music festival 前半アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 うのじ
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 1.3万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 04/21〜04/25

●本文

「ファーストから、セカンドへ」
 TVから流れてきたこの一言の後、画面にはローブをまとった一組の男女が居た。
 男はアコースティックギターを鳴らし、女はその横で歌った。
「‥‥そして‥‥」
 ゆったりとしたナレーションとは反対に画面はめまぐるしく変わる。 
 一人の男が猛烈なスピードでドラムを叩きながら曲が終わる。
 そして、観客へ、投げ込まれるスティック。
 別の場面では、一組の男女がステージの上にいた。
 『3,2,1』のかけ声と共に、男の持っているギターが鳴り、女の方が歌いだす。
 さらに、歌を歌う三人組。
 彼らは、歌い終わったあと、やはり、スティックを、ピックを、投げ込んでいた。
 桜が舞い散る中のステージもあった。
 屋外だが、元気のよい歌が響く。
 ステージにいる歌い手は、歌い終わったあと、律儀にお辞儀をした。
 そして、その他、様々な歌い手たちが一瞬ずつ登場する。
 大きく画面にでる『the music festival』という文字。
 画面の右下には小さく、『魂を響かせろ! Battle the Rock SP』と書いてある。
 TVのスピーカーから、流れてくる流ちょうな英語。
「‥‥セカンドの終結。バトル、ザ、ロック、セカンドステージ、ファイナル! ザ、ミュージックフェスティバル! ドントミスイット!」


 『Battle the Rock』は、すこし特殊な音楽番組だ。
 この番組の中で歌うことの出来る歌は、一曲、そして一回のみ。
 しかし、観客の投票によって、選べれた一曲は、最後にもう一度、このステージで歌うことができる。
 そう、まさしく、これはアーティストたちによる音楽バトルなのだ。

●今回の参加者

 fa0336 旺天(21歳・♂・鴉)
 fa1405 滝月・玲(22歳・♂・竜)
 fa1533 Syana(20歳・♂・小鳥)
 fa2161 棗逢歌(21歳・♂・猫)
 fa2495 椿(20歳・♂・小鳥)
 fa2521 明星静香(21歳・♀・蝙蝠)
 fa2657 DESPAIRER(24歳・♀・蝙蝠)
 fa2993 冬織(22歳・♀・狼)

●リプレイ本文

●オープニング
 倉庫街風の舞台の上に灯る原色の光たち。
 踊り狂うその光たちに誘われるかのように、颯爽と番組タイトルが画面に流れてきた。
 『Battle the Rock』、続いて、大きく書かれるスペシャルの文字。
 いつものように、最初に登場するのは、司会者の二人。
 彼らは、普段の約2倍の出演者たちを、一つ一つ、紹介していく。

 最初に映し出されるのは、滝月・玲(fa1405)と明星静香(fa2521)の二人。
 天使の輪に天使の翼をつけた二人は、名前を呼ばれると軽く手を振る。
「前回のスペシャルでは、共にいる事への感動を呼び様してくれた歌うの天使達、Venus!」

 続いて映し出されたのは、天使とは正反対の漆黒。
 それは、漆黒のドレスを着たDESPAIRER(fa2657)だった。
「聴く人の心を痺れさせ、身体を震わせる、奈落の歌姫、DESPAIRER」
 名前を呼ばれると、ビクっと反応し、小さく頭を下げるディー。

 カメラが次に向かったのは、三人組。
「ロックに和を取り入れた、Stagione。彼らが、新たな季節を彩る」
 赤みがかった紺色の着物を着た冬織(fa2993)は、眼を閉じ手を合わせる。
 その横に控えているのが、白の武道着を着ているSyana(fa1533)と、椿(fa2495)。
 とおるの代わりに椿が、カメラに向かって手を振り、そこにシャナっちの笑顔が加わる。

 次は、帽子を被った二人組。
「歌う楽しさを持つ彼らから、今日は二人が登場。今宵も蜜月の舞台へ誘う」
 棗逢歌(fa2161)が、笑顔で手を振ると、隣にいる女性がグッと握り拳を上げる。

 さらに、カメラに猫パンチをする女性や、ゴシックロリータな衣装を着たグループなど、紹介は続き、8組全ての紹介が終わる。
 この中から、今夜の勝者が選ばれるのだ。


●Venus
「うーん、美味しいんだけどな」
 残念そうに肉まんを食べているのはレイだった。
「あら、美術さん、いらないって?」
「うん、もう肉まんの季節じゃないって言われた」
 レイの答えにシズカは小さく苦笑した。
「‥‥まぁ、たしかにそうかも」
「だから、ロイヤルゼリー入りのジュースを買ってあげたら、喜んだよ」
「なるほど、だから肉まんと一緒に届いてる衣装が、ちょっと立派なのかしら」
 レイの買収工作が効いたのか分からないが、今は壁に掛けてある天使の翼はなかなかに立派なものだった。
 そんな会話がなされ、控え室が和やかな雰囲気になると、ちょうどその時、扉が叩かれ、出番が告げられる。
 衣装をまとい、出ていく二人。
 そこに、声がかけられた。
「ああ、良かった。間に合った」
 ふぅ、と息をついたのは、おーかだ。
「あ、逢歌、そっちは大丈夫なの?」
 シズカが振り向く。
 この一言ずつの会話だけで何かを感づき、呼びに来たスタッフを連れて、先に急ぐレイ。
「うん、大丈夫。それよりも、静香。トップバッター、頑張ってきて」
 そのまま、おーかが顔を近づけると、シズカのおでこに唇が当たる。
「頑張って来れるようにおまじない」
 そう言うおーかに、シズカは笑顔で答えた。
「ありがとう。あとで、そっちにも行くね。今日のライブが終わったら思いっきりデートをしようね」

 シズカが、少し照れたような、それでいて、先ほどよりも元気に、舞台袖に入ってくる。
 その様子を観て、廊下の奥で予想通りの事があったようで、レイは小さく苦笑しながら天使の卵のアクセサリーをテーブルの上に置いた。
「さて、元気も貰えたようだし、行こうか。みんなが天使の歌声を待ってるぜ。思いっきり楽しもう!!」
 レイに答えるシズカ。
「うん。前に組んだ時みたいに、一緒にステージを楽しみましょう!!」

「Venus。『翼』!」
 レイとシズカがそれぞれに楽器を持つ。
 最初は低音から、スローテンポに始まった。

晴れた空 貫く光
私を照らす太陽
流れる雲 風はあたたか
きみがいるから嬉しい

幸せの意味を知ったのは
いつも優しいきみのおかげ
背中の翼 その意味を
知りえたのもきみのおかげ

この翼はきみに会うため
はばたき続ける 前に 前に
触れる指 心溶かすよ
優しく強い きみが好き

 徐々にリズミカルになっていく曲。
 そして、シズカの声にエコーがかけられ、幻想的に広がっていく

きみがいるから強くなれる
きみがいるから優しくなれる
もうこのまま離さないでね
この気持ちを忘れないように

この翼はきみに会うため
はばたき続ける 前に 前に
触れる風 髪をなでるよ
優しく愛しい きみのように

 歌も終わりに近づき、舞台の上に風が舞い始める。
 まるで、このまま、天使の翼で飛んでいけるかように。

この翼は空を翔るよ
きみへの思いを 胸に 胸に
きみが好き 抱きしめちゃうよ
強く愛しく ずっとこのまま


●DESPAIRER
 控え室からでたディーは、いつもの舞台袖へと向かう。
「‥‥慌てているようですが、なにか?」
 途中すれ違ったスタッフの異変に気がつき、ディーが尋ねると、スタッフは、見抜かれたか、と困ったように答えた。
「いえ、一組、来てないんですよ、それで」
「ああ、そうですか。‥‥大変ですね。がんばってください」
「ありがとうございます。DESPAIRERさんも、がんばってくださいね」
 そう言うと、スタッフは、去っていった。
「だからロシアの歌手には気をつけろって言ってるだろ?」
「いえ、あの人は、沖縄ですよ、きっと」
「沖縄か、あそこはのんびりだからな」
 遠くから聞こえる声に、苦笑するディー。
 しかし、本番が近づくに連れ、眼を閉じ、思いを集中させていく。

「DESPAIRER。『Real』」
 暗闇の中に浮かぶ白い肌。
 徐々に照らされていく光の中で、ようやく、黒いドレスに身を包んだディーの姿が浮かんでくる。
 静かな微かなイントロが流れる。
 そして、ディーの声が、その中で、はっきり、しかし、どこか苦しげに響く。

別れを告げる 声にあわせて
いつかの曲が 聞こえてくる
遠ざかってく 彼の背中に
スタッフロールが 重なりだす

 徐々に薄くなっていくライト。
 曲が進むにつてて、光は闇へ近づいていく。

所詮全てが 決められたStory
「END」の文字で 幕が閉じていく
もし映画なら もう席を立ち
どこかよそへと 行きたいけれど

 歌が終わりに近づく。
 残っているのは一条の光のみ。
 しかし、それはすでに、弱々しく、いつ消えてもおかしくない程のものだった。

過ぎ去ってく日々 幸せな夢
全て終わって 消されていくLight
取り残された 私だけがReal
この静寂と 闇だけがReal
望まなくても これこそがReal
この暗く冷たい 世界こそが

Real

 ついに、歌声と共に、ステージのライトの最後の一つが消えた。


●Stagione
 扉に『A−3』と描かれた控え室。
 そこが、Stagioneに用意された部屋だった。
「ふむ」
 一口お茶を飲んだ後、満足げにとおるが頷く。
「冬織ちゃん、良いことでもあったの?」
 椿が、一斗缶を抱えながら、首を傾げる。
「以前、火傷を負わせてしまった事を望月殿に謝罪に行ったのだが、もう大丈夫だそうじゃ」
「ああ、前に言っていた話しですね。そうですか。それは良かった」
 シャナっちが、うんうんと頷く。
「それは良かったネ。冬織ちゃんも胸がすっきりして、フルパワー発揮できるだろうし」
 そして、椿も同意する。
 しかし、椿のその言葉を聞いて、シャナっちが笑った。
「胸がすっきりって、椿、煎餅を食べ過ぎて胸焼けしない? そんなに食べて大丈夫?」
 笑いながらも、すこし心配そうなシャナっちに、椿が笑って答える。
「もう食べないヨ。だって、もう中身ないから。食べきっちゃった」
 その言葉に、シャナっちは今度は苦笑した。
「ふむ」
 もう一口お茶を飲み、とおるが、また、頷く。
「今度はどうしたの?」
 同じく椿が尋ねた。
「‥‥中身が無くなった缶は、いい具合に凹みそうじゃの」
 とおるの視線の先には、椿が抱えているお煎餅が入っていた一斗缶。
 中身はすでに椿のお腹の中。
「冬織さん、気を確かにっ。椿、逃げてー」
 ただならぬ空気に、シャナっちは、震えながらも、事態打開に向けて、前向きに発言した。
「‥‥‥ま、シャナ殿がそう言うなら仕方あるまいか」
 意外に素直に従ったとおる。
 その時、ちょうど部屋の扉がノックされた。

「Stagione、『日々是戦 〜Never give up!〜』」
 コールされてまず登場したのはとおるが正面に座する。
 そして、後の二人が、仕えるかのように後ろから登場し、控える。
 着物の袖をたすき掛けで止めると、シャナっちから、バチを受け取り、渾身の一打を打つとおる。
 そして、かけ声と共に、照明が明るくなり、曲が始まった。
 エレキギターと尺八の奇妙な、しかし絶妙なコラボレーション。
 とおるが、黒塗りの上品な下駄とぽーんと後ろに脱ぎ捨てながら立ち上がり、スタンドマイクをがっちりと掴んだ。

何処へ向かい歩くの 何を目指し生きるの
漠然とした不安抱えながら 今日も満員電車へ突撃!
人波に押されながら 皆今日も踏ん張り戦ってる

黙っても時は流れる 黙らなくても流れる
どうせどっちも同じなら 知りたい 自分探しに挑戦!
何度失敗しても 起死回生の悪足掻きRevenge

「どうせ出来っこない」そんな自己暗示蹴り飛ばせ
人は 心は捕らえようなく いつだって可能性無限大
叶わない願いなんてない そう信じて戦い続ける
一度の人生 毎日挑戦 見渡せばほら たくさんの戦友(とも)達

 アップテンポな曲に、とおるの気合いの入った蹴りと歌声、そこに所々で椿が加わる。
 そして、椿、シャナっちのそれぞれのソロのあと、歌は最高潮に向かっていく。

Going my way 歩き出せ 踏み出す一歩が創る道
強引に前へ 体進めれば いつか辿り着く場所がある

Never give up 気にするな 自分らしくていいMy life
弱気もアリ 偶には泣いたって また笑えばいい

何かにつまづいた時は 空に手をかざしてみよう
世界はいつも必ず 戦う君と繋がっているから
Never give up, Let’s go!

 歌が終わると、しゃなっちと椿が、トオルの手を取り、三人で、丁寧に頭を下げる。
 そして、三人は観客の拍手に包まれた。


●蜜月
「蜜月。『戀歌』」

 名前が呼ばれて登場した二人。
 花のコサージュがついたお揃いの帽子に、お揃いのギター。
 
 二人の少しぎこちないギターの音は、それでも元気良く、リズムを奏でる。
 そして、おーかの緊張した声が響く。
 それは、まるで、純真な男の子のような。

赤く染まる見知らぬ町で、僕は君に出会った
驚いた瞳と、すぐに微笑んだ柔らかな唇に
不覚にも心を奪われた僕はただ
茜に染まる君の髪を見つめていた

 おーかが歌い終わると、続けて相方が歌う。
 そして、また、おーかにバトンが戻される。

昔と同じ笑い声も
お姉さんぶった話し方も
僕の知ってる君だけれど
薫風になびく君からは確かに
僕の知らない匂いがした

 バトンタッチが繰り返されて行く中、二人のギターが、一瞬止まり、それから徐々に音を増していく。

不覚にも君の瞳を見れなくて
言葉を上手く紡げなくて
僕の唇は壊れたレコードみたく「あの‥‥」ばかりを繰り返す