NW:狙われた修道院ヨーロッパ

種類 ショート
担当 うのじ
芸能 1Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 難しい
報酬 3.3万円
参加人数 12人
サポート 0人
期間 05/29〜06/02

●本文

 俺の名前は、ポール・キャティエ。
 職業、オカルト研究家。
 オカルト番組にゲストとして呼ばれる事もあれば、雑誌にコラムも書いたり、本を出したりもしている。
 この前書いたコラム、『宇宙人はすでに地球にいる?! 宇宙人目撃情報と海豚の類似点25』はこの業界に一大センセーションを巻き起こしたと自負している。
 しかし、それは表の顔。
 裏では、獣人の立場のために、様々な事件を解決している、獣人の守護者、いわばキーパーの一人なのだ。
 北に獣人の発見者がいると聞けば、話の信憑性を無くすために駆けずりまわり、南にオーパーツが発見されたと聞けば、こっそり頂戴するべく忍び込んだりする。

 そんな俺が、今いるのは、イギリスのウィンチェスター。
 道に落ちている新聞を拾い上げ、ざっと目を通す。
 すると、気になる記事があった。

『都市の中に猛獣!? ついに三人目の犠牲者』

 ここ、ウィンチェスターで奇妙な死体が発見されているというものだ。
 今までに発見された死体は三つ。
 すべて、犯行は深夜に行われ、どれも、動物に喰いちぎられているように発見されているらしい。
 もっとも、これは警察発表にすぎない。
 おそらく、警察は、一般には公開せず、犯人しか知らない情報をもっているはずだ。
 しかし、俺の鼻はごまかせなかった。
 この事件には獣人の天敵であるナイトウォーカーの匂いがするのだ。

 調べていくと、遺体以上に奇妙なことが分かった。
 被害者の3人全て、ある潰れた修道院を購入した矢先に、死亡しているのだ。
 不動産屋たちには有名な話しらしく、この建物の価値は下落の一方だという。
 値段を聞いてみると、確かに、格安だった。 
 購入する意向を伝えると、何度も、本当か? と聞いた後、売ってくれた。

 一件のパブに入る。
 ここには犯人を見たと言う目撃者を自称する男がいるという話しだった。
 昼間から酔いつぶれている男、それが彼だった。
 彼の話を聞いてみると、鼠が大きくなり、人を襲ったと言う。
 警察は、彼の話をまったく信じなかったらしく、警察の態度が気に入らないせいで、昼間から酔いつぶれている、という話を最後に付け加えてくれた。
 自己紹介をし、感謝の言葉を述べると、彼は慌てて本を取りだし、あんたのファンだ。サインをくれと言った。
 サインに関しては快く応じ、ビールを一杯奢ってから店を出た。

 俺はナイトウォーカーの関連の事件である事を確信した。
 ここから先は荒事になる。
 一人では危険すぎるし、なにより俺は荒事は得意じゃない。
 ここは健全な獣人らしく、WEAに協力を求めることにしよう。

●今回の参加者

 fa0261 紅・燐香(25歳・♀・兎)
 fa1522 ゼクスト・リヴァン(17歳・♂・狼)
 fa1683 久遠(27歳・♂・狐)
 fa1886 ディンゴ・ドラッヘン(40歳・♂・竜)
 fa2270 ユージン(17歳・♂・一角獣)
 fa2609 朱凰 夜魅子(17歳・♀・竜)
 fa3453 天目一個(26歳・♀・熊)
 fa3489 森木 久美(18歳・♀・熊)
 fa3550 須賀 直己(24歳・♂・虎)
 fa3572 春乃(22歳・♀・鴉)
 fa3610 ユキイ・アバンサール(36歳・♂・獅子)
 fa3782 祥子(24歳・♀・獅子)

●リプレイ本文

●館の主、退場
「ぼ、ぼんじゅーる」
 森木 久美(fa3489)がポールに声をかけた。
 手にもっているのは、『トラベルフランス語』という、旅行ガイドだ。
 館の持ち主であるポールは、異国の獣人の気遣いに、笑顔で応じた。
「ボンジュール。気遣いに感謝する。ありがとう。でも安心してくれ。俺が日本語を話せる」
 その言葉にホッとするもり。
「みんな。来てくれて感謝する。この屋敷は自由に使ってくれて構わない。短い間だが、よろしく頼む」
 一同に挨拶をするポール。
「まかせてください。囮は私くらいしかいませんわー」
 ノリノリの久遠(fa1683)。
「安心してください。さっそくとりもちの罠をしかけてきましたわ」
 役に立ち度数をくー姉さんと張り合う紅・燐香(fa0261)。
「とりもちの罠です? そんな初歩的な罠にNWが引っかかるとは思えませんわ」
「ただ何もしないと言うのも無駄ですし。んふふ」
 二人のオーラに気圧される一同。
「ま、まぁ、せっかくですし、その罠を見に行きませんか?」
 その場を和ますためのディンゴ・ドラッヘン(fa1886)の言葉のために、結局、まだ設置して15分もしてないと言うのに、とりもちの罠を確認することになった。

「チューチュー」
「‥‥」
「つかまってるな」
 春乃(fa3572)の呟きに、目を輝かせるリンカ。
「でも、普通のネズミみたいだが」
 ハルの言葉に、目を輝かせるくー姐さん。
「ただの鼠か。それなら、逃がしてやることにしよう」
 とりもちに近づき、しゃがむポール。
「‥‥男ってやつは優しくなければ生きていく価値がないのさ‥‥‥怖がらなくていい‥‥ほら、そうだ、安心しろ‥‥いてっ噛まれた。こいつ! 獣人をなめるなっ! ‥‥あ、逃げられた! ‥‥」
 指を押さえながら、立ち上がるポール。
「‥‥‥」
 何故か沈黙する一同だったが、とりもちをつけた責任感ゆえなのか、リンカが言った。
「‥‥え、えーと、だいじょうぶです?」 
「ああ、大丈夫だ。どうってことない」
 ポールの答えに、ハルが言う。
「鼠に噛まれたりするのは衛生的に良くない。きちんと処理したほうがいいぞ?」
「そうか。わかった。ちょっとなじみの病院に行ってくる。みんなの分の消毒液とかも貰ってくることにするよ。あとはまかせた」
 クールに屋敷から出ていくポール。
 あっけに取られながらも、思い思いに散っていく一同。
「‥‥‥はっ! これはもしや、ポール様に逃げられたっ?!」
 結局、最後まで残ったのは、鼠だけでなくポールにも逃げられたリンカだった。


●館の間取り、調査
 主がいなくなった館で、壁画を観ながら須賀 直己(fa3550)が言う。
「たとえば、こういった壁画とか文書とかにNWが潜んでいたんじゃねぇの?」
「そんなこと可能なのか?」
 ユキイ・アバンサール(fa3610)が尋ねる。
「さあ? 一度、その辺も徹底して調べた方がいいだろ?」
「紙に潜むNWがいてくれるなら退治も楽だろうけどな。破ればいいんだから」
 ゆっきーの言葉に直己が笑う。
「たしかにそうだな」
 横にいた祥子(fa3782)が言う。
「貴重な文化遺産なんだから、もったいないわよ?」
「冗談だ。ま、何事も下調べが肝心ってのは、俺も同意見だ。見回ってみるか」

 同じように館の内部を見回っている人たちもいた。
 ゼクスト・リヴァン(fa1522)、ユージン(fa2270)、朱凰 夜魅子(fa2609)の三人だ。
 昔からの建物だけあって、暗くジメジメしたところがある。
 そこに鼠がいるのではないかというゼクストの読みと、ユージンの読みで食料貯蔵庫や水まわりの台所などを、重点的に見回りをしていた。
「どうですか? 朱凰さん。ここら辺で不自然なところでも?」
 ユージンが、見取り図と現物を交互に見ながら難しい顔をしているヨミコに尋ねる。
「とくに大丈夫‥‥だと思う」
 こつこつ、と壁を叩いていたゼクストが不思議そうな顔をする。
「ここ、抜けるのか?」
「ん? ああ、そこは外に通じているようだな」
 ヨミコの言葉を受け、ゼクストが力を入れると、壁が開いた。
 目の前には一人の女性。
「わっ。どうしたの? 急にそんなところから」
 その女性は、外を見回っていた天目一個(fa3453)だった。


●館の闇、激闘
 夜、それぞれに獣化、半獣化を済ませると、3組に別れて、警戒をしていた。
「来たわよっ。大人の色気には鼠も逆らえないのね」
 くー姐さんの叫びに、同じチームで動いていたレンカとゼクストが反応する。
「やっぱりここにいたのか!」
 三人で対峙している鼠は、タダの鼠ではなかった。
「クキャーーー」
 異形の鼠。
 ナイトウォーカーに犯されたその鼠は、巨大な爪をもって、レンカに襲い掛かった。
 レンカがギリギリのところで避けると、横からゼクストの鋭い蹴りが入った。
 吹き飛ばされるナイトウォーカー。
 そこに直己も駆けつけざまに、能力により肥大化した筋肉をフルに使った裏拳が入る。
「ギャウ」
 さらにくー姐さんの周りに現れた火炎が敵に向かっていく。
 不利とみて、逃げ出すナイトウォーカーを追う4人。

 逃げた先には、別の四人が待機していた。
「予定どおり、ここに来てくれたな。さて‥‥退治と参りましょうか」
 ディンゴが構える。
 ハルと祥子がそれぞれナイフと鞭で相手を牽制し、天目の刀は、本命の攻撃として振るわれ、相手を切り裂く。
 ややナイトウォーカーが不利とはいえ、戦闘が続いていた。
 焦りはナイトウォーカーにあった。
 時間が立てば立つほど、後ろ先ほどの4人が近づいているのだ。
 もちろん、その隙を見逃す手はない。
 先ほどまでずっと機をみていたディングが動いた。
 傷つき動きが鈍っていることも幸いし、ディングの猛攻をマトモに喰らってしまったナイトウォーカー。
 最後の一撃で、コアが割られる。
「‥‥だいじょうぶですか?」
「大丈夫だが‥‥だが妙だな。こいつ、爪が武器だったぞ? 話にきくかぎりじゃ牙じゃあ?」
「!! ということは、敵はまだどこかにいる?!」

 キッチンというよりは台所と言った方がしっくりくる、そんな炊事場。
 そこにユージンたちがいた。
「‥‥やっぱり。この床、妙に軽い音がすると思ったら、見取り図にものってない地下への通路があったんですね」
 ギィと床を持ち上げると、そこには地下への入り口があった。
「危ない!!」
 もりがユージンを吹き飛ばす。
 地下の階段から、大きな影が飛び出した来たのだ。
 その影は、異常に大きな鼠のような生き物で、特に際立っているのが、その口。
 昆虫を思わせるその牙で飛びかかってきたのだ。
「っ!」
 ユージンを守ったもりが、敵の牙の一撃を喰らう。
「このっ!」
 ユージンの鈍く光る剣が振るわれ、たたらを踏む敵。
 もりも負けじと筋力を増大させてから、相手につかみかかる。
 掴んだ腕を強引に振り回し、投げるもり。
 落ちてくるところをヨミコの警棒が敵を打ち据える。
 ゆっきーが敵の目の前で、挑発する。
 鋭い牙に気をつけながらも、ほぼ圧倒する獣人たち。
 そこに、炎が飛んできて、ナイトウォーカーを焼く。
 8人の増援が来たことで、戦況は確定した。


●館の朝、休息
「この奥に敵の巣が?」
 夜の闇があけるのを待ってから、ユージンの見つけた地下への階段を下る。
 今はポールも一緒だった。
「こういうところを見学したいところだったけど、こんな秘密めいたところまで見ることができるなんてね」
 言いながら興味深そうに地下を見て回る祥子だったが少し不機嫌そうな声になった。
「ねぇ、見て。これ、最近になってから削られた後がある」
 祥子に言われしげしげと眺める一同。
「今回のことと何か関係があるのかしら?」
 とレンカ。
「ナイトウォーカーがここに書いてあることを消したかった?」
 森の言葉に直己が首を傾げる。
「ナイトウォーカーが隠したいこと?」
 直己の疑問に、今まで黙っていたポールが言った。
「‥‥ナイトウォーカーじゃなくて、他のヤツ‥‥かもしれないな」
「昨夜のは確かにナイトウォーカーだったわよ?」
 天目の言葉。
「確かにナイトウォーカーだった。でも、俺は何度か、ナイトウォーカーを操ることが出来るという獣人の噂を聞いたことがある。ともかく、ここに何が書いて有ったのか、知る必要があるみたいだな」
「ナイトウォーカーを操る?!」
「そうだ。もっとも、あくまで何度か聞いた噂だがな」

 地下室から出てくると、ハルが背伸びをした。
「すこしオルガンをひかせて貰ってもいいか?」
「構わないよ。俺はまた地下にもどって、あそこに何があったのか調べてみるよ。最近、イギリスが、いや、ウィンチェスターが騒がしい原因がわかるかもしれない。これからは俺の仕事だ。みんなは、時間がある限り、ここにいてくれて構わない。折角来たイギリスを存分に楽しんでいってくれ」
 ポールの言葉に、ハルではなく天目が、まってました! と喜んだ。
「イギリスと言えばパブでエールね。わたし、さっそくパブに行ってみるわ!」
「天目様、まだお昼前ですが」
 ディングの言葉に、ポールが笑う。
「折角来たんだ。旅行者気分で飲んでくるといい」

 激闘から半日後。
 戦いの音が響いていたこの館。
 今はかわりに鎮魂のオルガンの音と、歓喜の声が響いていた。