NW:突然の戦闘ヨーロッパ

種類 ショート
担当 うのじ
芸能 1Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 難しい
報酬 2.3万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 08/14〜08/16

●本文

 俺の名前は、ポール・キャティエ。
 職業、オカルト研究家だ。
 オカルト番組にゲストとして呼ばれる事もあれば、雑誌にコラムも書いたり、本を出したりもしている。
 最新刊『ネッシー捏造事件の犯人は環境破壊だった!?』の売り上げは予想以上だった。
 しかし、それは表の顔。
 裏では、獣人の立場のために、様々な事件を解決している、獣人の守護者、いわばキーパーの一人なのだ。
 北に獣人の発見者がいると聞けば、話の信憑性を無くすために駆けずりまわり、南にオーパーツが発見されたと聞けば、こっそり頂戴するべく忍び込んだりする。

 最近、ここイギリスではナイトウォーカーの動きが活発だったため、なかなか休暇が取れないでいた。
 やっと取れた休暇。
 しかし、職業病とでも言うのだろうか。
 足が向いたのは、謎の遺跡、ストーンヘンジがあるソールズベリである。
 仕事抜きで楽しもうと思いながらも、つい、メモを取ってしまう。
 そんな時、絹を裂くような悲鳴が聞こえた。
 駆け足で、その声のほうに向かう。
 現場では、一人の女性が倒れていた。
 その横で、今にも襲おうとしているのが、なんとナイトウォーカーである。
 原型は人間なのか、日本のテレビ番組にでてきそうな、イルカと人間を混ぜたようなスタイルのナイトウォーカー。
 幸い、倒れている女性は気を失っているようだ。
 警察が来る前にこのナイトウォーカーを何とかしないと!
 しかし、一人ではどうしようもない。
 ‥‥おや、そこにいるのは獣人じゃないか!
「ちょうどよかった! 警察が来る前に、このナイトウォーカーを倒しておいてくれ。俺は警察や一般人を近づけないように、周辺警備に当たる! 頼んだ!」
 そう言い、返事も聞かずに駆け出す。
 卑怯?
 冗談だろう?
 バックアップも大事な仕事なのだ。

●今回の参加者

 fa0082 宮間・映(14歳・♂・狼)
 fa0378 九条・運(17歳・♂・竜)
 fa1242 小野田有馬(37歳・♂・猫)
 fa2270 ユージン(17歳・♂・一角獣)
 fa2609 朱凰 夜魅子(17歳・♀・竜)
 fa2614 鶸・檜皮(36歳・♂・鷹)
 fa3116 ヴィクトリー・ローズ(25歳・♀・竜)
 fa4218 ゲオルグ・フォルネウス(37歳・♂・蝙蝠)

●リプレイ本文

●居合わせた理由はそれぞれ
 ロンドンでのパーティーが終わりオフで旅行中の九条・運(fa0378)。
 そんな彼が車を走らせていると、女の子の悲鳴が聞こえた。
 路上に車を止め、急いで駆けだすと、前に仕事で一緒だったバイクに乗った鶸・檜皮(fa2614)と出会う。
「あっちか?」
「みたいだな、行くぞ」

「ふむ、手がかりと言った手がかりは無し‥‥か」
 ゲオルグ・フォルネウス(fa4218)はソールズベリでの独自の捜査中だった。
 ナイトウォーカー関連の調査の帰りに、偶然、ナイトウォーカーの襲撃に出くわしたのだ
 イルカの姿をした怪物を見かけたとき、ゲオルグは少しうれしかった。
 手ぶらで帰るはずだったが、こうなってしまっては引き下がる訳にはいかない。
 現場に向かってダッシュした。

 同じ頃、小野田有馬(fa1242)は朝食用のパンを買い出しついでのお散歩中だった。
「ここら辺に観光名所があるらし‥‥っ悲鳴っ?!」
 パンを抱えたまま慌てて走り出す小野田社長。

「いったいどうしたっていうのよ?」
 悲鳴を聞きつけたギャラリーが集まってきた。
 しかし、偶然にもそのすべてが獣人間。
「ちょうどよかった! 警察が来る前に、このナイトウォーカーを倒しておいてくれ。俺は警察や一般人を近づけないように、周辺警備に当たる! 頼んだ!」
 そう言うと、一人の男が公園から出て行った。
「WEAにも連絡して応援と封鎖を急がせろ! こっちは任せておけ」
 ゲオルグの言葉に、その男は振り向かず手を振って答えた。

 残されたのは10人。
 獣人8人と、倒れた女性、そして怪物だ。
 事態を理解した運が言う。
「OK、Mrポール・キャティエ。状況は理解した。バックアップと誤魔化しは全て任せた。害虫退治は任せておけ」


●それぞれの戦い
 先ほどOKと言った運は武器を取りに車に戻っていた。
 残された9人の中で最初に動いたのはユージン(fa2270)だった。
 他の獣人は変身をするために動けないため、ユージンと相手の一対一の状態になっていた。
「なんだか‥‥いろいろ不安だけど、とりあえずは助けないと」
 言いながらのユージンのローキック。
 上半身イルカの着ぐるみを被ったような相手は着ぐるみを着ているとは思えない反応で蹴りをかわす。
 もっとも、着ぐるみを着ているわけではなく、その姿が生身なのだが。
 飛び退いたおかげで女性から怪物が離れた。
「挟まれる形になるのは避けたいのですが‥‥仕方ない」
 ユージンは一歩踏み込み、女性と怪物の間に入る。
 これで当面の女性のみの安全は確保された。
 しかし、反面、ユージンが怪物の攻撃に晒されることになった。
 ブォン、すさまじい速度で振り回された拳がユージンを捕らえる。
 ミシリと嫌な音を立てながらも堪え、反撃に転じるユージン。
 放った蹴りに手応えを感じはするものの、多少ぐらつく程度の相手。
 破壊力の差。
 これが人間の姿で怪物に立ち向かう難しさだった。
 善戦するも、相手の大降りの一撃を喰らい、今度は堪えれるに吹き飛ばされるユージン。
 止めとばかりに、今度は顎が迫った。
 口から覗く鋭い牙。
 ガブリ。
 オオカミの腕から鮮血がほとばしる。
「今のうちに後ろへ!」
 声は、怪物とユージンの間から聞こえた。
 宮間・映(fa0082)が間に入り、自らの左腕を差し出し、牙を迎えたのだ。
「‥‥痛いのが怖くてスタントはやれません!」
 映が、牙に耐える。
 その隙に体制を整えるユージンだが、傷は深く、なかなかすぐに参戦という訳にもいかないようだった。
「いっくよぉ」
 助走をつけたヴィクトリー・ローズ(fa3116)のドロップキック。
 両足から与えられた衝撃が、噛み付き状態を解除させた。
 そのまま後ろに蹈鞴を踏む怪物に、自由になった映の助走付きの跳び蹴りが炸裂する。
 吹き飛ぶ相手。
「ねぇ、だいじょうぶぅ?」
 ローズの言葉に頷く映。
 怒り狂う相手に、今度は朱凰 夜魅子(fa2609)が立ちふさがる。
「手負いを相手にしてもしょうがないだろう? 来なよ」
 両手に警棒を持った竜の姿のヨミコ。
 後ろにいる傷を負った仲間に気遣いながら、警棒を構える。
 大振りの攻撃を警棒でそらし、残った警棒で一撃を加える。
 それが2回繰り返された後、今度は軌道の違う攻撃が繰り出された。
 ヨミコはそれを何とか防ぐも、反撃してる余裕は無い。
「こっちこっち」
 そこへローズのかけ声。
 ヨミコは声に反応し、何とか相手をローズの方へそらすと、ローズは、右腕を地面と水平にしてのダッシュ。
 プロレス技のラリアットだ。
 ついに転倒するイルカの怪物。

 戦場から少し離れた所にバイクが到着する。
 鶸が倒れた女性を回収しに来たのだ。
「‥‥俺が彼女を安全な場所まで連れて行く」
 鶸が女性を抱えようとしたとき、ユージンが言った。
「‥‥き、気をつけて‥ごほっごほ」
「‥‥安心しろ。大丈夫だ。おまえこそ、傷のほう何とかしないとな。病院に連れて行ってやる。すぐに戻って来る」
 素直に運ばれる女性を見て、取り越し苦労だったか、とため息をつくユージンだったが、緊張の糸が切れたのか、そのまま地面に倒れるこんだ。

 イルカの怪物は立ち上がると、今度は攻撃をしてこなかった。
「??」
「?? ‥‥人が集まるのを待ってる?! まさか」
 それぞれが思考を巡らしていると、不意にイルカの口が開く。
 血に染まっていた牙が、白くなっていく。
 口の中に生まれつつあるのは強烈な冷気だった。
「伏せろ!」
 遠くから聞こえる運の声と後、開いた口への強烈なブロー。
 運が放ったロケットアームだった。
「間に合ったようだな」
 ふぅと、汗をぬぐう運。
「間に合ってないわよ。本気を出させる前に、いろいろお話したいこともあったのに」
 運の言葉に応えたのは小野田社長。
 頭に袋を被り、目の所だけくり抜いてある、やる気のない銀行強盗のような出で立ち。
 最後まで獣人化した二人のうちの一人だ。
 小野田社長は、ものすごいスピードで相手の背後を取ると、後ろから思いっきり爪で叩いた。
 イルカの牙にも劣らない鋭さの巨大な猫の爪。
 そこへもう一人、完全獣化して駆けつけたゲオルグが参戦する。
「貴様ごときが、片腹痛いわ!」
 まだ口の中にロケットアームがある状態での、顎を打ち上げるような蹴り。
 囲まれた形になった怪物に、もはや勝機はなかった。


●去る方法もそれぞれ
 映の踵が相手のコアを叩きつぶした。
 幸い、戦闘に時間はそれほどかかってないはずだが、遠くからサイレンの音が聞こえる。
「‥‥あと少し遅かったら、やばかったな」
「うん。でも、変身解除までのあと1分‥‥これが長そう」
 早く変身を解こうとするが、こればかりは急いで何とかなる物ではない。
 バックアップに言ったはずのポールが、みんな無事か? と、駆けつける。
「サイレンを聞いてわかるだろうが、警察が来る。これ以上長引かせることはできそうもない」
 運が言う。
「ここに大勢が居てもしょうがないだろう。どうだろう? 近くでもう一度合流するというのは? 連絡先を教えてもらえれば、こちらから連絡する」
 良ければレディたちは、自分の車に乗っていかないかと付け加えるのも忘れない。
「いったん解散して、また集合だな。もちろん、集合したくなければしないでもかまわない。場所は、そうだな、行きつけの店があるから、そこで。場所は‥‥‥」
 説明が終わった後、ポールが懐から一本の瓶を取り出し、ユージンに渡す。
「ユージン、これである程度の怪我は治るはずだ。手持ちは1本しか無いんだ。集合する店にユニコーンの友人を連れていくから、腕の怪我や他の怪我の治癒はそっちで」
 薬を受け取り、飲み干すユージン。
「はぁ‥、ありがとうございます、ポールさん。身体が楽になりました」
 回復を見届けてから、ポールが宣言する。
「後は何とかする。皆の無事に感謝して、いったん解散だ」
 ポールを残し、一斉に散らばる。
 いや、一人だけ、残った者がいた。
「ああ、私のパンが砂まみれに‥‥」
 地面においた朝食用のパンを見て涙する小野田社長だった。


●それぞれのバー
 大勢用の個室。
 そこに、10人が集合していた。
 事件に関わった9人と、治癒のために呼ばれた1人だ。
 観光をしたいという人もいたのだが、現状報告や治療といった事のために連れてこられたのだ。
 治癒の方はもう終わり、傷が深かったユージンと映もすっかり良くなっていた。

「で、結局、なにがどうなったんだ?」
 運に促されて、語り始めるポール。
「ああ、つまり、何もなかった」
「何もなかった?」
 ゲオルグが尋ねるように復唱した。
「正確には、何もつかめなかった、だな」

 話の内容はこうだった。
 調査が入る前に起きた襲撃事件。
 表向きはただの変な出来事でしかないものの、やはり、周囲の警備などは厳しくなる。
 そのため、個人単位で大きな調査は難しい事態になった、というのだ。

「ほとぼりが冷めるか、WEAが本腰を入れれば別だがな」
 ポールがそう締めくくる。
「‥‥‥もしかしたら、それが相手の狙いだったのかもな」
 鶸が言う。
「つまり、捜査の妨害?」
「‥‥そうだ」
 小野田社長の言葉に頷く鶸。
「たしかに、その可能性もある」
 しばらく流れる沈黙。
 ヨミコが話題を変えた。
「そういえば、他の調査はどうなってる? 前の修道院とか、現在のヨーロッパの動きとか」
 尋ねられたポールは、少し考えてから、答えた。
「現在のナイトウォーカーの動きは分からないが、前の修道院で一つ、気になる事があった」
「へぇ?」
「修道院に聖母の絵や像があるのはおかしくないのだが‥‥荒らされていた箇所にあったのが黒い聖母の絵だったんだ」
「誰かが塗りつぶしたってことですか?」
 ユージンの言葉に、ポールが首を振る。
「そういうものじゃなかった。まぁ、世の中にはブラックマリア崇拝というものがあるから、納得は出来るんだが‥‥」
 妙に気になってな、と話を結ぶポール。
 また訪れた沈黙。
 沈黙をうちやぶったのは、今度はローズだった。
「ね、ね? 難しい話終わったぁ? ならさ、お酒とか頼んでもいーい? お腹空いちゃったしぃ」
 空気が和む。
 一同に広がる笑み。
「ああ、そうだな。勝利の乾杯もまだだったな。とりあえず、頼むとするか」
 ポールに映が尋ねる。
「僕、お酒は無理だから、ジュースでもいい?」
「もちろんだ! 何でも来い!今日は、俺のおごりだ」
 ポールの言葉に、歓声が上がった。