NW:激走の配達人ヨーロッパ

種類 ショート
担当 うのじ
芸能 1Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 やや難
報酬 2.6万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 06/28〜06/30

●本文

 俺の名前は、ポール・キャティエ。
 職業、オカルト研究家だ。
 オカルト番組にゲストとして呼ばれる事もあれば、雑誌にコラムも書いたり、本を出したりもしている。
 この前書いたコラム『ネズミの知能は人間を超えたか?!』は残念ながら不評に終わってしまったようだが。
 しかし、それは表の顔。
 裏では、獣人の立場のために、様々な事件を解決している、獣人の守護者、いわばキーパーの一人なのだ。
 北に獣人の発見者がいると聞けば、話の信憑性を無くすために駆けずりまわり、南にオーパーツが発見されたと聞けば、こっそり頂戴するべく忍び込んだりする。

 そんな俺が、今いるのは、イギリスの大英博物館前。
 近くで何かコンサートがあるらしく、忙しく人が動いている。
 俺はあるものを待っていた。
 それはコードネーム『ウルトラ』。
 この『ウルトラ』について表に出ている情報は少ない。
 第2次世界大戦にその名を記す暗号機エニグマに関連して少々この『ウルトラ』が登場するぐらいだろう。
 実はこの『ウルトラ』は暗号解読機なのだ。
 これを大英博物館に届ければ、事態の進展の助けになるはず。
 俺はそう進言し、保管されている『ウルトラ』をイギリスまで輸送する責任者になったのだ。
 空港からここ大英博物館までの護衛は手配を頼んでおいたから、時期にやってくるはずだ。

 携帯電話が鳴る。
 どうやら予定通り到着するようだ。
 あとは空港からここまで運べば任務は完了する。
 不安なのは、できる限り早く届けるため、行動が深夜になる点だ。
 WEAに敵対するなんらかの妨害が発生しなければいいのだが‥‥。

●今回の参加者

 fa0348 アレイ(19歳・♂・猫)
 fa0485 森宮 恭香(19歳・♀・猫)
 fa0640 湯ノ花 ゆくる(14歳・♀・蝙蝠)
 fa1873 條本 淳矢(23歳・♂・兎)
 fa2609 朱凰 夜魅子(17歳・♀・竜)
 fa3017 葵・サンロード(20歳・♂・猫)
 fa3145 大次郎(24歳・♂・パンダ)
 fa4038 大神 真夜(18歳・♀・蝙蝠)

●リプレイ本文

●道を探して
 空港で一緒になったポールと朱凰 夜魅子(fa2609)。
「‥‥この前は世話になったな」
 右手を挙げるポールに、気にするなとヨミコが応えた。
「前のはどうなっているんだ?」
「それが‥‥あまり良くない。地下に壁が削り取られた部屋を見つけたが‥‥」
「‥‥そうか」
 頷くヨミコに、ポールが尋ねる。
「そっちの準備は?」
「一人はレンタカーを借りに行った。あとダミーを用意してあるはずだ。私は下見だな。ルートを決めておいた方がいいだろう?」
「ああ、そうだな」
 言うと、車のキーを投げるポール。
 受け取るヨミコに言う。
「帰りはそれで帰るといい。現場を観ていくのも悪くないはずだ」
「‥‥わかった」
 こうして二人は空港で別れた。
 しばらくして、しまった、とつぶやくポール。
「‥‥俺の帰りの車がない‥‥それにあいつは運転免許はあるのか? 確認しておくべきだったな」
 動きを止めていたポールは、まぁいいか、と気を取り直して、駐車場に向かう。
 まだヨミコが帰ってない事を願いながら。


●敵を探して
 深夜。
 空港から秘密裏に荷物を受け取ると、後部座席に載せる。
 スーツケースは6個も入る大きなトランクがあるとはいえ、手元にないのは危険だし、そもそも今は小型のバイクが入ってるため余計なものは置きたくなかったからだ。
 とはいえ、大きめのリムジンといえども、7人搭乗すると、狭くなるものだ。
 その中で、ヨミコが地図を広げながら、ルートを指定していく。
 大次郎(fa3145)がトランシーバーで前後につけている森宮 恭香(fa0485)と葵・サンロード(fa3017)に、連絡をとる。
「こちらリムジンです。異常はありませんか? どうぞ」
「こちら葵。前後に不審な車はなし。どうぞ」
「こちら恭香。同じく不審車はなしよ。どうぞ」
 報告を聞き、誰とも無く息を吐く。
「大丈夫みたいだな」
 念のために拳銃を装備しておいたアレイ(fa0348)が言う。
「はい。‥‥このまま・・行けばいいんですけど‥‥」
 湯ノ花 ゆくる(fa0640)の言葉に皆が頷いた。

 しばらくして、條本 淳矢(fa1873)が首をかしげる。
 長い耳を横にしながら、目を閉じる。
「聞こえますか?」
 同じく耳を澄ましていたじろの方は首を振る。
「ごめん。何も」
「そうですか、気のせいならいいんですが」
 ジュンの言葉をうけ、大神 真夜(fa4038)が念のために、外にいる二人に連絡をとる。
「こちらリムジン。異常はない? どうぞ」
「こちら葵。特にないが。どうぞ」
「こちら恭香。同じく無いわよ?」
 二人の言葉に安心するも、しかし、ジュンの不安は高まっていった。
「やっぱり変な羽音が、この音‥‥ずっと付いてきて‥‥‥尾行されている? 」
「エンジンじゃなくて、羽音? こちらリムジン。羽音がするらしいが」
 まぁやが再度外の二人に連絡を取る。
「羽音?」
「羽音? ‥‥‥あ、上!」
 バイクに乗っていたキョーカが一番に気がついた。
 妙な影が自分たちを尾行していたのだ。
 影は三体、窓を開けてアレイが上を見ると上空にいたのは、巨大な昆虫。
「なんだありゃ」
「‥‥ナイトウォーカー‥‥しかも三体も‥‥」
 気がつかれたことを察知したナイトウォーカーたちは高度を下げ、リムジンを囲むように併走する。
「複数のナイトウォーカーを同時に見かけることはあまりないんだが‥‥犯人は日本人だな」
 ポールがつぶやく。
「どうして?」
 ヨミコが尋ねる。
「いま日本で流行っているんだろ? 虫を戦わせる、ムシなんとか」
「‥‥いまは、冗談を言ってる時じゃ」
 ドン! 鈍い衝撃が入る。
 リムジンに体当たりをしてきたのだ。
 アレイも応戦するも相手が三匹のためなかなかうまくいかない。
 まぁやも闇の弾を飛ばし援護に加わる。

「こりゃやばいな」
 隙をみてリムジンの左右に位置を取る葵とキョーカ。
 窓が開けられ、それぞれにダミーの四角い箱が渡される。
「みんな、お客さんに負けるんじゃないよ。相手は力押しって感じのタイプだから、頭使えばなんとかなる」
 そして交差点でそれぞれ別の道に曲がっていく二人。
 三匹のうち二匹はそれを追いかけていき、残るは一匹のみ。
 車がベコベコになるほど体当たりをされるも、輸送品である『ウルトラ』はじろが身を挺して守っているおかげで傷一つついていない。
「相手が一匹になったことだし、足を止めてやり合うか?」
 ポールの提案に、まぁやが首を振る。
「逃げ切って送り届けることを優先しよう」
「わかった。ヨミコ、ルートの案内を頼む」
「OK」
 パシュパシュと音を立てながら、銃で応戦しながら、決して足を止めないリムジン。
「そこ、右!」
 ヨミコが車一台ぎりぎりのスペースを指す。
「了解」
 ポールが何とかそこにつっこむと、追ってきたナイトウォーカーは曲がりきれずに壁に激突した。
「よし!」
 しかし、ジュンは首を振る。
「まだ、音がする」
 がれきの山からでてきたのは、自慢の角も折れ、体中から体液を流しながらもまだ動いているナイトウォーカー。
 しかし、その傷のため、コアが丸出しになったことに気がついたアレイが、銃を持ってるゆくると虚闇撃弾が使えるまぁやに言う。
「あそこ、狙うぞ」
「‥‥わかり、ました」
「わかった」
 3,2,1と合図を取りながら、同時に放たれる二発の銃弾と一発の闇の弾。
 大きく吹き飛ばされるナイトウォーカー。
「ジュン!」
 皆がジュンの方を観る。
「‥‥はい。もう大丈夫。追ってきません」
 ジュンの言葉に歓声が上がった。


 別れてから追ってくるナイトウォーカーを必死に撒こうとするキョーカ。
 バイクのため、体当たりでもされてしまってはひとたまりもない。
 そんな中、遠くの方で激突音が二つ聞こえた。
「!!」
 いやな予感を感じながらバイクを転回し激突音の方に向かう。
 先には街灯にぶつかって動かなくなっている見覚えのあるレンタカーがあった。
 その横に、地面に座っている葵。
 キョーカの姿に気がつくと、顔を上げた葵は、びっと親指をあげる
「箱は守りきった」
「‥‥まったく、それはダミーじゃない」
 元気そうな姿を見て、笑顔になりながらも悪態をつくキョーカ。
「それにしても、敵の姿は?」
「こっちは、事故をして、しばらくは交戦してたけど、バイクの音で逃げていったよ」
「そういわれてみると、こっちの敵もいなくなってるわね」
「人が集まると困るのか、それともダミーだと見破られたのか‥‥」
 そのとき、トランシーバーが鳴る。
「こちらリムジン。ミッションコンプリート、どうぞ」


●答えを探して
 葵とキョーカが戻ると大英博物館外で、緑色のパンを食べる一人の少女、ゆくるがいた。
「おつかれさま」
「おつかれさまです。‥‥これで‥暗号が‥解読できると‥良いんですけど‥」
「そうね。でも、なんで外にいるの?」
「‥‥館内は飲食禁止だから‥‥‥」
 そういってはくりとパンを咬むゆくる。
 館内から、まぁやもでてくる。
「無事だったか。よかった」
「ああ、お互いにな」
「それにしても館内にいたやつら、あの箱を大事そうに運んでた。そんなに大事なのか、スーパーコンピュータのほうがすごそうに思うけど」
 そういうまぁやに答える後ろからの声。
「‥‥いや、スーパーコンピュータなんて足元にも及ばないさ」
 後ろにいたのはポール。
「‥‥『微笑みかける、誰とはわからぬ愛しき彼女。』」
「??」
「例の文章の最初の部分だ。解読に成功した。『ウルトラ』はオーパーツなんだ。言ってみればオーバーテクノロジー。現在ですら、その性能を100%使いこなしているかどうかは‥‥」
「もう解読に成功した?」
 驚くまぁや。
「最初の部分だけだがな。しかし、問題はそんなことじゃない。今回の一連の捜査の中に、リークする人物がいることがわかった。今回の輸送計画が漏れているのもそのためだろう。暗号に関しても、何らかの情報操作が行われているかもしれない」
 息を吐くポール。
「‥‥でも、暗号に関しては‥これで解読はできる?」
「ああ、みんなのおかげでな。きっとだいじょうぶだろう。ほっとすると腹が減るな‥‥その緑のパン‥‥」
「‥だめ」
 ささっと後ろに隠すゆくる。
「だめか、しょうがない。中の警備は中の人間に任せて、俺たちは早めの朝ご飯を食べに行くとするか」
「いいね。行きましょう」
 頷くキョーカ。
「あ、俺も行く。‥‥でも、何か忘れてるような気がするんだよな」
 首をかしげながらも後に続く葵。

 数時間後、葵のもとに電話がかかってきた。
 車両事故についてだ。
「さて‥‥何てWEAに報告して、レンタカー代とか必要経費として認めてもらおうか‥‥」
 ポールたちは休む暇もなく事後処理に走り回ったのは言うまでもない。