない。
 しかし、ステージは待っていた。
 また始まる運命の時を。
 ここにくる全ての人たちとの運命の出会いを。
 ステージには、ギターと二振りの剣が交差するシンボルが描かれている。
 そして、ステージの幕の役割をしている扉には、今回の主題が描かれている。
 『the sound of destiny』と。

●今回の参加者

 fa0336 旺天(21歳・♂・鴉)
 fa0379 星野 宇海(26歳・♀・竜)
 fa1359 星野・巽(23歳・♂・竜)
 fa1514 嶺雅(20歳・♂・蝙蝠)
 fa1641 上月 真琴(20歳・♀・狼)
 fa2495 椿(20歳・♂・小鳥)
 fa2521 明星静香(21歳・♀・蝙蝠)
 fa2957 ぇみる(19歳・♀・パンダ)

●リプレイ本文

●撮影前閑話
 収録前のスタッフの戦場を歩く一人の男がいた。
 その男の名は、旺天(fa0336)。
 きょろきょろを辺りを見回すと、目当ての人物を見つけ、駆け寄る。
「?? どうしました?」
「いや、この前のお礼、言っておこうと思って。この前はアリガト」
「ああ、そのことですか。お安い御用ですよ。今回もまた投げましょうか?」
「それは大丈夫! 今回はちゃんと予備のスティックも持って来てるからさー」
 そう言って、テンが木目調のスティック2本と黒塗りのスティック2本を取り出す。
 どうやら、黒塗りのほうが優勝時用の予備のようだった。
 気合いの入った予備に、スタッフは笑いながら、グッと親指をあげる。

 そのころ、司会のサンダージェットの二人の控え室に、嶺雅(fa1514)が尋ねていた。
「ごめんネ、この前。急に呼んだりして」
 ははは、と笑いながら謝るレイに、笑って返す二人。
「いや、大丈夫っすよ。おかげで名前が売れたっていうか」
「始めて名前を知ったっていう人もいたぐらいですよ」
「そうなんだ? じゃあ、俺、いい事しタ?」
「そうそう」
「そうですよ」
 レイの言葉に頷く二人。
「じゃあ、またやろうかな」
「‥‥え?」
 今度は、レイの言葉に凍り付く二人。
「冗談ダヨ。もうしない‥‥‥多分」 


●オープニング
 二振りの剣とギター。
 戦いの象徴である剣と、ロックの象徴であるギター。
 この番組に、最もふさわしいであろう、このマーク。
 この番組とは、『Battle the Rock』。
 様々なアーティストによる一つのテーマによって作られた歌が、火花を散らすのがこの番組だ。
 今回のテーマである『the sound of destiny』の文字が画面を踊る。
 暗がりに光りが当てられ、番組がスタートする。

 最初に登場したのは、いつもの二人組の男。
 黒皮をベースにしたロックミュージシャン風の衣装の二人はマイクを持ち、口上を述べる。
「‥‥‥コンクリートジャングルの中で始まるミュージシャンたちのサバイバル」
「今回のテーマは、『運命』。‥‥運命に導かれたのか、運命に選ばれたのか、それとも、運命に反逆しここに集ったのか。今宵、ここに集ったのは、この4組!」
 素早く画面が、切り替わり、最初に映し出されたのは黒髪の美しい女性だった。

 上月 真琴(fa1641)、最初に映し出されたのは彼女だ。
 マコトは、急に振られた画面に、一瞬、ほえ? という表情をしたものの、次の瞬間には、ビシッと気をつけをして、ヨロシクお願いしますとばかりに、頭を下げた。
「優しく、ゆったりとした気持ちに人を誘う、和み系の女神。上月真琴!」
 頭を上げたマコトが、肩にかかった髪を手で直す、そのシーンまでバッチリ撮ってから、画面が切り替わった。

 星野 宇海(fa0379)、星野・巽(fa1359)の姉弟と、ぇみる(fa2957)の三人組が画面に映される。
「姉弟ユニットBLUE−Mを、えみるが強力サポート! BLUE−Mプラス!」
 白と黒でコーディネイトされた三人に、星海の涼しげな帽子が強い印象を与える。
 ハイテンション気味のえみると星海に、なぜか、少し疲れてる感じのタツミ。
 しかし、名前を呼ばれると、三人とも、とびきりの笑顔で答えた。

「これは何かの罰ゲームなのか、それとも趣味か! 彼らを紹介する前に、私は言いたい。惚れるな危険! Aile!」
 最初に登場したのは、テン。
 彼は至って普通だった。
 次に、映るのは、レイ。
 レイが左手を差し出すと、右手が添えられる。
 そして、一歩前に出てきたのは身長180の美女? 椿(fa2495)だ。
 黒のドレス姿の椿に、歓声と悲鳴が上がる。
 椿は、沸き上がった声に、笑顔で片目を閉じた。

 今度は、画面いっぱいに、広がる竹でできた傘。
 傘がクルクルっと回されると、上から『明星静香』と文字が降ってくる。
 そして、傘を可愛いらしく払うと、中から出てきたのは、まさに、明星静香(fa2521)、その人。
「彼女の魅力は、性別を問わないず共感を与える。明星静香、今日は、彼女が和と洋のコラボレーションを披露してくれる」
 シズカはコールを受け、顔を少し横に倒し、礼をした。

 全紹介が終わり、カメラが、最初に登場した司会の二人に戻る。
 映された司会者が、番組の開始を宣言した。
「それでは、『Battle the Rock』。スタート!」


●上月真琴
 ドレスと言うには、優しい雰囲気の衣装に身を包んだマコト。
 彼女はステージに上がりマイクを手に持ち言う。
「精一杯頑張りますので、皆さん宜しくお願いします♪」
 そしてご機嫌な笑顔を浮かべた。
「上月真琴。『Fate』」
 コールされ、ピアノとバイオリンの音色が、ゆったりとした軽めのクラッシック風に流れる。
 しばらく、その優しい伴奏に身を委ねた後、マコトは、ゆっくり、しかし、しっかりと、マイクを持った。

キミは いつ私を見て
想いを 廻らすのかな?
私は いつでも
キミを 見ているのに‥‥

 マコトは、静かに前を見る。
 それは、客席に、TVの向こうに、どことなく訴え掛けるような。
 その思いは、もしかしたら、『誰か』への思いなのかもしれない。
 しかし、その思いに皆が共感するように、静かに聞き入っていた。

キミはいつか 私を見て
どんな言葉 かけるのかな?
キミはいつか 私の手を
いつかの様に 握るのかな‥‥

Want to carve out ourself fate
I keep from wish yourself
そばに居たい キミの‥‥
穏やかに キミと‥‥
これからも ずっと‥‥


●BLUE−M+
 『BLUE−M+』の控え室では、本番前にも関わらず、熱心な『教育』が行われていた。
「違うわ、そうじゃないの。も〜、何度言ったら分かるの?」
「‥‥歌は俺から始まるから、カメラさんがこの角度で撮るらしいので、つまり、こうですよね。桜舞う〜」
「顔でごまかさないの。それなりに歌えないとお話にならないんだからね〜」
「‥‥地獄の特訓は昨日で終わったのでは‥‥」
 笑顔にのんびりとした口調の中に込められた、有無を言わさぬ姉オーラ。
 ペシっと今にも手が出そうな雰囲気の星海とタツミの、姉と弟の会話。
 近くで見ているえみるは、笑いを堪えている。
 合同練習の時は、もっと過酷だった。
 えみるのほうはそつなくこなし、星海からすぐに合格を貰えたのだが、タツミは、星海からなかなか合格をもらえない。
 果ては、えみるさんを見習うように、とまで言われる具合だ。
 発声に関してはともかく音程に関しては、確かに、タツミと比べ、えみるのほうが数段上ではあったが、幾らなんでもそこまで、と、聞いていたえみる自身が、何回か思ったほど、スパルタ教育であった。
 それでも、タツミが従うのは、姉と弟という主従関係ができあがっているからなのだろうか?
「星海さん、あんまりやりすぎると、タツミさんの声が本番まで持たないですよ」
 しばらく見ていたえみるだが、さすがにフォローを入れる。
「‥‥それもそうね。わかったわ。後は本番勝負よ。わかった? タツミ」
 ようやく解放されたタツミは、頷きながら、紙コップに入ったお茶でのどを潤す。
 この静かな時間は、あまり長くは続かなかった。
 その、すぐ後『BLUE−M+』が呼ばれたからだ。
「BLUE−M+。『FATE』」
 先ほどと同じ主題。
 出だしは同じゆったりとしたピアノ調。
 でも、二つは、似ているようで似ていない。
 出だしのバラードは、タツミから始まり、タツミの横にピッと側に寄りながらえみるが続く。 

桜舞う 空の彼方に 貴女の笑顔を想い出すよ 
今はもう 届かないけれど この誓いは変わらない‥‥

桜散る 空の向こうに 貴方の涙を想い出すの
今も心に 焼き付いている この想いを空に描(えが)こう‥‥

 バラード調が徐々に激しくなり、今度は星海が歌う。

君に出会えた事! たった一つの幸いだから!
神聖な世界を抱き 私は歩きだそう!
As for you, it is my destiny, and it is my truth.

 星海が帽子を高く投げると、三人が激しく、歌い踊る。
 タツミが激しくシャウトし、えみるも絶対領域を守りながら、シャウトし跳ね、踊る。
 星海がコーラスを、同じく、シャウトする。

今!(now!) この刻を!(this time!)
世界を!(all world!) 魂に刻め!(Carve in a soul!) Don’t be afraid!

 そして、繰り返された後、三人が拳を上に突き上げ、最後の歌詞が発せられた。

『Blow up fate now!』


●Aile
「Aile。『Let’s enjoy destiny』」
 名前が呼ばれると、黒いスーツの二人組が、そして、その二人に誘われるように黒いドレスの一人が舞台に立つ。
 黒スーツの一人のテンがドラムに座し、もう一人の黒スーツのレイはマイクの前に立つ。
 黒いドレスのレディの椿は、置いておいた銀のエレキギターを手にした。
 エレキギターの旋律から始まり、ドラムがそれに続く。
 そして、レイが歌い始める。

日々の些細な失敗で 溜息に沈む negative girl
アノ子と偶然すれ違い 一日ハッピー positive boy
通り雨のよな【unlucky】 濡れて参ろか春雨【lucky】
ソレもコレも all is 運命ってヤツなのか?

 レイの歌に、椿とテンが加わり、曲を盛り上げていく。
 ダンダンダンダダダダダダダダダンとドラムが鳴る。
 クラシックの曲をアレンジした間奏に入りると、今まで色とりどりに暴れ回っていた照明がいったん落ち、ドラムのテン、ギターの椿、ボーカルではなくエアギターをしているレイと、順にスポットが当てられ、そのたびに観客が沸く。

「イイコト」 だけ信じて all right!(all right!)
「都合悪いコト」無視して don’t mind!(don’t mind!)
表裏一体キミ次第 【Let’s enjoy destiny, Yeah!】

Let’s enjoy destiny, 【Yeah!】

 スティックとピックが投げ込まれると、歓声はさらに大きくなり、それに答えて、三人は、手を降り続けた。
 

●明星静香
 トリを締めることになったシズカ。
 鏡に向かい座っている彼女だが、特に鏡を見ているわけではなかった。
 目を閉じ、下を向き、軽く深呼吸。
 そして、立ち上がると身体をほぐす。
 扉の向こうからは、シズカを呼ぶ声が聞こえる。
「さてとそろそろ行かなきゃね」
 そう言い、立てかけて置いた和傘を持ち、舞台へ向かった。

「明星静香。『サクラ』」
 舞台に降り立ったシズカは、マイクを持つと、語りかけ始めた。
「卒業や入学、就職なんかで大切な人と離れてしまうこともあるでしょう。そうなると寂しさとの戦いになるけど、また会えるそう信じて耐えてると思うわ。そんな人に捧げる曲です、『サクラ』」
 そして、傘を客席の方に向けて、自らを隠すように開く。
 傘を回転しながら横に放ると、シズカの手には、さきほどまで無かったエレキギターがあった。
 そのギターから流れる、優しく、儚く、静かなその音色に、シズカの歌声が重なる。
 途中、日本人になじみの古謡を取り入れながら、心に浸みいるように、静かに流れていった。

桜咲く通りを歩く
ふたりの時間 感じながら
幸せ感じるこの時が
このまま続けば良いのにね

春は訪れあなたは旅立つ
私をここに置いたまま
置いてかないでと つぶやく私
また会えると 微笑むあなた

サクラチル 散るのは運命(さだめ)
旅立つあなたを思いつつ
サクラチル あなたを思い
吹雪舞う空 見つめてる


サクラサク 咲くのも運命(さだめ)
再びあなたにめぐり合う
サクラサク いま花咲いた
あなたの温もり 感じてる 


●エンディング
 4組の演奏が終わると、司会者の二人組が再び登場した。
 そして、彼らが、観客に投票を促す。
「それでは、『judge』。スタート!」
 各自の持っている10枚のコインが、舞台に設置してある各ミュージシャンの箱に向かって投げ入れる。
 そして、倉庫にあるようなエレベーターが、上下に開く。
 まだ、扉は閉まったままだ。
 今度は、左右に開いく。
 中から出てきたのは、二人の紳士と一人の長身の美女。

 『Aile』のメンバーが、もう一度『Let’s enjoy destiny』を歌いに登場した。
 彼らが運命を手にしたのか、単に楽しんだ結果なのか、その答えは、人それぞれで、見方次第なのだろう。
 なぜならば、そう、彼らが歌っているのだから。
 そんな彼らの歌に、番組のエンディングロールが重なっていった。


立塞がった運命は 乗越え壊すと吠える tough guy
信じないわと目もくれず さらり立ち去る cool lady
当たるも八卦の【fortune】 外れて自棄の【destiny】
信じるモノは all is 運命に責任転嫁?

本当(リアル)な自分無くしてないか
駆引き勝負で躓いてないか
どうせ翻弄されるなら 肩の力を抜いてみな

「イイコト」 だけ信じて all right!(all right!)
「都合悪いコト」無視して don’t mind!(don’t mind!)
表裏一体キミ次第 【Let’s enjoy destiny, Yeah!】

Let’s enjoy destiny, 【Yeah!】

●ピンナップ


椿(fa2495
PCシングルピンナップ
湯浅 彬