many money−pennyアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 うのじ
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 1.3万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 06/30〜07/04

●本文

 ラッパー風に洋服を着崩す番組プロデューサー望月。
 この暑い中でもスタッフジャンパーは脱がないのは何かのこだわりだろうか?
「お、おはようございます」
 スタッフが多少退きながらも挨拶をする。
「おはヨオ」
 妙なアクセントのおはよう。
「‥‥エーと今日の収録ですけど」
「オウ」
「‥‥どうしたんですか?」
「オウ?」
「その服装と口調ですよ。変なラッパーみたいな」
「やっぱりラッパーにみえる?! 今回のテーマの『お金』! ラップ風の歌を考えたんだ! 聞いて聞いて」
「は、はぁ」
 返事が早いか、望月は、マイクを持ったような妙な動きをしながら歌い始める。

おまえのマネー、俺の前に積・ん・で・く・れ!
おまえの金、俺が華麗に使・っ・ち・ゃ・う・ぜ!
ヨォ!

 ノリノリの望月に、あきれ顔のスタッフ。
「どうどう? これ、勝ち抜けそうじゃない?」
「‥‥‥えーと、それで今日の収録ですけど」
「って、思いっきり無視?!」
「今回のテーマは『お金』で、次回は『海』ですね」
「無視って言葉も無視っ?!」
 望月の悲痛な声が廊下に木霊した。


 画面の真ん中にあるギターと剣のシンボル。
 シンボルに被さるように、番組タイトルである「魂を響かせろ! Battle the Rock」の文字が踊る。
 続いて「the sound of cash」と今回のテーマ。
 ここに、アーティストの新たなるバトルが、始まった。

●今回の参加者

 fa1443 門屋・嬢(19歳・♀・狼)
 fa1514 嶺雅(20歳・♂・蝙蝠)
 fa1744 雛姫(17歳・♀・小鳥)
 fa2899 文月 舵(26歳・♀・狸)
 fa2925 陽守 由良(24歳・♂・蝙蝠)
 fa3596 Tyrantess(14歳・♀・竜)
 fa3608 黒羽 上総(23歳・♂・蝙蝠)
 fa3867 アリエラ(22歳・♀・犬)

●リプレイ本文

●オープニング
 アニメ調のオープニングムービーからそのまま飛び出したかのような衣装を着た二人が壇上に上がる。
 白いスーツを着た男はマイクをもち、語る。
「‥‥‥コンクリートジャングルの中で始まるミュージシャンたちのサバイバル」
 それを受け、今度は黒いスーツの男もマイクを取る。
「今回のテーマは、『お金』! 現代を生き抜くために必要な弾丸、それが金だ!」
「そして、今日、登場してくれるミュージシャンはこの4組!」

 最初に登場したのは、黒羽 上総(fa3608)と嶺雅(fa1514)のふたりだ。
 とはいえレイのほうは一見するとわからないかもしれない。
 なぜならば、衣装が女性ものだからだ。
 赤のスーツを着たクロは、右手を差し出すと、レイがそれを受ける。
 そのままエスコートされ、舞台の上に上がるふたり。
「日本のロック界にその名を轟かせる『flicker』! なんと異色のカップルとして登場!」

 二組目は、文月 舵(fa2899)、陽守 由良(fa2925)。
 きらびやかな白のスーツに暖色をアクセントにしたユラ。
 非日常的な衣装のユラとは対照的に、アクティブな感じにまとめた舵。
「春以来の登場、アドリバティレイア。今宵もリバティサウンドが冴え渡る!」
 コメントに合わせて、二人がカメラに映し出されると、ここでも対照的な反応をする二人。
 軽く応えたユラに、カメラに向かって魅力的に片目を瞑る舵。

 続いて登場したのは、二人。
 黒が基調の門屋・嬢(fa1443)、赤が基調のTyrantess(fa3596)、二人は、まるでルーレットを思わせる衣装で登場した。
「新たなるクルーピエ! 彼女たちに運命はほほえむのか! 『Tyrantess Joe』」
 コールがされると、タイは赤のレザーを肩を見せるように脱ぐ。
 タイのセクシーポーズに、横にいたジョーのほうが照れていた。

「魅惑の女神たち、チャームなデュオ、『Muses』」
 最後に登場したのは、アリエラ(fa3867)と雛姫(fa1744)。
 緊張気味のひなとアリー。
 しかし、どきどき笑顔なひなと、大きく口を開けた満面の笑顔のアリー、緊張の表し方は二人とも違うようだ。
 カメラが向くと大きく手を振るアリー。
 アリーの反応を見て、慌てて深々と頭をさげたヒナ。
 ヒナが頭を下げると、その長髪が流れるように肩を滑っていき、金色の髪についたきらびやかな星々が煌めいた。

 4組の紹介が終わり、カメラを司会の二人に戻す。
 白と黒の司会者が、番組の開始を宣言する。
「それでは、『Battle the Rock』。スタート!」


●flicker
「きゃー、素敵ですー」
 ここはflickerの控え室。
 響いた声はアリーの声だった。
「ジャーン」
 アリーの歓声に応えて、くるりと一周回るレイ。
「きれいだよねー。なのに、司会の下田さんは逃げたんダヨ。失礼だよネ」
「逃げちゃったんですか。そんなのもったいないですよー」
 アリーがサインをもらいにflickerの控え室に来てから、ずっとこの調子だった。
 この部屋のもう一人の主であるクロは、あきれたように、しかし、嫌な感じではなく、見守っていた。
「す、すいません。本番前なのに」
 頭を下げるヒナに、クロが笑う。
「まぁ、仕方がないだろ? 本人は嫌がってないようだからな、問題ないだろ」
「そ、そうですか」
 それでも、へこり、と頭をさげるヒナ。
「さて、じゃ行ってくるか、レイお嬢さん、行くぞ?」
「今行くヨー」
「がんばってきてくださいねーーー」
 大きく手を振るアリー。
 見送られるレイとクロ。
 扉が閉められ、残されたヒナとアリーは、3秒後、ここは自分たちの控え室じゃないことに気がついた。

「flicker。『You need‥‥ I need‥‥』」
 コールされたとき、舞台はすこし薄暗かった。
 そこに、ドレス姿のレイが登場すると、光が強くなり、彼、いや彼女を闇の中で映えさせる。
 横から登場したクロに導かれ、しっとりと、舞台中央に歩くレイ。
 そして、レイとクロの二人が位置につくと、照明が一瞬で変わった。
 それを合図にクロのギターの第一音が響いた。
 アップテンポな曲をバックにレイが歌を歌う。

どんな願いも どんなモノでも欲しがるアナタ
欲張りなアナタが繰り返す言動
それに付き合わされる私ってなに?
ワガママが全てお金で解決できちゃう 悲しい現実

時間をお金に換算 アナタの文句はいつもお金絡みね
ワガママなアナタが繰り返すありきたりな愛の言葉
私、どんなモノよりそれを大切にしたいのよ?
分かってくれるかしら 確認出来ないもどかしい気持ち

 ハイテンションなレイに負けずに、間奏でのクロのギターもクールにはじけ飛んでいた。
 ノリノリの間奏が終わった後、レイお姫様がまたマイクを持つ。 

アナタの本当に欲しいモノはそれ?
御姫サマ(私)は簡単には買えないのよ?
もっともっと! 追い掛けてくれなきゃ
心の絆で私をキープしててよ!
ほら、言ってよ! いつもの言葉
じれったい位の甘い空間に お金は不要でしょう?
ねぇ、こっちを見てよ!!!!

ちょっとしたハプニングの後の高まる要求
アナタは気付くかしら?

 最後にクロとレイがマイクに口を近づける。
 そして囁くように言った。

『I love you』


●アドリバティレイア
「え、ほんとですかっ?!」
 ここはアドリバティレイアの控え室。
 響いた声は望月プロデューサーの声だった。
「‥‥え、あ、いや」
 たじろぐユラ。
 冗談で、俺達と組んで一曲作る? と言ってみたところ、予想以上に相手が乗り気になってしまったのだ。
 何も口説いたわけではない。
 ただ一言言っただけなのにもかかわらずである。
「あー」
 望月のはしゃぎっぷりは、横にいた舵も、どうフォローしようかと悩むほどであった。
「‥‥望月はん、そろそろ、うちの出番やから」
 何とかでた舵のフォローも、根本的な解決にはなっていなかった。
「あ、それもそうですね。では、この話はまたあとで!」
 びっと挨拶をして、出て行く望月。
 望月が出て行ったあとユラが言う。
「さて、どうするか‥‥冗談だったんだがな」
「‥‥由良ちゃん、がんばってな」

「アドリバティレイア!」
 コールされたのはアーティスト名のみ。
 ユラは、若干派手目な衣装を羽織り、ゆったりと歩く、その行き先にはグランドピアノ。
 一方、舵のほうはダッシュで舞台の中央に位置すると、置いてあるギターを肩にかけた。
 箱いっぱいに響くじゃらじゃらと流れでるコインの音。
 暗かった舞台が一気に明るくなる。
 それに続いて、すべての音が同時に鳴った。
 ユラの指が流れるようにキーの上を滑っていく。
 しばらくして、ギターも加わり、重なり合う響きが広がる
 そして、ジャズのように、それぞれの独白のような演奏。
 舵のギターがメインとなり、その後、チャリンと今まで積み重なってきたコインが落ちていくような音がした。
 舵の「money!」の声と、ユラの「dream」の声が重なる。
 それは、夢と金が同じもので、別のものである、矛盾したが有る意味正しいメッセージに聞こえる。
 曲は唐突に終わった。
 ギターのギャンという音と、ピアノの音が同時に切れたのだ。
 舵はギターを肩から外し、上に持ち上げるようにして、両手を振った。
 ユラは立ち上がると、恭しく礼をした。


●Tyrantess Joe
「金っていうとギャンブルって感じだよな」
 タイがつぶやいた。
「?? どうしたの?」
 ジョーが首をかしげる。
「いや、金じゃなくてもギャンブルな時ってあるよなって。たとえば今も」
「なるほど。‥‥でも、完璧なギャンブルってわけでもなくない?」
 ジョーの言葉にタイも頷く。
「確かにな。がんばれば勝利は近くなるな」
 ジョーも頷く。
 しばらくして、声がかかった。
「‥‥さて、そろそろ時間だね」
 言いながら、ドアノブに手をかけるジョー。
「おう! がんばってこようぜ」
 タイも頷くと、すくっと立った。

「Tyrantess Joe。『Gambler』」
 コールされ、登場するタイとジョー。
 赤と黒の衣装の二人にあわせるかのように、舞台には赤と黒の灯りが回転している。
 タイはギターを肩にかけ、ジョーはベースを構えながらマイクに口を近づけた。

このCasinoが お前のBattlefield
ここで始まる 命がけのGamble

High risk High return 勝てばBig money この世のHeaven
High risk High return 負ければThe End 一直線にGo to Hell

You dare? 全てを賭けた一発勝負
Sure you do! 決して逃げたりしないだろ?

 しばらくの間奏。
 ハードロックな曲調にギターの旋律が鳴り響く。
 そして、今までギターに専念していたタイも歌に加わる。

怖気づくこともなく 今日も勝負を 挑み続けるギャンブラー
Red or Black? Heaven or Hell? 全ては幸運の女神任せ

金が全てじゃない そんなことはわかってるさ
だからこそ続けるんだ この夢とスリルに満ちた戦いを


●Muses
「いっぱい練習したし‥‥大丈夫だよね?」
 不安げなアリー。
「うん、大丈夫だよ。がんばっていこう!」
 頷くひな。
 舞台袖での一幕。
 そして、二人がコールされた。

「Muses。『PRICE☆LOVE』」
 真っ暗な舞台にアリーのギターの音が鳴る。
 舞台いる二人にスポットライトが当たる。
 一音一音丁寧に鳴り響くギターに合わせて、ひなとアリーの歌声が響いた。

お月様、すやすや 眠る街を照らしていく
流れ星、きらきら 漆黒の空を落ちていく

 曲が終わりかと思えるぐらいにシズカにフェードアウトしていく。
 しかし、一瞬の静音の後、アップテンポな曲が響き、今度はひなの歌声のみが響く。

逸る鼓動を抑えながら
待ち合わせ場所へ急いだ
煌めく月と瞬く星達が
君の瞳を飾ってる

ブランドのバッグも100万$の夜景も
綺麗な宝石もここにはないけど
大切な思い出と、君の輝く笑顔
お金では買えないものが 確かにあるから

 スタート時の静寂は、ステージの上にはもう存在しない。
 曲も、歌も、光も、すべてが軽やかなものに変わっていた。
 そして、今度はアリーの歌声。

側に居ればそれで幸せ
お姫様じゃなくて構わない
私の恋はプライスレスなの
だから気が付いて、ね♪

幸せは君次第 そんな私を許してね

 二人の声が重なる。
 最後に、ステージの上にいた小悪魔は可愛い女の子に戻った。


●エンディング
「緊張しましたー」
 ここはflickerの控え室
 声の主はまたもや、何故かアリー。
「す、すいません、またお邪魔を」
 恐縮するひな。
「お疲れ様、可愛かったヨ」
 アリーをヒシッと抱き留めるレイ。
「‥‥これだろ?」
 クロの手には、サイン色紙。
 先ほどアリーが忘れていったものだ。
「あ、はい。それを忘れてしまったみたいで」
 恐縮しながら受け取るひな。
 当の持ち主であるアリーは未だレイとじゃれている。
 そんな中、扉がノックされた。
「flickerさん、もう一曲お願いします」
 扉の向こうからの声。
「だとさ、レイ、行くぞ」
「おー、と言うことは‥‥やったネ、クロちゃん!」
 今度はクロに抱きつくレイ。
「おめでとうございますー」
「あわ、おめでとうございます」
 アリーとひなに祝福を受けながら見送られ、出て行くレイとクロの二人。
 扉が閉められ、3秒後、残されたヒナとアリーは、あることに気がついた。
 先ほどと同じく、flickerの控え室に自分たちだけが残ってしまったことに。

 4組の演奏が終わり、再び、司会者の二人組が登場する。
 いつもどおり、投票が促される。
「それでは、『judge』。スタート!」
 観客たちが各自の持っている10枚のコイン、それが舞台に設置してある各ミュージシャンの箱に向かって投げ入れる。
 しばらくして上がってくるエレベーター。
 そこから登場したのは『flicker』の二人。
 二人は落ち着いた様子で、舞台に上がると、礼をした。
 クロは、右手を折り曲げながらの礼。
 レイのほうは、スカートの裾を持ち上げながらの礼。
 そして、レイがマイクを持つと、クロのギターが鳴る。
 『You need‥‥ I need‥‥』が流れる中、画面の下にはエンディングロールが流れていく。
 こうして、放送は無事終了した。