music summer 後半アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 うのじ
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 難しい
報酬 3.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 07/28〜08/01

●本文

 『Battle the Rock』のスペシャル番組。
 この準備に追われるスタッフたち。
 有る意味、楽しみとは言え、仕事である故に楽なものではないのだ。
 スタッフそれぞれが仕事をしている中、番組のプロデューサーの望月がいた。
 皆が忙しく働いてるのに、自分は真ん中で監督はしていなければならない。
 それがもどかしいのか、スタッフたちに栄養剤を配って歩いていた。
「おつかれさま」
「あ、どうも、すいません」
 ヘルメットをつけた番組プロデューサーというのもなかなか見ることができない姿だ。
 そもそも、現場にここまで出てくるプロデューサーというのが、あまりいないのだろう。
 今までのスタッフならまだしも、新規に入ったスタッフ達は驚きながら、栄養剤を受け取っていた。

 もっとも準備は大道具だけではなく、様々な打ち合わせもある。
 現場の帰りなのだろう、髪がヘルメットの形にへこんだ望月の姿があった。
「今回は時間が長めで、登場アーティストも増えるから、楽屋の数とか、ドリンクとか、ばっちりしておいてね」
 望月が書類を見ながら言うと、横にいたスタッフが答える。
「はい、いつもの三倍用意してあります」
「三倍?!」
「え、はい。いちおう」
「すごいなぁ、三倍かぁ。空き部屋は何かに使えるか考えておこう」
 笑いながら言う望月。
 続いていく打ち合わせ。
 満足のいく状態なのだろう、ほとんど何の問題もなく、すべての懸案が処理されていく。
 すべての確認が終わった後、望月が周りのスタッフを集める。
 その感じは、さながら円陣のようだった。
「‥‥じゃ、これが終われば、つぎはファイナルステージだから、それまで、全力でがんばっていこう! ラストスパートだ!」
 パン! と手を叩き、望月が場を閉める。
 スタッフそれぞれが、自分の仕事をするために散らばっていった。

 音楽番組『Battle the Rock』。
 アーティストのサバイバルとも言えるこの番組のスペシャル版。
 『music summer』の開演は近い。

●今回の参加者

 fa0034 紅 勇花(17歳・♀・兎)
 fa0952 x‐cho(19歳・♂・兎)
 fa1362 緋桜 美影(25歳・♀・竜)
 fa1744 雛姫(17歳・♀・小鳥)
 fa2837 明石 丹(26歳・♂・狼)
 fa2925 陽守 由良(24歳・♂・蝙蝠)
 fa3920 Neiro(21歳・♀・蝙蝠)
 fa3997 香凪 志乃(24歳・♂・小鳥)

●リプレイ本文

●紅 勇花
 楽屋にて、紅 勇花(fa0034)が呟く。
「うーん、今回は無理しちゃったかな?」
 自分に問いかける勇花。
 夏らしく熱いイメージの曲を歌う事にした勇花。
 だが、少し心残りがあった。
「僕らしい歌って、どっちかっていうと暗い曲の方が得意なんだよね」
 そう言いながらも、冷房が効いた部屋のために着ていた薄手のジャケットを脱ぎ、腰に巻く。
 もうすぐ出番のはずだった。
 案の定、出番が告げられる。
 勇花はテーブルの上の帽子を頭にかぶり、ステージに向かう。
「でも、得意じゃなくてもがんばらないとね。みんなが待ってるんだ」

「紅勇花。『Ignition』」
 休憩時間の後の一発目。
 アーティストの名前と歌の題名が会場に響く。
 ステージの上にはエレキギターを手にした勇花。
 彼女は、バックにベースとドラムスを従え、曲をスタートさせる瞬間を見定めていた。
 観客の心がすべてこちらに向いた瞬間を見逃さず、最初の音を奏でる。
 ギュイーンとギターを唸らせながら、勇花が歌いだした。

変わり映え無い毎日の中で、お前は燻っていないか?
その心は、本当に満たされているのか?
代わりなど無い一生の中、何度本気で燃えられたか?
その心に、幾つ後悔を抱えてきたのか‥‥?

何もかもが一度きりならば 躊躇ってなどいられない
刹那の焔抱いて いざ、走り出せ‥‥!

 ハイテンポのまま最後まで、走り続けるかのように、飛ばしていく勇花。
 低めの歌声と、ギターの響き、様々な振動が胸を振るわせる。

Ignite One!
抑え切れない 激情のままに燃え上がれ!
Ignite Heart!
過去も未来も、全て焼き尽くすほどに!

今‥‥Ignition!!


●ラケル
 楽屋の中で行ったり来たり、そわそわしている香凪 志乃(fa3997)。
「志乃、どうした? だいじょうぶカ?」
 x‐cho(fa0952)が声をかけると、志乃が答える。
「はい、大丈夫です。別に何かあるわけではなくて‥‥なんだかどきどきして楽しくて」
 言いながら頭に手をやる志乃。
「分かります。なんだかドキドキしますよね。わたくしの場合は、ただの緊張なのかもしれませんが」
 雛姫(fa1744)の同意に、笑顔で頷く志乃。
「ある程度の緊張は悪くないものよ? 集中力につながるし」
 サイコも言いながら頷く。
「志乃様はどうですか? ドキドキで爆発しそうなら、緊張をほぐすハーブティーでも‥‥」
「いいんですか? ありがとう。でも、お湯がないとだめですよね。湯沸かしポットか何か借りてきますね」
 志乃が部屋を出て行こうとすると、ちょうど、同時に扉が開かれた。
 スタッフが出番を告げに着たのだ。
「ハーブティーはお預けダネ」
 サイコが笑いながら言う。
「そうですね。終わってからのんびりいただきましょう」
 ひなの言葉にサイコがつっこむ。
「終わってから緊張をほぐしてどうするの」
「あ、そう言われるとそうですね」
 笑い出す三人。
「‥‥大丈夫。笑ったおかげで気が楽になりました。緊張も十分ほぐれましたよ」
 志乃の言葉は、サイコもひなも同じ思いなのだろう。
 三人は頷き合うと笑顔でステージに向かった。

「ラケル。【F】 from 【happiness】」
 最初に流れたのはhappiness。
 伸びやかな昼のような照明を受け、さわやかな曲が、サイコのギターから奏でられる。
 前奏の伸びやかな雰囲気のまま、メインボーカルのひなが歌い出す。

I wish you every happiness!
空に続く螺旋階段
一歩ずつ昇っていこう

 優しく勇気づけるひなの歌声。
 志乃のコーラスや、サイコの歌詞に合わせた微妙な曲風のアレンジ。
 それらが、聴く人の心を優しくしていく。

踏み出すこと躊躇わないで
失敗すること恐れないで
背筋を伸ばして深呼吸しよう
君の夢が少しずつ見えてくるはずだから

I wish you every happiness!
虹にかかる螺旋階段
まっすぐに昇っていこう
輝く太陽の先に
幸せが君を待っている

 一層強くなる照明の光。
 それに手を伸ばすひな。
 すると、舞台にひらひらと舞い落ちる数々の花びら。
 その一つが志乃の手のひらに乗った。
 曲調が純粋なポップス風ロックに変わる。
 今度のメインボーカルは志乃だ。

君は僕のFORTUNE 幸運の女神
ねぇ笑ってよ  はにかんだ笑顔見せて
それだけで僕は HAPPYだから

富とか財産とか成功とか そんなんじゃダメダメ
幸運を呼び込む 君じゃなきゃ

FORTE 君の名前呼んで
FORTE 君の身体引き寄せて
こんな幸せ FEMTOの確率

声合わせてSING UP 運命の女神
ほら踊ってよ 僕がエスコートするから
優雅に礼して STEP踏んで

 志乃にエスコートされる女神はひな。
 そして、一礼し、ステップを踏む二人。
 サイコのギターに合わせて刻まれるダンス。
 まるで、ロックのリズムに合わせた社交ダンス。
 そして、最後に、三人の声がハモった。

You and it is happy to be together
You are FORTUNE which gives happiness to me!

 最後にギターが鳴り響き、優しく楽しいラケルの運命のミュージックが、終了した。


●緋桜 美影
 緋桜 美影(fa1362)は楽屋にあるディスプレイでステージを観ていた。
 どれも熱演で、行け! やれ! そこだ! おおー! と観ながらつい声が出ていたほどに楽しめた美影。
 しかし、感じた物足りなさがあった。
 それは、どれも熱演すぎて休む暇がないこと。
「まぁ、俺はこうやってのんびり休めるんだけど‥‥」
 言いながら、グイッと缶ジュースを口にする美影。
「‥‥ここでやっぱりヤスミノススメが必要だよね」
 そう言いながら、中身の炭酸飲料が空になった缶をバスケットボールに見立てて、ゴミ箱へシュートする美影。
「ナイッシュー! さて、行きますか。みんなに、休まないとだめだって伝えてあげないとね。最高の歌でメロメロのノリノリにしてあげようじゃないの!」
 気合いを入れ、ステージに向かう美影。
 しかし、一瞬足を止める。
「ノリノリにさせたら、みんな休めないね、そういえば。‥‥ま、いっか」

「緋桜 美影、『インターバル』」
 名前を呼ばれた美影は、ステージの中央に立つ。
 そして、ゆったり目の曲が流れ始める。
 身体を左右に揺らしたくなるようなリズムに合わせ、美しい歌声が響く。

夏の日差し木漏れ日の中流れる風に 身を委ね
自由気まま気まぐれに生きるなんて難しいけど‥‥
せめてこの刹那 魂を解き放とう

 今の時代のがんじがらめの風潮に疑問を投げかけるような歌詞。
 それがスローテンポとアップテンポを繰り返しながら、続いていく。
 そして、最後にまたアップテンポに戻り、曲の最高潮を盛り上げる。

安らぎの無いこの流れ(ジダイ)に 棹差して生きる僕達
誹謗中傷 挫折でどん底 這い上がる気力も限界
友情愛情 諦めと信念 劣等感まで総動員して

がんじがらめのこの人生で ほんの一回深呼吸
こんがらがったあの世界を もう一度見つめよう

動き出すにはいい頃。

 楽しげに歌いながら、最後にガン! と右拳を突き上げる。
 バックも同時に音を止め、何の音も響かない余韻がステージに広がった。


●アドリバティレイア
 じゃんじゃんじゃーん、と陽気な音が、楽屋に流れる。
 陽守 由良(fa2925)がキーボードを叩いたのだ。
「丹、音合わせするぞ」
 ユラの言葉に、了解の返事をする明石 丹(fa2837)。
「あーあー、サボテーン」
 先ほどのじゃんじゃんじゃーん、に合わせて声を出すマコト。
 どこかのんびりとした風景、しかし、時が経つうちに、真剣な物へと変わっていった。
 そのおかげか、ステージへの呼び出しがあった時、二人は、動じることなく出発していった。

「アドリバティレイア。『カクタス』」
 軽めのカントリー風の衣装にテンガロンハット姿のマコトとユラ。
 ユラがマイクを持って、会場に呼びかけた。
「ホットでスペシャルなリバティメンバー、走るリズムにノり遅れないようにしっかり着いて来いよな! 希望引き連れて、『カクタス』!」
 ユラの言葉に応えるように大きくなる歓声。
 すぐにユラの最初の一音が始まり、それに続くドラムやギター、そして、マコトのベース。
 最初からアップテンポに、陽気な曲が流れ、それに合わせてマコトの歌声も陽気に響き渡る。

僕の持つ全ては複雑なものじゃない
難しく見えるよう飾ること覚えたけれど
残ったのは磨り減った形あるものと
今じゃ あやふやなタイトルだけだ

悪くない 全て忘れえぬものだから

 アップテンポな陽気な曲が、さらに速くなり、カウボーイミュージックにハードロックが混ざったかのような曲調に徐々に変化していく。

振り切れた針 心で数えながら
まだ誰にも踏み均されてない場所を行く
胸に刺さる希望に突き動かされて
荒野を走るカクタス

チャートの螺旋を抜け何処か目指すのか
それとも置き去りの何か迎えに行くのか

光より速く 火花散らせ
荒野を走るカクタス

 歌詞に合わせた一条のレーザー光線。
 それを掴むかのように、手を伸ばしながら、曲が終わる。
 最後に、マコトとユラ、双方が、帽子を手に持ち、観客席へ、一礼。
 そのときにわき起こる歓声は最初の歓声を大きく超えるものだった。


●Neiro
 Neiro(fa3920)が控え室からステージまでの廊下を歩く。
 芸能人やモデルを見慣れているスタッフが思わず足を止める。
 ある人は、わざわざ振り向く。
 それは、ネロのオーラ、スタイルや扇情的な衣装に見入るかのように。
 ネロは、その視線を笑顔で受け止める。
 気にせずに向かう先は観客が待っているステージだ。

「Neiro。『No,No,No』」
 ネロが登場する。
 ダイヤを散りばめたセクシーなミニスカートドレス。
 照明を浴びたドレスから覗く白い素肌はダイヤに負けず輝いている。

一つ教えてあげる時が来たわ
私は飼いならせないのよ
肌に触れさせる時、思うのは
早く自由になりたいって事だけ

一つ学ばせてあげる時が来たわ
私は懐いてはいないのよ
髪を撫でられる時、感じるの
イケナイ遊びをしてしまったと

 ロックのリズムに合わせた妖しげな曲調。
 ネロの強く、しかし優しい歌声。
 それにネロの悩ましげなダンス。
 照明の色も手伝って、妖艶な雰囲気のステージが繰り広げられる。

Oh‥no,no,no‥‥baby
あなたが思うほどPureじゃない
肌が触れれば熱くなるわ

 チッチッチ、指を振る仕草すら妖しく見えるネロのダンス。
 煌めいていたダイヤが服を飛び出し、舞台全体を包み込むような、銀の紙吹雪。

Oh‥no,no,no‥‥baby
あなたが思うほどeasyじゃない
気に入らなければすぐに帰るわ
覚えておいてね


●エンディング
 10組すべての演奏が終わり、後は勝敗を決するだけになった。
 番組の最後になってやっと登場した、いつもの司会者の二人組が、観客に投票を促す。
「それでは、『judge』。スタート!」
 観客が投げるコインは舞台へ降り注ぎ、設置された箱の中へ入っていく。
 すべての観客のコインが投げ終わる。
 一番多くのコインを獲得してるアーティストが今回の勝者なのだが、傍目から観ると、コインの枚数の差はほとんど無かった。
 僅差、それを機械が重さで判定する。
 しばらくして、勝者を乗せたエレベーターが作動した。
 中から出てきたのは、黒い羽につつまれた赤いスーツの女性だ。
 スローなメロディーが流れ始め、ステージの上の女性が歌を歌い出した。
 その歌の題名は『Sadness & Madness』。
 スタッフロールが曲に合わせて流れ出し、番組が終了した。