music summer 前半アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 うのじ
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 3.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 07/28〜08/01

●本文

「バトル、ザ、ロック、サードステージ、ファイナル!」
 TVから流れてくる声。
 TV画面には画面には、今までに登場してきたアーティスト達のライブ模様が素早く切り替わっていく。
 素足の美女とギターの男のライブ映像。
 紅の悪魔のウェディング姿。
 カップル風の二人が上に立つ舞台。
 そして、3人組のアップテンポなパーティー。
 それらが映し出された後、つぎに映し出されたのは、一組のアーティストだった。
 しかし、彼らはシャドウになっている
 なぜ、シャドウなのか?
 それは、ここに映るべきなのは、これから始まる宴の勝者だからだ。
 大きく画面にでる『the music summer』という文字。
 画面の右下には小さく、『魂を響かせろ! Battle the Rock SP』と書いてある。
 TVのスピーカーから、流れてくる流ちょうな英語。
「ザ、ミュージックサマー! ドントミシット!」


 音楽番組『Battle the Rock』。
 一つのお題を受けて、様々なアーティストが歌を披露する。
 そして、観客からの投票によって、その回の勝者が選ばれる、いわば、歌によるサバイバル。
 そのスペシャル番組と言うことで、今回のテーマは、『ノンテーマ』なのだ。
 普段とは違い、すべてをぶつけることができるこのテーマで、アーティストたちの壮絶なバトルが始まる。

●今回の参加者

 fa0124 早河恭司(21歳・♂・狼)
 fa0379 星野 宇海(26歳・♀・竜)
 fa1376 ラシア・エルミナール(17歳・♀・蝙蝠)
 fa1851 紗綾(18歳・♀・兎)
 fa2105 Tosiki(16歳・♂・蝙蝠)
 fa2657 DESPAIRER(24歳・♀・蝙蝠)
 fa3398 水威 礼久(21歳・♂・狼)
 fa3461 美日郷 司(27歳・♂・蝙蝠)

●リプレイ本文

●オープニング
 CGアニメーションのオープニングムービーが終わる。
 そのオープニングアニメから飛び出してきたような二人組が舞台の上に登場する。
 そして、いつも通りの口上を述べた後、スペシャルということで普段の約2倍の出演者たちの紹介を始めた。

 一番最初に紹介されたのは三人組。
「華麗に咲く青い華とクレイスのコラボ。BLUE−M with クレイス!」
 所属が同じ星野 宇海(fa0379)と美日郷 司(fa3461)が最初にカメラに映ったあと、水威 礼久(fa3398)がそれに加わる。
 星海の投げキッスやツカサの会釈、そしてクレイスの少し大げさな元気アピール。
 三人が一通りアクションを取ったことを確認すると、カメラは次の被写体を映すべく動く。

 続いてカメラが捉えたのはラシア・エルミナール(fa1376)だった。
「ラシア・エルミナールが、ソロで参戦! 聴く人を魅了するパワーボイスに期待!」
 カメラに向かい、軽く手を振るラシアだが、紹介の言葉を聞いて苦笑している様に見えた。
 どことなくソロという言葉が強調された気がしたからだろうか。

「パパじゃない、天然じゃない、そう主張する二人がタッグを組んだ。とぼけた主張とは裏腹に、その音楽の実力は確かだ。縁!」
 先ほどのラシア以上に紹介文に苦笑する早河恭司(fa0124)。
 そして、紗綾(fa1851)の方は、苦笑する以前に驚いているようだ。
 それでも、さすがプロなのか、カメラには笑顔を見せる二人だった。

 次にカメラが向けられたのはTosiki(fa2105)だ。
 首を横にかしげながらの笑顔のトシ。
 そして、首をかしげたときに動いた眼鏡のズレを直し、その後、カメラに向かって手を振った。
「こちらもソロで参戦。今日はどんなキーボードの音色で酔わせるのか。Tosiki!」

 DESPAIRER(fa2657)にカメラが向けられる。
 クロノロングコート姿のディーは、カメラに冷たい目線を向けるだけだった。 
「奈落の歌姫、再び! 戦慄を身にまとったアーティスト、DESPAIRER!」

 さらに、クールな男性二人組、カメラを笑いながらいじめる女性、がんばっている風の三人組、など、今回参加する10組、すべての紹介が終わる。


●BLUE−M with クレイス
「ツカサ、よろしくなっ! 良いものにしようぜっ」
 ハイテンションのクレイスが、がしっとツカサの手を握る。
 まるで青春ドラマのようなノリだ。
「‥‥あ、ああ、よろしくな」
 多少押され気味ながらも返事をするツカサ。
 それを観ている星海は、くすくす笑っていた。
 部屋がノックされ、出番が知らされる。
 クレイスと星海の二人は手首に巻いていたパワーリストを外し、部屋に置いてある座布団の上に放る。
 ドスドスと、こぎいい音が立て続けに鳴る座布団。
 それを観ているツカサは、頭を抱えた。
「‥‥何を‥やっているんだ?」
 何というのはパワーリストのことなのは明かだ。
 しかし、星海、クレイス共に、頭に浮かべるハテナマーク。
「え? だって、当然だろ? 音楽に妥協しないためにも」
 クレイスの言葉に頷く星海。
「その通りですわ。音楽に体力は必要ですもの」
 二人の堂々とした態度に、自らの常識に疑いを持ち始めたツカサ。
「‥‥そ、そうなのか?」
 そのとき、もう一度、ドアがノックされた。
 本当に出番が間近なのだ。
「それでは、皆さん、参りましょうか。クレイスさんの心境を歌うために」
 そう言い、真っ先に出て行く星海。
 それに続く、クレイスとツカサ。

「BLUE−M with クレイス。『真夏の恋』」
 コールされ、出だしは星海のソロの歌声から始まる。
 そして、ギターのツカサに、ベースのクレイスが加わる。

夏色の空
君の笑顔眩しくて
小麦色の肌に恋をした

Go together!
熱い日差しに負けないくらい
燃え上がろう

これから俺たちの夏が始まる

夕焼けの朱に染まった横顔に
そっと口付けしようとして
気付かれ慌てて顔をそらした
覗き込む君の瞳に吸い込まれそうさ

全てを捨てて俺の胸に
なんてくさい台詞は吐けないけど
ずっと君を想い続けてみせるよ
浮気性な俺だけど惚れた女には一途だぜ

 大きく腕を振り上げる星海。
 歌のラストスパート。
 クレイスとツカサの演奏もより力が入っていく。

Go together!
バカップルみたいに見えるのもまたご愛敬!

太陽の祝福を受け
この夏の主役を掴み取れ!

 曲の終わりに合わせ、ドンとスモークがステージの上に広がった。


●ラシア・エルミナール
 ラシアがいるのは控え室。
 普段、この番組に出るときに使っている部屋よりはやや小さめではあるものの、一人で使うには十分な大きさの部屋だ。
 控え室に備え付けのディスプレイには、自分よりも出番が前のグループが歌を歌っている様子が映っている。
「しかし、何か変な気がしてたら、部屋が静かなんだね、今日は」
 鏡を見ながら言うラシア。
「出番前に一人っていうのもひさしぶりだしね。‥‥あたしもずいぶん変わったもんだね」
 そう言い、苦笑するラシア。
 鏡の前にいる自分も同じように苦笑している。
「おっと、これじゃ不味いね」
 鏡の映る自分の表情に苦笑が残っていないか確認したあと、彼女はステージに向かった。

「ラシア・エルミナール。『This day is‥‥』」
 ガンガンに飛ばす曲調に、そのリズムに乗る客席とラシア。
 そこへ、ラシアの歌声が重なる。

街が宵闇に包まれるとき 眠った魂(ソウル)目覚める
輝く月にその身を映し

傷ついた獣の魂まるで
癒すように
微笑むように
抱きしめるように

月は輝くEndless night!

 パワーボイスの面目躍如とも言うべく、丁寧にすっきりと、それでいて型にはまっていないラシアの歌声が響き渡る。
 伴奏が止み、今度は一転して労るような歌声。
 
傷ついた獣の魂まるで
癒すように
微笑むように
抱きしめるように

星は瞬くLike the jewel!

 さらに、今度は、スタート以上にハイテンションにラシアの歌声が響く。
 ステージを、会場を、全速力のパワーボイスが駆けめぐった。

凍りついた心を溶かしていくようなMoonlight
戒めの枷から解き放たれる

This day is beast’s night!


●縁
「天然じゃないもん」
 先ほどの紹介が未だに気になるのか、控え室の隅で拗ねているさーや。
「俺もパパじゃないんだけど‥‥」
 恭司も不満げだったが、パパじゃない発言はさーやが否定した。
「そうだよね、そうだよね! 猛抗議しなきゃ!」
 さーやの言葉に頷く恭司。
「だな。じゃ、今から行くか」
 よっと腰を上げる恭司。
「え? 今から? でも、出番前だし‥‥」
 困り顔のさーやに、イタズラが成功した子供のような笑顔の恭司
「冗談だ」
 そう言い、さーやの頭に手を当ててぐしゃぐしゃと撫でる。
「そうだよね。よかったー」
 ほっと胸をなで下ろすさーやを恭司がせかす。
「さて、そろそろ時間だな。行かないと」
「うん、ってちょっとまって、いつの間にか髪の毛が爆発してる。どうしてー?」
 慌ててブラシをかけるさーや。
「早く行くぞ」
 急かす恭司。
「待って待って。あ、そうか。さっき、ぐしゃぐしゃってやられたからだね。犯人は恭司君だ」
 犯人を突き止めたところで髪のセットが戻るわけではない。
 犯人に急かされながらも、さーやはきちんとセットを直し、急いでステージに向かった。

「縁。『feign』」
 浴衣衣装のギタリストが二人ステージの上る。
 スポットライトに照らされて、二人の姿はどこか浮き上がるように見える。

夜空に咲く炎の花は 砕け散る心の痕
思い描いていた未来予想図
いつの間に黒く塗り潰されてしまったのだろう

 ギターソロと歌、続いて、ギター二人の共演。

真夏の夜の甘い幻は 切なく香る恋の夢
傷だらけのプライドを抱え
平気なふりして無着色に彩られた街へと繰り出す

 最後にその他の楽器が加わり、大いに盛り上がっていく。
 
Break down!
着古した虚勢を脱ぎ捨てて
Blow out!
埋もれた真実をこの手で掴み取れ
Break down!
凍りついた虚ろな時も
胸に突き刺さる悲しみも
いつかすべてが希望の糧となる日を信じて

 歌と楽器、そして背景に打ち上がっていた花火の映像、それらが徐々に消えていく。
 最後まで残っていた2本のギターの音も、ジャンと、同時に切れ、舞台が終了した。


●Tosiki
 控え室で出番を待つトシ。
「今回はみんながライバルだから、気合い入れていかないと」
 不安を打ち消すように言う。
 不安なのは、一人だから、と言うこともあったが、それ以上に、これから行う演奏が、受け入れられるかという不安があった。
 歌詞も題名もない曲を演奏した時、それに慣れていないここの客はどのように反応するだろう? そう考えると、不安以上に恐ろしくもあった。
 しかし、鏡に映るトシの顔には、不適な笑みが浮かんでいる。
 客席の反応が不安の反面、どこか楽しみにしているのだ。
 ドアがノックされ、出番が告げられる。
 トシは壁に掛けてあったキーボードを手に取り、ステージに向かった。 

「Tosiki」
 コールされた後、ステージの真ん中に立つトシ。
 電子系のリズムとメロディー。
 所々に刻まれるL(エル)の言葉。
 忙しく動くトシの両手に合わせ、昔風の電子音や、ロボのような音声、様々な音が流れ落ちる。
 最後に、love you と電子音が鳴った。


●DESPAIRER
「DESPAIRER。『Sadness & Madness』」
 舞台に呼ばれたディーは、マイクが立っているステージの中央へ向かう。
 静かに曲が始まり、歌の題名どおり悲しいスローな曲調のまま、歌が歌われる。
 悲しさを表現したメロディーに歌声、そして歌詞。

この深く暗き闇のような Sadness
何もかもを飲み込み沈め消し去っていく
その闇の奥に見える扉 Madness
誘惑に負け開いた時世界が変わる!

 世界が変わった。
 ディーの黒いコートが放たれ、中に見えるは黒い翼にくるまれた真っ赤な衣装のディー。
 曲調も激しくなり、照明も激しく点滅する。
 先ほどと同じメロディーにもかかわらず、テンポで表現された狂気。
 その狂気がついに最高潮に上り、ついに照明が消えた。

この熱く紅き血のような Madness
何もかもから意味を奪い押し流していく
その奔流の去った後には Sadness
癒える事なき傷痕は消えずなお深く

再び訪れる深き闇 Sadness
何もかもがまた深遠に沈み消えていく
そして再び現れる扉 Madness
永遠に続くこの逃れ得ぬ運命‥‥‥

 暗闇の中から聞こえる歌声。
 悲しみと狂気の歌声が、ついに終わった。