七夕ドラマSPアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 うのじ
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 やや難
報酬 3.1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 07/08〜07/12

●本文

 オフィスに飾られた笹と短冊。
「七夕ですかぁ。いいですね。僕も願い事書こうかな」
「まぁ、願い事が叶うわけもないけどね」
 テーブルの上にある自分用の短冊を観ながら言う後輩に向かって、夢も希望もないことをいう先輩。
「‥‥そりゃそうですけど‥‥先輩は書かないんですか?」
 出鼻をくじかれて恨めしそうに言う後輩。
「書いたわよ、これ」
「‥‥これって白紙‥‥」
「白紙じゃないわよ、炙り出し。何が悲しくって自分の願望を皆の前に垂れ流しをしなきゃ行けないのよ」
「‥‥ま、まぁ、いいですけど」
 それじゃ願い事わからないんじゃあ、と言いかけたが、言っても無駄とあきらめた。
 先輩は短冊を飾り付けると、出動の準備を始める。
「あれ? 仕事ですか?」
「あんたも短冊書き終えたら、仕事の準備しておきなさい。この時期はでるのよ」
「でる?」
「そう、なりすまし詐欺が」
「なりすまし詐欺っていうと、振り込め詐欺とかオレオレ詐欺とか」
「まぁ、似たようなものね。この時期にでるのは、織姫と彦星詐欺よ」
「‥‥へ?」
「七夕のこの時期に、『俺は彦星だ。願いを叶える代わりに‥‥』とかいって、いろいろ悪さをする悪霊どもがでてくるのよ」
 そういうとため息をつく先輩。
「‥‥そんなことあるわけが‥‥」
 今までモニターを見ていたオペレーターの女の子が大きな声を上げる。
「でたわよ! 恋の願いを叶えると言って女の子に取り憑いてるのと、夏期講習前の受験生に取り憑いてるやつ。とりあえずまだ2件だけだけど、どんどん増えそうね。なりすましてるやつらは中級程度の実力しかない雑魚霊どもがほとんどだから、どんどん成仏させてやって!」


「以上がオープニングです。質問は?」
 会議室の壇上の上で今まで説明していたスタッフが、顔を上げた。
「今回は織姫と彦星がいっぱい出てくる‥‥ということでいいんですね?」
 別のスタッフの質問に、頷きながら答える。
「ですね。最後には本物が出てきて、『対外部』のメンバーの願いを叶えてあげるのもありだと思っています」
 別のスタッフが訪ねる。
「撮影場所は?」
「今までのセットも残ってますから、今までと同じ撮影所を押さえてあります」
 本物の霊がでるという理由から、広いわりには、安くて、何時でも使える、という三拍子揃った撮影場所。
 しかし、いつも同じ場所というのも味気ないので、そこで撮影をしてもいいし、ロケをしても良いということになった。
 こうして、ドラマの制作が始まった。

●今回の参加者

 fa0262 姉川小紅(24歳・♀・パンダ)
 fa0669 志羽・武流(21歳・♂・鷹)
 fa1276 玖條 響(18歳・♂・竜)
 fa1338 富垣 美恵利(20歳・♀・狐)
 fa1420 神楽坂 紫翠(25歳・♂・鴉)
 fa3567 風祭 美城夜(27歳・♂・蝙蝠)
 fa3853 響 愛華(19歳・♀・犬)
 fa4032 滝口まあや(24歳・♀・ハムスター)

●リプレイ本文

●お腹と願いをいっぱいに
 撮影が終了したら、静かになるはずのロケ現場。
 しかし、今は違っていた。
 もっとも、夜と言うにはまだ早く、夕方と言ったところだろうか。
 がちゃがちゃとバーベキューコンロを設置し始めたのは神楽坂 紫翠(fa1420)だ。
 横には、玖條 響(fa1276)も準備を手伝っている。
「‥‥みんな、お疲れ様。今、火をつける‥‥」
 神楽が言いながら、火をつける。
 炎の明るさに引き寄せられるかのように皆も集まってくる。

 炎が安定し肉が焼けるようになるまで、それぞれが、椅子を持ち寄り座りながら談笑していた。
「響さん、このサクランボ、甘くて美味しいですよー。ありがとうございます」
 滝口まあや(fa4032)が、バーベキューの準備をしている響に向かって言う。
 お互いの場所は少し離れていたが、声は十分届いたらしく、響は軽く手を振って応えた。
「このさくらんぼ、玖條君の差し入れなの?」
 横から手を出しながら聞く響 愛華(fa3853)。
「はい。甘くてすっごく美味しいですよ」
 タマが答えた。
 タマとアイカの二人も占領されたサクランボ包囲網を見事に打ち崩したのは姉川小紅(fa0262)だった。
「じゃーーん」
 小紅もサクランボを右手一杯につかみながら、左手にある短冊を二人に渡す。
「せっかくだし、あたし達も、お願い事を託してみようって思って」
 そう言い、短冊を、ハイ、と手渡す小紅。
「他のみんなも取りに来てー。みんなの分、ちゃんとあるからー」
 所々赤いモノが見える右拳を大きく振りながら、寄ってきた人みんなに短冊をプレゼントしていく小紅。

 網の上でジュージューといい感じの音をたてながら焼けていくお肉。
 横には醤油がつけられたトウモロコシも焼けている。
 かたや、鉄板のほうを見れば、ホタテがパチリと鳴りながら一瞬浮いた。
 撮影同様、バーベキューは順調に進んでいるようだ。
「みなさん、焼けましたよ」
 神楽が紙皿に取り分け、響がそれを皆に配る。
「ありがとう」
「ごちそうさまー」
「遠慮無くいただきますわね」
 皆に皿が行き渡ると、今度は、スタッフの誰かが用意していたのであろう、携帯式のビアサーバーが稼働し始める。
 喜んだのは酒豪たちである。
 手に三杯のジョッキを持っているのは風祭 美城夜(fa3567)。
「はい、小紅さん、まあやさん、ビール、もらってきたよ」
 そういいながら、他の酒豪達に渡す。
「ありがとうございます」
「ありがとー。やっぱり、バーベキューにはビールだよねー。ごくらくごくらく」
 もちろん、未成年やお酒を飲まない人のために、ソフトドリンクも用意されていた。
「お二人とも、焼き係おつかれさまです」
 やはり三つのコップを持っているのは志羽・武流(fa0669)。
 先ほどまで焼き係をしていた二人に、コーラを渡す。
 もちろん神楽はお酒を飲める年齢ではあるが、炎を扱うためにアルコールはまずいと思ったのだろう。
「‥‥すまないな」
「ありがとうございます」
 そう言い受け取る二人。

 いつの間にか空も、目の前の炎のように橙色に染まっている。
 打ち上げを兼ねたバーベキューは、ほどよく、活気に満ちていた。
「それで、雰囲気がないったらないのですのよ」
 富垣 美恵利(fa1338)が言う。
「‥‥神社が、か?」
 神楽が相づちを打つと、美恵利は頷く。
「‥‥もっとも一年中七夕という訳にも行かないのかもしれませんが」
 美恵利が残念がっているのは、ここが七夕ゆかりの地だと銘打っているのに、様々な施設があまりにも普通だったからだ。
「牽牛の石というのも、あまりにも普通で‥‥」
 ため息をつく美恵利にミキがビールを渡す。七夕ゆかりの地を銘打つ場所は日本各地にあり、ここもその一つだから、美恵利が残念がる程度でも仕方ない。
「まぁまぁ、美恵利さん。短冊に『一年中、七夕気分な街になりますように』ってお願いするのも手だよ?」
「いえ、そこまででは無いのですけれど」
 せっかくの願い事をそのために使ってしまうのも味気ないのだろう、美恵利は別の願い事にするようだ。

「願い事書いた短冊、みなさんもってきてくださーい」
 笹をもったスタッフが集合をかける。
 どやがたと皆が集まり、飾り付けられていく笹。
「これ、どうするんですか?」
 聞くアイカにスタッフが答える。
「ここ、七夕のお祭りがあるからさ。境内にいっぱいの笹を飾り付けるところがあるから、そこに混ぜてもらおうと思ってね」
 お祭りの言葉に目を輝かせたのは横にいたタマだ。
「お祭り!? いいですね。行きたいなぁ」
「こういったお祭りに堂々と行けるのって、新人のうちだけだからね。いってらっしゃい」
「ほんとですか? ありがとうございます」
 跳ねながら喜びを表すタマ。
 しばらくして、すべての短冊の飾り付けが終わり、笹が車に積まれ、運ばれていく。
 様々な想いが込められた願い。
『演技が上手くなりますように』
『毎日健康で過ごせて、美味しいご飯とお酒があります様に』
『みんなが楽しい作品を作れますように。あと公私ともに充実しますように。ついでに‥‥ああ、書ききれない』
『セクシーなタレントになりたい』
『この世界でいっぱい仕事が出来ますように。お友達が出来ますように』
『毎日楽しく暮らせますように』
『更なる演技力の向上』
 遠ざかる車を見ながら、神楽が言う。
「‥‥フフ‥‥願い事‥‥みんな叶うといいな?」
「ええ、そうですわね」
 見送りの言葉に、美恵利が応えた。


●七夕ドラマSP
 『対外部』が受けた依頼。
 それは、本物の織姫からの依頼だった。
「偽者に苦しめられる人々を差し置いて彦星に逢い、幸せの一時を過ごす事は己の心が赦しません‥‥。どうか、偽者達を祓っていただけないでしょうか?」

「おしおきアタック! ですわ!」
 フィール・コリンズは手にした魔法の杖を、野球のバットのように振るう。
 見事に命中した偽彦星の霊は、ある方向に飛んでいく。
「双葉さん!」
「オーケー」
 待ちかまえていたのは御厨双葉だ。
 彼が石で霊を封じ込めると任務完了。
「ナイスキャッチ、ですわ」
「ありがとう」
 クールに応える御厨。
「でも、意外に簡単でしたわね。偽織姫のほうはどうなっているのでしょうか」

「どりゃーー」
 どかーーん。
 コンクリートの壁がへこむ。
 堺日向子の渾身のパンチに必死の形相で逃げ回る偽織姫。
「避けるなーーー!」
 当然、堺の制止の言葉もどうやら通用しそうになかった。
「あんた、アレ、どうにかしなさいよ! あんなの喰らったら死ぬわよ!」
 偽織姫が、傍観している杉田春子に言う。
「‥‥死ぬって‥‥あなた、霊だし」
「霊でも痛そうなものは痛そうでしょう!?」
 必死の嘆願を聞き入れたのか、杉田が言う。
「‥‥わかったわ。そこに立って。‥‥はい、はいはい」
 手にした針を地面に刺していく。
「こ、これは?」
 偽織姫の疑問に応える杉田。
「霊が動けなくなる術よ」
「‥‥え?」
「これで受け身もとれなくなるから、一撃で落ちれば痛くないわ。よかったわね」
「‥‥ええ?」
「日向子さん、こっちよ」
 堺を呼び、杉田はスルリと道を譲る
「そこかー! 歯を食いしばれー」
 ついに、十分な勢いがついた渾身の一撃が偽織姫にヒットした。
「まったく‥‥、七夕という綺麗な日を汚した罰ね」

 いくつもの偽物ペアを退治していく『対外部』のメンバー。
「あたらしいターゲット確認しました」
 ターゲットの確認を知らせる新坂蓮。
 その声にはいつもの元気がない。
 先ほど矢島新からもらったチョコレートに、全く手をつけていないことから、お腹が減っていると言うわけでもなさそうである。
「蓮さん、現場付近です。ナビゲートお願いします」
 無線機から、フィールの声が入る。
 どうやら他のメンバーも現場付近にいるようだ。
「はい、わかりました」
 ターゲットの付近を詳細に伝える蓮。
 蓮と同様に、今はサポートに詰めていた御厨が言う。
「変わろうか?」
「え? いや、だいじょうぶです」
「‥‥そうか」
 しばらくの沈黙の後、御厨が独り言を言った。
「‥‥何があったか知らないが、本物の織姫と彦星なら、喧嘩の仲直りの願いぐらいなら簡単に叶えるだろうな」
「‥‥え?」
「だからそんなに深刻になるな。仕事が終わって、短冊に書いた後、謝りに行けばいいだけだろうが」
 御厨の言葉を聞いていた蓮。
「‥‥は、はい! がんばります!」
 蓮の答えを聞き、珍しく小さく笑いながら頷いた御厨だった。

「時期モノとはいえ、こう、一晩二晩で数が多いと疲れるわね」
 杉田が愚痴を言う。
「最近は安眠もできてませんし、お肌も‥‥‥」
 フィールの言葉に落ち込む、女性陣達。
 そんなこんなでも目標を捕捉する一行。
 落ち込んでる女性陣達に任せてはおけないと、矢島が、先制攻撃を加える準備をとった。
 呪を唱えながら、服のポケットの札を掴もうとする‥‥が。
「‥‥札が無い?!」
 サングラスの上からでもわかるほどの狼狽をする矢島。
「なにやってんの?!」
 その間、女性陣は敵に特攻している。
 もはや見守るしかない矢島は小声で応援するしか無かった。
「ガンバレーがんばれーがんばれってー」

「ありがとうございます。助かりました」
 偽織姫に襲われていた男性が頭を下げる。
 いえ、いいんですよ、と恐縮する『対外部』のメンバー。
 そこへ、本物の織姫が現れた。
「みなさん、ありがとうございます。ここら辺一帯の偽物たちは居なくなったようです」
 頭を下げる織姫。
 そこに大きな声が上がった。
「織姫!? こんなところに!?」
 一斉に振り向く一同。
 そこには先ほど襲われていた男性がいるのみ。
 しかし、その男性を見た織姫の反応は違った。
 引きつけられるように走り込むとそのまま抱きついたのだ。
「あぁ‥‥彦星様‥‥お逢いしとう御座いました」

 事情の説明が行われた。
 どうやら、偽者に頭を悩ませていた彦星は、自力で成敗しようとしていたのだ。
 ところが多勢に無勢、なかなかうまくいかなかった。
 そこで『対外部』のメンバーと出会ったというわけである。
 今、メンバーの目の前にはいるのは、幻想的な衣装を身にまとった本物の織姫と彦星。
「皆さんのおかげで、人間界で織姫に会う事ができました」
 織姫と肩を抱き合いながら、言う彦星。
「お世話になったお礼に、今年の短冊に書かれた願い事、1つだけなら、叶えてさしあげましょう。ゆっくり考えて下さい」
「ええ、ほんとう?!」
「やったー!」
 口々に喜ぶ一同。
 蓮が、御厨をちらりと見ると、御厨が頷く。
「それでは、また来年お会いしましょう」
 そう言い、頭を下げると二人は空へと飛び立っていった。

 それからしばらくは、それぞれが願い事を考える楽しい時間を過ごした。
 今年は二つの星の煌めきが一層強かったようで、美しい天体ショーとなった七夕。
 笹持ち担当だった矢島が、堺の願い事をうっかり見てしまい、渾身の一撃を食らいそうになったことを除けば、順調な七夕祭りを過ごす事ができたと言えるだろう。
 そんな『対外部』メンバーを出迎える部長。
「みんなお疲れ様。ところで、帰って早々なんだけど、海に行く準備してもらえるかしら? ああ、そうそう、シビアな事になるだろうから、遺言書は新しいのを作っておくこと」
 ねぎらいの言葉も渇かぬうちに放たれた衝撃の言葉。
 海に潜む危険とはいったい?!
 次回、『対外部 ファイナル』をお楽しみに!


スタッフロール(抜粋)
新坂 蓮‥‥‥‥‥‥玖條 響
杉田春子‥‥‥‥‥‥滝口まあや
堺日向子‥‥‥‥‥‥姉川小紅
矢島 新‥‥‥‥‥‥志羽・武流
御厨双葉‥‥‥‥‥‥風祭美城夜
フィール・コリンズ‥富垣美恵利
彦星(本物)‥‥‥‥神楽坂紫翠
織姫(本物)‥‥‥‥響 愛華