新たな旅立ちドラマSPアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 うのじ
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 3万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 04/07〜04/11

●本文

 今日から俺は社会人だ。
 俺の中で何かが変わった。
 例えば、朝の電車が、通学ラッシュから通勤ラッシュへと俺の心の中での名前が変わったとか。
 そして、これから目の前の扉をあけ、くぐる。
 大きな声での挨拶は外しちゃいけない。
「おはようございます。今日から、この『対外部』でお世話になります!」

「えー、今日からうちの一員になってくれる人もいるので、この部のメンバーの自己紹介をね、してもらおうと思うんだ。じゃあ、まず、君から、よろしく」
 これが朝礼か、と感心している新人を前にして、自己紹介を頼まれた一人が、ペコリと頭を下げる。
「えーと、幽霊社員の○○です。よろしくお願いします」
「幽霊社員って‥‥今日はいらっしゃったんですね、よかったです」
「はぁ、ずっとここにいますけど?」
「え? だって、幽霊って‥‥‥えええっ?!」
 そう、彼には足がなかった。つまり浮いているのだ。
「ですから、幽霊って‥‥」
 困ってる幽霊社員に助け船をだすかのように、横にいた一人の女性が呆れたように言った。
「あなた、ここが何の部署かしらないの? 『人外対応及び処理部』略して『対外』、人外、まぁつまり、主に除霊とかそういうのを扱っているところよ?」
 その言葉を聞いたとき、俺の中で何かが変わった。
 例えば、ビジネスマンのイメージが、急に詐欺師っぽいものに変わったとか。
 そして、これからの仕事を考えると、なぜか、目がぐるぐると回る。
 自然と小さな声がでた。
「‥‥そんなの、聞いてない‥‥よ」

 次の日から、早速仕事というなの、訓練が始まった。
「研修期間中は普通の企業のそれだったのに」
 と、ぼやきつつも、適正があったためか、次第に訓練にも慣れ始めた。
 そして、訓練にも慣れ始めた頃、始めての実戦の指令を受けた。
「えーと、『入学シーズンにおいて集まる霊の撃退』‥‥か」
「‥‥あなたも? 私たちもなのよ。始めての実戦なんでしょ? あんまり無茶しないでね」
 先輩が苦笑いをしながらも、声をかけてくれた。


「以上がこのドラマのだいたいのあらすじです。詳しいことは、台本を読んで見て下さい」
 始めてのスタッフミーティング。
 ドラマのあらすじが説明されると、スタッフに台本が配られた。
 そして今度は撮影の説明が始まった。
「撮影ですが、メインの『学園に入学したがる霊の撃退』シーンは、当然、本物の学園は使えませんので、撮影所B−3を使います」
 どよどよ、とざわめきが起きる。
 撮影所B−3、そこは、奇しくも、霊がでるという噂のあるところだったのだ。
 前で説明をしていた男性は、ざわめきを察知し、慌てて付け加える。
「‥‥妙な噂もありますが、噂ですから。大丈夫です。安心して下さい。‥‥‥えーと、なにか質問はありますか? なければ、ミーティング、終わりにしますけど」
 幾人かが手を挙げる。
 ミーティングはしばらく続きそうだった。

●今回の参加者

 fa0117 日下部・彩(17歳・♀・狐)
 fa0189 大曽根ちふゆ(22歳・♀・一角獣)
 fa0669 志羽・武流(21歳・♂・鷹)
 fa0756 白虎(18歳・♀・虎)
 fa0959 シルクリア(20歳・♀・猫)
 fa1338 富垣 美恵利(20歳・♀・狐)
 fa3020 大豪院 さらら(18歳・♀・獅子)
 fa3280 長澤 巳緒(18歳・♀・猫)

●リプレイ本文

●みんなで熱意満々
 三人の男に取り囲まれている長澤 巳緒(fa3280)。
 前から、右から、後ろから、同時に攻撃が放たれた。
 それらを、巳緒は、まず受け流し、次はスウェーで避け、最後の攻撃には、横を抜けるように避け、すれ違いざまに、鈍い銀色のナイフを一閃する。
 横でアワアワと動いている志羽・武流(fa0669)にも、容赦なく攻撃が降り注ぐ。
 それに気が付いた巳緒は、軽くジャンプするように移動して、フォローに入る。タイトスカートの為、歩幅が稼げないために、歩いては間に合わないのだ。
 一人、二人と斬り捨てていく巳緒だが、ついに敵の攻撃を喰らいそうになる。
 その時、今まで守られていたタケルが、今度は逆に守るかのように、目の前に躍り出、手にしているお札を、相手の額に張った。
 パチパチパチ、と練習を眺めていた大豪院 さらら(fa3020)が手を叩いた。
「凄いですね。流れるような動き、もう、完璧です」
 さららの言葉に頷くのはスタッフ。
「この後、札の爆発に驚いた俺が、巳緒さんに抱きつくんですよね?」
 タケルは、一連のアクションで吹き飛ばされていたサングラスを拾いながら、確認するように言った。
「そうだね。先輩に飛び込んでおいで」
 冗談風に巳緒が言うと、タケルはハハハと少し困ったように笑った。
「あーあ、私もアクションシーンがあればよかったのに」
 残念そうに言うさららに、一同は小さく笑った。

 巳緒たちが、この一連の動作を行ったのは、何度目だろう。
 巳緒が熱心なため、アクションシーンは、何度も練習しているのだ。
「‥‥‥ふぅ」
 大きく息を吐く巳緒。それに気がついたスタッフがねぎらう。
「凄い上達したよ。頑張ったおかげだね」
「そうかな? 大丈夫? 動きがゆっくり過ぎないかな?」
 心配そうに言う巳緒に、スタッフは言う。
「動きの速度は、後で早回しするから、大丈夫だよ。ゆっくり確実にやってもらうのが一番」
 遠くの方で、カチンという音が鳴った。
 撮影が始まったらしい。
 よけいな音を立てないように、練習は一時中断された。


●みんなで和気藹々
「どなたかー、いらっしゃいませんかー? 一緒に撮影しませんかー?」
 撮影所の隅のほうをうろうろしている日下部・彩(fa0117)。
 そんな彼女の背に、微妙な感触。
 チョンチョンと、指でつつかれる。
 普段ならなんともない刺激に、彩はびくりと反応した。
「っっっきゃっ」
 逆に驚いたのは富垣 美恵利(fa1338)。
「っわっ。ご、ごめんなさい」
「あ、富垣様ですか、‥‥よかったぁ」
「?? よかった? そう? よかったのならうれしいけど」
 美恵利はよく分からないといった風に言いながら、言葉を続ける。
「日下部さん、お茶が入ったようですので、どうですか?」
「いいんですか? ありがとうございます。行きます」

 休憩室には、爽やかな緑茶の匂いがほのかに香った。
「なにか茶請けがあればよかったのですが‥‥」
 申し訳なさそうに言うシルクリア(fa0959)。
 それに答えて、美恵利が、袋を取り出す。
 中にはクッキー。
「これでよければ。昨日焼いてきたんです」
 気軽に食べれる茶請けの登場に、わぁと、喜ぶシルク。
「いいんですか? ありがとうございます」
 こうした簡単なお茶の時間は、スタッフ、出演者ともに、リラックスできる貴重な時間だった。

「‥‥そういえば、先ほど何かを探していたようでしたけど、一緒に探しましょうか?」
 一息ついた後、美恵利が彩に声を掛ける。
「え? あはは、いえ、大丈夫です」
 言葉を濁す彩に、心配そうにシルクが尋ねる。
「あら? 捜し物ですか? コンタクトレンズとか?」
「‥‥いえ、そうじゃないんです。実は‥‥その、霊を」
「霊?!」
「いや、ほら、このスタジオ、出るっていう話を聞いたことがあるので。きっとこのスタジオにいる霊も、何か心残りがあるのではないかと。ですから、もう一度お芝居したい、とかなら、一緒にやってみませんか? って」
 彩の台詞に凍り付くスタッフ。
「あ、やっぱり、ダメ‥‥ですよね」
 シュンとする彩。
「‥‥あら? カップが一つ余ってしまいました。ここにいる人数分ぴったり、煎れたはずなのですけど‥‥?」
 そして呼応するかのようなシルクの言葉に、悲鳴を上げるスタッフ。
 なお、この、カップが一つ余る事件はしばらく続き、シルクが持ってきてくれたお札を張ってようやっと終了した。
 ちなみに、お札を張ることが決定したとき、彩が不満げな声をあげたが、恐い物が超苦手なスタッフの睨みには逆らえなかったらしい。


●みんなで撮影完了
 白虎(fa0756)の木刀が振られる。
 その木刀を、大曽根ちふゆ(fa0189)が転けるように避ける。
 何度もこのタイミングは練習した場所、そのおかげで、完璧なタイミングで、避けることができた。
「なんで‥‥なんでわたしのじゃまをするんだぁ〜〜!!!」
 ヴァイの悲痛な叫びに、悲しい顔をするちふゆ。
「‥‥あなたが、誰かに恨みを持っているわけじゃない、誰かに危害を加えたいわけでもない、それはわかるんです」
「じゃあ‥‥じゃあ、なんで! なにも私は!」
「‥‥ごめんなさい」
 戦いの最中、にもかかわらず頭を下げるちふゆ。
 振り下ろされる木刀。
 ガン! と鳴り響く音。
 ちふゆの前には、巳緒がいた。
 巳緒は両手に持った短剣をクロスさせて上段からの木刀を受け止めていた。
「‥千春! なにやってるのよ!」
「だいじょうぶですかっ?!」
「烏丸さん! 矢島さんまで。ありがとうございます。だいじょうぶです
 対峙するヴァイと巳緒。
「大物ね‥‥新人クン下がって」
 巳緒の台詞に、素直に従い、やや下がった位置でサポートに徹するタケル。
「邪魔を‥‥するなっ!」
 ヴァイの鋭い一撃が、ガードを弾き、巳緒に傷を負わせる。

「カット!」
 カチンという音が鳴り、見守っていたスタッフ出演者たちから、ため息が漏れる。
 そして、ため息が歓声に変わる瞬間がきた。
「おーけーです。全シーン、全カット、撮影終了しました」
 おおー、と騒ぐスタッフたち。
「皆さんと演技が出来て楽しかったです」
「ほんとう? ありがとう。最後の撮影、様になってましたよ? いっそ役者に転向はどうかしら?」
 冗談とも本気ともつかないような話しに苦笑する出演者同士の会話。
「いや、ほんと、最初はどうなるかと思いましたよー」
「そうそう、みんな衣装が地味だったから。ボディコンのおねーさんとか居ると思ってましたからね」
「やっぱりお色気がないと、うんうん」
 スタッフによるそんなセクハラ会話。
 様々な会話の中にどこか楽しげな雰囲気が感じられる。
 喜びをわかちあうスタッフ、出演者たち。
 こうして撮影は終了した。
 もっとも、あとは編集が残っているのだが。


●新たな旅立ちドラマSP−がんばれ、対外部−
 夜の学園。
 なぜか、何もないはずなのに、恐怖の対象になってしまう、不思議な場所。
 普段の若い者たちの笑い声があるという日常が当たり前に染みついているためかもしれない。

 そこに、6人の一団が待機していた。
 ビジネススーツ姿の烏丸杏。
 武闘派のエクソシストの彼女は、手にナイフと聖書をもっている。
 日本の払い師の姿をしているのは、日下彩。
 さらに、西洋の白魔導師風のフィール・コリンズ。
 どこか頼りなさげな大曽根千春と、実は足がない大川絹代。
 そして、そんな二人の頼りなさげな先輩たちのさらに後ろに、隠れるようにいるのが、唯一の男性、矢島新。
 矢島は、ビシッと決めた存在不詳の男の姿をしていた。

 初の実戦を前に、日下からレクチャーをうける矢島。
 そして、しばらくすると、空気の色が変わる。
「来ました」
 呟いた大川の声に、各自が戦闘態勢にはいる。
 そこに響く、泥門の声。
「付近で、強力な霊波を探知しました。主が分かるまでは、各自、それぞれが適意に戦闘行動に移って」
「了解」
 泥門の指令に、今までの雰囲気とは違い、軍隊のような一糸乱れぬ返事をする一同。
 それが、今から行われる戦いの緊張感を表していた。

 有象無象ともいえるかもしれない。
 そんな様々な霊を除霊していく一同。
 ある者は短剣で切り裂き、ある者は手にした札で、別のある者は、悩みを聞いてあげるという実に平和的な方法で。
 そんな中、頼りないように見えた大曽根と大川は、巨大な波動を感じていた。
 その霊波の主を見つけると、大川は周囲の保護のために、即座に結界を張る。
 コハクというその霊は、木刀を手にし、大曽根に襲い掛かる。
 コハクの霊に触れ、その過去を、想いを感じ取った大曽根は、それでも、除き去らないといけないという現実に、謝るしかなかった。
 そして、現場に対外部のメンバーが終結する。
 そうなってしまうと、いかなコハクと言えども、時間の問題だった。
 コハクの除霊が済み、思い思いに冥福を祈る面々。
 そこに泥門の声が響いた。
「巨大な霊波の消滅を確認。各自、速やかに撤退しなさい」

 司令室にいる泥門は、マイクをオフにすると、ため息をついた。
「‥‥全員無事でよかった。よくがんばったわね、お疲れさま」
 部下たちに聞こえないように言う、ねぎらいの言葉。
 そんな泥門も、部下たちが帰ってくると、先ほどの言葉は露ほどもない。
 即座にレポートを提出させる鬼上司に戻るのであった。