春の修学旅行ドラマSPアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 うのじ
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 3万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 05/18〜05/22

●本文

「‥‥うちって『人外対応及び処理部』略して『対外部』ですよね?」
「‥‥‥そうだけど?」
 不満気の新人の言葉に、先輩が疲れた口調で返事をした。
「‥‥いま、うちらがやってる事って‥‥」
「‥‥‥えーと、大量の食料運びね」
 彼らの腕には、お盆が四つ積み重なっている。
 目的地は宴会ホール。
 ここは、修学旅行シーズンでてんてこ舞いの旅館なのだ。

 学生達の食欲を満たした後、ようやっと自分たちの食事が始まる。
「なんで、うちらがこんな事しなきゃいけないんですか?」
 先ほど不満の声を上げた新人がまた、不満の声を上げた。
「それはね‥‥、学生の修学旅行のせいなのよ‥‥」
 先輩の説明はこうだった。
 修学旅行で学生達が行く場所と言えば、基本的に、神社仏閣。
 そこは、歴史がある場所であると共に、それとイコールにして、霊が溜まりやすい場所でもあるのだ。
 そういった場所に霊感の強い人間が近づくと、霊を持ち帰ってしまうことがあるのだ。
 そして、たいてい学年に一人ぐらいは、霊感が強い生徒が居る。
 つまり、霊を持ってきてしまう学生がいるのだ。
「‥‥なるほど。で、どうなんですか? 今日は?」
「‥‥‥一人、霊感が強そうな女の子がいたんだけど、今、ちょっと見に行って貰ってるから」
 そう言うなり、天井からすうぅと下りてくる女性がいた。
「さっきの子ですけど、連れてきてますね。それも凶悪なの」
 少し震えながらの報告。
 下りてきた女性も幽霊なのだが、幽霊が幽霊を怖がるという、すこし、おかしな図になってしまっている。
「そう。気をつけなくちゃいけないわね。今夜は寝れないわよ」
「えーー!? 俺、へとへとなのに‥‥‥」


「導入はこんな感じです」
「と言うことは、ロケ?」
 スタッフの一人の質問に、前で説明している人物がそれに答える。
「ロケシーンも作るつもりだけど、基本的に、セットで済ますつもり。さすがに、本物が使えない所もあるし」
「やっぱり、撮影所B−3なんですか?」
 撮影所B−3。
 安くて、広くて、何時でも使える。
 という三拍子揃った撮影場所だ。
 しかし、その理由というのが、霊がでるという噂があるからなのだが。
「当たり。よく分かってるね」
 責任者の言葉に、一同からため息が漏れる。
「はいはい。ただの噂なんだから、気にしない気にしない。じゃあ、明日から始めるから、それぞれ、仕事バッチリお願いしますね」

●今回の参加者

 fa0262 姉川小紅(24歳・♀・パンダ)
 fa0959 シルクリア(20歳・♀・猫)
 fa1276 玖條 響(18歳・♂・竜)
 fa1338 富垣 美恵利(20歳・♀・狐)
 fa1420 神楽坂 紫翠(25歳・♂・鴉)
 fa2044 蘇芳蒼緋(23歳・♂・一角獣)
 fa3280 長澤 巳緒(18歳・♀・猫)
 fa3567 風祭 美城夜(27歳・♂・蝙蝠)

●リプレイ本文

●撮影:撮影所編
 旅館の玄関風のセットの中、フロントには、フロント係に扮した風祭 美城夜(fa3567)が立っている。
 女子学生役の4人組が自由行動ということで外に出ようとする姿に、いってらっしゃいませ、と律儀にお辞儀をしながら見送るミキ。
 廊下のほうから声が響く。
「じゃあ皆、俺の仕事を増やさない為にも、くれぐれも怪我だけはするなよ?」
 笑顔で登場した保険医役の蘇芳蒼緋(fa2044)が手を振る。
 キャーキャーと黄色い声を上げながら手を振り返しているのは女子学生たちだ。
 ひとしきり彼女たちを送り出すと、ふぅと息をつく蒼。
 そこに、大きな声が響く。
「お兄ちゃん!」
 蒼は驚いたように振り返ると、そこには弟役の玖條 響(fa1276)が、今度は逆にこちらに向かって手を振っている。
「なんだ、来てたのか」
「今回の出張、まぜてもらったんだ」
「そうか。あんまり無理するなよ」
 蒼はすれ違いざまにポケットから手を出し響の肩をぽんと叩く。
 その手には、チョコレート。
 しっかりと、スポンサーの商品だった。

「カーーット!」
 どやどやどや。
 今までの作られた騒がしさとは別の、本物の人が動く音。
「久しぶりの遭遇のシーン、お疲れさま。じゃあ、つぎは、対外部の集合のところ」
 メガホンから指示がでる。
「‥‥でも、その前に、30分休憩します」

 控え室のテーブルの上には、プリンやチョコクッキー、色とりどりの煎餅、抹茶のセット、紅茶のセットなど様々な物が置いてあった。
 蒼と響、そしてミキの三人はそれぞれ思い思いの椅子に座り、一息つく。
「おつかれさまです」
「おつかれさま」
 休んでいるとシルクリア(fa0959)と長澤 巳緒(fa3280)が控え室にやってきた。
「ああ、おつかれさま」
 返事をしながら、テーブルの上のプリンをすすめる蒼。
「どこかに行ってたんですか?」
 ブルーベリーティーをみんなのコップに注ぎながらの響の質問に、シルクが答える。
「はい、ちょっとお札を」
 シルクの手にあるお札は撮影用ではなく、本物のものだった。
 巳緒が続ける。
「あと、お供えっていうか、お菓子とかを少々」
 二人の答えに納得する響。
「たしか、ここ、『出る』んでしたね、お疲れさまです」
「まぁね。でも、なんだかんだで害は無いし、スタジオの守護霊って感じですよね。今回も無事に撮影が出来ますようにってお願いしてきました」
 巳緒の言葉にうんうんと頷くシルク。
「じゃあ、俺も、この焼きプリン、お供えしてくるか」
「え? もったいない。それなら僕が食べますよ」
 プリンを持った蒼が立ち上がるのを止める響。
「玖條さん、健啖家なのは役のほうじゃなかったのかな」
 ミキが笑うと、それに釣られて笑う一同。
 和やかな空気の中、撮影は進んでいく。


●撮影:ロケ地編
「どうかしら? 変じゃない?」
 袖を軽く持ちながらクルッと回転してみせたのは富垣 美恵利(fa1338)だ。
 おー、と歓声をあげたのは同じ衣装に身を包んでいる姉川小紅(fa0262)。
「美恵利ちゃん、さすがー」
 お互い仲居さんの格好で、これから本物の旅館の宴会場を借りて撮影するところだ。
 横ではバスガイド姿の巳緒を、携帯電話で撮っているカメラマンスタッフの姿もある。
 携帯電話のカメラも本職のカメラマンに使われるとは思ってないだろう、いざ撮影が始まると、カメラマンのほうがなかなか納得せず、撮影は長時間に及んでいるようだ。
「さすが、ですか。いえ、小紅さんのほうがお似合いですよ。清楚な感じで、アップの髪も素敵ですし」
 照れながら言う美恵利だったが、続く小紅の言葉で動きが止まる。
「うん、さすがえっちっぽいー。すごいよー」
「え?」
「おみ足のチラリズムとか、さすが、計算され尽くしてるってかんじ」
 うんうんと頷く小紅に、横で苦笑しているのは、彼女たちの上司になる女将役の神楽坂 紫翠(fa1420)。
「べ、べつに計算とかでは‥‥」
 先ほどより照れ度が増し、困り顔の美恵利。
「うん、わかってるけどー」
 笑っている小紅を神楽が止める。
「‥‥二人とも、魅力的‥‥だから、‥‥大丈夫だ」
 フォローになっていないような気もしないでもないが、事態は丸く収まったようで、別の話題に移った。
「そういえば、さっき撮影した平安神宮。ちょうど結婚式やってたみたい。白無垢の人、見ちゃった。綺麗だったー。あそこで結婚式できるんだねー」
「そうですか、行って下されば私も観に行きましたのに。そうそう、平安京と言えば‥‥」
 美恵利も気を取り直し、京都ドラマ撮影によく使われる平安京について、詳しく説明してくれる。
 女性二人のいつまでも続くおしゃべりに、またも取り残される神楽。
 そして、気がつく。
「‥‥二人とも、衣装合わせしてたんだろ? ‥‥大丈夫なのか?」
「あ、忘れてたー」
「そうでした! これで、大丈夫ですよね?」
 二人の反応に再び苦笑する神楽。
 撮影まで、退屈する事はないように思えた。


●撮影:バトル編
「逃がしません!」
「‥‥逃がさないよ」
 シルクとミキの声が重なる。
 多勢に無勢と判断した敵の霊が逃走しようとした時の二人の行動はすばやかった。
 注連縄がスルスルと伸びて、行く手を遮ると、ミキの合図で廊下の黒曜石が妖しく光りだす。
 赤と青の二重の光りの壁にぶつかり、逃げ場を失う相手。
 そして相手の足下の畳に突き刺さる3本のナイフ。
「そろそろ、年貢の納め時ね」
 目の前で構えを取るのはスーツ姿の巳緒だ。
 偽物のナイフとはいえ、当たれば痛い。
 無事に足下のきわどい所に刺さったのは、今まで一生懸命練習してきたおかげだろう。
 相手が目の前の巳緒に気を取られている所に、襖が盛大に突き破られる。
「どりゃー!」
 襖から登場したのは仲居姿のままの小紅。
 跳び蹴りからの着地に成功し、そのまま、手にした数珠で相手を殴‥‥ろうとしたところで、トラブル発生。
「にぎゃーー」
 小紅が盛大に転けた。

「カーーーット! 小紅さん、怪我はだいじょうぶですかー?」
「あいたたた、うん、大丈夫ー」
 NGシーンとなってしまった。
「畳は滑りますからね、皆さん、足下に気をつけて下さいね」
 そう言いながら、それぞれの足の裏の滑り止めの薄いゴム膜が切れてないか確認していくスタッフ。
 しばらくして、撮影が再開される。
「じゃあ、気を取り直して、行きましょう。これが撮り終わったら、打ち上げですから。みなさんが用意してたり買ってたりしてある銘菓や銘酒、銘茶、オリジナル七味など、いっぱいありますから、美味しく頂きましょう! ‥‥でも、いつの間に用意してたんですか?」
「だって、折角だものー」
「ですよねー」
 と、数時間後の健全な打ち上げを待ちに待っている人も居たりする。
「では、打ち上げに向かって、前進!」
 スタッフの言葉に、おーっと気合いを入れ直す一同。
「‥‥なんだか、飲んだり食べたり‥‥ばっかりな気がするな」
 すでに撮り終わっている神楽が誰にも聞こえない静かな声で突っ込みをいれる。
「では、シーン12カット3、テイク2、行きます」
 カンっと、カチンコが鳴り、カメラが回りはじめた。


●春の修学旅行ドラマSP
 バスの中、たくさんの学生が注目しているのが、バスガイド。
「みなさん、おはようございます。本日、ガイドを担当させていただきます、烏丸杏と言います。宜しくお願いします」
 ここで起こる拍手。
 まぁ、学生と言えどもこういう所はバス旅行慣れしているのである。
 このバスの中には、対外部のメンバーが3人居た。
 ガイドに扮する烏丸、臨時の保険医として同行している新坂亮。そして、クラスの担任の先生だ。
 先生は一般人なのだが、大川絹代がとりついているのだ。
「絹っち、波長の合う人がいてよかったね」
 独り言を言う烏丸。
 離れている場所で担任の先生が頷いた。
 なぜ、このバスに三名もの人員が送られているのか、それは一人の少女が関係していた。
 この少女は、いわゆる霊感少女なのだ。
 それもかなり強力な霊感能力があり、今でさえ、担任の先生を不思議そうな顔でみている。
 そんな中、三人それぞれが、その少女を見守りながら、修学旅行に同行していく。

 京都の旅館で合流したのは、さらに三人。
 バイトで同行している新坂亮の弟の新坂蓮。
 仲居として潜入している堺日向子と、フィール・コリンズ。京都という土地柄、外国語を話せるという理由でフィールも仲居として潜入する事が出来た。
 そして、フロントにいるのが御厨双葉だ。
 各自がフロアに先手を打って罠を張ったり、旅館の間取りを頭にたたき込んでいる。
 ‥‥もちろん、旅館の仕事をしながら、だ。
「あー、死ぬー、おもいー」
 言いながら、五段重ねのお盆を運ぶ堺。
「堺さん、重いなら、そんなに運ばなくても‥‥」
 そう言うフィールの方は三段しか持っていない。
 並び終えると、生徒達の食事
 もちろん、亮は先生ということで、同席している。
 方や食事、方や生徒のおかわりにてんてこ舞いという、同じ同僚とは思えない光景が目の前に広がる。
 生徒たちが一息ついた後、旅館組の面々がようやっと食事になる。
 蓮の食べっぷりに圧倒される一同だったが、堺が、ねぇ聞いて! と話を切り出す。
「あの教師、生徒に隠れてあたしのお尻触ったー」
 よほど腹に据えかねていたのだろう。
 しかし、旅館の女将ははっきりと言う。
「そんなの、序の口よ。私なんて‥‥‥だったんだから」
 女将の言葉に、驚きの声が上がる。
「‥‥そんなお客さんがいるなんて‥‥」
「そうそう。だから、まだまだよ」
 そう言うと女将は仕事に向かう。
 残ったのは、対外部のメンバーのみ。
 ここから本格的な作戦会議が始まった。
 すでに敵は入り込んでいるのだ。

 夜、目を付けていた少女が不自然に廊下を歩きだした。
 行く手を遮るようにその目の前に立ったのは、亮。
「‥‥どこに行くんだい?」
 その言葉に目を虚ろにする少女は、右手を上げ、振り下ろす。
 魑魅魍魎が召喚され、亮に襲い掛かる。
 それを飛び出してきた蓮が庇うように右手を突き出す。
 蓮の右手に触れた霊は、その手に吸収されるように消えていった。
「大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。あの子は‥‥この隙に逃げたか。まずは目の前の雑魚どもをなんとかしないとな」
「了解!」
 元気良く返事をする弟に、懐から札を取り出す兄。
「悪いけど、お呼びじゃないんでさっさと消えてもらおうか」
 二人のコンビネーションで、確実に敵を消し去っていく。

 逃げまどう虚ろな目の少女を光の槍が貫く。
「っっ!!」
 放ったのは、白いフードを被ったフィールだった。
「‥‥まったく、お痛が過ぎますよ。その子をどうするつもりなのですか?」
 丁寧な口調だが、その顔は笑ってはいない。
 少女の元に投げ込まれる紫の石と水晶。
 フィールの後ろから登場した御厨の合図で、光り輝き、少女を、いや、とりついた悪霊を苦しめる。
 たまらず少女から逃げ出す悪霊。
 その時を待っていた大川が追う。
 同じ霊の身体を持つだけに、見失いにくい為だ。
 フィールの横には御厨、そして、未だに仲居の姿の堺に逆にスーツ姿の烏丸。さらに先ほどの新坂兄弟も合流し、大川の後を追う。

 戦いは、召喚してくる魑魅魍魎も放っておくわけにもいかないため戦力が分断されることもあったものの、敵を追いつめ、大川と御厨のダブル結界によって逃げ道を塞ぐことに成功すると、後は分断された戦力が終結し、無事に退治する事に成功した。
 しかし、戦いの現場は、ちょっと‥‥多少‥いや、すさまじくいろいろな物が壊れてしまったのだが。

 一同がほっとしているところに登場したのは旅館の女将。
 大きな音がしたためだろう、駆けつけてきた女将は、現場を観るなり、笑顔が凍った。
「あら? ずいぶんと壊れてますわ‥‥困りましたわ、壊した分は、きっちりと働いて弁償してもらいます」
 何も知らない女将の超笑顔の言葉。
 実はかなり怒っているようで、それを感じた対外部は、頭を抱えた。
 どうやら悪霊よりも女将の方が強敵のようだ。


スタッフロール(抜粋)
新坂 亮‥‥蘇芳蒼緋
新坂 蓮‥‥玖條 響
堺日向子‥‥姉川小紅
大川絹代‥‥シルクリア
烏丸 杏‥‥長澤巳緒
御厨双葉‥‥風祭美城夜
フィール・コリンズ‥‥富垣美恵利
橘 沙織(旅館の女将)‥‥神楽坂紫翠

●ピンナップ


富垣 美恵利(fa1338
PCツインピンナップ
嘩月 彰