show power moreアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 うのじ
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 1.3万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 06/02〜06/06

●本文

 夜に浮かぶビルの夜景。
 向こう側のビルの群の所々に明かりが灯っている。
 そして、さらにその上には、星空。
 きっと、世界には存在できる光の量は決まっているのだろう。
 地上の光が多くなればなるほど、星空の光は小さくなっていく。
 おそらく、これからの一時、星空の光は、全くなくなってしまうに違いない。
 なぜならば、この屋上から、最大級の光が放たれるのだから。

「ふーーー」
 望月のため息。
 それは、何とも言えないそのため息は、やり遂げた男、という雰囲気を醸し出していた。
「どうしたんですか、望月さん?」
「いや、それがさ、屋上風の新ステージもできあがった! と思ったら、なんだか、達成感というか、幸福感で満たされちゃってさー」
「あー、それで、まったりモードなんですね」
「そうなんだよ。これが五月病ってやつかな?」
「んー、まったく別物だとおもいますよ」
 さりげなく、直球で否定するスタッフ。
「そうかなぁ」
 どこか不満げな望月。
「ところで、今回のテーマは、もう5月も終わりそうですけど、五月病をぶっ飛ばせ、『元気』をもっと。という感じですよね? 次回は、『花嫁』でいいんですか?」
「うん、『結婚』にするか、いまだに迷ってはいるんだけど、ジューンブライドで行こうと思ってるよ。その次はちょっとダーティーに『お金』かなぁ。‥‥お、先のことを考えると、なんだか、やる気がでてきた。やるぞー」

 画面の真ん中にあるギターと剣のシンボル。
 シンボルに被さるように、番組タイトルである「魂を響かせろ! Battle the Rock」の文字が踊る。
 続いて「the sound of power」と今回のテーマ。
 ここに、アーティストの新たなるバトルが、始まった。

●今回の参加者

 fa0124 早河恭司(21歳・♂・狼)
 fa0129 草薙歴(19歳・♀・蛇)
 fa0379 星野 宇海(26歳・♀・竜)
 fa0847 富士川・千春(18歳・♀・蝙蝠)
 fa1376 ラシア・エルミナール(17歳・♀・蝙蝠)
 fa1514 嶺雅(20歳・♂・蝙蝠)
 fa3398 水威 礼久(21歳・♂・狼)
 fa3608 黒羽 上総(23歳・♂・蝙蝠)

●リプレイ本文

●オープニング
 コミカルなアニメーションのオープニング。
 白い服の男はヘリから飛び降り、黒い服の男はリムジンから登場する。
 そして、二人は赤いカーペットの上を歩き、二振りの剣とギターの紋章がついたビルの中へ入っていった。
 画面が切り替わり、今度登場したのは本物の二人組の男。
 白と黒のスーツを身にまとい、ステージの上に立つと、そこにおかれたマイクを握る。
「‥‥‥コンクリートジャングルの中で始まるミュージシャンたちのサバイバル」
「今回のテーマは、『元気』。今日はここで、命の充電をしていってくれ!」
「今日、登場してくれるミュージシャンはこの4組!」

 最初に登場したのは、草薙歴(fa0129)と富士川・千春(fa0847)。
 二人がドアをくぐると、照明とカメラが向けられる。
「天を目指す美しくも危険な登り龍たち、『皐月』」
 歴はクールにカメラを多少睨み付けるかのように構える。
 一方、はるちーのほうは笑顔で手を振った。

「仲間との別れはどういった意味があるのか?! 共にグループを超えたこの二人、『improvisors』!」
 次に呼ばれたのはラシア・エルミナール(fa1376)と早河恭司(fa0124)の二人。
 どこかの制服を着崩したような衣装の二人。
 少し緊張気味だったのか、新しい登場の仕方に戸惑っているのか、リアクションが少ないラシア。
 それを見た恭司がラシアの肩に軽く手を置き、空いた方の手をカメラに向かって振った。
 恭司の行動をうけ、ラシアも笑いながら手を振る。

「『Wheel of Fortune』から飛び出してきた二人組。『ブルーレイス』」
 コールされた星野 宇海(fa0379)は、ウィンクして、投げキッス。
 手が伸びきると、白いシャツから黒のキャミソールがちらりと覗いた。
 水威 礼久(fa3398)のほうは、投げキッスはせずに、そのまま笑顔をカメラに向けた。

「激突必死か?! 新メンバーで登場! 今回は二人の『flicker』」
 最後にコールされたのが嶺雅(fa1514)と黒羽 上総(fa3608)だ。
 黒で統一された二人。
 レイはヘソだしタンクトップにショートパンツと、ちょいエロセクシー。
 クロは、タンクトップに袖無しコートを羽織り、ちょいクールセクシー。
 二人は、どこかワルな感じを漂わせ、ニヤリと笑った。

 新しくなった入り口から現れた4組、それぞれの紹介が終わり、カメラを司会の二人に戻す。
 白と黒の司会者は、番組の開始を宣言する。
「それでは、『Battle the Rock』。スタート!」


●皐月
「だ、大丈夫かな?」
 控え室で、緊張気味のはるちー。
「? 何がだ?」
 首を傾げる歴。
「まわりはすごい方々ばかりだし、今回がこの番組初だから慣てなくって」
「ああ、そのことか。大丈夫だろう。‥‥もっとも、私も初で慣れているわけでないが。」
 苦笑いしながら歴は続ける。
「富士川は舞台慣れしてるだろう? いつも通りやれば問題ないだろう。いつもはどんな気持ちなんだ?」
 その言葉に頷くはるちー。
「‥‥うん、歌うのが楽しいなって」
「では、いつも通りで行こう。行けばなんとかなるさ」
 歴の静かな笑顔に、はるちーも釣られる。
「袖すり合うが縁ならば、流れ流れて、この場所へ、たどり着いたはこの世の運命。富士川千春、運命にしたがい、今日、全てを歌い上げます!」
「‥‥‥なんだ、それは?」
「いえ、いつも通りに?」

「皐月。『May』」
 コールされ、それぞれの位置につく。
 ボーカルの歴に、真紅のギターをもったはるちー。
 最初はゆったりと交互に歌い始めた。

白濁のウォール 怠惰の雲が仕事場に漂い 俺の心を曇らせて
何が黄金なのかと 関係無い休日について無意味な思考を繰り返す
灰色のヴェール 哀しみの雨が窓辺越しに キミの瞳を曇らせて
明日は見えなくとも 嵐(雨)のち晴れと季節の雷は毎年告げていたよ

 1番が終わったところで、曲が緩やかに加速し始める。
 そして、歴の歌声も激しくなっていく。

涙枯れるまで泣いてもいい あの日の願いは遥か彼方の地平へと消え行き
変わらぬ空 変わってしまった俺の眼に 届いた光浴びて空泳ぐ鯉の
雫が頬を伝ったあと 澄んだ虹がかかる 僕の願いは遠いキミに届くだろう
同じ空の下 僕の元にもキミの放つ七色が 虹の端(橋)から届きますように

 舞台が、曇りに、雨に、豪雨に、そして虹に、めまぐるしく変わっていく。
 ここで始めての二人の声が重なった

『高く高くあるとする姿に 目を潤ませ声援(エール)呟く』

雲間から光が零れ落ちたら キミの笑顔が僕を照らす
空高く 龍への道を駆け抜ける 少年の願い
キミならあの頃の 瞳と翼 再び広げて
変わり果てた今はもう構わない 大空へと飛んで行け、と

『嗚呼 風に逆らって 何も言わず 前をただ向いて』


●improvisors
 ラシアの今の姿は、衣装である軽く着崩したブレザーに、手にはハリセン。
「さて、いってみるかね」
「‥‥その格好で、どこに?」
 きょとんとした顔の恭司。
「隣の控え室。宣戦布告に、殴り込みにさ」
「ああ、理解したけど。でも、武器がハリセンじゃギャグにしかならない気がする」
 冷静な恭司のつっこみに、足が止まるラシア。
「‥‥やっぱり? あたしのキャラじゃないとは思いつつ、折角持ってるからさ」
「どうせなら、これで」
 と、恭司はこれから使うエレキギターを持ち上げる。
「これ?」
「これで相手を襲うとロッカーっぽいかな、と。デスメタルみたいにギター壊す感じで」
「‥‥‥でもあたしボーカルだからな、マイクスタンドとかじゃないか?」
「マイクスタンドはここにはないからなぁ」
 無いことが分かっているため、探すふりだけの恭司に、ラシアが笑いながら手を差し出した。
「じゃ、それでいいや。そのギターで行ってくる、貸して」
「ダメ、壊れるから」
 
「improvisors。『encourage』」
 コールの後、キーンコーンカーンコーン、懐かしい音が鳴り響く。
 この懐かしい響きに、観客は笑ったり、リラックスしたり、はたまた緊張する人がいたり。
 しかし、二人が飛び出してくると、皆がこれから始まるライブへの緊張感と期待感に包まれた。
 ラシアはいつも通りマイクを持って。
 そして、恭司は、いつもとは違い、ベースギターではなくギターを持って。
 二人がそれぞれの位置につく。

『ずっと』塞ぎこんでばかりじゃなくて
『もっと』楽しい顔でいようよ
『きっと』その笑顔でいれば 何にも負けはしないよ

 のっけから強烈にアップテンポの二人。
 主旋律のギターと歌声、それも、予想に反して、ラシアだけでなく、恭司の歌声が響く。

落ち込む事 時にはあるけど 
気にしてたら キリがないよね

嫌な気分振り払って
握り潰し 遠くへ投げちゃえ!

Smell one’s oats. 怖がる事無い
It shows courage. 弱気蹴飛ばそう

楽しい事ばかりじゃないけど(However)
うじうじ悩んでたって 始まらない!

 そして、最後に最初の旋律に戻った。

もっと 明るく元気出してよ
きっと 楽しくなるからwowow!
ずっと 笑顔のままでいれば 問題ないよ All are good!

 ぎゃんっ! っと、歌が締められる。
 二人が退場するときに響いていたのは、学校のチャイムではなく、歓声だった。


●ブルーレイス
 ミュージシャンの控え室には違和感のあるスポーツ用品店の紙袋。
 星海の持ち物なのは、彼女が手にしている事からも分かる。
「ところで、クレイスさんも少し体力付けた方がと思って、持ってきました」
 がさごそと紙袋の中からとりだしたのは、一対のパワーリスト。
 それも2kgとかなり重めだ。
「歌を歌うのも、演奏するのも、やっぱり体力がないといけませんわ」
 それを笑顔で渡そうする星海。
 しかし、それには及ばなかった。
「大丈夫だ。ちゃんとつけて来たぜ」
 腕にはまったパワーリストを星海に見せるクレイス。
 感嘆の声をあげる星海。
「さすがです、クレイスさん! やはり、歌に関しては一切の妥協はなしで行くべきですものね」
 星海の言葉をうけ、クレイスは、頭に浮かんだある女性の姿をブンブンと頭を振って追い出す。
「ああ、今は宇海ねーさんと作ったこの曲を大事にして、精一杯行こう。邪念は無しだ」
 そういうと、パワーリストを外すクレイス。
 それに合わせて、同じく外す星海。
 二人の戦闘能力が上がった‥‥‥かもしれない。

「ブルーレイス。『Cheer up!』」
 コールされて登場する二人。
 薄暗いステージの上に、白い足が浮かぶ。
 星海が裸足になったからだ。
 星海の準備が整ったのをみて、クレイスのゆったりとしたギターを弾き始める。

自信過剰なあの子の彼氏
挙げればキリがない不満の洪水
いつもは私が妬いちゃうくらい熱い二人なのに こんな夜もあるんだね

 ここからは全速力で突っ走って行くかのように、ゆったりとした曲調が一転して、激しくなった。

大丈夫、信じた道はきっと一つに繋がっているよ
時には逆方向 行ったり来たり別々なのは きっと恋のスパイス

悩む必要なんてない
今はお互いぶつけ合って行こう 
熱くなって冷めて前より堅くなる 

 星海が手を伸ばすと、クレイスはギターを止め、ハイタッチをする。
 そして、ここでクレイスのソロの演奏が入った。
 ギターソロが終わりバトンが返されると、さらに音色と歌声が最高潮に駆け登っていく。
 先ほどまでも歌を動きで表現していた星海が、今度はチッチッと指を振る。

素直じゃないねよ 二人とも
私があなたの背中押す追い風になるよ
恋の五月病なんて吹き飛ばしちゃえ!

 吹き飛ばしちゃえ、と星海のパンチ。
 歌に殴り飛ばされたかのように、会場のどこにも、疲れた顔はなかった。


●flicker
「ふっふっふっふっふっふ」
 レイの不気味な笑い声に、クロが苦笑する。
「おいおい、大丈夫か? 嶺雅」
「だいじゅうぶ」
「‥‥言えてないぞ?」
「はっ! 大丈夫! タンバリンを観ていたら、つい」
 そう言うレイの手にはタンバリンがあった。
「タンバリンにそこまで?」
「遂に念願のタンバリンデビューだからネ!」
 今度のレイはとびきりの笑顔。
「なるほどな。まぁ、俺もこの番組デビューだから、ちょうどいいか。思いっきり楽しませてもらおう」
 クロの言葉に頷くレイ。
「そうダネ。思いっきり楽しんでこよう。‥‥‥転ばない程度に」

「flicker。『trick or fight!』」
 コールされ、登場するレイとクロ。
 それぞれの手には、愛用のタンバリンとギター。
 まずレイの歌のような台詞から始まった。
「一緒に行こう、未来へ向けて レディーーーッゴーー!!」
 レディの後を十分に溜めた後、ゴーー! と片手を上に上げる。
 それを合図にクロのギターが元気良く走り出した。

何塞いだ顔してるのさ 今はそんな時じゃないだろ
何があったか知らないけれど そんなもの吹き飛ばしてしまえ

さあ、顔あげて 目の前に何がある?
そう、君の視線の先には 俺の笑顔があるだろう?

 リズミカルに鳴らされるレイのタンバリン。
 ハイテンションに響きわたる、クロのギター。
 今にも跳ねだしそうな程に元気なレイの歌声。
 そんなレイが、曲中には歌詞で、間奏中には動きで、笑顔をくれるように、そして動きを合わせるように、観客を煽りに煽りまくる。
 そして、ついに、本当に会場が跳ねた。
 
Jump!(Jump!)その想い届く所まで
Dash!(Dash!)その想い伝えるために
想いの強さで 人は変われる

 ジャンプ、ダッシュ、とレイとクロだけでなく、会場全体が動き回る。
 もちろん、本当にダッシュができるのはレイだけだったが。

More!(More!)笑って、もっともっと
Yes!(Yes!)君のその笑顔こそ
俺にとって何よりのご馳走

これこそ不思議な SMILE POWER
俺と君とで GIVE AND TAKE

辛くなったら思い出して 俺の笑顔を
そうすればまた 元気が湧いてくるはずだから
ねえ、今はどんな気分? さっきまでとは違うだろ?
きっともう大丈夫 どんな道でも進んでいける

一緒に行こう
未来へ向けて READY GO!!


●エンディング
 4組の演奏が終わり、再び、司会者の二人組が登場する。
 いつもどおり、投票が促される。
「それでは、『judge』。スタート!」
 観客たちが各自の持っている10枚のコイン、それが舞台に設置してある各ミュージシャンの箱に向かって投げ入れる。
 しばらくして、舞台のに設置されているエレベーターの上の電光掲示板が点灯する。
「3」
「2」
「1」
「0」
 エレベーターの扉が開く。

 中からでてきたのは、一組の男女。
 星海とクレイスの二人だ。
 二人が歓声を受けていると『ブルーレイス』の『Cheer up!』のイントロが会場に流れる。
 そして、二人がギターを、マイクをそれぞれに手に持ち、もう一度、熱唱する。 

想いの丈が強いほど反発もするけど
傍からみれば二人は同じ道の上
進むスピードは違うけど
いつかはきっと同じ場所に辿り着ける

ほら元気出して行こうよ!
愚痴ならいくらでも聞くよ?
悩んだなら一度立ち止まって
振り返ってみて
絆の深さ見えるから
泣き腫らした目は相手のことが今も好きだっていう証拠
素直じゃないねよ 二人とも
私があなたの背中押す追い風になるよ
恋の五月病なんて吹き飛ばしちゃえ!

 画面は、星海のパンチのアップ。
 ちょうど、それが番組のエンディングロールの終了と重なり、その後、画面がCMに切り替わった。