Battle the Rockアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 うのじ
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 1.1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 12/03〜12/07

●本文

 コンクリートジャングルの中で始まるミュージシャンたちのサバイバル。
 これが番組の趣旨だった。

 そして、その舞台は完成していた。

 まだ若いプロデューサーは、完成した舞台を観て、満足げにうなずく。
「改心の出来だ!」
 自分が直接作ったわけではないが、それでも、深い満足感を抱けるほど、完璧な舞台だった。
「あとは‥‥‥、番組を撮るだけだ!」
 でも、それが問題だった。
 プロデューサーは悩みながら、問題点を洗っていく。
「えーと、毎週はきついっていわれたな。‥‥あとは、チャンピオンはべつにチャンピオンフェスティバルをやることにして、毎回出演を頼まなくていいようにして‥‥。第一回目のテーマは、番組の名前の魂にしよう。第二回目は、やっぱり時期的にクリスマス、聖夜かな。第三回目は迷うなぁ‥‥」
 ぶつぶつと呟きながらまとめていくプロデューサー。

 そして、何日か後に番組がスタートした。

 燃え上がる魂のような画面の中に、「魂を響かせろ! Battle the Rock」の文字が踊る。
 コンボイの荷台風の舞台には、大きく「the sound of a soul」と書かれている。
 そして、開いた先に登場するミュージシャンたち。
 ミュージシャンたちのバトルが、始まった。

●今回の参加者

 fa0258 夜凪・空音(16歳・♀・蝙蝠)
 fa0475 LUCIFEL(21歳・♂・狼)
 fa0737 大上誠次(24歳・♂・狼)
 fa0755 エミュア(18歳・♀・狼)
 fa0856 実夏(24歳・♂・ハムスター)
 fa1362 緋桜 美影(25歳・♀・竜)
 fa1405 滝月・玲(22歳・♂・竜)
 fa1892 kanon(27歳・♂・鴉)

●リプレイ本文

●オープニング
 銀と黒を基調に配色されたハコの中、少し暗めのブロックには、ステージが始まるのを待つ大勢の観客たち。
 フェンスで区切られた先には対照的に明るい舞台。
 大きく『the sound of a soul』と書かれている扉がゆっくりと開き、番組が始まった。

 まず最初に登場したのは、手にマイクを持った黒革のジャケットを着た二人。
「‥‥‥コンクリートジャングルの中で始まるミュージシャンたちのサバイバル」
「今回のサバイバルのテーマは、魂! ソウルだ!」
「そして、今日、魂を響かせるのは、この5組」
 カメラが大きくぶれるように動いて、それぞれを映し出す。

 最初に映し出されたのは、LUCIFEL(fa0475)。
 カメラに目線をあわせると、爽やかな笑顔で軽く片目を閉じるルシフ。
「熱い思いを歌い上げる、LUCIFEL! 銀髪の貴公子の理想郷は一体どのようなものなのか」

 ついで映されたのは、滝月・玲(fa1405)と緋桜 美影(fa1362)。
 画面に映ったレイは、手にしたエレキギターをギャイーンと、軽く弾いてみせる。
 続いて映った美影は、カメラに気がつくと、おもいっきり睨み付けた。
 いきなりでびびるカメラマンを見ると、こらえきれずに軽く笑う。
「響きわたるソウルボイスが原点からの音楽を作り上げる。ZERO!」

「誘われる青の世界に限界はあるのか。azure!」
 まずはベースの大上誠次(fa0737)にカメラが向く。
 あまり派手に動かない誠次のベストショットをカメラマンが華麗に流していく。
 対して、実夏(fa0856)は、メガネ越しに、笑顔をみせる。
 もちろん、その姿もカメラはとらえている。

 続いて映されたのは、夜凪・空音(fa0258)。
 原色のライトが踊る中にあっても消して負けない幻想的な雰囲気をもったソラ。
 カメラが、その姿を映し出す。
「夜凪・空音。その小さな身体の中にある信じられないほどの大きな輝きが、音楽として解き放たれる」

 最後に映し出されたのは、お揃いの衣装の、エミュア(fa0755)とkanon(fa1892)の二人。
 カノンが軽く手を振ると、大きなテンガロンハットをかぶったエミィがカメラに向かって、大きく開いた両手を左右に振る。
 そのままカメラに近づこうとするエミィを、カノンが苦笑いしながら、引き留める。
「甘く、そして刺激的な音楽を織りなすAlea jacta est。彼らの魂は、心を打つだけじゃない、心に響かせる」

 紹介が終わり、カメラがまた、大きくぶれるように動いて、司会の二人を映す。
「それでは、『Battle the Rock』。スタート!」


●LUCIFEL
「LUCIFEL! 『Reality Elysium』」
 歌のタイトルがコールされ、扉が開く。
 軽い駆け足でステージ中央に立ててあるマイクに近づき、軽くつかみ取るルシフ。
 ルシフが下を向き目を閉じると、静かな曲が流れる。
 曲に合わせゆっくりと目を開き、顔を上げ、そして歌い出す。

大事なモノを掴む為に拳があるんだろう 何かを守る為のitem
大事なモノを見つけるために瞳があるんだろう 何かを見失わない為のitem
永遠を望まないのは明日を求めるから 今日より重ねた刻の先にある明日を
Reality Elysium

 ゆっくりと歌い上げ、そして、ゆっくりとステージを歩いていたルシフが、一転、観客がいるフェンスの方に走り出す。
 それにあせるかのように、曲がバラード風から、アップテンポのポップロック調へ変わる。
 ルシフが歌うのは、決して立ち止まらないこと。
 走り抜けることが、後悔しないことの条件で、それを怠るならば、今まで歩いてきた道を無駄にすることになる。
 そう歌いながら、ステージを狭しと奔走し、観客を、自分に惹き混んでいく。
 いっそう激しくなっていく、歌声。

束縛する間も与えるな! 色あせた世界を鮮やかに塗りたてろ!
No Rule. No Rule. No Rule. No Rule. 全てが自由
No Rule. No Rule. No Rule. No Rule. 全てが可能性

 歌い終わり歓声が響く。
 軽く息をついたルシフは、片手をあげて答えながら、そして、目があった女の子に軽くキスを投げながら退場していった。


●ZERO
「出番だな、美影さん、俺達のハートを聴かせてやろうぜ」
 話しかけたレイに美影が答える。
「任せなって、玲ちん。美影さんのソウルボイスは半端じゃねぇぜ?」
「OK! 期待してる」
「こっちもね!」

「ZERO! 『ZERO− We made a start.』」
 コールされた美影とレイが、ステージに上がる。
 レイのギターから始まった歌は、いっさいの容赦なくガンガンに響きわたらせる。
 美影もそれにあわせ、アクセル全開で突っ走っていく。

We made a start. 始まりの時を忘れないのは力
We made a start. 始まりの時を勝ち取ったのだから
信じ続ける 原点を勝ち取った自分を

 後のことを考えずにガンガンに飛ばしていく美影。
 レイも美影を信じて、飛ばし続ける。
 間奏に入り、レイが舞台の中央、それも前方に出る。
 この間だけでも、観客の視線を、一身にすべて受け止めることで、少しでも美影を休ませるためだ。
 間奏のギターソロも終わり、美影がまた、ステージに中央に乗り込む。
 『ZERO』は飛ばしつづける。

We made a start. 始まりの時を忘れないのは力
We made a start. 始まりの時を勝ち取ったのだから
感じ続ける 原点を作りあった仲間を
信じ続ける 原点を勝ち取った自分を

 歌い終わり、息が荒くなりそうになるのをこらえる二人。
 まだ、終わってはいない。
 この観客の声援に応え、ステージを降りるまでは、終わってはいないのだ。


●azure
「azure! 『The sky is the limit』」
 コールされ、登場する実夏と誠次。
 しっかりとした足取りでそれぞれの配置につく二人。
 静まっている会場に実夏の低い声が響く。
「The sky is the limit」
 それを合図に『azure』の歌が始まった。
 静かに坦々とベースを弾く誠次と、ステージ全体を動き回り観客を煽る実夏。
 この二人の静かに始まった曲はアップテンポだが、低めのボイスをあわさって、重厚な曲のように感じる。
 実夏の低めの声に、誠次がコーラスを、高めの声であわせる。
 曲が進むに連れて、曲調は徐々に上がっていく。
 曲が一番盛り上がりを見せたとき、実夏が駆け上がるように高音で歌だした。

君と踊る瞬間 高みを目指し
指先で 熱くなれる場所を探してる
誘惑して 魅せてくれないか
魂も身体ごと とろけさせてみせるから
二人 空に昇り宙で舞う華になろう

 間奏に入っても常に動き続ける実夏と誠次。
 二度目のサビも終わり、ラストになったとき、最後の何の制限もなく、全てを込められた叫びが響きわたった。

魂の行く道に速度制限はないだろう

 歌い終わり、歓声を背にうけ引き上げていく二人。
 疲れ切っているはずの実夏が笑顔でいるのをみた誠次は、目で、その理由を尋ねた。
「ん? いや、やっぱり俺の魂の行き場は、やっぱりステージの上やなぁって」
「そうだな。楽しかった。やはり、音楽は楽しくなくてはな」


●夜凪・空音
 慌ててソラが舞台袖で待機する。
 先ほどまでソラは観客席にこっそり忍び込んでいたのだ。
「さーて出番出番、楽しもうっ‥‥でも、勝ちたいよねえ」
 今までの演奏を、めいっぱい楽しんだソラは、身体の火照りを感じながら、自らの出番を待つ。

「夜凪・空音! 『brilliancy』」
 ギターを背負い、ソラがステージに上がる。 

雑踏の中 笑われる事が恐くて 集団に紛れる 光を忘れた君
怯えないで 魂を輝かす事に恐い事も悲しい事も無い
例え笑われても 傷ついても それ以上に得られるものがあるから

 流れるように始まった歌は、強くはっきりと響き始める。
 ソラの感情を躊躇わずに乗せる歌声が誰かを応援する。
 歌声と同じように真摯な演奏は、間奏になったときに、さらに優しく相手を励ます。
 そして、止むギター。

君の魂を知る人がいる それがどんなに強い輝きか
たとえ世界中の人が君を知らなくとも 私は一人でも信じてる

 ソラの声だけが響きわたる。
 まるで目の前に誰かいるかのような、錯覚をうけるほどの感情を込められた歌。
 心が込められたそれは、静かに心地よい励ましとなっていく。
 そして、歌が終わりに近づいたとき、テンポが一気に引き上げられた。

さあ輝くこと躊躇わないで 君の魂をもっと もっと高く、強く掲げよう
誰も君を 君の輝きを 笑えなくしよう

 歌い終え、歓声をうけ、微笑むソラ。
 表にはださないものの、疲れ切っていて、前の3曲ほど、最後の曲は楽しめそうになかった。
「まぁ、それも仕方がないかな」
 残念ではあったが、それが嬉しくもあった。
 ソラは心地よい疲れにしばし、身を任せた。


●Alea jacta est
「Alea jacta est! 『Gods’stimulant〜神々の刺激薬〜』」
 最後にコールされた、『Alea jacta est』のエミィとカノン。
 二人は、位置に着くと動きを止める。
「Alea jacta est」
 カノンが呟き、ソロのギターをガンガンに響かせる。
 後はなるようになるしかないと思わせる、思い切った演奏。
 しばらくギターソロが続いた後、今まで動きを止めていたエミィが、勢いよく動き出し、歌い始める。

魂を揺さぶって そこからDIVEしてみたくない?
白い翼を絡ませて 一緒に さぁ踏み外そう

 エミィは、ステージを走り回り、どこかに飛び出しそうに思えるほど軽やかに舞う。
 所々でカノンがハモる。
 エミィは、節々、それぞれで、叫び、語りかけ、歌い続ける。
 コロコロと変わるエミィに 所々でカノンがハモりをいれる。

Gods’stimulant Aren’t you invited? 誘われてみようか?
口に含む甘い香り 耳元で囁く甘い言葉
Gods’stimulant Drink up. Right now. 飲み干せ 今すぐ
中に秘めた魂 全て ぶちまける薬!

 低音で押さえ気味に演奏されいたギターがかき鳴らされる。
 2番に入っても、エミィは自由に動き回り、ハイテンションが続く。

神が寝静まったら 思いきりthrill感じようよ?
本気の楽しさ知るなら これを飲むしか手は無い 

 本気の楽しさを知るために、人目を気にすることはないし、一切の妥協もしない。
 それが神様に逆らうことになったとしても、想いを隠すことはない。
 そう歌われる歌詞をエミィが体言してる様に思える。

恐れ飲み干して 堕ちよう 
深く深く 遠い所へ
ずっとずっと一緒に!

 一気にテンションを上げて、演奏が終わる。
 わき上がる歓声に応えるカノンとエミィ。
 カノンは控えめに、エミィはイタズラっぽくウィンクをしながら大きく歓声に応えた。


●エンディング
 5組すべての演奏がおわり、後は勝敗を決するだけになった。
 再度登場した司会者の二人組が、観客に投票を促す。
「それでは、『judge』。スタート!」
 観客達の手に握られているのは、10枚のコイン。
 観客達は、そのコインを自らが思うように分配し、舞台の各ミュージシャンのハコに向かって投げ入れる。
 コインの玉入れの要領だ。
 時々箱に入らず明後日の方向に投げてしまう人もいるようだが、ハコの中に見る見る貯まっていくコイン。
 そして、投票が終了した時、ハコの中に一番コインが入っていたミュージシャンの扉の鍵が開く。
 第一回の『Battle the Rock』の勝者、つまり開かれた扉は、『Alea jacta est』の扉。
 中から勢いよく飛び出してくるエミィ。
 やや遅れて出てくるカノン。
 エミィとカノンは祝福の歓声に包まれた。


 流れるエンディングテロップ。
 そのバックミュージックは、『Alea jacta est』の『Gods’stimulant〜神々の刺激薬〜』。
 こうして、第一回の放送は終了した。